2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

東電OL殺人事件のこと

東電OL殺人事件はネパール人容疑者ゴビンダ・プラサド・マイナリの無期懲役が確定して裁判は終わった。しかし最近、新しい証拠が現れて、再審要求が出されるようだ。 これに関しては佐野眞一「東電OL殺人事件」(新潮文庫)を読んだかぎりではゴビンダさんは…

「波」500号記念号、表紙の書

新潮社のPR誌「波」がこの8月号で500号になった。1967年1月に創刊して、1968年春季号から表紙に作家の書を掲載するようにした。第1回が川端康成だった。川端は「風雨」と書いている。見事な書だ。以来、井伏鱒二、稲垣足穂、内田百間、石川達三、開高健、…

ユネスコの記憶遺産に登録された山本作兵衛の炭坑画

山本作兵衛の炭坑画がユネスコの記憶遺産に登録された。そのことが7月28日のNHKテレビ「クローズアップ現代」で取り上げられた。山本は50年以上の炭坑夫の体験を60歳を過ぎてから記憶をたどって描き始めた。素人画家の絵だが、実際に体験したリアリティが見…

「新、アーティスト展」のオオタアリサ

東京日本橋のGALERIE SHO CONTEMPORARY ART(ギャラリー・ショー)で「新、アーティスト展」が始まった(8月27日まで)。4人の作家が取り上げられている。増田直人、下條沙恵子、オオタアリサ、Lee DONGIだ。 増田直人は1965年生まれ、国画会会員で愛知県…

ギャラリー現の伊藤純代展がいい

「新世代への視点2011」が始まった。ギャラリー現で取り上げたのは伊藤純代でとても良い。この現での個展は3回目になる。伊藤は1982年長野県生まれ、2007年に武蔵野美術大学大学院彫刻コースを終了している。 今年東京都現代美術館で展示された「トーキョー…

画廊からの発言「新世代への視点2011」が始まった!

画廊からの発言「新世代への視点2011」が始まった(8月6日まで)。銀座、京橋の現代美術を展示している11画廊が共同開催しているもので、もう12回目になるという。各画廊が推薦する40歳以下の新鋭作家の個展を開催しているもので、見応えのある企画なのだ…

「江戸バレ句 戀の色直し」という川柳の解説書

渡辺信一郎「江戸バレ句 戀の色直し」(集英社新書)を読む。 30年以上前に読んだ古い川柳で、大意は憶えているが正確な言葉を忘れてしまったものがあり、時々関連書を読んで探している。しかし本書にもそれは見つからなかった。 バレ句とは艶笑句のことで、…

金木正子の猫たち

東京新宿区信濃町の佐藤美術館で「ShinPA!!!!!東京展」が開かれている(7月24日まで)。タイトルの下に「東京藝術大学デザイン科描画系」とあるが、中島千波研究室の門下生のグループ展という性格らしい。描画系というだけあって、すべて具象画だ。中島の門…

辛酸なめ子の「女子校育ち」を読んで

筑摩書房のPR誌「ちくま」4月号に前川直哉のエッセイ「辛酸なめ子さん、女子校への愛をぶちまける」が掲載されていて、面白そうに思われた。 内容も女子校出身者へのアンケート、学校説明会レポート、文化祭や同窓会への潜入記、現役女子校生による座談会や…

雑誌「ぴあ」終刊

7月21日に雑誌「ぴあ」の最終号が発売された。1972年7月に「月刊ぴあ」8月号が創刊されてから39年の歴史だった。この最終号には付録として創刊号の復刻版が付いている。創刊号は表紙ともたったの28ページだった。定価100円。最終号は300ページ近くて税込…

「わたしの開高健」を読んで

細川布久子「わたしの開高健」(創美社/集英社)を読んだ。毎日新聞2011年7月10日の書評で紹介された。 学生時代に小説『夏の闇』を読み、開高文学の虜となった著者は、雑誌『面白半分』のスタッフとして開高と知り合う。以来、担当編集者、私設秘書として…

高血圧にトマトジュースが効く

高血圧にトマトジュースが効果があると何かで読んだ。7年ほど前、高血圧と診断された。下が90前後、上が130〜150ほどあった。医者から酒をやめるか血圧降下剤を飲むか選ぶよう言われた。迷わず酒と薬の組み合わせを選んだ。以来薬を欠かさない生活だ。 最近…

編集プロダクションの存在

吉田秀和の「永遠の故郷」シリーズが、2008年2月発行の「夜」から始まって「薄明」「真昼」と続き、今年1月発行の「夕映」で全4冊が完成した。歌曲に焦点を絞って著者の半生に絡めて語っている。雑誌「すばる」に連載したものだ。これらのエッセイを読み…

今野敏「半夏生」を読む

今野敏「半夏生」(ハルキ文庫)を読んだ。副題が「東京湾臨海署安積班」とあり、臨海署刑事課強行犯係長安積剛志を主人公とする警察小説だ。先日二十四節気の「半夏生」がカラスビシャクの漢名であることを知って、ネットで調べていたら、今野敏に同名の小…

東京国立近代美術館の常設展

竹橋の東京国立近代美術館にパウル・クレー展を見に行った。会場は土曜日のせいかけっこう混んでいた。作品の点数は多かったが、展覧会の副題が「おわらないアトリエ」となっていて、制作の過程を重視したもので、ドローイングなど小品が多かった。展覧会の…

