ギャラリー檜Fのシマヅヨウ彫刻展を見る

 東京京橋のギャラリー檜Fでシマヅヨウ彫刻展「鎖の感じ」が開かれている(12月10日まで)。シマヅは1962年兵庫県生まれ、1986年に武蔵野美術短期大学専攻科を修了している。1986年より個展を続けているという。最近は毎年ここギャラリー檜Fで開いている。

 今回のテーマは「鎖の感じ」、木彫で鎖を作っている。一木で複雑な鎖を彫っているのだ。素晴らしい技術! 木は欅を使っているという。

上の作品の部分

上の作品の部分


 他にも鎖の造形やいつものエイリアンのような像、奇妙な形の小品が並んでいる。

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シマヅヨウ彫刻展「鎖の感じ」

2021年12月5日(月)―12月10日(土)

11:30-19:00(最終日17:00まで)

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ギャラリー檜F

東京都中央区京橋3−9−2 宝国ビル4F

電話03−6228−6558

http://hinoki.main.jp

 

 

ギャラリー川船の「歳末入札展示会」が始まった

 東京京橋のギャラリー川船で「歳末入札展示会」が始まった(12月10日まで)。

 入札の方式は「二枚札方式」、これは入札カードに上値(上限)と下値(下限)の二つの価格を書いて入札するもの。他に入札者のない場合は下値で落札する。上値が同額の場合には下値の高い入札者が上値で落札する。上値と下値の間に他の入札者の上値が入った場合には、上値の高い入札者が上値で落札する。下値が他の入札者よりも高い場合は下値で落札する。上値、下値が同額の場合は抽選となる。

 落札価格に別途消費税がプラスされる。

 なお、最低価格が設定されているので、その価格から入札することになる。入札の最小単位は100円となっている。

左端:辰野登恵子

左上:渡辺豊重、中下:堂本尚郎、右:三上誠

左上:萩原英雄、左下:原田節子、中下:里美勝蔵

左上:川村清雄、左下:萬鉄五郎、右上:中村宏


 主なものを拾うと、中村宏250万円~、萬鉄五郎380万円~、堂本尚郎70万円~、長谷川利行240万円~、柳原義達のブロンズ60万円~、小山田二郎45万円~、海老原喜之助45万円~、逆に安いものは杢田たけを5,000円~、司修5,000円~、建畠覚造8,000円~、村上肥出夫3,000円~などとなっている。松本陽子のシルクスクリーンが5,000円~というのもあった。

 12月10日土曜日の午後1時に入札締め切り、同1時45分より開札となっている。

 ギャラリー川船のホームページには142点の作品リストと画像、最低価格が載っている。

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「歳末入札展示会」

2022年12月5日(月)-12月10日(土)

11:00-18:00(最終日13時まで)

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ギャラリー川船

東京都中央区京橋3-3-4 フジビルB1F

電話03-3245-8600

http://www.kawafune.com

 

 

千野栄一『言語学を学ぶ』を読む

 千野栄一言語学を学ぶ』(ちくま学芸文庫)を読む。本書は「言語学へのいざない」と「近代言語学を築いた人々」からなっている。その「言語学へのいざない」は三省堂のPR誌『ぶっくれっと』に1984年から1986年に連載されたもの。当時『ぶっくれっと』を愛読していたので、そこで読んでいた。そして千野栄一田中克彦とともに私の好きな言語学者になった。2002年に単行本化されたとあるので、そのときにも読んでいるはずだ。

 千野栄一はスラブ語の専門家で、チェコスロバキアに9年間留学していたこともあって、チェコには特に詳しい。チャペックやクンデラの小説も訳しているが、優れた言語学者だ。

 「言語学へのいざない」は16の項目を立て、言語学の基礎を分かりやすく解説してくれる。まさに言語学の初歩的な手引書だ。その項目は「言語調査」「言語学史」「音声学」「音韻論」「比較言語学」「解読」「社会言語学」「ピジンクレオル諸語」「ユニバーサル」「方言学」「日本語の構造」「言語類型論」「文字論」「対照言語学」「言語」「世界の言語」となっている。見出しだけ見ると難しそうだが、実に分かりやすく解説している。そして関連文献を推薦図書として紹介しているので、さらに詳しく知りたい人にとても参考になる。

 後半の「近代言語学を築いた人々」では10人の言語学者が取り上げられている。名前の前にその言語学者のコンセプトが冠のように付せられていて業績がひと目でわかるようになっている。

 「巨人ボドゥアン・ド・クルトネ」「不死鳥ド・ソシュール」「具眼者ビレーム・マテジウス」「天才セルゲイ・カルツェフスキー」「機能論者マルティネ」「構造類型論者メシチャニーノフ」「言語の詩人エドワード・サピア」「碩学ヤコブソン」「比較言語学者アントワーヌ・メイエ」「日本の言語学者 河野六郎」となっている。

 千野はまた結構辛辣で、メイエの項で、いわゆる日本語系統論を強く非難している。

 

