トキ・アートスペースの小林花子展を見る

 東京外苑前のトキ・アートスペースで小林花子展が開かれている(4月28日まで)。小林は1971年東京都生まれ、1995年武蔵野美術大学彫科を卒業し、1997年愛知県立芸術大学大学院美術研究科を修了している。その後トキ・アートスペースでもう10回個展をしている。

f:id:mmpolo:20190423232125j:plain

f:id:mmpolo:20190423232157j:plain

f:id:mmpolo:20190423232243j:plain

f:id:mmpolo:20190423232322j:plain

f:id:mmpolo:20190423232347j:plain

f:id:mmpolo:20190423232408j:plain

f:id:mmpolo:20190423232428j:plain

 画廊の手前の空間には天井から床まで白い糸が垂直に下ろされている。その数は100本ほど。白い糸は生糸を撚った紬糸とのこと。床には細い柱みたいな木柱が立てられている。その表面に白い模様が描かれていると思ったが、紬糸を張っている。
 たくさんの糸の林を通りぬけて奥の空間に行くと、6枚の古材の板が並べられており、その板の表面に模様のように紬糸がステッチされていて(ステッチの言葉の使い方これでいいのかな?)、それが華やかに古材を彩っている。
 それらは古い民家に使われていた古材の記憶とか古材の霊魂とかを紬糸によって具現化しているかのようだ。どこかアニミズムにも通じるような。古材が紬糸によって装われて再生したかのように。
 少なくともトキ・アートスペースという空間が〈空虚〉という語の反対語としての〈充実〉した空間に変わっている。興味深いインスタレーションだ。
     ・
小林花子展「山際にふれる」
2019年4月15日(月)-4月28日(日)
12:00-19:00(最終日17:00まで)水曜日休廊
     ・
東京都渋谷区神宮前3-42-5 サイオンビル1F
電話03-3479-0332
http://tokiart.life.coocan.jp/
地下鉄銀座線外苑前駅から徒歩5分ほど

 

東京国立近代美術館の常設を見る

 東京国立近代美術館の常設を先月末頃見た。現代美術の印象に残った作品を撮影した。

f:id:mmpolo:20190421225617j:plain

山口長男:山口は良い。戦後最も優れた日本の画家だろう。

f:id:mmpolo:20190421225656j:plain

岡本太郎「燃える人」:第五福竜丸をテーマにしている。作品は良くない。

f:id:mmpolo:20190421225726j:plain

木内克:テラコッタ。こんなに大きいのは初めて見た。

f:id:mmpolo:20190421225755j:plain

中西夏之ハイレッドセンター高松次郎赤瀬川原平と中西)の中では最も良い作家だ。

f:id:mmpolo:20190421225827j:plain

f:id:mmpolo:20190421225845j:plain

f:id:mmpolo:20190421225903j:plain

ハンネ・ダルボーヴェン:巨大な版画作品。

f:id:mmpolo:20190421225932j:plain

河原温:日付絵画でアメリカでもっとも成功した日本人作家。

f:id:mmpolo:20190421230315j:plain

柳原義達:カラスのブロンズ彫刻で有名。

f:id:mmpolo:20190421230057j:plain

菅木志雄:トタン板、もの派の作家。

f:id:mmpolo:20190421230121j:plain

誰だったろう、忘れた。

f:id:mmpolo:20190421230154j:plain

赤瀬川原平

f:id:mmpolo:20190421230222j:plain

赤塚祐二:抽象を描いていたこのころの赤塚は良かった。

 

 

三浦哲哉『食べたくなる本』を読む

 三浦哲哉『食べたくなる本』(みすず書房)を読む。簡単に言えば料理書の書評集なのだが、かなり詳しく紹介し、料理に対する各著者の思想みたいなものにまで踏み込んでいる。さすがに取り上げられるのは超絶名人の料理書が多い。ここまで凝ったことをして味を追求しているのかとただただ圧倒される。
 「ジャンクフードの叙情」という章で、安部司の『食品の裏側』(東洋経済新報社)が取り上げられる。安部は大学で化学を専攻し、食品添加物専門の商社に入社した。安部がスーパーに並んだ「減塩」梅干しを食べると。

