2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

中島らも『中島らもの特選明るい悩み相談室 その1 ニッポンの家庭篇』を読む

中島らも『中島らもの特選明るい悩み相談室 その1 ニッポンの家庭篇』(集英社文庫)を読む。昔朝日新聞に連載し、それを朝日新聞文庫7巻にまとめたのを再編集したもの。 夫と娘のおそろしい商談 【問】 「おっぱいさわらせて」 「500円くれたら」 「200円…

石原慎太郎『わが人生の時の時』を読む

石原慎太郎『わが人生の時の時』(新潮文庫)を読む。私は慎太郎があまり好きではなく、ほとんど読んでこなかった。最近友人から、慎太郎ではこの本が好きだと言われ、それでは読んでみようと思った。なるほど、とても気に入った。 慎太郎自身や知人の経験し…

うしお画廊の淀井彩子展を見る

東京銀座のうしお画廊で淀井彩子展「地図・Pentimento 2022」が開かれている(8月6日まで)。淀井は1966年に東京芸術大学美術学部油画科を卒業し、1968年に同大学大学院油画専攻を修了している。その後フランス政府給費留学生としてパリに留学。2011年まで…

奥泉光・加藤陽子『この国の戦争』を読む

奥泉光・加藤陽子『この国の戦争』(河出新書)を読む。副題が「太平洋戦争をどう読むか」とあり、作家の奥泉と日本近現代史が専門の加藤が対談している。これがとても有意義な読書だった。対談形式なので読みやすい。 奥泉光 アジア・太平洋戦争を考える準…

ギャラリーなつかの桑原理早展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで桑原理早展が開かれている(8月6日まで)。本展は「画廊からの発言 新世代への視点2022」の一環。桑原は1986年、東京都出身。2011年に武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業し、2013年同大学大学院造形研究科日本画コースを…

藍画廊の吉田絢乃展を見る

東京銀座の藍画廊で吉田絢乃展「territory」が開かれている(8月6日まで)。本展は「画廊からの発言 新世代への視点2022」の一環。吉田は1987年東京生まれ。2011年多摩美術大学造形表現学部造形学科を卒業し、2013年同大学大学院修士課程油画領域を修了し…

「画廊からの発言 新世代への視点2022」が始まった

東京銀座・京橋を中心とする現代美術の画廊が共同主催する「画廊からの発言 新世代への視点202Ⅱ」が始まった。これは恒例の7軒の画廊が推薦する40歳以下の若手作家7人の個展だ。現代美術の代表的な貸画廊が選んだ作家たちだから見逃せない重要な企画で、7…

村上春樹『一人称単数』を読む

村上春樹『一人称単数』(文藝春秋)を読む。春樹はあまり読んでこなかった。特に長篇はちょっと苦手だったが、短篇集は好きだった。 さて『一人称単数』だが、いつもに比べて淡々とした印象だ。超常現象的なところが少ないし、エッセイのような味わいだ。「…

銀座メゾンエルメス フォーラムの田口和奈展を見る

東京銀座の銀座メゾンエルメス フォーラムで田口和奈展「A Quiet Sun」が開かれている(9月30日まで)。田口は1979年東京都生まれ、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業後、同大学院美術研究科博士号取得。2013年よりオーストリア、ウィーンを拠点に…

東京国立近代美術館の常設展「MOMATコレクション」を見る

東京国立近代美術館の常設展「MOMATコレクション」が開かれている(10月2日まで)。素晴らしい収蔵品だと思う。できればもっともっと予算を付けて、収蔵品の充実を図ってほしい。企画展ではなく、常設展を目的に美術館を訪れる人が増えるように。 山口薫 藤…

みぞえ画廊の藤澤江里子・細井篤二人展を見る(その2:藤澤江里子)

東京田園調布のみぞえ画廊で藤澤江里子・細井篤二人展が開かれている(7月31日まで)。昨日の細井篤に続いて今回は藤澤江里子を取り上げる。 藤澤は1960年東京都生まれ、武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン科を卒業したあとBゼミスクールを修了している。…

みぞえ画廊の藤澤江里子・細井篤二人展を見る(その1:細井篤)

東京田園調布のみぞえ画廊で藤澤江里子・細井篤二人展が開かれている(7月31日まで)。これを2回に渡って紹介する。今回は細井篤を取り上げる。 細井は1963年長野県出身、武蔵野美術大学大学院造形研究科彫刻コースを修了。1993年にギャラリー21+葉アネッ…

川添愛『言語学バーリ・トゥード』を読む

川添愛『言語学バーリ・トゥード』(東京大学出版会)を読む。本書は東京大学出版会のPR誌『UP』に連載していたものをまとめたもの。「はじめに」に相当するところで、「この連載に登場しがちなイカしたメンバーを紹介する」とある。 筆者(川添):かつて研…

ポーラ ミュージアム アネックスの竹村京・鬼頭健吾展を見る

東京銀座のポーラ ミュージアム アネックスで竹村京・鬼頭健吾展「色と感情」が開かれている(7月24日まで)。竹村は1975年東京都生まれ、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画修了。横浜トリエンナーレや群馬県立近代美術館、ポーラ美術館な…

竹宮惠子『少年の名はジルベール』を読む

竹宮惠子『少年の名はジルベール』(小学館文庫)を読む。竹宮のデビューした頃を描いた自伝。少女漫画でデビューし、同じくデビューしたばかりの萩尾望都と一軒家で共同生活をする。本書を巡って萩尾望都が『一度きりの大泉の話』を書き、この大泉時代に二…

