2012-01-01から1年間の記事一覧

『アイルランド紀行』を読む

栩木伸明『アイルランド紀行』(中公新書)を読む。栩木は「とちぎ」と読むらしい。初めて見た漢字だ。本書の書評が管啓次郎によって読売新聞に載っていた(10月28日)。その書評の一部。 本書は現代アイルランド文学の名翻訳者によるアイルランド紀行。現実…

高階秀爾『日本の現代アートをみる』を読む

高階秀爾『日本の現代アートをみる』(講談社)を読む。今年文化勲章を受章した美術評論家高階秀爾が日本の正に旬の現代アーティストを紹介している。本書は講談社のPR誌『本』の表紙を飾った美術作品とその解説をまとめたもの。平成18年1月号から平成20年…

立川昭二『愛と魂の美術館』を読む

朝日新聞の書評で立川昭二の『愛と魂の美術館』(岩波書店)が紹介されていた。評者はノンフィクション作家の後藤正治。 絵と美術をめぐるエッセー集である。作品は、フラ・アンジェリコ『受胎告知」、シャガール「セーヌの橋」、中宮寺「半跏思惟像」、上村…

吉田秀和『永遠の故郷−薄明』を読んで

吉田秀和『永遠の故郷−薄明』(集英社)を読んだ。これは『永遠の故郷』シリーズの2冊目、この「薄明」のほかに「夜」「真昼」「夕映」がある。『永遠の故郷』は吉田秀和が生涯で印象に残った歌曲97曲を取り上げ、原詩と吉田による訳詩、楽譜の一部を織り込…

山本弘の作品解説(40)「裸婦」

山本弘『裸婦』油彩、F8号(45.5cmx38.0cm) 1967年11月に描かれた。山本弘37歳。1970年以降の晩年の傑作群の少し前の作品。デフォルメしながら形態の捉え方は確かで、とても巧みだ。しかしながら、晩年の作品に比べれば過渡期の作品だ。おそらく飯田市で開…

山本弘「裸婦」の素描

山本弘の素描「裸婦」。これが東邦画廊で発表されたとき、ワシオトシヒコが公明新聞(1994月8月13日)に展評を書いてくれた。 決して安易に感傷に溺れることなく、どこまでも、全身に知情意を内包しながら、男くささを発散させる油彩に対し、素描は一見やさ…

朝日俳壇の句

12月24日付け朝日新聞の俳壇に、金子兜太選で神戸市の瀬 正子の句が載っている。 挫 折 て ふ オ ブ ジ エ は 斯 く や 蓮 枯 る る 枯れた蓮の葉は破れ茎は茶色に変色して途中折れている。池一面に大きな葉をそよがせていた姿からこれは何という敗残の形か…

毎日新聞の「この3冊」がル・カレ

先週(12月16日)の毎日新聞の書評欄のコラム「この3冊」がジョン・ル・カレだった。選んでいるのが池澤夏樹。さて何を選んだのか? 1.『スマイリーと仲間たち』(村上博基訳/ハヤカワ文庫/1470円) 2.『リトル・ドラマー・ガール』(村上博基訳/ハ…

坂崎乙郎『絵とは何か』を読む

坂崎乙郎『絵とは何か』が河出書房から文庫化して出版されたので、35年ほど前に読んだ単行本を引っ張り出して読み直した。当時坂崎乙郎についてはたくさん読んでいた。『絵を読む』『幻想芸術の世界』『夜の画家たち』『絵画への視線』等々。もっと読んだか…

生島治郎『浪漫疾風録』を読む

生島治郎の自伝『浪漫疾風録』(講談社)を読む。生島は流行作家として膨大な著作があるが、読んだのはこれが初めてだった。早稲田大学卒業後、就職難の折り、最初にデザイン事務所に勤め、ついで草創期の早川書房に編集者として勤める。上司として編集部長…

福寿草が芽生えた

16日の日曜日、近所の小さな植物園で福寿草が芽生えていた。昨年とほとんど同じ時期だ。いつもこの時期になると福寿草の芽生えを探してしまう。見つければ嬉しい。もう春が近いと思ってしまう。 正月が近いので万両も赤い実をつけている。 私の好きな冬の薔…

長谷川宏『いまこそ読みたい哲学の名著』を読む

長谷川宏『いまこそ読みたい哲学の名著』(光文社文庫)を読む。長谷川はヘーゲルの翻訳で評価の高い哲学者だ。本書で選ばれている哲学書12冊。 アラン『幸福論』 シェイクスピア『リア王』 デカルト『方法序説』 プラトン『饗宴』 『論語』 マックス・ヴェ…

いま、進化論のラマルク説はどう評価されているか

杉晴夫『人類はなぜ短期間で進化できたのか』(平凡社新書)と、更科功『化石の分子生物学』(講談社現代新書)を続けて読んだ。前者の副題は「ラマルク説で読み解く」であり、後者は「生命進化の謎を解く」という。 ダーウィン進化論が定説になっている現代…

原武史『レッドアローとスターハウス』を読んで

原武史『レッドアローとスターハウス』(新潮社)を読む。副題が「もうひとつの戦後史」で、日本政治思想史学者原武史が、西武の特急レッドアロー=西武鉄道沿線、平面プランがY字型の賃貸住宅スターハウス=公団住宅を舞台に選んで、小さな世界の戦後政治思…

表参道の始弘画廊の深沢軍治展

東京表参道の始弘画廊で深沢軍治展が開かれている(12月22日まで)。深沢は1943年山梨県生まれ、1971年東京芸術大学大学院美術研究科(版画専攻)修了。現在京都造形芸術大学で非常勤講師を務めている。 始弘画廊の今回の個展では100号の油彩が6点並んでい…

