ギャラリーなつかの「The Final One」を見る

 東京京橋のギャラリーなつかで「The Final One」が開かれている(11月8日まで)。ギャラリーなつかは今週一杯でこのスペースでの営業を終わりにし、来年新しい場所でギャラリーを再開するようだ。なつかの挨拶、

ギャラリーなつかは1985年に銀座5丁目にて開業し、2012年に現在の京橋3丁目に移転しました。これまでの40年間、多くの皆様と共に展覧会を開催できましたことに深く感謝申し上げます。京橋会場最後となります本展には、ゆかりの作家の中から一部の皆様にご出品いただきました。是非ご高覧ください。

 出品作家は、

相澤久徳 / 畔蒜克則 / 安藤英次 / いちのしのぶ / 伊東敏光 / 内平俊浩 / 遠藤美香 / 太田三郎 / 大橋朋美 / 岡田育美 / 小河朋司/ 開発好明 / 金沢健一 / 釘町一恵 / 桑原理早 / 小泉俊己 / 小瀧雅道 / こづま美千子 / 斉藤里香 / 酒井香奈 / 佐藤忠 / 杉浦晶 / 高浜利也 / 瀧田亜子 / 滝波重人 / 千葉鉄也 / チョン・ダウン / 友枝憲太郎 / 豊泉綾乃 / 永井夏夕 / 永野のり子 / 中島由絵 / 西山ひろみ / 根岸達江 / 羽賀洋子 / 濱田富貴 / 古井彩夏 / 牧野朝輝 / 母袋俊也 / 吉田収 / 吉永晴彦 / 寄木幸治 / 鷲田恭 / 渡辺愛子

 みな小品で、何人かの作品を紹介する。

こづま美千子

開発好明

金沢健一

桑原理早

古井彩夏

斉藤里香

太田三郎

瀧田亜子

中島由絵

内平俊浩

濱田富貴


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「The Final One」

2025年10月27日(月)-11月8日(土)

11:00-18:30(土曜日17:00まで)11/2、11/3休廊       

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ギャラリーなつか

東京都中央区京橋3-4-2 フォーチュンビル1F

電話03-6265-1889

http://gnatsuka.com/

 

池谷裕二『すごい科学論文』を読む

 池谷裕二『すごい科学論文』(新潮社新書)を読む。池谷裕二が世界的学術雑誌に掲載された最新の科学論文から面白い論文を選んでそのエッセンスを紹介している。

 老化は徐々に進むのではなく、老化が突如進む加速期とそれほどは進まない停止期が交互に訪れる。平均すると44歳と60歳頃が一気に老け込む時期になる。子どもの成長期における第1次性徴と第2次性徴のように、老年期にも2大老化期があるという。

 認知症リスクを下げる「抗炎症食」がある。抗炎症食を心がけている人は認知症を発症しにくいことが分かった。その抗炎症食とは、イワシやマグロなどのオメガ3脂肪酸を豊富に含む魚、レンズ豆やヒヨコ豆などの豆類、ブルーベリーやリンゴなどの果物、ブロッコリーやほうれん草などの葉野菜、玄米やオートミールなどの全粒穀物、アーモンドやクルミなどのナッツ、そして良質な脂肪としてエクストラバージンオリーブオイルなどだという。

 ChatGPTが生成する文章がどの国の文化に近いかを調べた論文によると、アメリカ人の価値観はヨーロッパ人に近く、欧米圏から最も遠い価値観を持つのがイスラム圏やアフリカ諸国で、中南米はその中間、そして日本人の価値観はアジア圏よりもむしろ欧米圏に近かった。

 一、二、三、四、五と、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ。漢数字とローマ数字は別の地域で独自に発達したが、類似点がある。どちらも1から3までは「棒」の数が増えるが、4以降でこのルールが崩れる。これには「サビタイジング」が関与している。サビタイジングとは「瞬時に個数を把握すること」。3個あるいは4個まではすばやく個数を回答できるが、5個を超えると判断が遅くなり、計算ミスも増加する。おそらく脳にとって、4までの数とそれ以上の数は本質的に別物なのだろうと。

 地球上の生命の基本はDNAである。DNAには4種類の文字で表される塩基があり、ヒトでは塩基が約30億個並び、ヒトをヒトたらしめている。少しでも配列が異なればヒトではなくなる。ヒトとチンパンジーのDNA配列は99%同じなのだ。裏を返せば、生物のDNAは極端に限定された配列になっている。この事実から、次の2つの可能性が浮かび上がる。

1 生物は絶妙な均衡のうえに成立しており。自由なDNA設計は許されない。

2 生物進化は数十億年と短く、DNAのありうる全配列が試行されたわけではない。

 もし1なら、宇宙に生物が存在する可能性はきわめて低く、2ならば、ヒトとは似つかない宇宙人が存在する可能性がある。

 ゴサイ博士の論文によれば2が正しいという。

 ここからは私の見解だが、スタニスワフ・レムによれば、知性は何も生物に限らず、宇宙人を考えるとき、DNAに拘ることはないだろう。ソラリスの海や、金属が進化した知性を考えることができる、というレムの驚くべき想像力を追体験したい。

