SF

AIの支配する世界

宇宙論・太陽系外惑星の研究者須藤靖が「門前のAI習わぬ経を読む」でAIの支配する世界について書いている(『UP』2023年6月号)。 すでにChatGPTを用いた無料英会話家庭教師のアプリが実現しているらしい。英会話に限らず、外国語学習には福音だ(注2)。…

スタニスワフ・レムの凄さ!

スタニスワフ・レム『火星からの来訪者』(国書刊行会)について、若島正が毎日新聞に紹介している((2023年5月13日)。本書の副題が「知られざるレム初期作品集」というもので、「レム・コレクション」の第2期の1冊だ、その書評から、 レムの実質的なデ…

ケン・リュウ『紙の動物園』を読む

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ケン・リュウ『紙の動物園』(ハヤカワ文庫)を読む。近頃とても評判の良い中国系のSF作家の短篇集。第1巻が本書で第2巻が『もののあはれ』、本書はファンタジイ篇、『もののあはれ』はSF篇とのこと。 「紙の動物園」はお母さんが折ってくれた折り紙の動物た…

スタニスワフ・レム『地球の平和』を読む

SF

スタニスワフ・レム『地球の平和』(国書刊行会)を読む。レム最後から2番目の長篇SF小説。お馴染み泰平ヨンが主人公で饒舌に語り活躍する。出版社のホームページから、その内容紹介。 自動機械の自立性向上に特化された近未来の軍事的進歩は、効果的かつ高…

スタニスワフ・レム『地球の平和』新発売!

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スタニスワフ・レム『地球の平和』(国書刊行会)が発売された。スタニスワフ・レム・コレクション第2期第2回配本。出版社によるその内容紹介、 自動機械の自立性向上に特化された近未来の軍事的進歩は、効果的かつ高価になり、その状況を解決する方法とし…

ボリス・ランコシュ監督作品『ソラリスの著者』を見る

ボリス・ランコシュ監督作品の映画『ソラリスの著者』を東京都写真美術館で見る。『ソラリス』の著者とはポーランドのSF作家スタニスワフ・レムのこと。これはレムを巡るドキュメンタリ・フォルムだ。今年がスタニスワフ・レム生誕100周年記念になる。 映画…

川上弘美の選んだSF短篇

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毎日新聞の「なつかしい一冊」に川上弘美が数冊のSF短篇を選んでいる(2021年10月23日付)。 ……なつかしい本は何冊もあるが、短篇が好きなので、1冊の本というよりも、数冊の中の短篇をそれぞれ思う。小説を書く今の自分の中に、それらの短篇はすっかりしみ…

スタニスワフ・レム『完全な真空』を読む

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スタニスワフ・レム『完全な真空』(河出文庫)を読む。今日9月12日はスタニスワフ・レムの誕生日、1921年生まれだから生誕100年になる。 本書は奇妙な短篇集で、すべて架空の本の書評集という体裁だ。350ページに16篇が収録されている。書評としても短くは…

スペースデブリ(宇宙ゴミ)回収業を描くスタニスワフ・レム

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ニューズウィークが中国の衛星が3月に軌道上で突然分解した理由がわかったと報じている。 https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/08/post-96988.php 2019年9月25日に酒泉衛星発射センターから打ち上げられ、高度760〜787キロの軌道を周回していた…

アイザック・アシモフ『ファウンデーション』を読む

SF

アイザック・アシモフ『ファウンデーション』(ハヤカワ文庫)を読む。「銀が帝国興亡史」シリーズの1冊目、文庫で7巻全11冊の膨大なシリーズだ。壮大な宇宙叙事詩とある。文庫の巻末の宣伝文を7巻分つなげて書けば、 第1銀河帝国の滅亡を予測した天才科学者…

スタニスワフ・レム『ソラリス』を読む

SF

スタニスワフ・レム『ソラリス』(ハヤカワ文庫)を読む。沼野充義による新訳だ。旧訳もハヤカワ文庫だったが、飯田規和はロシア語からの重訳だった。『ソラリスの陽のもとに』という題名で1965年に訳出された。私も1970年代に読み、強烈な印象を与えられた…

スタニスワフ・レム『短篇ベスト10』を読む

SF

スタニスワフ・レム『短篇ベスト10』(国書刊行会)を読む。「スタニスワフ・レム コレクション」全6巻のうちの1冊。10篇の短篇が載っている。以前、佐倉統が朝日新聞に書評を書いていた(2015年7月5日)。 スタニスワフ・レムは、いろいろな顔をもつ作家だ…

川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』を読む

川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』(講談社)を読んだ。14篇の連作短篇で綴るSF仕立ての物語。川上は昔読んだ『センセイの鞄』がとても良かった。さて、本書の時代はいつとは記されていない。最初の短篇の「私」は現在までに2回結婚している。夫は4回…

カルヴィーノ『レ・コスミコミケ』を読む

SF

イタロ・カルヴィーノ『レ・コスミコミケ』(ハヤカワSF文庫)を読む。カルヴィーノはSFも書くが、むしろ純文学作家だ。イタリアで純文学という言い方もおかしいが、前衛的な奇妙な小説を書いている。その『冬の夜ひとりの旅人が』は以前このブログでも紹介…

ブルガーコフ『犬の心臓・運命の卵』を読む

、 ブルガーコフ『犬の心臓・運命の卵』(新潮文庫)を読む。「Star Classics―名作新訳コレクション―」の1冊。このシリーズではグレアム・グリーン『情事の終り』も良かった。 ブルガーコフはソ連の作家だが長くソ連内では発禁だったという。ソ連の民主化ペ…

