2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

加藤周一の小説「三題噺」を読む(2)

本書に加藤は長い「あとがき」を書いている。そのあとがきから。 第一に、私は13世紀の日本仏教について考えを巡らしたことがある。そのために道元をよむようになり、思想家として日本の著作家のなかでは全く抜群であることを知った。その後の禅家のなかでも…

友人宅のナメコ

友人から写真付きメールをもらって、彼の家の裏手で趣味で作っている原木からナメコがたくさんできたという。この写真がそれだが、昨年訪問したときにもらったのがすごく美味しかった。そのことを伝えたら今年もできたと教えてくれた。採りに来ないかと。即…

「銀座あおぞらdeアート」中止!

昨日紹介した10月31日の「第6回銀座あおぞらdeアート」が中止になった。台風が近づいているためだという。仮に台風が通過して晴れても風が強いことが予測される。小学校の校庭での美術展は難しいだろうと判断したようだ。延期ではなく、中止するという。

ギャラリー白石の藤田嗣治作品展とその周辺

銀座5丁目のギャラリー白石で藤田嗣治作品展を開いている(11月14日まで)。1階は藤田の版画作品で値段も50〜100万円未満ほど。2階は油絵が展示されている。合わせて30数点。2階の作品には値段が表示されていない。受付の女性に値段を尋ねた。数百万円く…

ギャラリー・ショウ・コンテンポラリー・アートの松山賢展

日本橋のギャラリー・ショウ・コンテンポラリー・アートで松山賢展「からっぽの偽物」が始まっている(11月27日まで)。松山は写実的で魅力的な若い女性を描いている。セクシーで胸が強調されることも多い。おっぱいが好きなのだろう。高い技術を持っていて…

活司の24回目の祥月命日

今日は久保田活司の24回目の祥月命日だ。この写真は1976年の山本弘展の際、入口の看板の前で撮ったもの。たぶん活司は27歳、横に並んだ少年は長男の厚司君、当時5歳か。もう34年前になるが、この時の会話をおぼろに憶えている。厚司君が、この前どこどこで…

野沢二郎展が始まった!

毎年楽しみにしている野沢二郎展が今年も銀座のコバヤシ画廊で始まった(10月30日まで)。野沢は今年52歳になるという。現代の抽象の作家としてまぎれもない中堅だ。毎年安定した、しかも徐々に深化した仕事を見せてくれる。ところが今年は少し違っていた。…

加藤周一の小説「三題噺」を読む(1)

加藤周一は優れた批評家だが小説も書いている。その「三題噺」(ちくま文庫)は主に3つの短篇、詩仙堂を造った石川丈山を描いた「詩仙堂志」、禅僧一休宗純を盲目の愛人森女の目から描いた「狂雲森春雨」、江戸時代の夭折した特異な思想家富永仲基を描いた…

山本弘の「制多迦童子」

昨日「1976年の山本弘展」を紹介した。「制多迦童子」の横に立つ山本弘の写真を見て、初めてこの絵が山本弘の自画像だと気づいた。躰格好が同じなのだ。 制多迦童子(制吒迦童子)とは何だろう。Wikipedhiaによれば、 制多迦童子(せいたかどうじ)は、不動…

1976年の山本弘展

古いカラーネガが見つかった。1976年の飯田市勤労者福祉センターでの山本弘展を撮影したものだ。撮影日は9月13日とフィルムカバーにメモしてある。もう34年も前になるのだ。当時の山本弘は46歳、愛子夫人が35歳、一人娘の湘ちゃんがやっと5歳だった。山本…

丸谷才一「思考のレッスン」を読んで(2)

丸谷才一「思考のレッスン」(文春文庫)がおもしろい。 「左翼は小児病に対して弱いし、右翼は直接行動に対して弱い」 「小林秀雄さんが吉田(健一)さんを認めていなかったということはご存知でしょう」 「いまでも岩波文庫にジョイスとプルーストがないの…

上田泰江展がとても良かった……でも、終わってしまった

銀座1丁目のK'sギャラリーで開かれていた上田泰江展「蓮池とその周辺 四季のドラマ」がとても良かった。残念ながらもう終わってしまった。私が行ったのが最終日の10月19日(火)の夕方6時近かった。すばらしい作品が並んでいた。しかし1点も売れていなか…

