2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

飯田への旅

入院しているお袋を見舞いに中央高速バスに乗って飯田へ行って来た。相模湖あたりで車窓から見える山々が埃をかぶったように薄い肌色をして、回りの針葉樹林に比べてかすかに盛り上がっているように見えた。裸木だった雑木がほころび始めているかのようだ。…

宮崎進展が開かれている

宮崎進展が日本橋のギャルリー東京ユマニテで開かれている。この画家は香月泰男と同じく戦後シベリアに抑留されていた体験を持ち、キャンバスに麻袋(ドンゴロス)を貼り付け、そこに絵の具を塗り込めた禁欲的だが厳しいタブローを作っている。それは優れた…

鴎座の「ダントンの死について」

神楽坂のシアター・イワトで鴎座の「ダントンの死について」という芝居を見た。ゲオルク・ビューヒナーの台本を大幅に刈り込んで再構成しているらしい。台本・演出・美術が黒テントの佐藤信だ。鴎座は佐藤信の個人劇団なのだ。 ダントンはロベスピエールとと…

高円寺ガード下の回鍋肉

今から35年ほど前、高円寺駅から300メートルくらい西に寄ったJR(当時は国鉄)のガード下に場末っぽい中華料理屋があって、そこで食べた回鍋肉(ホイコーロー)が美味かった。しばらくしてもう一度行ったら閉店していた。近所の店で尋ねると移転したみたいで…

黄色い線の内側はどちらだろう

JRや私鉄の駅で、電車が入って来るので黄色い線の内側までお下がり下さいと構内放送がある。その黄色い線たるや幅30センチの視覚障害者(この偽善的な言葉!)用のぶつぶつがある板のことだ。こんなに広くて線というのだろうかと違和感があった。これは帯だ…

名前の読み方は変えることができる

小学校時代の同級生に「てるお君」という名前の男の子がいた。漢字で「昭男」と書いた。普通の読み方では「あきお君」だ。たぶんお父さんが「照男」と間違えて戸籍係へ届けてしまったのだろう。役所は漢字の読みまでは干渉しないシステムになっているので、…

イタドリの芽生え

イタドリの芽生え。芽生えのときイタドリは赤くなって美しい。写真は3号鉢(直径9cm)に持ち込んで数年経ったもの。土は盆栽によく使われるケト土、水持ちが良くまた粘りけがあるので、高く盛り上げても土が崩れない。植え替えは一度もしていない。花は小…

去年マリエンバードで

先日紹介した「夏の名残の薔薇」には映画「去年マリエンバードで」のシナリオが引用されている。これはアラン・ロブ=グリエ脚本、アラン・レネ監督のフランス映画だ。ロブ=グリエは2人称で書かれた小説「嫉妬」や「消しゴム」「覗くひと」などを書いたヌ…

トルコへの旅

毎日新聞の全面広告でJTBがトルコへの旅行を特集している。イラストがベリーダンサーでセクシーな格好だ。とたんに今はソープといっている風俗店を昔はトルコ風呂といっていたことを思い出した。 二十歳の頃、横浜市鶴見区に住んでいたので横浜の伊勢佐木町…

ギャラリーテオで谷口ナツコ展が始まった

東京五反田のギャラリーテオで谷口ナツコ展が始まった。協力がミヅマアートギャラリーとある。ミヅマといえば現代美術のトップギャラリーだ。谷口ナツコへの評価が分かるというものだ。 初日のオープニングに出かけたが、新作のほとんどが売れていた。それに…

恩田陸「夏の名残りの薔薇」を読んで

恩田陸「夏の名残りの薔薇」(文春文庫)を題名に惹かれて読んだ。つまらないミステリだった。と同時に下手な文章だった。金井美恵子の見事な文章(「タマや」)を読んだ後だったので一層そう感じた。最初にあり得ない状況を設定しているが、それがリアリテ…

不思議な句点の使い方

看板に不思議な句点「。」を見つけた。 「昭和。27年」は亀戸駅のホームの前に立っている眼科の看板で、「昭和。27年開業」とある。 もう一つ、「サン。エム」は秋葉原駅前のビデオ屋の看板。どちらも不思議な句点の使い方だ。こんなに堂々と使われていると…

新聞の書評の力、そして金井美恵子

読売新聞の書評欄に月に1度「空想書店」という企画が掲載される。毎回別々の作家などが書店の店主になり自分の選んだテーマに沿って、お勧めの本を並べるというものだ。2月3日は嵐山光三郎が店主をして「猫」をテーマに選書していた。それを見ると、次の…

スミレが開花した

ベランダの鉢植えのスミレが咲いた。鉢に持ち込んで数年はたっている株だ。スミレは日が当たらないと閉鎖花になってしまう。閉鎖花は蕾のままで花が咲くことなく種ができる。花が咲かないのだ。以前公団住宅に住んでいたときはベランダが西向きだったために…

中沢新一の講演を聞きに行ったのだが

東京都現代美術館へ中沢新一の岡本太郎に関する講演「日本のアヴァンギャルドとは何か」を聞きに行った。会場の入口で確認すると講師が違っていた。吉村絵美留の「岡本太郎の技法と《明日の神話》の修復」となっている。急に変更になったのかと思ったが、単…

ニコニコ動画を見て

帰宅するとパソコンの前に座っている娘が、父さん面白いから一緒に見ようよと言うので、ちょっとだけ付き合うつもりが気がつけば2時間が経過していた。彼女が見ていたのはニコニコ動画で初音ミクが歌っているやつだ。最初にモーツアルトの「魔笛」の「夜の…

宮下誠の「20世紀音楽ーークラシックの運命」はお買い得!