……今日、いわゆる日本語系統論を唱えている人たちが、もしこの書(メイエ『史的言語学における比較の方法』)を読み、その深い思索の跡をたどれたとしたら、あのばかげた、いわゆる系統論さわぎはなかったであろう。

 

 これは日本語の起源を古代タミル語にあるとした大野晋を指しているのだろう。

 千野栄一は2002年に亡くなっている。あとがきを未亡人の千野亜矢子が書き、解説を弟子の阿部賢一が書いている。阿部がプラハに留学したとき、大学界隈で何度も、君はチノの教え子かと尋ねられたという。千野の人柄が偲ばれる。

 

 

 

布施英利『現代アートはすごい』を読む

 布施英利『現代アートはすごい』(ポプラ新書)を読む。副題が「デュシャンから最果タヒまで」というもの。実際は現代アート入門書といったところか。初心者に対してはよくできている。

 デュシャンの便器の作品「泉」について。小学校の図工の授業で先生が「家にあるものを何でもいいから持ってきて、それでアートを作りましょう」と言ったとき、便器を抱えて持ってくる子供がいたら、先生は叱るかもしれないが、子供たちにはウケる。デュシャンの「泉」はそういう作品だ、という。

 またデュシャンの「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」(別名大ガラス)について、これは花嫁と独身者(御男たち)を描いたものだ、これは二次元の花嫁だという。

 こんな調子で難解な現代美術(アート)をやさしく噛み砕いて解説していく。ポロックのドリッピング絵画は、誰でも作れそうだが、絵具の濃さ・薄さ、硬さ、手のスピードなどで線の途切れ具合、雫の点々の大きさが変わる。それを他の人が再現することはできない、と。

 ダミアン・ハーストは今年国立新美術館「桜」の絵を展示した。ハーストは動物の死体や骸骨を作品として展示して度肝を抜いた作家だ。それが壁紙のような桜を描いて批判されていた。布施は「国立新美術館の展覧会場を出た後、自分は、本物の、骨太の絵画の登場を見た、という充実感に包まれていた」と書く。

 河原温の日付絵画について、

 

 ある日、愛知の美術館で、河原温が描いた「Today Series」を見ていたことがあった。そこにあるのは文字と記号だが、自分にはそこに描かれた「その日」に、地球が一回転し、その回転の間に、地球の中の小さなアトリエで、一人の画家が絵を一枚、完成させた光景が見えた。想像できた。

 するとその絵に、宇宙の壮大な空間と、壮大な時間が見えてきた。

 たしかに、河原温の「Today Series」は、たかが日付だが、しかし途轍もない現代アートなのだ。

 

 布施はさらに建築家のアルヴァ・アアルトと詩人の最果タヒをも現代アートだと主張する。いや、建築も詩も現代アートとは言わないだろう。

 河原温の日付絵画に壮大な空間や時間を見るのは贔屓の引き倒しだろう。デュシャンの「大ガラス」の解釈も薄っぺらい。ダミアン・ハースト「桜」のどこが本物の骨太の絵画なのか。

 総じて「現代アートはすごい」という前提で、それに合わせて言葉を並べている印象が強い。有名な画家、美術家が無条件に良いわけではないだろう。現代アートのどこがそんなにすごいのか、読者は説得されないだろう。読み終えて不満が募った読書だった。

 

 

 

アート トレース ギャラリーの中谷真理子展を見る

 東京両国のアート トレース ギャラリーで中谷真理子展「#1つしかない答えなんかない」が開かれている(12月11日まで)。中谷は神奈川県出身、1992年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業、2020年にもこのギャラリーで個展を開いている。

 ギャラリーのホームページより

 

青年期までのライフステージに存在する決められたルート。そこから外れてみたらみつかったパラダイムシフトの種。その種からは何が芽吹いたのだろう。

 学校などで使用された教科書、問題集、テストなどの紙、黒板塗料、制服、古着等を素材とした作品で展開するインスタレーション

 

       勉強階段


 子供が小さかった時の資料を再構成して作品を構成している。「勉強階段」という作品は、教科書、問題集、テストなどの紙が貼られた立体作品だ。ほかにもテストなどの資料で作られた制服、あるいは怪獣のおもちゃなど、また脚立にもそれらの資料がたくさん貼られている。平面作品にも制服や上履きの靴などが描かれている。

 小展示室には、「路地裏アートストア」と題して、「小作品、旧作品、DIY小物、グッズなど物販中心のポップアップストア」となっている。

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中谷真理子展「#1つしかない答えなんかない」

2022年11月22日(火)―12月11日(日)

12:00-19:00(水曜日休廊)

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アートトレースギャラリー

東京都墨田区緑2-13-19 秋山ビル1F

電話050-8004-6019

http://www.gallery.arttrace.org

都営大江戸線両国駅A5出口から徒歩5分

JR総武線両国駅東口から徒歩9分

墨田区立緑小学校前