H.G.ウェルズ『宇宙戦争』を初めて読む

SF

H.G.ウェルズ『宇宙戦争』(ハヤカワ文庫)を読む。SFの古典中の古典作品だが、今回初めて読んだ。オーソン・ウェルズがラジオ・ドラマ化して、アメリカ社会をパニックに陥れた「火星人襲来」の原作でもある。宇宙人が地球に攻め込んで来るという侵略ものの…

グレッグ・イーガン『TAP』を読む

SF

グレッグ・イーガン『TAP』(河出文庫)を読む。編訳者の山岸真があとがきで書いている。 ……〈SFマガジン〉創刊700号記念のオールタイム・ベスト投票(2014年7月号発表)では、海外作家部門で第1位、海外短篇部門で「しあわせの理由」が第2位になったのをは…

福島正実『未踏の時代』を読む

SF

福島正実『未踏の時代』(ハヤカワ文庫)を読む。副題が「日本SFを築いた男の回想録」とある。早川書房から刊行された雑誌『S-Fマガジン』を企画し初代編集長を務めた福島自身の回想録だ。 福島は明治大学文学部を中退し、早川書房に入社する。早川書房は195…

ラファティ『地球礁』を読む

SF

R. A. ラファティ『地球礁』(河出文庫)を読む。奇妙なSFだ。以前も『つぎの岩につづく』(ハヤカワSF文庫)を読んだことがあった。『九百人のお祖母さん』(ハヤカワSF文庫)も持っていたが、これは読んだ記憶がない。書棚にもないので、読まないまま手放…

テッド・チャン「理解」を読み直す

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『週刊朝日』の「週刊図書館」が夏休み特別企画として「ロボットと人工知能を知る」という特集を組んでいる(8月21日号)。8人の専門家が選ぶ私のベスト3として、24冊が推薦されている。中でも面白そうだと思ったのが、松尾豊が選んだ本人の書いた『人工知…

スタニスワフ・レム『泰平ヨンの未来学会議』を読む

SF

スタニスワフ・レム『泰平ヨンの未来学会議』(ハヤカワ文庫)を読む。タイトルの横に小さく〔改訳版〕とある。これは以前集英社から深見弾の訳で出ていた単行本に、弟子の大野典宏が手を入れたもの。あとがきによると、イスラエルのアリ・フォルマン監督に…

SF小説『火星の人』を読む

SF

アンディ・ウィアーのSF小説『火星の人』(ハヤカワ文庫)を読む。古い友人のS君が面白いからと貸してくれた。彼は高校生の頃からのSFファンで、たくさんのSF小説を読みこなしていて、その推薦なら外れがない。 本書は火星に降り立った6人の探査隊がわずか…

ハインライン『時の門』を読む

SF

先月、広瀬正『マイナス・ゼロ』を読んだとき、解説にタイムマシン小説ならハインラインの『時の門』だとあった。それで、ハインライン『時の門――ハインライン傑作集4』(ハヤカワ文庫SF)を読んだ。短篇集で、「時の門」ほか7篇が入っている。 「時の門」…

広瀬正のタイムマシン小説『マイナス・ゼロ』を読む

SF

誰かが広瀬正のSF小説『マイナス・ゼロ』をタイムマシンを描いたものとして絶賛していたので読んでみた。文庫本で500ページを超えている大作だ。裏表紙の惹句に「早世の天才が遺したタイムトラベル小説の金字塔」とある。結構面白く読むことができた。よくで…

カード『無伴奏ソナタ』を読む

SF

オースン・スコット・カード/金子浩・金子司・山田和子『無伴奏ソナタ 新訳版』(ハヤカワ文庫SF)を読む。1981年にアメリカで発行された新しいSFの短篇集。成井豊が解説で絶賛している。 (……)1985年。大学を卒業して、高校教師になって2年目、僕はハヤ…

フィリップ・K・ディック『時は乱れて』を読む

SF

フィリップ・K・ディック『時は乱れて』(ハヤカワ文庫SF)を読む。本書は30年以上前にサンリオSF文庫として刊行されて、その後サンリオが同文庫を廃刊にして本書も絶版となっていた。これは同じ訳者による改訳決定版とのこと。 ディックは本書を2週間で書…

お宝:1967年版のスタニスワフ・レム『泰平ヨンの航星日記』

SF

1970年に翻訳発行された偉大なポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの『泰平ヨンの航星日記』(ハヤカワ・SF・シリーズ)である。表紙を見るとスタニスラフ・レムとなっている。昔はスタニス「ラ」フと思われていたのだ。訳者は袋一平、明治30年生まれのロ…

スタニスワフ・レムと筒井俊隆の共通性

SF

以前、このブログでスタニスワフ・レムと筒井康隆の弟筒井俊隆の関係について考えたことがあった。筒井俊隆はもう50年以上も前に兄と一緒に同人誌『NULL』にSFを発表していた。1961年に発表した「消失」という短篇は、その後『SFマガジン』1961年2月号に転…

大森望「21世紀SF1000』の推薦するSFは(その2:2005-2010年)

SF

大森望『21世紀SF1000』(ハヤカワ文庫)は2001年から2010年までの10年間に日本で発行されたSFを取り上げて、『本の雑誌』に時評として連載したもの。 本書が選んだ2005-2010年の満点★★★★★の作品を拾ってみた。 ・ 2005年の★★★★★ ●グレッグ・イーガン『ディ…

大森望『21世紀SF1000』の推薦するSFは(その1:2001-2004年)

SF

大森望『21世紀SF1000』(ハヤカワ文庫)は2001年から2010年までの10年間に日本で発行されたSFを取り上げて、『本の雑誌』に時評として連載したもの。「序」に「2001年から2010年まで、21世紀の最初の10年間に出たSF約千冊を刊行順にざっくり紹介したべんり…