SF

スタニスワフ・レム『ソラリス』を読む

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スタニスワフ・レム『ソラリス』(ハヤカワ文庫)を読む。沼野充義による新訳だ。旧訳もハヤカワ文庫だったが、飯田規和はロシア語からの重訳だった。『ソラリスの陽のもとに』という題名で1965年に訳出された。私も1970年代に読み、強烈な印象を与えられた…

スタニスワフ・レム『短篇ベスト10』を読む

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スタニスワフ・レム『短篇ベスト10』(国書刊行会)を読む。「スタニスワフ・レム コレクション」全6巻のうちの1冊。10篇の短篇が載っている。以前、佐倉統が朝日新聞に書評を書いていた(2015年7月5日)。 スタニスワフ・レムは、いろいろな顔をもつ作家だ…

川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』を読む

川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』(講談社)を読んだ。14篇の連作短篇で綴るSF仕立ての物語。川上は昔読んだ『センセイの鞄』がとても良かった。さて、本書の時代はいつとは記されていない。最初の短篇の「私」は現在までに2回結婚している。夫は4回…

カルヴィーノ『レ・コスミコミケ』を読む

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イタロ・カルヴィーノ『レ・コスミコミケ』(ハヤカワSF文庫)を読む。カルヴィーノはSFも書くが、むしろ純文学作家だ。イタリアで純文学という言い方もおかしいが、前衛的な奇妙な小説を書いている。その『冬の夜ひとりの旅人が』は以前このブログでも紹介…

ブルガーコフ『犬の心臓・運命の卵』を読む

、 ブルガーコフ『犬の心臓・運命の卵』(新潮文庫)を読む。「Star Classics―名作新訳コレクション―」の1冊。このシリーズではグレアム・グリーン『情事の終り』も良かった。 ブルガーコフはソ連の作家だが長くソ連内では発禁だったという。ソ連の民主化ペ…

H.G.ウェルズ『宇宙戦争』を初めて読む

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H.G.ウェルズ『宇宙戦争』(ハヤカワ文庫)を読む。SFの古典中の古典作品だが、今回初めて読んだ。オーソン・ウェルズがラジオ・ドラマ化して、アメリカ社会をパニックに陥れた「火星人襲来」の原作でもある。宇宙人が地球に攻め込んで来るという侵略ものの…

グレッグ・イーガン『TAP』を読む

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グレッグ・イーガン『TAP』(河出文庫)を読む。編訳者の山岸真があとがきで書いている。 ……〈SFマガジン〉創刊700号記念のオールタイム・ベスト投票(2014年7月号発表)では、海外作家部門で第1位、海外短篇部門で「しあわせの理由」が第2位になったのをは…

福島正実『未踏の時代』を読む

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福島正実『未踏の時代』(ハヤカワ文庫)を読む。副題が「日本SFを築いた男の回想録」とある。早川書房から刊行された雑誌『S-Fマガジン』を企画し初代編集長を務めた福島自身の回想録だ。 福島は明治大学文学部を中退し、早川書房に入社する。早川書房は195…

ラファティ『地球礁』を読む

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R. A. ラファティ『地球礁』(河出文庫)を読む。奇妙なSFだ。以前も『つぎの岩につづく』(ハヤカワSF文庫)を読んだことがあった。『九百人のお祖母さん』(ハヤカワSF文庫)も持っていたが、これは読んだ記憶がない。書棚にもないので、読まないまま手放…

テッド・チャン「理解」を読み直す

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『週刊朝日』の「週刊図書館」が夏休み特別企画として「ロボットと人工知能を知る」という特集を組んでいる(8月21日号)。8人の専門家が選ぶ私のベスト3として、24冊が推薦されている。中でも面白そうだと思ったのが、松尾豊が選んだ本人の書いた『人工知…

スタニスワフ・レム『泰平ヨンの未来学会議』を読む

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スタニスワフ・レム『泰平ヨンの未来学会議』(ハヤカワ文庫)を読む。タイトルの横に小さく〔改訳版〕とある。これは以前集英社から深見弾の訳で出ていた単行本に、弟子の大野典宏が手を入れたもの。あとがきによると、イスラエルのアリ・フォルマン監督に…

SF小説『火星の人』を読む

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アンディ・ウィアーのSF小説『火星の人』(ハヤカワ文庫)を読む。古い友人のS君が面白いからと貸してくれた。彼は高校生の頃からのSFファンで、たくさんのSF小説を読みこなしていて、その推薦なら外れがない。 本書は火星に降り立った6人の探査隊がわずか…

ハインライン『時の門』を読む

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先月、広瀬正『マイナス・ゼロ』を読んだとき、解説にタイムマシン小説ならハインラインの『時の門』だとあった。それで、ハインライン『時の門――ハインライン傑作集4』(ハヤカワ文庫SF)を読んだ。短篇集で、「時の門」ほか7篇が入っている。 「時の門」…

広瀬正のタイムマシン小説『マイナス・ゼロ』を読む

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誰かが広瀬正のSF小説『マイナス・ゼロ』をタイムマシンを描いたものとして絶賛していたので読んでみた。文庫本で500ページを超えている大作だ。裏表紙の惹句に「早世の天才が遺したタイムトラベル小説の金字塔」とある。結構面白く読むことができた。よくで…

カード『無伴奏ソナタ』を読む

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オースン・スコット・カード/金子浩・金子司・山田和子『無伴奏ソナタ 新訳版』(ハヤカワ文庫SF)を読む。1981年にアメリカで発行された新しいSFの短篇集。成井豊が解説で絶賛している。 (……)1985年。大学を卒業して、高校教師になって2年目、僕はハヤ…

