2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

山崎正和『世界文明史の試み』の書評から

毎日新聞2012年1月29日の書評欄に山崎正和『世界文明史の試み−−神話と舞踏』(中央公論新社)の書評が載っていた。書評子は三浦雅士、その一節、 特筆すべきはまず思索の起点そのものを百八十度転換させたこと。いかなる思索であれ、意識、すなわち「我思う…

千駄ヶ谷の秋山画廊の遠藤利克展「空洞説―円環⇔壺」がすばらしい

千駄ヶ谷の秋山画廊で遠藤利克展「空洞説―円環⇔壺」がすばらしい(2月11日まで)。作品は直径3.7メートル、高さ1.15メートルの木彫。重量は2トン車で2回運んだらしい。全体にドーナツ状をしていて、橅、胡桃、桜、他にタールが塗られている。 画廊いっぱ…

バーンズ・コレクションの画集

バーンズ・コレクションの画集『印象派の宝庫 バーンズ・コレクション』(講談社)をamazonから買った。送料を含めて2,000円ちょっとだった。1993年に初版が出た本書の定価は12,000円となっている。ずいぶんと買い得だった。 バーンズ・コレクションというの…

黒テント公演『青べか物語』を見る

劇団黒テント第73回公演『青べか物語』を神楽坂のイワト劇場で見る。原作が山本周五郎、上演台本と演出が鄭義信、出演が黒テントの役者たちだ。 芝居は群衆劇の構成をとっている。主人公の蒸気河岸の先生役は次々と役者が変わる。手にスケッチブックを持って…

アートギャラリー環の鏑木昌弥展

東京神田のアートギャラリー環で鏑木昌弥展が開かれている(28日まで)。1階が「別働隊の日」、2階が新作ドローイング展となっている。 「別働隊の日」とは大西祥一が書いた短篇小説の標題で、それにかぶらぎまさや(鏑木昌弥)が挿絵を描いたものが1冊の…

荒川洋治の激しい詩人批判

朝日新聞2012年1月24日夕刊に「現在の詩人を痛烈批判/同業の荒川洋治、著作で」という記事が載っていた。 〈詩の世界は、状況のない状況にある。動きがほとんどない〉。現代詩作家の荒川洋治が、近著『昭和の読書』(幻戯書房)や詩誌「詩と思想」で、詩と…

BLDギャラリーの細江英公写真展

銀座2丁目のBLDギャラリーで細江英公写真展第1期「鎌鼬」が開かれている(1月29日まで)。なんと5月まで6期の細江英公展が予定されているという。第1期からそれぞれ「鎌鼬」「シモン 私風景」「おとこと女+抱擁+ルナ・ロッサ」「大野一雄+ロダン」…

篠田達美『歩く女』を読む

篠田達美『歩く女』(淡交社)を読む。副題が「篠田達美アート・エッセイ集」といい1996年に発行されたものだ。内容は雑誌『草月』の1992年から1995年に掲載されたものと、1994年のセゾン美術館で開催された「フランチェスコ・クレメンテ」展のカタログに寄…

銀座ニコンサロンのハワード・ワイツマン写真展「FACING SHIBUYA」がおもしろい

東京銀座7丁目の銀座ニコンサロンでハワード・ワイツマン写真展「FACING SHIBUYA」が開かれている(1月31日まで)。 ワイツマン(Howard Weitzman)は1967年アメリカ・ニュージャージー州生まれ。コーネル大学コミュニケーション学部卒業。現在東京在住。2…

小山守の紹介する浅川マキの『CAT NAP』

『レコード・コレクターズ』2011年8月号で小山守が「浅川マキ」と題して、再発売されたマキの紙ジャケットシリーズを紹介している。 浅川マキというと、ファースト・アルバムに代表される70年代のフォーク〜ブルース的なイメージが強いかもしれないが、80年…

新藤兼人監督の映画『墨東綺譚』を見る

新藤兼人 脚本・監督『墨東綺譚』の映画をDVDで見る。1992年制作の作品で、主演が津川雅彦と墨田ユキだった。新藤は『『墨東綺譚』を読む』(岩波現代文庫)で、こう書いていた。 荷風の浅草物と称して書いた舞台脚本は調子の低い物でした。荷風の小説は構成…

佐野眞一『昭和の終わりと黄昏ニッポン』を興味深く読んだ

佐野眞一『昭和の終わりと黄昏ニッポン』(文春文庫)を興味深く読んだ。佐野眞一の本はハズレがない。本書は昭和天皇が亡くなる前後の出来事を前半に置いて、後半は平成に入ってからの事件や出来事を紹介している。前半の「昭和が終わった日」と後半「平成…

伐り倒されたキクモモの木

東京スカイツリーの完成にあわせて北十間川の川岸の整備が進んでいる。生え放題だった灌木を整理し、遊歩道を造っている。そのことは悪くはないのだが、明治通りが北十間川を渡っている福神橋の畔に誰かが植えたらしいキクモモの木が伐られてしまっていた。 …

東京都写真美術館の「写真の飛躍」展がおもしろい

東京都写真美術館の「写真の飛躍」展がとてもおもしろかった。添野和幸、西野壮平、北野謙、佐野陽一、春木麻衣子の5人が取り上げられているが、私はとくに西野と北野がおもしろかった(1月29日まで)。 西野壮平は1982年兵庫県生まれ。2005年キャノン写真…