宮下誠の「20世紀音楽ーークラシックの運命」(光文社新書)はすばらしい。現代音楽を実にていねいに紹介している。以前、同じ著者の「20世紀絵画」(光文社新書)を読んで気に入ったので、本書も期待して読んだが、期待以上の出来だった。ヴァークナーやブ…

故郷での山本弘の評価

飯田市は山本弘の故郷とも言える。ではその飯田市での評価はどうか。まず、若い頃からの山本の友人で、飯田市リアリズム美術家集団(略称リア美)の仲間だった菅沼立男さんの評。2005年6月12日の信州日報から。 画家山本弘(1930〜1981年、51歳没)は豊丘村…

NEWS LETTER/5月のあほうどり

今に、お前のエントリーは単に人の書いたものの再録に過ぎないじゃないかと批判されるものと覚悟していた。そうしたら弁解する理屈を用意していたのだ。でも誰も言ってくれないから、あらかじめ言ってしまう。今から20年ほど前私は「NEWS LETTER/5月のあほ…

女性に振られたとき

川口市の高校の校長が関係を持った教え子を脅迫して逮捕された。男にとって女性ーー性的なものの魅力は抗しがたいものがある。一度良い関係を結ぶと男はそれを基本にして考えてしまう。女性が心変わりしたとき、その現実を受け入れられなくて、以前の関係に…

山本弘の作品解説(13)「青年」

山本弘「青年」油彩、およそM25号(79.8cmx54.7cm) 1968年の飯田市中央公民館での個展で発表された。何を隠そう、この絵のモデルは20歳の時の私だ。横向きにも見えるが、おそらく正面を向いている顔なのだろう。10年ほど前、勤めていた会社の女性にこの絵の…

ヤブザクラ開花

近所の家の塀際のヤブザクラが咲き始めた。もう20年以上も昔、この花を押し花にして会社へ持っていき、浅野貞夫先生に同定していただいた。ヤブザクラだと言う。ヤブザクラはマメザクラの変種と言われたのかマメザクラから分かれたと言われたのか、もう定か…

ピアニストが読む音楽マンガ

青柳いづみこはクラシックのピアニストにして文筆家だ。CDより著書の方が多いのではないか。青柳いづみこ「ボクたちクラシックつながり」(文春新書)は副題が「ピアニストが読む音楽マンガ」で、「のだめカンタービレ」や「ピアニストの森」に即してピアニ…

週刊朝日編「ひと、死にであう」を読んで

先に野良猫の死についての早坂暁の名エッセイを紹介した(id:mmpolo:20080227)。これが掲載されているのが週刊朝日編「ひと、死にであう」(朝日選書)で、死に関する名エッセイが並んでいるものと期待して読んだ。 「週刊朝日」に連載されたリレーエッセイ…

お粗末な図鑑がある

広田伸七・編著「ミニ雑草図鑑」のまえがきに次のような一節がある。 「雑草と言う言葉はない」昭和天皇のお言葉である。確かに夏の道端で焼けるようなアスファルトの裂け目に、したたかにも生長する雑草。1週間も放っておくと忽ちはびこってくる庭の雑草に…

すずしろ日記

東京大学出版会のPR誌「UP」3月号に山口晃の連載マンガ「すずしろ日記」の第36回が掲載されている。もう連載3年になったのだ。ここで、その言葉のみ拾ってみる。 1. ケータイを持って1年ちょっと。「もしょもしょ」 2. まぁ便利な訳である。今更かくまで…

山本弘が常設で見られるところ

長野県飯田市の飯田市美術博物館で毎年この時期に企画される「菱田春草と飯田の美術」が開催されている(3月23日まで)。今年は「洋画家特集」、で山本弘も1点だけ展示されている。風景画だがとてもいい。この美術館には50点以上の山本弘のそれも代表作が…

繊細で、かがやくばかりの金髪の美青年

次の引用は、昨日エントリーした山田宏一「友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌」(平凡社ライブラリー)に紹介されているエピソードだ。この金髪の美青年は誰だろう。 1965年のカンヌ映画祭に行ったとき、初めて、ジャック・ドゥミ(「シェルブールの雨…

「友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌」を読んで

山田宏一「増補 友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌」(平凡社ライブラリー)が楽しい。500ページもあるのに一気に読んでしまった。山田宏一はフランスに留学し「カイエ・デュ・シネマ」(映画の手帳)の同人となり、ヌーヴェル・ヴァーグの監督たちと…

山本弘の書(2)

山本弘の書、第2弾。 たゞ一つのもの人間であったこと 振りむくな 私の星が一つまた消えて薄ら寒い