2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

田中克彦『ことばは国家を超える』を読む

田中克彦『ことばは国家を超える』(ちくま新書)を読む。田中はモンゴル語が専門の言語学者で、広く言語学全般、民族学、社会学にも造詣が深い。私の最も好きな言語学者で、私は田中の著書を20冊近く読んでいるファンなのだ。クレオール語やモンゴルの歴史…

大栗博司『探求する精神』を読む

先週の土曜日の朝日新聞書評欄にほぼ半ページを使った幻冬舎新書の広告が載った。大栗博司『探求する精神』だ。硬い新書の広告としては破格の扱いだ。「朝日新聞」「読売新聞」「中央公論」「サンデー毎日」ほか各紙誌で絶賛!とある。 その朝日新聞の書評は…

尿道カテーテルのやり方

今冬病を得て病院への入退院を繰り返した。処方された薬の副作用で頑固な便秘になった。それに伴い排尿困難に陥った。お医者さんが、便秘の便が尿道を圧迫しているのだと診断し、尿道カテーテルを使うように看護士さんに指示した。 尿道カテーテルはペニスの…

古井由吉『東京物語考』を読む

古井由吉『東京物語考』(講談社文芸文庫)を読む。ちょっと変わった本で、私小説作家、徳田秋聲、正宗白鳥、葛西善蔵、嘉村磯多や、永井荷風、谷崎潤一郎が描いた東京を、その作品に沿って尋ね歩き、当時を再現している。 それにしても私小説作家たちの悲惨…

銀座蔦屋書店 GINZA ATRIUMの森山大道展を見る

東京銀座のGINZA シックス6Fの銀座蔦屋書店 GINZA ATRIUMで森山大道展「FOSSILIZATION of LIGHT」が開かれている(6月30日まで)。ギャラリーのホームページより、 今回の展覧会では、森⼭の作品の中でも⼈気の⾼いモチーフによるシルクスクリーン作品を選…

ギャラリーせいほうの石山修武「木彫 線刻金属碑2021年展」を見る

東京銀座のギャラリーせいほうで石山修武「木彫 線刻金属碑2021年展」が開かれている(7月2日まで)。石山は1968年早稲田大学院建設工学科修士課程を修了している。すぐに設計事務所を開設し早稲田大学教授も務めた。現在名誉教授となっている。 木彫作品…

立花隆が亡くなった

吉原すみれ 立花隆が4月30日に80歳で亡くなったと新聞などが報じている。朝日新聞では「知の巨人 調べて書き続けた」と5段見出しで扱っている。私は立花隆の著書は対談を除いてほとんど読んでこなかった。あの「知の巨人」という形容にも素直に納得できなか…

ギャラリーなつかのチョン・ダウン展を見る

DM葉書 東京京橋のギャラリーなつかでチョン・ダウン展「ドッペルゲンガーノート」が開かれている(7月3日まで)。チョンは1989年韓国生まれ、2015年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画専攻を卒業し、2017年から2年間ベルリン芸術大学に留学、現在武蔵…

千葉市美術館の「大・タイガー立石展」を見る

千葉市美術館で「大・タイガー立石展」が開かれている(7月4日まで)。タイガー立石はいくつか作品も見ていたし、概略知っている気がしていて、千葉市まで遠いし見に行く予定はなかった。それが6月20日の「NHK日曜美術館」を見て、思っていたよりずっと興…

読売新聞の書評欄

週末の新聞には書評欄があり、新刊書の書評が掲載される。毎日新聞、朝日新聞は土曜日に、読売新聞は日曜日に掲載される。書評欄は朝日新聞が3~4ページ、毎日新聞が3ページ、読売新聞も3ページだった。それが今日の読売新聞では2ページになっていた。 …

練馬区立美術館の「8つの意表」展を見る

東京中村橋の練馬区立美術館で「8つの意表」展が開かれている(6月20日まで)。美術館のホームページから、 「意表をつく」という言葉があります。 おおむね「相手の予期しないことをする」という意味で用いられますが、「意表」は字義に近く「こころをあ…

溝口睦子『アマテラスの誕生』を読む

溝口睦子『アマテラスの誕生』(岩波新書)を読む。副題が「古代王権の源流を探る」というもので、とても収穫の多い読書だった。 本書の惹句から、 戦前の日本で、有史以来の「国家神」「皇祖神」として報じられた女神「アマテラス」。しかしヤマト王権の時…

伊東深水の描く日劇ミュージックホール

伊東深水 現在東京ステーションギャラリーで開かれている「コレクター福富太郎の眼」に出品されている伊藤深水の「戸外は春雨」が朝日新聞に紹介された(6月15日付)。これについて大野拓生が書いている。 (……)気品の漂う美人画で戦後に高い人気を集めた…

井坂洋子『犀星の女ひと』を読む

井坂洋子『犀星の女ひと』(五柳書院)を読む。詩、小説、評論、随筆、俳句と多岐にわたって書いた作家を詩人の井坂が暖かく書いている。表紙の犀星の写真がいいが、新潮社の犀星担当の編集者だった谷田昌平によるもの。 犀星といえば、萩原朔太郎の親友だっ…