ギャラリー現の田中千智展を見る

東京銀座1丁目のギャラリー現で開かれている田中千智展を見る(1月21日まで)。田中は1980年兵庫県生まれ。2005年に多摩美術大学油画科を卒業している。個展は福岡で3回行ったあと、東京ではギャラリー現で今回が4回目となる。 田中の作品は海外のアート…

『『羊の歌』余聞』から加藤周一の言葉

加藤周一著・鷲津力=編『『羊の歌』余聞』(ちくま文庫)を読む。いつもの加藤周一のきらきら光る印象的な言葉の数々。 日本の散文は著しく抒情詩によって浸透されている。平安朝の物語、江戸の俳文が典型的だが、総じてその他の文章も、歌の叙情と、俳句の…

neutron tokyoで開かれている「東北画は可能か?」を見る

東京都港区南青山にある地下鉄銀座線外苑前駅に近いギャラリーneutron tokyoで開かれている「東北画は可能か?」展を見る(1月29日まで)。 東北画とは何か。今回の企画展を主催する東北芸術工科大学日本画准教授の三瀬夏之介が、本展のパンフレットに書い…

積水ハウスの新聞広告

積水ハウスの新聞広告が朝日新聞1月6日に掲載されていた。キャッチコピーが「家に帰れば、積水ハウス。」で、ヴィジュアルは小さな男の子と女の子が手をつないで歩いていく後ろ姿だ。 写真に関心があれば、これはユージン・スミスの有名な写真「楽園へのあ…

短歌に詠われた幼虫食

朝日新聞2011年12月19日の朝日歌壇に馬場あき子選で埼玉県の酒井忠正氏の短歌が選ばれていた。 薪割れば出づる真白の幼虫を焚火に焙り食ひて香し これはカミキリムシの幼虫なのだ。大きいものは小指くらいはある。酒井氏は埼玉県在住という。埼玉は海のない…

ギャラリーなつか、京橋へ移転

現代美術で著名なギャラリーなつかが移転した。なつかは1985年に銀座6丁目にオープンして以来、26年間同じ場所で営業してきた。銀座5丁目というのは相当に贅沢な空間であっただろう。 そして10日から京橋3丁目に移転して新しい場所で営業を始めた。1階の…

森岡純写真展が始まった

東京京橋のギャラリー檜plusで森岡純写真展が始まった(1月14日まで)。森岡は1949年島根県隠岐島生まれ、もう20年もギャラリー檜で個展を続けている。 会場に入って左の壁面にカラー写真を100点ほどびっしりと並べ、それに対面する右の壁には大きな白黒の…

半藤一利と新藤兼人、そして松本哉の語る永井荷風

以前、半藤一利の『荷風さんの戦後』(ちくま文庫)を紹介した。さらに松本哉の『永井荷風という生き方』(集英社新書)を読んだ。今度、新藤兼人の『『断腸亭日乗』を読む』(岩波現代文庫)を読んで、これも大変おもしろかった。新藤は『墨東綺譚』を映画…

板橋区立美術館の「池袋モンパルナス展」が良かった

板橋区立美術館で開かれている「池袋モンパルナス展」が良かった(1月9日まで)。同展のパンフレットより、 今から約80年前、現在の池袋を中心とする一帯に、アトリエ付き住宅が建設され始めました。画期的なこの物件には、画学生や若かりし日の靉光、麻生…

2割増量という贅沢

正月だから同居している猫にカリカリと呼んでいるキャットフードを多めにやった。普段のメニューは、朝カリカリを2匹に合計10グラム、昼近くにまた10グラム、夕方〜夜にかけて猫缶を2匹に1缶、そしてカリカリを65グラムと決めている。この決まりはそもそ…

冷凍うどんを推薦する

東京大学出版会のPR誌「UP」2011年12月号に須藤靖のエッセイ「注文の多い雑文 その17 宇高連絡船のUDON」が載っている。須藤の専門は宇宙論・太陽系外惑星とのこと。「UP」の読者は多いとも思えないし、須藤のエッセイを読む人はさらに少なく、これから紹介…

なぎら健壱『東京路地裏暮景色』を読む

なぎら健壱『東京路地裏暮景色』(ちくま文庫)を読む。なぎらは東京銀座生まれのフォーク歌手。酒に関するエッセイや東京下町散策などの著書が多いようだが、私は始めて読んだ。タイトルどおり東京の下町路地裏の酒場をあちこち飲み歩いてそれらを紹介して…

友人からの古い年賀状

押入を引っかき回していたら、友人からの古い年賀状が出てきた。昭和52年(1977年)のものだ。差出人の活司は古い友人だったが、もう亡くなってしまった。そのことは以前ブログに書いたことがある。この年賀状をここに書き写す。 年移り 物変われども変わら…

『短歌で読む 昭和感情史』がとても良かった

菅野匡夫『短歌で読む 昭和感情史』(平凡社新書)がとてもとても良かった。副題が「日本人は戦争をどう生きたのか」という。著者は1980年頃発行された『昭和万葉集』の編集を担当したという。その完結記念パーティーで社会学者の鶴見和子がこんな挨拶をした…

今年の初詣

1日に初詣に行った。最初は恒例の吾嬬神社から。ここは小さな神社だが、おそらく関東でも最も古い神社だと思う。そのことはブログに書いた。 ・吾嬬神社(2006年12月24日) 吾嬬神社から江東区に行くために福神橋を渡る。橋からは北十間川の向こうにスカイ…

新年のあいさつ

謹 賀 新 年 初 空 の ス カ イ ツ リ ー の 1 の ご と 2012年 元旦 Modesty Masayoshi Polo (M. M. Polo)/曽根原 正好