ギャルリ-東京ユマニテの川島清展を見る

 東京日本橋兜町のギャルリー東京ユマニテで川島清展「マテリアル アメーバ」が開かれている(11月22日まで)。川島清は1951年福島県生まれ、1986年東京藝術大学大学院美術研究科後期博士課程を満期退学している。1981年ときわ画廊で初個展、以来様々な画廊で個展を繰返し、いわき市立美術館と川越市立美術館で個展を開いている。

 ギャラリーのホームページから、

鉄、鉛、木、石膏など重厚な素材を用いて構成される川島の彫刻は、身体を通して紡ぎだされる言葉とともに構築された空間が提示されます。一方、平面作品として発表されるドローイングは、彫刻のためのデッサン、プランとしての位置付けではなく、紙や板など素材の上に成立した彫刻として、また別の位置付けがなされています。

今展では、「マテリアル アメーバ」と題された、これまでのシリーズとは異なるタイトルの彫刻作品を発表いたします。木や鉄が組み合わされた4mの大作に加え、新作の小品も展示いたします。

 

(小品)

(ドローイング)


 画廊の中央に木や鉄が組み合わさったちょっとぶっきらぼうな作品が置かれている。太い鉄パイプに差し込まれた雑木の枝、画廊に設置されていなかったら「作品」と認識しがたいような造形。しかしながら強い存在感を示している。

 奥の部屋には小品とドローイングが展示されている。

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川島清展「マテリアル アメーバ」

2025年11月4日(火)-11月22日(土)

10:30-18:30(日曜日休廊)

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ギャルリー東京ユマニテ

東京都中央区日本橋兜町15-12 八重洲カトウビル1F

電話03-3562-1305

https://g-tokyohumanite.com

 

熊野純彦『哲学史にしおりをはさむ』を読む

 熊野純彦哲学史にしおりをはさむ』(青土社)を読む。熊野純彦は現在最も優れた哲学者の一人。その熊野の哲学論文ではないエッセイを集めたもの。とはいうものの熊野によれば論文とあまり区別されていないという。事実「ハイデガーマルクス主義」とか、本多謙三の「現象学弁証法」について書いた「現象学とその外部」、『西田幾多郎全集』の月報として書かれた昭和十年代の京都学派についての「「論理と生命」の思考圏によせて」、市村弘正『増補 敗北の二十世紀』の解説、納富信留プラトン 理想国の現在』の解説、大澤真幸『〈世界史〉の哲学2 中世篇』の解説、中野敏男『マックス・ウェーバーと現代・増補版』の解説、神崎繁『内乱の政治哲学』の書評、今村仁司への追悼文、坂部恵の思い出、そして廣松渉『もの・こと・ことば』の解説など。短い文章ながらいずれも濃い内容ばかりだ。

 今村仁司への追悼文で言及されている今村の『マルクス入門』(ちくま新書)はぜひ読んでみようと思った。廣松渉熊野純彦の師である。『もの・こと・ことば』は早速注文した。

 本書のタイトル『哲学史にしおりをはさむ』は正にそのまま内容を表しているが、商品として書店に並べたときにインパクトが弱いのではないかと危惧する。本書の面白さが伝わるとは思えないからだ。

 

 

 

 

新宿高島屋美術画廊の佐藤正和重孝彫刻展を見る

 新宿高島屋10階美術画廊で佐藤正和重孝彫刻展「古代甲虫文明」が開かれている(11月17日まで)。佐藤正和重孝は1973年北海道生まれ、1996年東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業し、1998年同大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了している。横浜高島屋や静岡松坂屋、名古屋三越、東急本店などで個展を開いている。

 佐藤正和重孝は石や金属、木などを使って甲虫の彫刻を作っている。

オオスズメバチの石製柱状茶入」

(ドローイング)


 見事な技術だと思う。私には大きな作品よりも小品の方が魅力的に見えた。

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佐藤正和重孝彫刻展「古代甲虫文明」

2025年11月5日(水)-11月17日(月)

10:30-19:30(最終日16:00まで)

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新宿高島屋10階美術画廊

東京都千駄ヶ谷5-24-2

電話03-5361-1111

https://www.instagram.com/shinjuku.takashimaya.gallery/

 

ギャラリーQの井上修策展Part 2を見る

 東京銀座のギャラリーQで井上修策展Part 2が開かれている(11月15日まで)。井上修策は1959年三重県生まれ、1984年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業している。長年ギャラリー現で個展を開いていたが、最近はギャラリーQやトキ・アートスペースなどで開催している。今週は先週のPart 1に続くPart 2だ。

 今週は世界の核保有国や核共有国、核開発疑惑国に核を搭載したICBMを撃ち込んだという設定の絵?を展示している。各国の主要な地域にICBMを撃ち込む。するとそこに火口が開いた山が現れる。これは核爆発とそれに伴う放射能の広がりを示しているという実に物騒な作品だ。地図の上下に置かれた絵は、その国の国獣や敵対国の動物だという。さすが強い批評を作品化する井上修策さんの展示だ。お花畑のような能天気な造形などとは真逆の作家なのだ。

パキスタンとインド

ミャンマーとシリア

アメリカとイタリア

イギリスとベルギー

ドイツとフランスとオランダ

イスラエルとロシア

イランと中国

中国と北朝鮮


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井上修策展Part 2

2025年11月10にいち(月)-11月15日(土)

11:00-19:00(土曜日17:00まで)

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ギャラリーQ

東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F

電話03-3535-2524

https://www.galleryq.info/

 

コバヤシ画廊の西成田洋子展を見る

 東京銀座のコバヤシ画廊で西成田洋子展「記憶の領域2025」が開かれている(11月15日まで)。西成田洋子は茨城県生まれ、1987年より東京、水戸、ニューヨークなどでもう30回以上も個展を開いている。作品は大きな奇妙な立体で、古着などを縫い合わせて造形している。

(小品)


 画廊の中央に西成田の作品が屹立している。近づいてみると、箒やパイプ、鞄、靴、植木鉢、種々の衣類が半ば生の形で組み込まれている。個々の品物は絵具で固められ、決してきれいとは言えない状態なのに、作品全体は聖性をまとっているかのようだ。襤褸の中から観世音菩薩が立ち現れると言いたいほどだ。

 触れるものを金に変えるミダス王の逸話を連想する。西成田の魔法の手をぜひ見に来てほしい。

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西成田洋子展「記憶の領域2025」

2025年11月10日(月)-11月15日(土)

11:30-19:00(最終日17:00まで)

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コバヤシ画廊

東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1F

電話03-3561-0515

http://www.gallerykobayashi.jp/