2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

山田宏一『増補 トリュフォー、ある映画的人生』を読む

山田宏一『増補 トリュフォー、ある映画的人生』(平凡社ライブラリー)を読む。山田宏一を読む楽しみ。 私は戦後フランスのヌーヴェル・ヴァーグの映画が好きなつもりでいた。でも見てきたのはほとんどゴダールのみで、アラン・レネとルイ・マルにエリック…

ギャルリー東京ユマニテの飯嶋桃代展が興味深い

東京京橋のギャルリー東京ユマニテで飯嶋桃代展が開かれている(8月3日まで)。これは「画廊からの発言−新世代への視点2013」という東京現代美術画廊会議の企画の一環で、ギャルリー東京ユマニテが飯嶋桃代を取り上げたことによる。 飯嶋は1982年、神奈川…

須藤靖『主役はダーク』という怪しい本

須藤靖『主役はダーク』(毎日新聞社)というちょっと怪しい本を読む。副題が「宇宙究極の謎に迫る」というもの。朝日新聞に川端裕人が書評を書いていた(6月30日)。 『主役はダーク』は破格の科学エッセイだ。最新の天文学、宇宙物理学を独特の諧謔を交え…

ロイヤル島のヘラジカ

竹内久美子が朝日新聞に「生物界なら1強ありえぬ」というエッセイを書いている(2013年7月24日)。参院選で圧勝した自民党に対し、メディアが「大きすぎる与党」への懸念を表明しているのを読んで、自然界のこんなエピソードを思い出したとて、ロイヤル島…

ギャラリー58の山下耕平展がおもしろい

東京銀座のギャラリー58で山下耕平展が開かれている(8月3日まで)。これは「画廊からの発言−新世代への視点2013」という東京現代美術画廊会議の企画の一環で、ギャラリー58が山下耕平を取り上げたことによる。 山下は1984年兵庫県生まれ、2007年に佐賀大…

馬場知子展がとても魅力的

東京銀座のギャラリーゴトウ2nd roomで馬場知子展が開かれている(7月27日まで)。馬場は1991年に女子美術大学絵画科版画専攻を卒業し、1992年に同大学研究生を修了し、翌1993年に銀座のギャラリー山口で初個展を開いている。馬場は版画家だが色彩が美しい…

朝日新聞の「悩みのるつぼ」から

朝日新聞の身の上相談「悩みのるつぼ」に「気が利かないと言われ続け」ている22歳の男性からの相談が載っている(7月20日)。 今春大学を卒業し、社会人になった22歳の男性です。(中略)/昔から気が利かないと親に言われ続けています。誰も口に出しては言…

ギャラリーQの一色映理子展が興味深い

東京銀座のギャラリーQで一色映理子展が開かれている(8月3日まで)。これは「画廊からの発言−新世代への視点2013」という東京現代美術画廊会議の企画の一環で、ギャラリーQが一色を取り上げたことによる。 一色は1981年、愛媛県生まれ。2004年に武蔵野美…

デボラ・アントネッロ展がとても良い

東京日本橋本町のギャラリー砂翁でデボラ・アントネッロ展が開かれている(7月30日まで)。デボラ・アントネッロDebora Antonelloは、1967年イタリア生まれ。ベニス・インターナショナル・グラフィック・センターを卒業している。アーティストである父親の…

「新世代への視点2013」が始まる

東京現代美術画廊会議が主催する「新世代への視点2013」が7月22日から始まった(8月3日まで)。東京現代美術画廊会議は、12のギャラリーで構成されている。京橋ではギャラリーなつか、ギャラリイK、ギャルリー東京ユマニテ、ギャラリー川船の4軒、銀座で…

ギャラリートモスの和田祐子展−記憶の痕跡−が良い

東京日本橋本町のギャラリートモスで和田祐子展−記憶の痕跡−が開かれている(7月30日まで)。和田はアメリカと日本でカリグラフィーを、欧米の講師(米・ドイツ・ベルギー・イタリア・英)から学んだ後絵画に転じる。2008年にベルギーの画廊で初個展、日本…

丸谷才一『後鳥羽院 第二版』を読んで

丸谷才一『後鳥羽院 第二版』(ちくま学芸文庫)を読む。1973年に筑摩書房から「日本詩人選」の1冊として『後鳥羽院』が出され、それに3篇を付け加えて『後鳥羽院 第二版』が刊行され、今年文庫版が刊行された。評価の高い後鳥羽院論である。 後鳥羽院は『…

夏休みの山手線の広告

池袋から山手線に乗った。中吊り広告が夏らしく海のポスターだった。広告臭がなく上品なポスターだけど、これはどこの企業だろうとよく見ると、企業名が「jeki」となっていた。これって何だろうと考えたがよく分からなかった。 車内を見渡すとあちこちに同じ…

瀬戸川猛資『夢想の研究』を再読した

瀬戸川猛資『夢想の研究』(創元ライブラリ)を再読した。これは先に紹介した瀬戸川の『夜明けの睡魔』(創元ライブラリ)の姉妹書。「睡魔」がミステリを扱っていたのに、本書は副題が「活字と映像の想像力」というように、映画とミステリを「クロスオーバ…

ギャラリーなつかの伊藤哲一彫刻展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで伊藤哲一彫刻展が開かれている(7月20日まで)。伊藤は1974年東京生まれ。1999年に東京芸術大学彫刻科に入学し、2003年に卒業、また2005年には同大学大学院彫刻専攻を修了している。 2004年に千葉市のギャラリーKIKIで初個展、…

