科学

『AIの衝撃』がおもしろい

小林雅一『AIの衝撃』(講談社現代新書)がとてもおもしろい。副題が「人工知能は人類の敵か」という少々過激なもの。最近、電王将棋でプロ棋士たちがコンピューターの将棋ソフトに負け続けている。その将棋ソフトが強くなったのはたくさんのデータから機械…

内臓に意識はあるか

福岡伸一『世界は分けても分からない』(講談社現代新書)に、「未だ実証されない思考実験にすぎないのだけれども」と言いながら、「どこかから密かに見つめられているとき、私たちはその気配をすばやく感受できる」ということについて考えている。カメラの…

クリストフ・コッホ『意識をめぐる冒険』を読む

クリストフ・コッホ/土谷尚嗣・小畑史哉 訳『意識をめぐる冒険』(岩波書店)を読む。大変刺激的な読書だった。コッホはカリフォルニア工科大学生物物理学教授でアレン脳科学研究所所長。本書は脳科学研究における意識についてかなりやさしく語っている。意…

『日本の原子力施設全データ』を読む

北村行孝・三島勇『日本の原子力施設全データ』(講談社ブルーバックス)を読む。副題が「どこに何があり、何をしているのか」とある。「はじめに」に本書の目的が書かれている。 ともすれば敬遠されがちな原子力の基本的な知識をおさらいし、国内にどのよう…

笠井献一『科学者の卵たちに贈る言葉』を読む

笠井献一『科学者の卵たちに贈る言葉』(岩波科学ライブラリー)を読む。副題が「江上不二夫が伝えたかったこと」とあり、江上不二夫をWikipediaで検索すると、 江上 不二夫(1910年11月21日 - 1982年7月17日)は日本の生化学者。戦後日本の生化学を牽引した…

『仲間とかかわる心の進化』を読む

平田聡『仲間とかかわる心の進化』(岩波科学ライブラリー)を読む。副題が「チンパンジーの社会的知性」となっており、チンパンジーを対象に、社会的知性の発達を研究した成果を報告している。「はじめに」から、 ……社会的知性とは、仲間との暮らし、仲間と…

人間原理が語られている!

青木薫『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』(講談社現代新書)を読む。副題が「人間原理と宇宙論」、つまり人間原理を語った本だ。人間原理の主張については「まえがき」に、次のように書かれている。 宇宙がなぜこのような宇宙であるのかを理解するためには…

井ノ口馨『記憶をコントロールする』を読む

井ノ口馨『記憶をコントロールする』(岩波科学ライブラリー)を読む。副題が「分子脳科学の挑戦」。朝日新聞の書評欄で福岡伸一が推薦していた(6月30日)。福岡の書評から、 ……私たちが何かを体験すると、脳の海馬でシナプスが回路を作る。それが記憶の元…

ルイーズ・バレット『野性の知能』を読む

ルイーズ・バレット/小松淳子・訳『野性の知能』(インターシフト)を読む。副題が「裸の脳から、身体・環境とのつながりへ」といい、これが内容を表している。きわめて興味深い内容だった。だが、同時に読みづらい本でもあった。それは内容が難しいためと…

須藤靖『主役はダーク』という怪しい本

須藤靖『主役はダーク』(毎日新聞社)というちょっと怪しい本を読む。副題が「宇宙究極の謎に迫る」というもの。朝日新聞に川端裕人が書評を書いていた(6月30日)。 『主役はダーク』は破格の科学エッセイだ。最新の天文学、宇宙物理学を独特の諧謔を交え…

『動物に魂はあるのか』を読んで

金森修『動物に魂はあるのか』(中公新書)を読む。著者はフランス哲学、科学思想史が専門の人。本書のテーマは「動物霊魂論」、まずアリストテレスから始まる。アリストテレスは、静物の霊魂を3つに分類する。 1.栄養的霊魂−−植物がもつもの。栄養、滋養…

『脳はなにを見ているのか』を読んで

藤田一郎『脳はなにを見ているのか』(角川ソフィア文庫)を読んだ。最初に開いた口絵の図に見覚えがあった。調べてみると2007年に読んでいた。その年、『「見る」とはどういうことか』(化学同人)として単行本として発行されたのだった。今回文庫化されて…

『からだの中の外界 腸のふしぎ』を読んで思ったこと

上野川修一『からだの中の外界 腸のふしぎ』(ブルーバックス)を読んだ。腸がからだの中にある外界だという主張に惹かれて読んだのだが、期待は半ば外されてしまった。「からだの中の外界」という副題から、脳とは別のコントロールセンターについて詳しく語…

伊東乾『なぜ猫は鏡を見ないのか?』がおもしろい

伊東乾『なぜ猫は鏡を見ないのか?』(NHKブックス)がおもしろい。変なタイトルだが、副題は「音楽と心の進化誌」。伊東は作曲家、指揮者で東京大学作曲指揮研究室准教授でもある。猫や犬は鏡を見てそれが自分だと認識することができない、それがタイトルの…

『宇宙になぜ我々が存在するのか』を読んで

村山斉『宇宙になぜ我々が存在するのか』(講談社ブルーバックス)を読む。著者は『宇宙は何でできているのか』『宇宙は本当にひとつなのか』で刺激的な宇宙論を示してくれた。本書の副題は「最新素粒子論入門」となっている。 私たちの体も宇宙も物質ででき…

ストレスにさらされる子どもは

毎日新聞の書評でD. ベリー、サラヴィッツ著「子どもの共感力を育てる」(紀伊國屋書店)が小西聖子によって紹介されている(10月7日付け)。 この本は、共感という「あまりに人間的で優しい感情を冷徹な科学の目で眺め、共感するには何が必要か、病気や状…

大栗博司『重力とは何か』を読む

大栗博司『重力とは何か』(幻冬舎新書)を読む。朝日新聞の書評(7月1日)で、瀧井朝世が「"素人の目"で読みやすく」と書いていたから。その書評を一部再録すると、 素粒子論の研究者が重力の基本から最新の超弦理論(超ひも理論)までを解説し、宇宙の謎…

タイトルがエッチっぽい『快感回路』を読む

デイヴィッド・J・リンデン/岩坂彰・訳『快感回路』(河出書房新社)を読む。副題が「なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか」とある。何か期待して読んでしまった。「プロローグ」から、 非合法な悪習であれ、エクササイズ、瞑想的な祈り、慈善的な寄付…

宇宙〜量子力学〜時間に関する3冊

村山斉『宇宙は本当にひとつなのか』(講談社ブルーバックス)を読む。副題が「最新宇宙論入門」で、それは本当に驚くべき宇宙の姿だ。最初に「宇宙の構成」という円グラフが提示されている。星と銀河はたったの〜0.5%、ニュートリノ〜0.1−1.5%、普通の物…

「心と脳−−認知科学入門」を読む

安西祐一郎「心と脳−−認知科学入門」(岩波新書)を読む。安西は2年前まで慶應義塾の学長だった。「まえがき」で、 心のはたらきにかかわる現象を、伝統的な学問分野や文系理系医系の区分にとらわれず、「情報」の概念をもとにして理解しようとする知的営み…

新しい生命観

「生物と無生物の間」や「できそこないの男たち」で人気のある福岡伸一は講談社のPR誌「本」にもエッセイを連載しているし、東京大学出版会のPR誌「UP」にもエッセイを連載していて、どちらもとても面白い。「UP」の方は表2(表紙の裏)1ページと短いので…