亀戸アートセンターの内山聡展を見る

 東京亀戸の亀戸アートセンターで内山聡展が開かれている(8月28日まで)。内山は1978年神奈川県生まれ。2005年に多摩美術大学大学院日本画研究領域を修了している。2003年にアートスペース羅針盤で初個展、その後神奈川県のギャラリーHIRAWATAやギャラリー現、eitoeiko、ギャラリーOUT of PLACEなどで個展を開いている。

 今回は以前制作した同心円状のテープのオブジェを1階のスペースに飾り、2階のスペースには紙テープを床一杯に広げている。その量は1階のオブジェと同数のテープを使っているという。

2階で使った紙テープの芯



 この同心円状のオブジェについて以前私が書いたことを再録する。

 

 これは何か。まず何よりも物質そのものだ。おそらく長さ30km以上ものテープが円盤に集積されている。これを巻く、即ち制作するために作家は毎日を費やして3カ月を要しているという。つまり時間の集積。物質と時間がこの円盤の形に集積されている。10色からなるグラデーションが、それを具体的に表している。そのような、これは物質そのものなのだ。

 

 そのオブジェを解きほぐして展示したという設定が2階のインスタレーションなのだろう。2つのスペースを見比べることで、内山の行為をより理解できるように思う。

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内山聡展「WORKS」

2022年8月6日(土)―8月28日(日)

16:00-22:00(土日は13:00-20:00)木曜日休廊

夏季休業8月11日―8月18日

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亀戸アートセンター

東京都江東区亀戸9-17-8  KKビル1階

https://kac.amebaownd.com/

交通機関

◯都営新宿線 東大島駅 大島口 から徒歩12分

(新宿方面からお越しの方は、一番後ろの車両にお乗りいただくとスムーズです)

東武鉄道亀戸線 亀戸水神駅から徒歩12分

 (ブラブラ散歩して来られる方にオススメです。レトロな雰囲気の亀戸線は情緒があります)

総武線 亀戸駅 東口から徒歩20分 (改札口 東口から出ると少し近くなります)

※両国、錦糸町、亀戸、葛西、小岩から来られる方は、バスが便利です。浅間神社のバス停で降りていただければ徒歩3〜5分です。

 

内田春菊『私たちは繁殖している 16』を読む

 内田春菊『私たちは繁殖している 16』(ぶんか社)を読む。この16巻は自分のがん体験を描いているとあったので読むことにした。内田は大腸がんと診断され、抗がん剤治療を受け、5時間の手術ののち人工肛門を増設した。元からあった肛門は手術で閉じ、左わき腹に人工肛門が作られた。肛門を閉じるってどんなになるんだろう?

 でもそれ以上の詳しいことは描かれていない。そもそも208ページのうち、182ページまではガンとは無関係の日常が描かれた私小説マンガで、息子や娘たちとのどうということのない生活が描かれている。特に事件とかドラマティックなことなどなく、わざわざマンガに描くほどの内容はない。

 そういえば、西原理恵子の「毎日かあさん」も家族の日常を描いていた。売れっ子漫画家が連載を持ったとき、ネタが追い付かなくて安易に私小説マンガに逃げるのだろうか。

 最後に「これからがん話連載してまた本にする予定」とあったが、もう内田春菊はいいやという気分になった。

 

 

 

J. D. ゼトゥン『延びすぎた寿命』を読む

 J.  D. ゼトゥン『延びすぎた寿命』(河出書房新社)を読む。副題が「健康の歴史と未来」。著者はフランスの医学部教授。人間の寿命と疾病の関係を研究している。先史時代から工業化以前まで人間の健康状態は平均してかなり悪かった。その平均寿命は世界の大半の国で25年から30年だった。平均寿命がこのように低いのは乳幼児死亡率が非常に高かったからだ。18世紀まで、少なくとも半数の子どもが10歳前に死亡していた。多くの子どもが生後1年足らずで死んでいた。

 人間の死因の大半は、微生物感染症、栄養不足、暴力の3つだった。感染症は、インフルエンザ、結核天然痘ハンセン病コレラ、ペストなどだった。

 18世紀に天然痘ワクチンが開発される。19世紀に工業化が進み、都市化は国民の健康を悪化させた。不衛生を改善する運動が起こる。コレラ対策に飲料水の改善が進められた。パストゥールが病原微生物を発見した。コッホは炭疽菌を研究した。

 20世紀初頭、第1次世界大戦で1800万人が亡くなったが、その直後スペイン風邪の流行で、5000万人~1億人が亡くなったとみられる。

 第2次世界大戦後、先進工業国の平均寿命は65年から70年ほどに延びた。それは子供たちの死亡率が下がったことと、中高年の死亡率が下がったことによる。生活環境が殺菌され、食べ物も十分手に入るようになった。さらにワクチンや抗生物質が大きな役割を果たした。

 20世紀後半、心血管疾患とがんに対して製薬産業が大きな役割を果たした。1980年代始めにはバイオ医薬品が開発され、多くの病気の治療で活躍した。

 寿命が延びると健康格差が顕在化する。収入が健康格差をもたらす。所得が多いほど寿命が長いことが分かった。

 また気候変動が健康に影響を与えている。

 さて、第2次世界大戦後、研究者たちは微生物疾患はなくなるだろうと予言した。根絶が近いと主張した。イェール大学とハーバード大学は1960年代末に感染症部門を閉鎖した。しかし、その後エイズが流行し、さらにアジアコレラ、インドのペスト、エボラ出血熱の流行を見た。さらに、チクングニア熱、ジカ熱、コロナなどのパンデミックが起きている。