『騎手の一分』という変わった本を読む

藤田伸二『騎手の一分』(講談社現代新書)を読む。タイトルは藤沢周平の時代小説を翻案した映画『武士の一分』から採っているのだろう。副題が「競馬界の真実」。競馬は知らない世界だが、著者はJRA(日本中央競馬会)の花形騎手らしい。歴代8位の通算1,82…

今日は山本弘33回忌

今日7月15日は山本弘の33回忌だ。山本は1981年のこの日に亡くなった。51歳だった。生きていれば83歳ということになる。 1930年6月15日、長野県神稲(くましろ)村(現豊丘村)に生まれ、幼い時に長野県飯田市へ転居した。終戦の年に15歳だった。戦後ヒロポ…

馬場あき子『日本の恋の歌』を読む楽しみ

馬場あき子『日本の恋の歌〜恋する黒髪〜』(角川学芸出版)を読む。これは月刊誌『短歌』に70回に渡って連載されたものを、本書と『日本の恋の歌〜貴公子たちの恋〜』の2冊に分けて刊行したもの。本書では、「和泉式部の恋と歌」「実方の優雅な恋」「紫式…

画家の値段

画家の(作品の)値段を調べてみた。それぞれ10号の作品に換算したもの。 有元利夫・・・・3,000万円 三岸節子・・・・2,000万円 長谷川利行・・・2,000万円 千住 博・・・・1,000万円 山口長男・・・・500万円 難波田龍起・・・500万円 野見山暁治・・・200…

スタニスワフ・レムと筒井俊隆の共通性

SF

以前、このブログでスタニスワフ・レムと筒井康隆の弟筒井俊隆の関係について考えたことがあった。筒井俊隆はもう50年以上も前に兄と一緒に同人誌『NULL』にSFを発表していた。1961年に発表した「消失」という短篇は、その後『SFマガジン』1961年2月号に転…

現代アートは感じるものか?

高階秀爾『ニッポン現代アート』(講談社)の書評で、原田マハが「現代アートとは、わかるものではなく、感じるものだ」と言っている(朝日新聞、2013年6月23日)。そうだろうか。原田は書く。 少し前に、現代アートの美術館を女性雑誌の編集者とともに訪れ…

ヤン・ヨンヒ『兄 かぞくのくに』を読む

ヤン・ヨンヒ『兄 かぞくのくに』(小学館文庫)を読む。これは先に見た映画『かぞくのくに』の監督ヤン・ヨンヒが書いたドキュメンタリーだ。映画では北朝鮮へ「帰国」したのは主人公リエの一人の兄ということになっていたが、実際には3人の兄たちが「北」…

KAMIYA ARTの足立正平展が興味深い

東京日本橋本町のKAMIYA ARTで足立正平展が開かれている(7月19日まで)。足立は1976年東京生まれ。幼少より書を学び、1999年多摩美術大学日本画科を卒業している。翌2000年から2002年まで中国政府給付奨学生として中国美術学院で学んでいる。私は2007年に…

あらかわ画廊の清野晃代を見る

東京京橋のあらかわ画廊で菅野静香・清野晃代展「−あ・ふ・る・る ものは−」が開かれている(7月19日まで)。ここでは二人のうち清野について紹介する。清野は1983年神奈川県生まれ、2006年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業し、2008年に同大学大学院…

「悩みのるつぼ」で明解な回答をする美輪明宏

朝日新聞の「悩みのるつぼ」で50代の女性が「年下の男性を好きになりました」と美輪明宏に相談している(7月6日朝刊)。美輪の回答が明解で素晴らしい。その相談から、 夫とは結婚25年、子供がいます。いい年をして、職場の男性を好きになってしまいました…

AKB48のメンバーが推薦する集英社文庫

集英社文庫の広告「ナツイチ 夏の一冊」が朝日新聞に掲載されている(7月5日)。「AKB48を含む課題図書メンバー85人それぞれが、今年のナツイチ作品の中から読んで選んだ85作品の感想文を発表!」とあって、紙面には15人の推薦する15冊が並べられている。1…

亀山郁夫『あまりにロシア的な』を読む

亀山郁夫『あまりにロシア的な』(文春文庫)を読む。亀山は光文社古典新訳文庫で『カラマーゾフの兄弟』を翻訳して大当たりを取った人。私もこの翻訳でカラマーゾフを初めて読んだのだった。読みやすくて、どうして今まで読まなかったのかと反省した。 本書…

東京スカイツリーの様々な表情

ガーディアン・ガーデンで仲田絵美展「よすが」を見る

東京銀座7丁目のガーディアン・ガーデンで仲田絵美展「よすが」が開かれている(7月11日まで)。仲田は1988年、茨城県生まれ。2011年写真ワークショップ松本美枝子の「キワマリ荘の写真部」を修了した。2012年、第6回写真「1_WALL」審査員奨励賞、第7回…

瀬戸川猛資『夜明けの睡魔』を読み返す

瀬戸川猛資『夜明けの睡魔』(創元ライブラリ)を読み返す。前回読んだのが2000年だったから13年ぶりの再読になる。この文庫版が出たのが1999年5月で、瀬戸川はその2カ月前に亡くなってしまった。 本書は1980年ころに『ミステリマガジン』に連載された海外…