ガルリHの田中綾子展を見る

東京日本橋小舟町のガルリHで田中綾子展が開かれている(7月23日まで)。田中は1993年大阪府生まれ、2019年に東京藝術大学美術学部彫刻科卒業、2021年同大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了している。 ガルリHでの個展は昨年に続いて2回目となる。 田中は不…

ギャラリーN神田社宅とギャラリーαMの加藤巧展を見る

東京神田のギャラリーN神田社宅と、東京東神田のギャラリーαMで加藤巧展が開かれている(ギャラリーN神田社宅では7月16日まで、ギャラリーαMでは8月6日まで)。 加藤は1984年愛知県生まれ。14,15世紀の絵画技法家・チェンニーノ・チェンニーニの『 Il Lib…

Steps ギャラリーの吉岡まさみ展を見る

DM葉書 東京銀座のSteps ギャラリーで吉岡まさみ展「echo」が開かれている(7月23日まで)。吉岡は1956年、山形県生まれ。1981年に東京学芸大学教育学部美術科を卒業している。1982年に東京のかねこ・あーとGIで初個展、以来同画廊やときわ画廊、巷房などさ…

銀座蔦屋書店ギンザ アトリウムの川内理香子展を見る

東京銀座の銀座蔦屋書店ギンザ アトリウムでカ川内理香子展が開かれている(7月13日まで)。川内は1990年東京都生まれ、2017年に多摩美術大学大学院絵画学科油画専攻を修了している。2022年のVOCA大賞受賞作家。 抽象画のような背景の上に線画で具象的な図…

山本弘の詩

ここに山本弘の詩集『ありぢごく』第1集がある。発行は55年秋とあるから、山本弘25歳の時だ。そこから何編か紹介する。 (ひきはがされた夢が) ひきはがされた夢がさめきらぬうちに どろにまつわれつかれた足をそのまゝ 冷たい床の中になげ出して 逆上した…

ガルリSOLの丹羽啓個展を見る

東京銀座のガルリSOLで丹羽啓個展が開かれている(7月22日まで)。丹羽は1994年名古屋市生まれ、2017年に金沢美術工芸大学彫刻家卒業、2019年同大学美術工芸研究科彫刻専攻を卒業し、2020年より同大学彫刻科助手を務めている。 2020年にこのギャラリーで個…

あをば荘の「2人だけでも複雑/はじけて飛び散り、必然的にそこに置かれる」を見る

東京墨田区のあをば荘で「2人だけでも複雑/はじけて飛び散り、必然的にそこに置かれる」が開かれている(7月18日まで)。本展は佐藤史治と原口寛子のユニットと関真奈美の3人展(2組展)。ここでは関真奈美の動画を紹介する。 関は1990年東京都生まれ、主…

スパイラルガーデンと小山登美夫ギャラリーの菅木志雄展を見る

東京表参道のスパイラルガーデンと、東京六本木の小山登美夫ギャラリーで菅木志雄展が開かれている(スパイラルは7月11日まで、小山登美夫ギャラリーは7月9日まで)。 菅木志雄についてはコレクターで長く現代美術を見てこられた長谷見雄二さんが、以前私…

チェーホフ『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』を読む

チェーホフ『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』(光文社古典新訳文庫)を読む。訳者は浦雅春。先に話題になった映画『ドライブ・マイ・カー』の劇中劇として演じられていたのが「ワーニャ伯父さん」だった。 私は10代後半の頃チェーホフの小説を夢中になって読ん…

ケン・リュウ『紙の動物園』を読む

SF

ケン・リュウ『紙の動物園』(ハヤカワ文庫)を読む。近頃とても評判の良い中国系のSF作家の短篇集。第1巻が本書で第2巻が『もののあはれ』、本書はファンタジイ篇、『もののあはれ』はSF篇とのこと。 「紙の動物園」はお母さんが折ってくれた折り紙の動物た…

ギャラリー川船恒例の「夏期入札展示会」が始まった

東京京橋のギャラリー川船で恒例の「夏期入札展示会」が始まった(7月9日まで)。 入札の方式は「二枚札方式」、これは入札カードに希望価格の上値(上限)と下値(下限)の二つの価格を書いて入札するもの。他に入札者のない場合は下値で落札する。上値が…

幸田文『崩れ』を読む

幸田文『崩れ』(講談社文庫)を読む。幸田72歳のとき、『婦人の友』に14回に渡って連載したもの。全国の大きな崩壊現場を訪ねてそれを詳しく書いている。静岡県の大谷崩れ、富山県の鳶山崩れ、富士山の大沢崩れ、日光男体山の崩れ、長野県の稗田山崩れ、北…

池上彰・佐藤優『激動 日本左翼史』を読む

池上彰・佐藤優『激動 日本左翼史』(講談社現代新書)を読む。副題が「学生運動と過激派 1960-1972」、先に発行された『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960』の続編。池上と佐藤の対談で構成されている。 「はじめに」で佐藤優が書いている。「本書…

『吉野弘詩集』を読む

『吉野弘詩集』(角川春樹事務所)を読む。これは「にほんの詩集」という12冊のラインナップの1冊だ。ほかには、『谷川俊太郎』『長田弘』『中島みゆき』『金子みすゞ』『萩原朔太郎』『中原中也』『石垣りん』『まど・みちお』『寺山修司』『工藤直子』『宮…