それはもう梅干しではありませんでした。「梅風味の添加物」あるいは「梅干しの形をした添加物」にしか思えないのです。
 塩分5%といったら、常温では保存できません。腐敗を防ぐため、アルコールに漬けてあるのです。
 梅自体も、梅焼酎で使われた「リサイクル梅」なのか、風味もうまみもなにもない。
 その分、「グルタミン酸ナトリウム化学調味料)」「ステビア」「グリシン」「ソルビット」「かつおエキス」「たんぱく加水分解物」で味を補う。「合成着色料」も2~3種類使って鮮やかな色を出す。すっぱさは「酸味料」で出します。

 

 発酵学者の小泉武夫の十八番はくさい料理だ。世界1くさい食品が、魚を加工せず缶詰に密封し、嫌気性の環境で発酵させたシュール・ストレミング、第2位は発酵して激烈なアンモニア臭を放つエイの刺身ホンオ・フェ。以下3位から5位までが、ニュージーランドのエピキュアーチーズ、カナダインディアン・イヌイットたちが食べるキビヤック、日本のクサヤを焼いたものと続く。
 丸元淑生のレシピでは目を疑うような数値に出くわすことがある、と三浦が書いてそれを紹介する。あさりのスパゲッティには4人前であさりを2キロ使う。クリームなしのクラムチャウダーでは、はまぐり(なければあさり)1.5キロ、これも4人前だ。かつお節の量は水10カップに対して160~200ℊ程度。これは標準の4、5倍になる。
 オリーブオイルの使用量もすごい。炙ったパンにオイルをたっぷり注ぐ「ブルスケッタ・センプリチェ(シンプルなブルスケッタの意味)」では、パンを入れたお皿がオイルでプールのようになるくらいかける。
 さらに美食のなかの美食が次々と紹介される。世の中にはとてつもないご馳走があるようだ。それらを食べてみたいと思う一方、思い出すエピソードがある。40年ほど前日本近代史を読みあさっていた頃読んだ本で著者も題名も忘れたが、会津あたりの出身の元武士が、明治初期に奄美へ行って奄美の住民のために鹿児島の役人と戦った話。戦ったといっても鹿児島県から過酷な支配を受けていた島民のために交渉して税金などの不平等を改善したこと。人頭税石のように身長に応じて課税されたような不合理な税制を改めさせた。その男がどんな料理を出されても決して美味い不味いということはなく出された料理はすべて完食したという。地元では英雄として遇されたが、郷里に帰ったあと家族に奄美での事例を全く話すことはなかったという。
 私も美食に心動かされながら、一方でそれをわずかにも批判する心を持ちたいとも思っている。

 

食べたくなる本

食べたくなる本

 

 

