東京国立近代美術館の常設展

 竹橋の東京国立近代美術館パウル・クレー展を見に行った。会場は土曜日のせいかけっこう混んでいた。作品の点数は多かったが、展覧会の副題が「おわらないアトリエ」となっていて、制作の過程を重視したもので、ドローイングなど小品が多かった。展覧会のパンフレットより、

具体的な「技法」と、その技法が探求される場である「アトリエ」に焦点を絞り、クレーの芸術の創造的な制作過程を明らかにしようとする本展において、鑑賞者は、ちょうど画家の肩越しに制作を垣間見るような、生々しい創造の現場に立ち会うことになるでしょう。

 いや、制作過程じゃなくて、制作結果たる代表作を見たかった。
 クレー展を早々に切り上げ、常設展の会場に上がっていった。受付のカウンターで申し出れば、常設展のほとんどの作品を撮影できることになっている。それで気になる作品を撮影してきた。

 南薫造「少女」。南は野見山暁治東京美術学校で師事した教授だ。野見山暁治「一本の線」(朝日新聞社)より、

 本科に進んで、ぼくは南薫造の教室に入った。(中略)藤島武二の教室はイーゼルが乱立しているし、岡田三郎助の教室もそれなりの数だが、同じ大きさの(南薫造)教室に、ぼくらはたった3人という気儘さだった。
 いちばん希望者の少ない教室を選んだのだと、長いことぼくは思いこんでいたが、いつだったか芸大の資料館の人に、広島美術館で催された南薫造遺作展のカタログをもらって、その思い違いに気がついた。この画家の牧歌的な画面に心ひかれていたのだ。イギリスに渡って水彩画を主に勉強した南薫造には、油絵をそれほどたたきこまれていない筆さばきの闊達さがあった。色の自由さがあった。


 3階の小部屋では海老原喜之助の小特集をやっていた。この「雨の日」がすばらしかった。

 須田国太郎の「歩む鷲」。以前、中村宏の講演を聞いたおり、自作の「基地」に触れて、遠くを明るく近くを暗く描く遠近法は須田国太郎の絵から学んだ。須田は留学していたスペインでそれを学んだのだと話された。
 常設展にはクレーもたくさん並んでいた。東京国立近代美術館東京都現代美術館の常設を見るのが好きだ。