2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「安部公房伝」がおもしろい

安部ねり「安部公房伝」(新潮社)がおもしろかった。著者は安部公房の一人娘、医者をしているという。父親の文才は娘には伝わらなかったらしい。とにかく文章が下手なのだ。ときどき未消化な言葉が挿入されている。モダンダンスの演出をしていたメアリー・…

「日本的感性」がとてもおもしろい

佐々木健一「日本的感性」(中公新書)がとてもおもしろい。題名が硬いが、副題は「触覚とずらしの構造」、いやこれも硬い。だが内容はおもしろいのだ。 著者は美学が専門の学者だが、本書は古今の和歌を分析して日本固有の感性を探り出そうとしている。まず…

「イネの文明」を読んで

佐藤洋一郎「イネの文明」(PHP新書)を読んだ。副題が「人類はいつ稲を手にしたか」、著者は植物遺伝学者で稲の起源を研究している。本書では、従来インディカのイネとジャポニカのイネは共通の野生イネから選別されて栽培種になったと理解されていたが、著…

「ダンゴムシに心はあるのか」を読んで

森山徹「ダンゴムシに心はあるのか」(PHPサイエンス・ワールド新書)を読んだ。ダンゴムシを使ってさまざまな実験を行い、ダンゴムシにも心があるという結論を出している。著者はダンゴムシを材料にていねいで根気のいる実験を繰り返している。誠実な実験態…

「メディアと日本人」(岩波新書)を読む

橋元良明「メディアと日本人」(岩波新書)を読んだ。5月29日の朝日新聞の書評で、姜尚中が「実に読みがいのある新書である」と書いていた。ネットが普及して日本人の生活がどう変わったか変わらなかったか、著者が15年来実施している「日本人の情報行動調…

「レコード芸術」7月号が吉田秀和特集だ!

雑誌「レコード芸術」7月号が吉田秀和特集だ。ほぼ巻頭に42ページも組まれている。中心は音楽評論家白石美雪による吉田秀和への3本のインタヴュー。最近完結した吉田の「永遠の故郷」4部作を起点に音楽批評の「現場」を語り、ついで「回想の1913〜1945年…

美術評論家篠田達美の闘病記

美術評論家篠田達美に関するホームページ「みみこえ」を見つけた。ここに篠田自身が書いたと思われる闘病記「震える風景」が掲載されている。1996年に突然脳幹出血で倒れ、病院の集中治療室で2カ月間意識がなかったこと、医者は回復しないだろうと言った。…

吾妻ひでおの「地を這う魚」を読んで

吾妻ひでおの自伝マンガ「地を這う魚」(角川文庫)を読む。副題が「ひでおの青春日記」とあり、赤羽の印刷工場の工員から漫画家のアシスタントになり、やっと漫画雑誌の付録に短篇を描かせてもらえるようになるまでが描かれている。 吾妻ひでおらしくシュー…

私の好きな3人の作家たち

20年間で数万の個展を見てきた。若い作家(美術家)が貸し画廊で個展をするのを見るのが好きだ。それら若い作家のなかで強い印象を受けた3人を紹介したい。 ・吉田哲也:ブリキで小さな立体を作っていた。何年か前に亡くなってしまった。 ・谷口ナツコ:原…

キーファーの作品に添付されている植物の処理

1992年に日本で初めてアンゼルム・キーファーの個展がフジテレビ・ギャラリーで開かれた。キーファーの作品にはときどきシダや藁、ヒマワリなど植物が添付されている。美術展を紹介する日曜日朝のフジテレビの番組にこのキーファー展が取り上げられて、美術…

恥ずかしい体験

娘からのメールに「orz」の記号が書かれていた。会ったときに記号の意味を聞くと、人がひざまづいて両手を着いている姿を象(かたど)ったもので、ガックリしている気持ちを表しているという。 すぐ思い出したのが10年ほど前に鼠径部ヘルニア(脱腸)の手術…

浅川マキのCD「CAT NAP」がようやく発売された

1982年にLPで発売された浅川マキのアルバム「CAT NAP」がようやくCDで発売された。すべて近藤等則の作曲による。そしてマキの歌が少ないアルバムなのだ。「マシン」のように歌わないで台詞だけという曲もある。トランペット:近藤等則、サックス・ピアノ:本…

なびす画廊の「田淵安一遺作展-III-」が始まっている

銀座1丁目のなびす画廊で「田淵安一 遺作展-III-」が始まっている(6月25日まで)。2月と4月に続いて3回目だ。この後続けて4回目が開かれ、それで当座遺作展は終了する。今回は1985年、2004年、2005年の作品が展示されている。 1985年 2004年 2005年 …

司馬遼太郎の「モンゴル紀行」を読みなおす

朝日新聞の特派員メモが内モンゴル自治区の林望の「通わぬ情 切ない笑顔」だった(6月7日)。 政府への抗議デモが広がった中国内モンゴル自治区で、切ない笑顔に会った。当局が取材に神経をとがらせる中で会ってくれたので、名前も仕事も書けないのがもど…

ギャラリー檜Bで木下以知夫展彫刻展が開かれている

京橋のギャラリー檜Bで木下以知夫展彫刻展が開かれている(6月18日まで)。木下は1949年飯田市生まれ、現在は長野県豊丘村に在住している。ここは私が生まれ育った喬木村の隣村になる。ギャラリー檜では2006年、08年、10年と4回個展をしている。 今回のDM…