フィリップ・K・ディック『時は乱れて』を読む

SF

フィリップ・K・ディック『時は乱れて』(ハヤカワ文庫SF)を読む。本書は30年以上前にサンリオSF文庫として刊行されて、その後サンリオが同文庫を廃刊にして本書も絶版となっていた。これは同じ訳者による改訳決定版とのこと。 ディックは本書を2週間で書…

お宝:1967年版のスタニスワフ・レム『泰平ヨンの航星日記』

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1970年に翻訳発行された偉大なポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの『泰平ヨンの航星日記』(ハヤカワ・SF・シリーズ)である。表紙を見るとスタニスラフ・レムとなっている。昔はスタニス「ラ」フと思われていたのだ。訳者は袋一平、明治30年生まれのロ…

スタニスワフ・レムと筒井俊隆の共通性

SF

以前、このブログでスタニスワフ・レムと筒井康隆の弟筒井俊隆の関係について考えたことがあった。筒井俊隆はもう50年以上も前に兄と一緒に同人誌『NULL』にSFを発表していた。1961年に発表した「消失」という短篇は、その後『SFマガジン』1961年2月号に転…

大森望「21世紀SF1000』の推薦するSFは(その2:2005-2010年)

SF

大森望『21世紀SF1000』(ハヤカワ文庫)は2001年から2010年までの10年間に日本で発行されたSFを取り上げて、『本の雑誌』に時評として連載したもの。 本書が選んだ2005-2010年の満点★★★★★の作品を拾ってみた。 ・ 2005年の★★★★★ ●グレッグ・イーガン『ディ…

大森望『21世紀SF1000』の推薦するSFは(その1:2001-2004年)

SF

大森望『21世紀SF1000』(ハヤカワ文庫)は2001年から2010年までの10年間に日本で発行されたSFを取り上げて、『本の雑誌』に時評として連載したもの。「序」に「2001年から2010年まで、21世紀の最初の10年間に出たSF約千冊を刊行順にざっくり紹介したべんり…

大森望『21世紀SF1000』のスタニスワフ・レム評

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大森望『21世紀SF1000』(ハヤカワ文庫)は2001年から2010年までの10年間に日本で発行されたSFを取り上げて、『本の雑誌』に時評として連載したもの。「序」に「2001年から2010年まで、21世紀の最初の10年間に出たSF約千冊を刊行順にざっくり紹介したべんり…

S. レムの影響

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ビルの窓ぎわで作業をしている時、窓の外を何か大きなものが動いているのに気付いた、その大きな機械はゆっくりと下へ移動していった。無人で動いている窓掃除の機械だった。だが、それは映画『未知との遭遇』を思い出させた。巨大な宇宙船が地球にやってき…

読者投票1位のSF「星を継ぐもの」を読んで

SF

2009年に「創元SF文庫を代表する1冊は何か?」という読者アンケートで1位を獲得したというジェイムズ・P・ホーガン「星を継ぐもの」(創元SF文庫)を読む。読み始めてすぐのシーン、月面の岩山を倒れそうになりながら歩く男の姿をかすかに記憶している気が…

レイ・ブラッドベリのSF「火星年代記」を読んで

SF

今月、レイ・ブラッドベリ「火星年代記〔新版〕」がハヤカワ文庫から発行されてそれを読んだ。〔新版〕と表示されているのは、巻末の解説によると、1997年に原著を米国エイヴォン社から発行し直した際、 旧版では「1999年1月 ロケットの夏」とあった年代が…

日本の新しいSF「虐殺器官」への評価

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ハヤカワ文庫から2月に発行された伊藤計劃「虐殺器官」が6月でもう11刷を重ねている。本書が単行本で発行されたのが2007年、これが伊藤計劃の処女長篇であり、しかし作家はその後長篇を2篇残して2009年に35歳で亡くなってしまう。巻末の大森望の「解説」…

ハインライン「悪徳なんかこわくない」はTSの世界だ

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悪徳なんかこわくない 上 (ハヤカワ文庫 SF ハ 1-6)作者: ロバート A.ハインライン,矢野徹出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1977/09メディア: 文庫 クリック: 6回この商品を含むブログ (13件) を見る悪徳なんかこわくない 下 (ハヤカワ文庫 SF ハ 1-7)作者:…

スタニスワフ・レムが参照したレイ・ブラッドベリ

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スタニスワフ・レム「ソラリス」は、惑星ソラリスの知性が、調査に訪れた人間の無意識を探って、隠されていた記憶から恋人や赤ん坊のリアルな像をを作り出すSFだ。原作は1961年に発行された。 レイ・ブラッドベリ「火星年代記」(ハヤカワ文庫)の原作は1946…

スタニスワフ・レム「宇宙飛行士ピルクス物語」

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スタニスワフ・レム「宇宙飛行士ピルクス物語」(ハヤカワ文庫)上下巻を読む。28年前に単行本で発売されたものの初文庫化。一応SF小説だが、もっと深い哲学的な小説なのだ。2006年に84歳で亡くなってしまったが、ノーベル文学賞はレムにこそ与えるべきだっ…

「マトリックス」のオリジナルは?

SF

「マトリックス」や「攻殻機動隊」「ブレードランナー」のアイデアである「脳だけの存在になった人間とコンピュータを結んでバーチャルな体験を実人生だと思わせているというストーリー」はスタニスワフ・レムや筒井俊隆がオリジナルだと以前書いた(id:mmpo…

スタニスワフ・レム「大失敗」書評

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昨年亡くなったポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの最後の長編「大失敗」が翻訳出版されたのは今年の1月末。日本経済新聞に沼野充義氏の書評が載ったのが3月11日だった。朝日新聞には4月1日に山下範久氏が書評を書いた。 まず沼野充義氏の書評。 ………