原武史「滝山コミューン1974」を読む

原武史「滝山コミューン一九七四」(講談社文庫)が面白かった。原は1962年東京都生まれの日本政治思想史学者。日本住宅公団が東久留米市に建てた巨大団地である滝山団地に両親とともに引越し、団地のなかにできた第七小学校へ入学する。そして滝山コミュー…

山本弘30回目の祥月命日

今日2011年7月15日は、画家山本弘の30回目の祥月命日だ。弘さんは1930年6月15日に生まれ、1981年7月15日に51歳で亡くなった。この誕生日は奇しくも平山郁夫と全く同じ日だった。日本の画壇の頂点を極めた画家と無名のまま亡くなった画家が同じ日に生まれ…

「ミステリーの書き方」を読んで

日本推理作家協会 編著「ミステリーの書き方」(幻冬舎)を読む。現役のミステリー作家44人の具体的なアドバイス集だ。まえがきで、東野圭吾が「本書は日本推理作家協会に所属するプロの作家たちが、独自のノウハウを開陳したものです」と書いている。全体は…

矢口敦子の「あれから」を読んで

6月23日付け朝日新聞の連載コラム「東京物語散歩」はJR中央線阿佐ヶ谷駅だった。このコラムは東京の駅を取り上げて、その駅がある街を舞台にしている小説を紹介している。今回は阿佐ヶ谷駅を取り上げて、矢口敦子の小説「あれから」(玄冬舎)が紹介されて…

半夏生(はんげしょう)

長年カレンダーの制作に携わってきたので、いまでも祝日は全部暗記しているし、二十四節季も身近なもののつもりでいた。そして7月2日が半夏生だった。その半夏生の半夏が植物のカラスビシャクのことで、半夏生はカラスビシャクが生ずること、この場合は花…

名古屋覚の「ジパング展」批判

「月刊ギャラリー」7月号に美術評論家名古屋覚が6月号の岡本太郎批判に続いて「ジパング展」を酷評している。題して「漫画の国の国粋主義展」。ジパング展は日本橋高島屋で6月に31人の若手美術家を集めて開かれた。名古屋覚の厳しい寸評。 天明屋尚=通俗…

新宿2丁目を少し歩いた

土曜日恒例の画廊回りの最後に新宿2丁目にあるギャラリーポルトリブレへ行った。展示を見て画家たちや画廊主の平井さんと話したあと、時間が早かったので近くにあるフォトグラファーズ・ギャラリーへ行ってみた。ギャラリーでは大友真志展と岸幸夫展をやっ…

「昭和の藝人 千夜一夜」を読んで

矢野誠一「昭和の藝人 千夜一夜」(文春新書)を読む。新聞の新刊広告で見たとき、漫才の青空千夜一夜を扱ったものかと思って触手が動かなかった。そうではなく、昭和時代の藝人88人のことを短いエピソードを通じて紹介したものだった。 これがおもしろかっ…

吉行耕平写真展「The Park」

銀座2丁目のBLDギャラリーで吉行耕平展「The Park」が開かれている(7月18日まで)。ギャラリーで配布しているちらしから。 (たまにこの「ちらし」のことをフライヤーなんて言っているピジンイングリッシュ語りのヤツがいる)。 吉行耕平は1946年広島県生…

武澤林子の俳句

別れたカミさんから伯母さんの俳句が読売新聞に載ったから見て、とメールがきた。読売新聞の朝刊2面に長谷川櫂が毎日俳句を紹介する「四季」というコラムがある。ここに伯母さんの句が掲載されたのだ。 雲 の 峰 越 え て 移 す や 父 祖 の 墓 武澤林子 先…

4年ぶりの菊元仁史展が始まった

銀座8丁目のギャラリーexhibit LIVE & Morisで4年ぶりの菊元仁史展が始まった(7月9日まで)。菊元は1966年静岡県生まれ、1990年に東京学芸大学教育学部を卒業している。1996年、1997年、1999年にギャラリーQで、2002年と2007年、そして今回exhibit LIVE…

米原万里「ガセネッタ&シモネッタ」はネタが豊富だ

ロシア語と日本語の同時通訳米原万里のエッセイ「ガセネッタ&シモネッタ」(文春文庫)には面白いネタが種々紹介されている。まず同時通訳料は、「同時通訳の日当は1日12万円なんです、7時間以内で。(中略)半日すなわち3時間以内で8万円です。国際通…

濱野亮一展が面白かった、でも終わってしまった

銀座2丁目のギャラリーMEGUMI OGITA GALLERYのプロジェクト・ルームで濱野亮一展「バラ色の人生」があった(7月2日まで)。これが面白かったが、行ったのが最終日の土曜日で、もう終わってしまった。 濱野は1977年生まれ、独学で作品を制作していて、今回…

田端麻子展が始まった

六本木のShonandai My Galleryで田端麻子展が始まった(7月8日まで)。田端は1972年神奈川県藤沢市生まれ、1996年に多摩美術大学油画専攻を卒業している。個展はOギャラリー、ギャラリー人、それにこちらのギャラリーを中心にもう20回目だ。グループ展では…

「被差別の食卓」がとてもいい

上原善広「被差別の食卓」(新潮新書)がとても良かった。冒頭、幼い頃「あぶらかす」が好きだったと書き始めている。母の料理だった。そんなあぶらかすが一般的な食材でないと知ったのが中学生の頃だった。それは被差別部落の食材だった。著者は1973年、大…