東京四谷三丁目のTS4312で澤登恭子展「華麗なる崩壊」が開かれている(10月27日まで)。澤登恭子は1998年東京藝術大学美術学部絵画科油画卒業、2000年に同大学大学院美術研究科壁画研究室を修了している。今まで水戸芸術館や大阪、ロンドン、山口などで発表してきたが、ここTS4312では2019年、2022年に続いて3回目の個展となる。
作家のコメント、
溶けたパラフィンに自身の指先を浸し、乾いてから剥がした指型を無数に作り、花びらに見立てた作品のシリーズ。
その花びらに見立てた無数の指型は、女性たちが既成の価値観により縛られて、あるいは己で縛っている状況から新たな状況を強く求めて古いものを外へと押し出そうとする力の集積を意味している。
それは一枚一枚は頼りなく見えづらくとも、数が増えるにつれ、存在感を見せる指先の型と似ている。それらは古い空気の籠った室内に、嵐と共に突然に舞い込んできた無数の花びらのようにも見える。
今回はその花びらに、桃の節句に飾る雛人形をインスタレーションに加え、女性が従来求められ、答えだとあてがわれてきた生き方が少しずつ崩れてゆきつつある様を表現している。
会場には崩れた雛人形のセットが広がっている。内裏雛や三人官女などが投げ出されたように転がされている。その上に無数の桜の花びらが載っていて、雛壇を押しつぶしているかのようだ。雛人形は女性を取り巻く制度の暗喩なのだろうか。女性たちを拘束するような制度=雛壇が花びらに見立てられた指型によって崩れていく来るべき社会を現しているのだろうか。
崩れた雛壇という一見悲惨な事件を思わせる情景が、実は作家の目指す新しい社会を望むための最初の光景を現しているのだろうか。真壁仁の「峠」という詩を思い出す。「大きな喪失にたえてのみ/あたらしい世界がひらける。」
鈍感な我ら男たちは、こうした作品を通じてやっと女性たちの困難な世界、困難な戦いに気づかされる。
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澤登恭子展「華麗なる崩壊」
2024年10月4日(金)-10月27日(日)
13:00-19:00(金・土・日のみ営業、最終日17:00まで)
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TS4312
東京都新宿区四谷三丁目12番地サワノボリビル9階
電話03-3351-8435
FAX03-3359-5650
https://ts4312r.com/
※東京メトロ丸の内線四谷三丁目駅1番出口から新宿に向って1分、セブンイレブンの隣のビル