小林英樹『「ゴッホ」にいつまでだまされ続けるのか』を読む

SOMPO美術館の「ひまわり」 小林英樹『「ゴッホ」にいつまでだまされ続けるのか』(情報センター出版局)を読む。小林がゴッホの作品の重要な6点を贋作だと指摘している。それは日本のSOMPO美術館所蔵の「ひまわり」、ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵…

児島善三郎の花の絵

児島善三郎 児島善三郎 みずほ信託銀行に派遣で働いていたことがある。金庫の管理をしていた。金庫といっても現金ではなく有価証券を保管している金庫だった。銀行の入口は1階にあって、通常の顧客が出入りしていた。そこには外国の作家の版画が飾られてい…

田村隆一『詩集 言葉のない世界』を紹介する荒川洋治

荒川洋治が毎日新聞の書評欄で田村隆一『詩集 言葉のない世界』(港の人)を紹介している(6月12日付)。 (……)初版は1962年刊。たった10編。詩の文字の印刷されたところが、35ページしかない、とても薄い詩集だけれど、緊迫感は、無常のもの。名編「帰途…

谷川由里子『サワーマッシュ』を読む

谷川由里子『サワーマッシュ』(左右社)を読む。谷川は第1回笹井宏之賞大森静佳賞の受賞者。笹井宏之賞は書肆侃侃房が主催する短歌新人賞で、夭折した歌人笹井宏之を記念して作られた。大賞のほか、選考委員が選ぶ賞があり、選者の大森静佳が谷川を選んでい…

早稲田大学會津八一記念博物館の「受贈記念 コレクター寺田小太郎―難波田龍起、相笠昌義を中心に―」を見る

東京早稲田の早稲田大学會津八一記念博物館で「受贈記念 コレクター寺田小太郎―難波田龍起、相笠昌義を中心に―」が開かれている(7月30日まで)。博物館のホームページから、その概要を、 当館は2010年と2019年に故寺田小太郎氏(1927-2018)のコレクション…

中沢新一『アースダイバー 神社編』を読む

中沢新一『アースダイバー 神社編』(講談社)を読む。これがめっぽう面白かった。中沢は全国の古い神社の歴史を探り、そこから日本の古層へとダイビングしていく。縄文から弥生~古墳時代の、歴史に書かれていない古い姿を掘り出していく。取り上げられてい…

うしお画廊の石井紀湖展「―彫刻・墨絵―」を見る

東京銀座のうしお画廊で石井紀湖展「―彫刻・墨絵―」が開かれている(6月12日まで)。石井は東京藝術大学彫刻科を卒業し、大学院を修了している。ギャラリー山口やみゆき画廊で個展をしていたが、最近はうしお画廊で個展を繰り返している。 石井は大きな木彫…

トーキョーアーツアンドスペース本郷の「TOKAS-EMERGING 2021 Part 2」を見る

東京文京区のトーキョーアーツアンドスペース本郷で「TOKAS-EMERGING 2021 Part 2」が開かれている(6月20日まで)。1階から3階のスペースでそれぞれ個展形式で3組が展示している。 1階は久木田茜の個展「シンメトリーのひずみ」、久木田は1987年愛知県生…

洋式トイレの蓋

読売新聞の書評で飯間浩明が本田弘之・岩田一成・倉林秀男『街の公共サインを点検する』(大修館書店)を紹介している(6月6日付)。飯間は国語辞典編纂者で、新しい言葉を、新聞や雑誌、本、テレビ、SNSなどから集め、街の看板やポスター、貼紙、のぼり、…

東京ステーションギャラリーの「コレクター福富太郎の眼」展を見る

東京ステーションギャラリーで「コレクター福富太郎の眼」展が開かれている(6月27日まで)。美術館のホームページから、 福富太郎(ふくとみ たろう/1931-2018)は、1964年の東京オリンピック景気を背景に、全国に44店舗にものぼるキャバレーを展開して、…

銀座メゾンエルメス フォーラムのマチュウ・コプランによる展覧会「エキシビジョン・カッティングス」を見る

東京銀座の銀座メゾンエルメス フォーラムでマチュウ・コプランによる展覧会「エキシビジョン・カッティングス」が開かれている(7月18日まで)。マチュウ・コプランは、ロンドンを拠点に活動するするフランス/イギリス人キュレーター。タイトルの「カッテ…

養清堂画廊の山中現展を見る

東京銀座の養清堂画廊で山中現展が開かれている(6月12日まで)。山中はWikipediaによれば、1954年福島県喜多方市生まれ。東京芸術大学で油絵を学び、同大学院で木版画を専攻。1984年に西武美術館版画大賞展で受賞し、以後個展を中心に発表を続ける。各地の…

ギャラリー58の田中彰展を見る

東京銀座のギャラリー58で田中彰展が開かれている(6月5日まで)。田中は1949年高知県生まれ、1974年多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン科卒業。いくつかの画廊で個展をした後、2004年ギャラリー汲美で個展を開き、汲美が閉じた後は主にギャラリー5…