若葉町ウォーフで演劇ユニットnoyRの『ニーナ会議‐かもめより‐』を見る

f:id:mmpolo:20190419220142p:plain
 横浜黄金町の若葉町ウォーフで演劇ユニットnoyRの『ニーナ会議‐かもめより‐』が上演されている(4月28日まで)。チェーホフの『かもめ』を原作として、樋口ミユ構成・演出で『かもめ』の登場人物のひとりニーナを主人公にして再構成している。ニーナがオリジナルの外に3人登場する。その3人がニーナの内面の声を語るのだが、実際にニーナ1、2、3として同時に舞台に出ているのだ。
 登場人物は4人のニーナのほかは、最初ニーナと相思相愛だったトレーブレフと、トレーブレフの母親の愛人である有名な作家のトリゴーリンだけ。ニーナはトレーブレフを捨ててモスクワへ帰ったトリゴーリンを追って、女優を目指してモスクワに行く。やがてトリゴーリンに棄てられ女優としても成功することなく地方回りをしている。
 巡業で近くまで来たときニーナはトレーブレフに会いに来るが、今でもニーナは自分を捨てたトリゴーリンを愛していると言ってトレーブレフの愛を拒絶する。トレーブレフは書いていた小説の原稿を捨てて拳銃自殺する。
 構成・演出の樋口ミユはニーナの心に寄り添っていく。ニーナの影のような3人のニーナを作って、ニーナの意識の流れのような内面の声を舞台に露出させる。それによって原作の『かもめ』で主役たちのひとりであったニーナが、たったひとりのヒロインとして脚光を浴びる。
 最後に彷徨うようなニーナの姿を3人のニーナの影たちが下着姿になって演じる。客席数20ほどの広くはない会場で、間近に見る下着姿の女優たちの容姿は内気な私にとって、見てはいけないような居心地の悪さを感じさせられた。もっと大きな会場で遠望するのなら冷静に見られたのだろうが。
 このように再構成を許し、それをも成功させるチェーホフの偉大さを再確認した。またチェーホフを見てみたい。
 出演は、大木実奈、富岡英里子、平井光子、大道朋奈、仲道泰貴、鈴木昌也。ピアノが黒木佳奈で、このピアノが良かった。曲は武満徹の「小さな空」だった。(黒木さんが教えてくれた)。


公演の詳細は、
https://stage.corich.jp/stage_main/79850

 

 

ヒノギャラリーのエルヴィーン・レーグル展を見る

 東京八丁堀のヒノギャラリーでエルヴィーン・レーグル展が開かれている(4月20日まで)。レーグルは、1954年ドイツバイエルン州出身の彫刻家。ヒノギャラリーでは5年ぶり2回目の個展となる。ギャラリーのホームページに掲載されていた言葉。

レーグルの作品は、往々にして非常に自由な創作と受け止められがちですが、そこには学生時代に徹底的に叩き込まれた塑像の基礎であったり、扱う素材の特徴、そして三次元から二次元、またその逆といった構成変換が体得されており、そういったいわば礎のような、感覚にもつながる豊かな領域によって、一見アンバランスながらも心地のよいレーグルならではの作品を生み出しています。特別なテーマやコンセプトは持たず、素材に触れ、構造を探りながら、そして自身の感性に常に呼応させながら、かたちを見極めていきます。

f:id:mmpolo:20190417231500j:plain

f:id:mmpolo:20190417231517j:plain

f:id:mmpolo:20190417231535j:plain

f:id:mmpolo:20190417231554j:plain

f:id:mmpolo:20190417231610j:plain

f:id:mmpolo:20190417231628j:plain

f:id:mmpolo:20190417231709j:plain

f:id:mmpolo:20190417231723j:plain

f:id:mmpolo:20190417231742j:plain

f:id:mmpolo:20190417231757j:plain

 一見複雑な形態でありながら、どこか人を惹きつけるような、言わばよそよそしくない印象が感じられる。抽象的でありながら見る者の思いを排除しない暖かい印象がある。床に置かれた作品と壁に取り付けられた作品があり、ほかにドローイングも展示されていた。主として木に石膏を塗っているという。
 見に行ったのが遅かったので残り会期が3日間しかない。あまり他では見たことのない形が並んでいる。貴重な個展だと思われる。
     ・
エルヴィーン・レーグル Erwin Legl 展
2019年3月30日(土)-4月20日(土)
11:00-19:00(土曜日17:00まで)日曜・祝日休廊
     ・
ヒノギャラリー
東京都中央区入船2-4-3 マスダビル1階
電話03-3537-1151
http://www.hinogallery.com
JR線・地下鉄日比谷線「八丁堀」駅A2番出口より徒歩5分
地下鉄有楽町線新富町」駅7番出口より徒歩5分