昔から節電を実行している銀座のクラブ

原発事故の影響で節電が求められている。私の勤める職場でも天井の蛍光灯の3分の2が外された。その節電をむかしから実行しているのが銀座のクラブだった。 私は前職でときどきクライアントを銀座のクラブで接待していた。まあ、銀座のクラブといっても2流…

ペーター佐藤というイラストレーターがいた

むかしペーター佐藤というイラストレーターがいた。1994年に48歳で亡くなった。ミスタードーナツのポスターなどを描いていて人気があった。Wikipediaによると、 (アメリカからの帰国以降)1970年代前半にエアブラシのテクニックで一世を風靡し、国内はもち…

銀座の猫

土日などの歩行者天国の銀座に猫を連れてきて、道路標示の上に乗せて銀座を散歩している人たちに見せているのがいる。なぜか猫たちも慣れていておとなしく座っている。初めて見たのが2009年の11月だった。まだ子猫と言っていいくらい小さかった。昨年もこの…

Shonandai My Galleryの高橋理和展「-Timeless-」

六本木のShonandai My Galleryで高橋理和展「-Timeless-」が始まった(6月18日まで)。高橋は1953年京都府舞鶴市生まれ、1972〜73年にスペインマドリッドプラド美術館において模写の勉強をしている。1977年東京造形大学美術学部油絵科卒業。個展は銀座のギ…

ちくま新書「セックスメディア30年史」を読む

荻上チキ「セックスメディア30年史」(ちくま新書)を読む。驚いたのはこれを書いた荻上がまだ30歳という若さだということ。それがよく調べられて書かれているのだ。私が知らなかったことが多々あったほど。小さな驚きは筑摩書房から発行されたこと、さすが…

BLDギャラリーの瀬戸正人展「binran」がおもしろい

銀座2丁目のBLDギャラリーの瀬戸正人展がおもしろい。瀬戸は写真家で、何度も台湾のビンロウ売り娘の写真展を開いている。ビンロウの実は弱い覚醒作用があるので長距離トラックの運転手が噛みながら走るのだという。台湾では長距離トラックの運転手向けにセ…

空山基 原画展展が始まった

銀座2丁目のスパンアートギャラリーで、セクシーロボットやアイボのデザインで有名なイラストレーター空山基 原画展が始まった(6月18日まで)。 空山はセクシーロボットやちょっとSMっぽいヌードのイラスト、それにソニーのロボット「アイボ」のデザイン…

ギャラリーなつかb.Pのおもしろい山田浩之展「日本産つち大根」

銀座5丁目のギャラリーなつかb.Pの山田浩之展「日本産つち大根」がおもしろい(6月11日まで)。山田は1970年兵庫県生まれ、1992年に岡山大学を卒業し、のち信楽焼窯元に就職し、1996年に独立する。即ち信楽焼の作家なのだ。つまり、この「つち大根」の作品…

森岡純写真展を見て

銀座3丁目のギャラリー檜Aで森岡純写真展が始まった(6月11日まで)。森岡純は1949年島根県隠岐島生まれ。20年ほど前から銀座のギャラリー檜で毎年6月に個展を行っている。 今回は大きな4点の写真を展示している。すべてモノクロだ。モルタルの壁の横に…

吉祥寺のArt Center Ongoingの高橋大輔展

吉祥寺のArt Center Ongoingで齋藤雄介/高橋大輔展「人魚とビスケット」が開かれている(6月12日まで)。高橋は1980年埼玉県生まれ、2005年に東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻を卒業している。大学在学中に学内の展示室で2度個展をした後、いずれも…

薔薇の小品盆栽

薔薇の小品盆栽が作りたくて何度も挑戦した。不忍池近くにある盆栽センターでテリハノイバラの苗を購入したり、銀座の「野の花」だったかでノイバラの苗を取り寄せてもらったりもした。どれもうまくいかなかった。お袋が入院していた介護施設へ見舞いに行く…

「不実な美女か 貞淑な醜女(ブス)か」を読んで

米原万理のエッセイの第1作「不実な美女か 貞淑な醜女か」(新潮文庫)を読んだ。読書の途中、「環境問題に関するフォーラムを聴講していて、ロシア人の報告者の発言とロシア人の日本語通訳者によるその訳の、あまりの隔たりに感心したことがある。」として…

アイリッシュ「幻の女」を読んで

ウイリアム・アイリッシュ「幻の女」(ハヤカワ文庫)を読む。本書は「ハヤカワ・ミステリ総解説目録1953年−2003年」(早川書房)の読者アンケートの1位に選ばれている。原書は1942年、戦争中に発行された作品で、日本では1950年に翻訳が発行された。冒頭の…

「ニッポンの書評」は書評を書いているブロガー必見の書

豊崎由美「ニッポンの書評」(光文社新書)がおもしろかった(豊崎の崎は山編に立に可)。書評家として20年以上のキャリアがある豊崎が書評について書いている。ブログでの書評全盛時代とも思える現代に誠に時好を得た出版だ。 あまり雑誌を読まない私は豊崎…

ギャラリー58の矢沢自明展が興味深い

銀座4丁目のギャラリー58で矢沢自明展が開かれている(6月4日まで)。これがとても興味深い。矢沢は1958年福岡県生まれ。1990年から福岡のギャラリーとわーるとアートスペース貘、久留米の東判画廊で10回以上個展を開いている。東京では1996年になびす画…