2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧
今年のサントリー芸術財団「サマーフェスティバル2015」ではツィンマーマンの「ある若き詩人のためのレクイエム」を聴いた。日本初演、素晴らしかった。現代音楽のコンサートではときどきこのような大当たりに出会うことがある。 「ある若き詩人のためのレク…
渡辺利夫『放哉と山頭火』(ちくま文庫)を読む。尾崎放哉と種田山頭火を併せ論じているとはなんと魅力的な仕事だろうと読みはじめた。著者は二人の事績をよく調べてていねいに書いている。子どもの頃から亡くなるまでの経歴が時代を追って記される。良い仕…
早野透『田中角栄』(中公新書)を読む。新書とはいえ、厚さ400ページを超え、物理的にも内容からも力作だ。早野は朝日新聞の政治部記者だったが、田中角栄に接してその魅力に触れ、志願して田中の選挙区である新潟支局に転勤する。田中の後援団体越山会を取…
今年も8月28日から京橋のギャラリー椿で恒例のオークションが始まる。 オークションは8月28日(金)、29日(土)、30日(日)の3日間。誰でも自由に入札できる。出品点数が500点ほど予定されている。ギャラリー椿は銀座・京橋地区でも特に大きなギャラリ…
東京京橋のギャラリーなつかで高妻留美子展「−かけらの標本箱−」が開かれている(8月29日まで)。高妻は1990年、鹿児島県生まれ。2014年に東北芸術工科大学を卒業し、現在同大学大学院に在籍中。今回が初個展となる。 高妻は陶でオブジェを作っている。同じ…
東京京橋のギャラリー川船で「夏期正札市展」が始まった(8月29日まで)。川船の正札市っていつも年末だったのになぜ夏期なのか? DM葉書にその理由が書かれている。 毎年6月に開催していた「松本展」が、会場の都合により本年は中止になりました。その代…
佐高信・早野透『丸山眞男と田中角栄』(集英社新書)を読む。丸山は先日読んだ安丸良夫の『日本現代思想論』で批判されていたが、それは後期丸山の思想に対する批判であって、丸山が戦後の日本政治思想史の巨峰であることに何ら疑いはない。ところが本書は…
安丸良夫『現代日本思想論』(岩波現代文庫)を読む。とても充実した読書だった。安丸を読むのは多分初めてだ。カバーの解説に、 民衆思想史の立場から「近代」の意味を問い続けてきた著者が、眼を現代に転じ、1970年代以降の思想状況の批判的読解に挑む。戦…
東京江東区三好の無人島プロダクションで風間サチコ版画展が開かれている(8月23日まで)。今回は夏休み企画ということで小品展だ。風間は1972年東京生まれ、1996年武蔵野美術学園版画研究科を修了している。1998年にギャラリー山口で初個展、その後、ギャ…
東京台東区谷中へ初めてのギャラリーを探しながら行ったら、ふいに岡倉天心宅跡があった。そこは小さな公園になっている。入口に東京都教育委員会が作った看板が立てられていた。 東京都指定旧跡 岡倉天心宅跡 旧前期日本美術院跡 所在地 台東区谷中五丁目7…
東京銀座のギャラリー・オカベで番留京子展−熊野便り−が開かれている(8月29日まで)。番留は富山県生まれ。1985年、創形美術学校を卒業している。1986年、ギャラリー青山で初個展。以来多くのギャラリーで個展を開いてきたが、最近はギャラリー・オカベで…
朝日新聞のコラム「ひと」欄に「7本指のピアニスト 西川悟平さん(40)」という記事が紹介されていた(8月19日)。渡世の義理を何度も欠いて、指を3本も詰められたのかと思ったら、左手は病気で指が2本しか使えないというものだった。 左手は、親指と人さし…
ジェイムズ・ヤッフェ『ママはなんでも知っている』(ハヤカワ文庫)を読む。8篇を集めた連作短篇集。ニューヨーク市警の殺人課に勤めるデイビッド刑事が、毎週金曜日妻を連れて母親ママを訪ねて夕食を共にする。そのとき、捜査中の事件を息子に話させ、夕…
『週刊朝日』の「週刊図書館」が夏休み特別企画として「ロボットと人工知能を知る」という特集を組んでいる(8月21日号)。8人の専門家が選ぶ私のベスト3として、24冊が推薦されている。中でも面白そうだと思ったのが、松尾豊が選んだ本人の書いた『人工知…
井上ひさし・作『少年口伝隊一九四五』がとても良かった。演出が栗山民也、新国立劇場演劇研修所公演の朗読劇だ。私は8月15日のマチネーを見た。朗読劇なので、舞台の上に横1列で12人の役者が並んでいる。演劇研修所第9期生たちだ。音楽は後方にギターの宮…