 アメリカでは平均寿命が低下し始めている。原因(死因)は、アルコール、鎮痛剤オピオイド、自殺が関連していた。研究者はこれを絶望死と呼んだ。

 いつまでも寿命が延びると考える方がおめでたかった。現在の平均寿命でもう十分だと考えるのが妥当なのではないか。不健康で長生きするのは誰も望まないだろう。

 

 

 

姫岡とし子『ローザ・ルクセンブルク』を読む

 姫岡とし子『ローザ・ルクセンブルク』(山川出版社:世界史リブレット)を読む。副題が「闘い抜いたドイツの革命家」。リブレット=小冊子だから100ページちょっとの簡単な伝記。私はローザについてはほとんど知らなかった。先に読んだ池上彰佐藤優『激動 日本左翼史』(講談社現代新書)で、佐藤優が、ヨーロッパのマルクス主義ローザ・ルクセンブルクが主流でレーニンは傍流、日本のようなスターリン主義系のマルクス主義が強い国はめずらしいと言っていた。それで手に取ってみた。

 

佐藤  これもまた労農派的なのですが、社青同の思想でもうひとつ重要なのが、ローザ・ルクセンブルクの理論に依拠し「周辺からの収奪」を問題視した点です。

 資本主義においては資本家が労働者から搾取するだけでなく、富裕層が貧困層から、というように常に社会の中枢に近い側が周縁からの収奪を行っています。(社青同解放派はこのことを資本主義における最大の悪の一つと捉え、特にアジアに対する罪の意識を非常に強く持っていました。

池上  大阪市立大学の斎藤幸平さんが書いた2020年のベストセラー『人新生の「資本論」』(集英社新書)でも外部収奪論は特に強調されている点ですね。その意味で解放派の思想は現代に通じる部分はありそうですか。

佐藤  そのとおりでしょうね。ただ斎藤幸平さんがまさにそうなのですが、彼のようにヨーロッパでマルクス主義を学んでくると、基本的にレーニンは傍流でローザが主流なので自然とそこに注目するようにはなるんです。日本みたいに資本主義国でありながらスターリン主義系のマルクス主義が強い国は実はかなり珍しいのです。

 

 本書のカバー袖の惹句を弾く。

 

ドイツの革命家ローザ・ルクセンブルクポーランドで生まれてスイスに亡命し、偽装結婚によってドイツ国籍をえて、ヨーロッパ労働運動の中心地ドイツで最左派の理論家として活動した。ドイツ革命時の1919年1月に虐殺されるまで、彼女は国際プロレタリア革命の達成のために妥協を排し孤立を恐れず闘い抜いた。本書は、激動する国際情勢のなかで彼女が打ち立てた革命論とその実現に向けた行動、ドイツ社会民主党の右傾化との対決過程を描きだす。

 

 手際よくローザの一生を描いている。ローザという人間が何者なのか少し分った気がする。ただ、本書はローザの行動を中心に描いていて、小著のせいもあってその思想までは十分に踏み込んではいない。ローザの革命論がどのようなものであったのかまでは、よくは分からない。ただ、革命運動の渦中にあったこと、同じ左翼同士の理論闘争に明け暮れたこと、48歳という若さで亡くなったこと等から、現代にも通じる革命思想を打ち立てたとは思えなかった。改めてローザの思想を学んでみようとまでは思わなかった。

 本書は写真も多く、ローザの簡単な伝記を学ぶには適切な資料だと思う。

 

 

 

ヤマザキマリの人生相談を下品な興味で読む

 ヤマザキマリ毎日新聞に毎週人生相談の回答をしている。今回は「性生活に興味を持たぬ妻」というタイトル(2022年8月6日付)。

 

 結婚生活1年半の妻と「生の不一致」に悩んでいます。私は性生活をもっと充実させたいのですが、妻は性的なことに興味がなく誘っても断られます。交際期間からその傾向はあったのですが、結婚して一緒に住めば解決するかと思っていました。その他の相性は良く不満はありません。離婚はしたくありません。他人には相談できず悩んでいます。(26歳・男性)

 

 この質問にヤマザキマリがどんな回答をするかと、下品な興味満開でそれを読んでみた。

 

 正直、こうした夫婦問題については、新聞の人生相談に投稿し、第3者の意見を聞いたところで解決することは何もないでしょう。そもそも、あなたと奥様の間で結婚に対する考え方が合致していない。それについてお互い冷静に話し合ったことはありますか?

 あなたの考えている結婚の在り方と、奥様の考え方には明らかな行き違いがあるわけで、それをまず認識するところから始めなければならないと思います。でも、そうした認識は、本来なら結婚という大きな決断に踏み切る前にすべきことのはず。(後略)

 

 と、にべもない。確かに性生活に興味のない女性もいるし、同じく興味のない男性も(少数ながら)いる。両性とも興味が強いか興味がない組み合わせが一番良いのだろうが、結婚するまで分らないことも多々あるようだ。

 私の周囲でも興味の少ない男が2人ほどいた。1人は奥さんから離婚を申し込まれてしまった。いや、彼は単に下手だったのかもしれない、と自分の事は差し置いて思ってみる。下手な男はいる。彼はどこで学べば良いのか。風俗は参考にならない。あれは特殊な世界だ。上手な女性から学ぶのが一番良いだろう。上手な女性はどこにいるのか。昔はそうしたことを手ほどきしてくれた年上の女性がいたようだけど、最近はあまり聞かない。高校生の頃、同級生たちが次々にお世話になった年上の女性がいたと話してくれた知人もいた。

 私にはこれ以上のアドバイスはできそうもない。若者よ、頑張れ。