 

 

 

ギャラリーQの井上修策展Part 1を見る

 東京銀座のギャラリーQで井上修策展Part 1が開かれている(11月8日まで)。井上修策は1959年三重県生まれ、1984年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業している。長年ギャラリー現で個展を開いていたが、最近はギャラリーQやトキ・アートスペースなどで開催している。


 今回の作品は曲面のパネルに白い絵具で不定形の円が描かれており、そのパネルの下にもう1枚のパネルがあって、その隙間に何やら小さな柵で囲まれたような造形が作られている。何だか難しくてよく分からない。井上によると、表面のパネルに描かれているのは、火星に引かれる未来の地図の線で、火星にも国境が作られるということを示しているようだ。作品には現在戦争している国や地域、また内戦や民族紛争などの地域名がタイトルされている。ミャンマー、シリア、エチオピア、イエメン、イスラエルウクライナアフガニスタンソマリア

 隅間に作られているのはその紛争地などの地図らしい。そう教えられてもよく分からないと言うと、今回は今週と来週の2部構成で、来週も併せて見てもらえば分かるとのことだった。

 そんなわけで、とりあえずアップし、来週のPart2に期すことにしよう。

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井上修策展Part 1

2025年11月3日(月)-11月8日(土)

11:00-19:00(土曜日17:00まで)

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ギャラリーQ

東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F

電話03-3535-2524

https://www.galleryq.info/

 

コバヤシ画廊の浅葉雅子展を見る

 東京銀座のコバヤシ画廊で浅葉雅子展「檸檬爆弾」が開かれている(11月8日まで)。浅葉雅子は1982年、女子美術大学日本画専攻を卒業。2003年にKONSTFACK(スウェーデン国立デザイン工芸芸術大芸術専攻)で学んでいる。1996年に銀座スルガ台画廊で初個展、2011年からはコバヤシ画廊で毎年個展を開いている。

 浅葉は初め春草の「落葉」などを引用していたが、現在は浮世絵の春画をアレンジして作品を作っている。歌麿などの春画を引用し、現代の風俗などをコラージュしている。春画を引用しているのだが、ソフィストケイトされた作風で、とても上品なものだ。色彩も形も美しい。

「爽快な破裂」

(以下奥の事務所に展示)



 画廊正面に大きな作品が展示されている。左右180cmあり、「爽快な破裂」と題されている。今までの浅葉にない強烈な作品だ。

 また生成AIで作られた美少女画と春画を組み合わせたものなど、相変わらず知的な操作が面白い。奥の事務所には展覧会のタイトルになった「檸檬爆弾」の小品も展示されている。

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浅葉雅子展「檸檬爆弾」

2025年11月3日(月)-11月8日(土)

11:30-19:00(最終日17:00まで)

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コバヤシ画廊

東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1F

電話03-3561-0515

http://www.gallerykobayashi.jp/

 

木之庄企畫の谷口ナツコ展を見る

 東京京橋の木之庄企畫で谷口ナツコ展「庭で遊ぶ」が始まった(11月13日まで)。谷口ナツコは1968年北海道生まれ。今までギャラリー砂翁、デザインフェスタギャラリー、ヴァニラ画廊、スタジオ・ゾーン、アンド・ゾーン、ギャラリー・テオなどで個展を開き、また海外では香港、イタリア、台北、北京、シンガポールアメリカなどのグループ展に参加している。クリスティーズにも出品され、国際的な画家となっている。2016年以降アートコンプレックスセンターで個展を繰り返してきた。木之庄企畫では昨年に続いて2回目となる。

(この技法の最初の作品)


 私は30年以上にわたって数多くの画家を見てきたが、谷口ナツコこそダントツの天才画家だと思っている。半立体的な点描、画面を埋め尽くす色彩、世界のどの画家にも似ていない造形、まさに天才画家だと言える。

 谷口はトレーシングペーパーを円錐形にしたものに絵具を充填し、先端の穴から絵具を絞り出し、凸状の点描法で描いている。今回は初めてこの技法で描いた作品も展示されている。最初からぶれていないことがよく分かる。

 蘇我蕭白が好きで、今回も蕭白寒山拾得へのオマージュだとのこと。

 展示は2週間弱だが、ぜひこの不思議な造形を見に来てほしい。

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谷口ナツコ展「庭で遊ぶ」

2025年11月1日(土)-11月13日(木)

12:00-18:00(月曜日休み)

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木之庄企畫

東京都中央区京橋2-11-11 宝永ビル1F

電話03-6262-3558

http://kinoshokikaku.jp/