出版

津野海太郎『編集の提案』を読む

津野海太郎『編集の提案』(黒鳥社)を読む。津野の編集に関する古い文章を編集の宮田文久が拾い出して1冊にまとめている。津野は50年ほど前、演劇集団68/71(後の黒テント)の演出を手掛け、また晶文社の編集者として晶文社の出版方針を先導したという印象…

出版社のコピーの甘さ

岩合光昭の『日本の猫』カレンダーは平凡社が発行している。9月は愛知県佐久島の猫だ。キャプションが、次のようになっている。 暖かな午後、広場に集まります。あとから来たメスが挨拶します。 これから得られる情報は左側の猫がメスだということくらいだ…

『本の雑誌 7月号』は「特集 笑って許して誤植ザ・ワールド」

『本の雑誌 7月号』は「特集 笑って許して誤植ザ・ワールド」という誤植特集だ。 編集者たちが様々な誤植、校正ミスの失敗談を披歴している。情報誌の会社に入った安藤さんは入社1年目、大相撲のチケット発売で特別電話予約の番号をミスしてしまう。印刷所の…

白取千夏雄『「ガロ」に人生を捧げた男』を読む

白取千夏雄『「ガロ」に人生を捧げた男』(興陽館)を読む。数日前、高野慎三『神保町「ガロ編集室」界隈』(ちくま書房)を読み、「高野が退職したあと、何年かして青林堂は人手に渡る。そのあたりのことを高野ははっきりとは書いてくれない」とブログに書…

高野慎三『神保町「ガロ編集室」界隈』を読む

高野慎三『神保町「ガロ編集室」界隈』(ちくま書房)を読む。高野は大学卒業後日本読書新聞に入社し、その後『ガロ』を発行していた青林堂に転職する。青林堂は社長の長井勝一とパートナーで経理担当の香田明子の二人だけだった。結局1966年9月から5年少し…

丸谷才一『七十句』を読む、また検印のこと

丸谷才一『七十句』(立風書房)を読む。「あとがき」に、「このたび七十歳を迎へるに当り、齢の数だけの句を拾つて知友に配らうと思ひ立つた」とある。1995年丸谷が70歳になったのを記念して70句だけの句集を作った。そんな体裁だから「知友に配る」つもり…

川合光『はじめての《超ひも理論》』を読んで

川合光『はじめての《超ひも理論》』(講談社現代新書)を読む。副題が「宇宙・力・時間の謎を解く」とある。一応読んだと書いたが、実は極めて難解な本で、内容はほとんど理解できなかった。ところどころ興味をひかれた部分があったくらい。もう多次元宇宙…

『お父さん、一緒に死のう』を読んで

豊田実正『お父さん、一緒に死のう』(東洋出版)を読む。知り合いから、彼の知人が本を書いたけど読みますかと言われて借りた。ひと目見て自費出版だと分かった。副題が「永遠の恋人 永遠の宝物」とある。カバーの表裏に中年のきれいな女性の写真が使われて…

常盤新平『翻訳出版編集後記』を読む

常盤新平『翻訳出版編集後記』(幻戯書房)を読む。「出版ニュース」の1977年から1979年にかけて連載したものを単行本にした。常盤は2013年に81歳で亡くなっている。 本書は常盤が早川書房に勤めた1959年から翻訳出版に携わっていた10年間のことを中心に書か…

10月19日の新聞書評

もう20年近く、毎週日曜日は3つの新聞を手に入れて書評を読んでいる。丸谷才一が自画自賛していたように、3大紙では毎日新聞の書評が最も優れていると思う。少し落ちて朝日新聞、その次が読売新聞の書評だ。一時、日経や東京新聞も買ってみたが、日経は経…

祖父江慎の語るブックデザイン

ブックデザイナーの祖父江慎がインタビューに答えてブックデザインを語っている(朝日新聞、2014年9月27日)。それが知らないことばかりで興味深い。 本のデザインで一番楽しいのはどんな作業かという質問に答えて、文字組みだという。 文字の大きさ、どの…

『ベスト珍書』というヘンな本を読む

ハマザキ カク『ベスト珍書』(中公新書ラクレ)を読む。副題が「このヘンな本がすごい!」というもの。ヤバい、すごい、怪書、エログロ、発禁本など100冊を厳選したとカバーの袖にある。中央公論社がそんなトンデモ本を発行したのかと半信半疑で読んでみた…

自費出版の売られ方

以前、自費種出版について書いたことがあったが、そこで自費出版の本は書店には並ばないと書いた。ところが最近都内の中型書店で、自費出版の本が書店の棚に並んでいるのを見つけた。写真がそれだが、この書店では新潮選書や講談社選書メチエ、中公叢書、NHK…

『カッパ・ブックスの時代』を読む

新海均『カッパ・ブックスの時代』(河出ブックス)を読む。新海は1975年早稲田大学を卒業して光文社に入社し、カッパ・ブックス編集部に配属される。その後月刊誌『宝石』編集部に移り、再び1999年から2005年の終刊までカッパ・ブックスの編集に携わる、と…

『増補版 誤植読本』を読む

高橋輝次 編著『増補版 誤植読本』(ちくま文庫)を読む。印刷過程で必要な作業「校正」、しかし校正ミスはつきものだ。作家や編集者、校正者などが、自分の校正ミス、誤植について書いている。執筆者53名、これは書き下ろしでなく、編者たちが過去の文献か…