車谷長吉の人生相談『人生の救い』を読む

車谷長吉の人生相談『人生の救い』(朝日文庫)を読む。車谷が朝日新聞の人生相談「悩みのるつぼ」で回答したものをまとめている。新聞掲載時から私は愛読していた。 回答がとにかく過激なのだ。教え子の女子高生が好きになったという高校教師には、女生徒と…

山本弘の『銀杏』の元絵が分かった

山本弘に「銀杏」という作品がある。下に掲載した作品だ。銀杏の根元を描いている。なぜこんな作品を描いたのだろうと不思議に思っていた。それが分かった。 元絵なるものは奥村土牛の「醍醐」という作品だろう。構図がよく似ている。違いは土牛が華やかな醍…

ギャラリー現の井上修策展「イキタ」が見事!

東京銀座1丁目のギャラリー現で井上修策展が開かれている(12月22日まで)。この個展は最近のベストだろう。画廊の床と壁に口紅のような突起物が張り巡らされている。これは何なのか? タキイ種苗のポリエチレン製の播種用ポットをひっくり返して、その頂点…

アートスペース羅針盤の竹村芳樹新作展が興味深い

東京京橋のアートスペース羅針盤で竹村芳樹展が開かれている(12月15日まで)。竹村は1950年横浜市生まれ、横浜国立大学教育学部美術科に入学するも4年後に中退する。異色なのは、小説『痔物語』(新風舎)を書いて出版していることだ。 竹村は独特の作品を…

藍画廊の葛生裕子展を見る

東京銀座1丁目の藍画廊で葛生裕子展が開かれている(12月15日まで)。葛生は1965年東京生まれ、1988年に多摩美術大学絵画科を卒業している。1986年にかねこあーとギャラリーで初個展をし、その後西瓜糖、コバヤシ画廊、藍画廊、ルナミ画廊、秋山画廊、モリ…

冬来たりなば春遠からじ

「冬来たりなば春遠からじ」という言葉がある。ネットのことわざを解説するページによれば、これはイギリスの詩人シェリーの『西風の賦 (西風に寄せる歌) Ode to the west wind』の末句「If winter comes, can spring be far behind 」が語源由来とのこと。…

杉原民子のドローイングがすばらしい

東京小金井市のギャラリーテムズで開かれている杉原民子展がすばらしい(12月16日まで)。杉原は佐賀県出身、東京オリンピックの年に生まれたという。 今回ドローイングが主体でペインティングの作品も並べられている。このドローイングがすばらしい。大作で…

ギャラリー川船の歳末正札市が始まった

東京京橋のギャラリー川船の恒例「歳末正札市」が始まった(12月13日まで)。ギャラリー川船のこの展覧会は定評があって、とにかく安い。有名な画家たちの作品が、え? こんなに安くていいの? って値段でなんと200点近く並んでいる。お買い得なことは間違い…

中学生の性欲の悩みに答える上野千鶴子

朝日新聞の読者相談室「悩みのるつぼ」で「性欲が強すぎて困ります」という15歳の男子中学生からの質問に上野千鶴子が答えている(12月8日)。 ぼくの悩みは性欲が強すぎて、今年受験だというのに、エッチなことばかり考えて勉強が手に付かないことです。(…

アイスランドのミステリ『湿地』を読む

アイスランドの作家アーナルデュル・インドリダソンのミステリ『湿地』(東京創元社)を読む。帯とか新聞の書評とか、魅力的なようなのだ。まず、その帯の惹句から、 ガラスの鍵賞2年連続受賞、CWAゴールドダガー賞受賞、いま世界のミステリ読者が最も注目…

世田谷美術館で松本竣介展を見る

世田谷美術館で生誕100年松本竣介展が開かれている(1月14日まで)。そのパンフレットから、 松本竣介(1912−1948)は、昭和前期の近代洋画史に、一種独特の足跡を遺した画家でした。新しい時代の絵画を標榜しつつも、過激なだけの前衛性や画壇での政治的栄…

グレン・グールドは局所性ジストニアだったのか?

青柳いづみこ『グレン・グールド』(筑摩書房)に、グールドが局所性ジストニアだったかも知れないとの記述が出てくる。 もっとも、グールドの右手の動きが左手より劣っていたかというとそんなことはない。各指は完全に分離・独立しており、中指、薬指、小指…

道路を渡る蛇をうたった短歌

道路を渡る蛇をうたった短歌が朝日歌壇に載っていた(12月3日)。 晩秋の蛇とおもえば見守りぬ渡りおえるまで単車を停めて 西屋富美子(防府市) 道路を渡る蛇を単車を停めて見守っている。その情景は、渋谷の老いた女王猫アマテラスが、死に場所を求めて渋…

東京国立近代美術館の「美術にぶるっ!」

竹橋の東京国立近代美術館で「美術にぶるっ!」という題名の企画展が開かれている(1月14日まで)。副題が「ベストセレクション 日本近代美術の100年」というもので、副題をみればどんな展覧会かよく分かる。 これは東京国立近代美術館創立60周年記念特別展…

銀座の歩行者天国の猫

ほとんど毎週土曜日、歩行者天国の銀座を歩く。画廊を回ってるからに他ならない。そこで何度か多くの観客に囲まれて道路標識の上に載せられている猫たちを見かけた。狭い標識の上に数匹の猫たちが座っていて、大勢の観客がケータイやデジカメで撮影している…