瀧悌三『一期は夢よ 鴨居玲』(日動出版)を読む。「はじめに」で瀧は書く。日動画廊の社長から鴨居玲を小説に書いてみたらどうかと慫慂された。引き受けたけれど小説にはなりにくい。伝記を書くには調査が不足している。結果は分からないが実像鴨居玲に迫っ…
佐藤正午『書くインタビュー1』(小学館文庫)は、インタビュアー東根ユミが聞き手になって、長期間メールのみで佐藤の小説の書き方について質問回答を続けている。その中に「件名:マンホールの蓋」という佐藤からのメールがある。 (……)コンビニからレジ…
佐藤正午『書くインタビュー1』、『書くインタビュー2』(小学館文庫)を続けて読む。変なタイトルなのは、インタビューはふつう面と向かって聞き、回答を編集して活字化しているのに、本書では聞き手は佐藤に会うことなく、メールのみでやり取りしている…
朝日新聞の読者が投稿する短歌のページ「朝日歌壇」にしばしば掲載される名前は知らずに覚えてしまう。直近(8月10日)では、岡田独甫、金忠亀、九螺ささら等に見覚えがある。もう一人名古屋市在住の諏訪兼位という人がいる。この名前なんて読むのだろう。以…
本を読んでいるときに電話がかかってきたり、来客があってチャイムが鳴ったりして読書が中断されることがある。用件を済ませて本に戻ったとき、最後に読んだ2行ほどは、確かに読んだ記憶はあるものの、その内容を理解していないことがしばしばある。このこと…
長谷川智恵子『鴨居玲 死を見つめる男』(講談社)を読む。鴨居玲展が先月まで東京ステーションギャラリーで開かれていたのに見逃してしまった。本書はこの個展に合わせて出版されたのだろう。著者は日動画廊の副社長で、鴨居とは東京日動画廊での初個展以来…
日本文藝家協会 編『待ち遠しい春』(光村出版)を読む。副題を「エッセイ’97」といって、1997年に発表されたエッセイの優れたものを集めたアンソロジーだ。 これを読もうと思ったのは、校條剛『作家という病』(講談社現代新書)に池澤夏樹の結城昌治に対す…
四方田犬彦『テロルと映画』(中公新書)を読む。四方田は最初に、「テロリスムが人間に向かって何かを訴えるときには、つねに映像メディアを媒介とし、スペクタクルの形態をとる」という。そして、 スペクタクルとは、匿名の観客を前にして演じられる〈見世…
東京新宿のケンジ・タキ・ギャラリーで塩田千春新作展が開かれている(9月26日まで、ただし8.24まで夏期休廊中)。現在塩田はヴェネチア・ビエンナーレに日本代表として出展している。 塩田千春は2007年に神奈川県民ホールの個展を見て圧倒された。5つの部…
先日読んだ校條剛『作家という病』で池澤夏樹の結城昌治に対する追悼文を知った。池澤は結城について、「一言でいえば、倫理の人である。いかなる権威も後に背負わない徒手空拳の倫理。ほとんど本能的に力なき者の側に立つ」と書いていた。それで結城昌治『…
東京京橋のギャラリイKで山根秀信展「COMPOSITION '食の風景'」が開かれている(8月8日まで)。山根は1959年山口市生まれ、1985年東京芸術専門学校卒業。1994年以降、山口市を拠点に制作、発表活動を行っている。ギャラリイKでは2011年と2012年についで今…
井上ひさし作『少年口伝隊一九四五』が新国立劇場で上演される。(8月14日夜、15日と16日の昼)。演出が栗山民也、出演は新国立劇場演劇研修所の第9期生の研修生たち。もともとこの研修生のために井上が書いた朗読劇なのだ。それで毎年研修生によって上演…
司 修『戦争と美術』(岩波新書)を読む。ちょうど23年前に発行された本で、私も出版されてすぐ読んでいるはずだ。今回再読して、当時ここまで良い本だとは理解できなかったのではないかと思った。 最初にナチスに協力してその宣伝用記録映画『意思の勝利』…
大村彦次郎『東京の文人たち』(ちくま文庫)を読む。大村は講談社の『小説現代』『群像』編集長を経て、文芸出版部長、文芸局長、取締役を務めた。本書は東京出身の文人たち100人をエピソードを中心に紹介している。文人といっても、小説家、詩歌人、随筆家…
東京日本橋堀留町のギャラリー人形町ヴィジョンズで古橋紀子展「わたしのあしもとに」が開かれている(8月1日、今日まで)。古橋は1982年東京生まれ、2002年にアメリカに渡り語学の勉強を始める。2005年に大学で美術に専念し始め、2007年ハンボルト州立大…