『日本古書通信』通巻1000号

日本古書通信社が発行する『日本古書通信』が2012年11月月号で通巻1000号を迎えた。ここに作家初版本や草稿、ノートなどの価格が載っている。その古書店の目録から、 ・長崎大絵図(魯西亜船入津之図) 4,500,000円 ・夏目漱石草稿『琴のそら音』(原稿38枚…

出版広告のいろいろ

朝日新聞朝刊にハルキ文庫の全面広告が掲載されていた(11月19日付け)。文庫だけで全面広告を出すのは、ハルキ文庫のほか角川文庫、幻冬舎文庫などがある。もっともこの3社は親戚みたいなものだ。ハルキ文庫の角川春樹事務所も幻冬舎も角川書店が出身だ。…

ノンブルの振り方

本のページを表す数字をノンブルと言う。ノンブルはナンバーに相当するフランス語。出版界ではノンブルで通っている。ノンブルを付けるのを「ノンブルを振る」と言う。 日本では本や雑誌に縦組みと横組みがある。縦組みでは見開きページの右が小さい数字にな…

『「ぴあ」の時代』を読む

掛尾良夫『「ぴあ」の時代』(キネマ旬報社)を読む。雑誌『ぴあ』が2011年7月21号で休刊した。1972年7月に創刊したから39年間続いたのだった。本書はその『ぴあ』の創刊から最大53万部を発行した時代、「ぴあフィルムフェスティバル」を始めたこと、チケ…

講談社のPR誌『本』

毎日新聞の書評欄に「MAGAZINE」という雑誌を紹介する小さなコラムがある。4月22日のそれは『本』4月号だった。 本のPR誌は数々あるが、一本筋が通って読み応えがあるのは新潮社の『波』と、この講談社の『本』である。 巻頭に思想についての考察。それも…

辞書の種類

朝日新聞の「オピニオン」で辞書の世界が取り上げられた(2012.4.10)。学者芸人と肩書きの付いたサンキュータツオさんにインタビューしている。サンキューさんによれば、辞書の編集はその哲学によってまるで違うという。 国語辞典の世界には、用例の三省堂…

雑誌「ぴあ」終刊

7月21日に雑誌「ぴあ」の最終号が発売された。1972年7月に「月刊ぴあ」8月号が創刊されてから39年の歴史だった。この最終号には付録として創刊号の復刻版が付いている。創刊号は表紙ともたったの28ページだった。定価100円。最終号は300ページ近くて税込…

編集プロダクションの存在

吉田秀和の「永遠の故郷」シリーズが、2008年2月発行の「夜」から始まって「薄明」「真昼」と続き、今年1月発行の「夕映」で全4冊が完成した。歌曲に焦点を絞って著者の半生に絡めて語っている。雑誌「すばる」に連載したものだ。これらのエッセイを読み…

雑誌「ぴあ」の休刊

ニュースが雑誌「ぴあ・首都圏版」の7月21号での休刊を伝えていた。1972年の創刊で39年の歴史だそうだ。80年代には53万部の発行部数だったのが、最近では6万部だという。情報誌の宿命でネットに負けたのだ。「ぴあ」の首都圏版以外の版はとうに休刊になっ…

「ブッダの言葉」が売れているらしい

小池龍之介「超訳 ブッダの言葉」が売れているらしい。これは最近ベストセラーの「超訳 ニーチェの言葉」の二番煎じだろう。ふたつに共通なのは、超訳と称して恣意的な翻訳をしていることだろう。「超訳」という言葉はアカデミー出版の発明ではなかったか。W…

ハイデガー「現象学の根本問題」の新聞広告

2月3日の朝日新聞に哲学書の広告としては異例の大きな新聞広告が掲載された。ハイデガーという20世紀最大の哲学者の決してやさしくはない本格的な哲学書で、分厚くて5,040円もする。この大きさの広告代は200万円くらいするのではないか。この広告のコピー…

東京創元社文庫解説総目録とハヤカワ・ミステリ総解説目録

朝日新聞の三八(サンヤツ)広告に、東京創元社の「東京創元社文庫解説総目録」の広告が載っていた。「文庫全点を網羅した完全版目録」と銘打たれているが、文庫判2分冊函入り(分売不可)5,250円となっている。高い!! 一応、広告の本文を写すと、 (文庫創…

「梅棹忠夫 語る」を読む

「梅棹忠夫 語る」(日経プレミアシリーズ)を読む。梅棹忠夫は2010年7月に亡くなったが、生前、弟子であった小山修三がインタビューしたものを本書にまとめた。 (梅棹が)2004年からつづけて大病を患い、再起があやぶまれるほどだった。 さいわいの小康を…

晶文社創立50周年

晶文社が創立50周年を迎えたと大きな新聞広告を出していた。大きなとはいえ、朝日新聞の全5段。これはその一部だ。 晶文社の本が好きだった。書店で犀のマークを見ると手に取らずにいられなかった。佐藤信の「あたしのビートルズ」「嗚呼鼠小僧次郎吉」「安…

ギャラリーQの石田徹也展とその周辺

銀座1丁目のギャラリーQで「石田徹也全集−出版記念及び五周忌展」が開かれている(5月29日まで)。3年前に出版された「石田徹也遺作画集」に続いて、先頃「石田徹也全集」(求龍堂)が発行され、それを記念して開かれた。一昨年の練馬区立美術館の個展で…