ギャラリーQの星山耕太郎展が良い

銀座1丁目のギャラリーQで開かれている星山耕太郎展「顔の中へ」が良い。星山は1979年東京生まれ、2003年に多摩美術大学絵画学科日本画専攻を卒業している。今回が初個展だ。どうして今まで発表してこなかったのか? 仕事が忙しくて描く暇がなかったんです…

丸谷才一「思考のレッスン」を読んで(1)

丸谷才一「思考のレッスン」(文春文庫)がおもしろい。 丸谷 鴎外の小説がつまらないのは、頽廃というものに関心がない。 丸谷 学者の書いたもので意外に忘れられているのが、百科事典などの大項目です。(中略) 学者ではないけれども、イギリスにアントニ…

「チャリング・クロス街84番地」を読む

へレーン・ハンフ編著「チャリング・クロス街84番地」(中公文庫)を読む。江藤淳が訳している。30年ほど前に発行されたとき評判になった本だ。文庫は1984年に初版が発行され、今年までの26年間で10刷が出ている。 ニューヨークに住む本が好きなテレビドラマ…

とんぼの本の「画家たちの『戦争』」を読む

新潮社の「とんぼの本」シリーズで「画家たちの『戦争』」を読む。先の大戦で日本人画家たちが描いた戦争画について紹介されている。もともと雑誌「芸術新潮」1995年8月号の「戦後50年記念大特集 カンヴァスが証す「画家たちの『戦争」」の「戦争画(戦争記…

ニューヨークのトコジラミ

朝日新聞の「ニューヨーク特派員メモ」に「虫に弱い超大国」の題で田中光記者が書いている(9月22日)。 今年、自宅アパートのエレベーターで、張り紙をよく見かけるようになった。「○曜日に、○階から○階まで、駆除作業を実施します」というものだ。管理人…

関心のありか

画廊を回っていたら、ある画廊で若いきれいな女性に挨拶された。彼女も画廊の客らしく、個展をしている画家ではなかった。その顔にぼんやりと見覚えがあったが、誰なのかはっきりとは分からない。どちらでお会いしましたっけ? と言うと、ギャラリイ○で「日…

「西の魔女が死んだ」を読んだ

去っていったカミさんがたくさんの本を残していった(娘に?)。「スタインベック短篇集」がないか探したらそれはなかったが、梨木香歩「西の魔女が死んだ」(新潮文庫)があった。何年か前映画化されて、その頃書店に平積みされていた。ちょっと惹かれたが…

○須クリニックのCMは?

父さん、12チャンネルで流れる○須クリニックのCMのこと、父さんはシリアスだと思っているよね。 あのドバイの上空辺りでヘリコプターを乗り回している医者のCMだね、そう思ってるよ。 そうじゃないよ、あれはジョークで作ってるんだよ。 違うよ、Yes、○須ク…

ガレリア・グラフィカbisの堀 園実展がおもしろい

ガレリア・グラフィカbisの堀 園実(ほり そのみ)展へ行った。画廊の中央に大きな物体がどんと置かれている。一目見て即座におもしろいと思った。きわめて単純な形だ。円筒形の両端が丸くなっており、上部からくちばしのような角のようなものが出ている。ど…

松原一枝の「文士の私生活」を読む

松原一枝「文士の私生活」(新潮新書)を読む。もう94歳のおばあちゃん作家。長生きしているので交流のあった文学者たちの数も多い。滅多に人を食事に誘わないという川端康成に食事を誘われているので、若いときはきれいだったのだろう。 阿川弘之とは同人誌…

表参道のPRADAビルのコケ

表参道にPRADAビルがある。不思議な形はスイスの建築家ジャック・ヘルツォークとP. L. ドムーロスが設計した。 設計者がビルを囲む壁面に植物を植えることを指示した。ビルを施工した竹中工務店がコケを使う方法を採用し、山形県のコケ栽培農家と共同開発し…

スパンアートギャラリーの妖しい甲 秀樹展「雄蕊」

銀座2丁目のスパンアートギャラリーで甲 秀樹の妖しい個展「雄蕊(おしべ)」が開かれている(16日まで)。甲は以前「薔薇族」の表紙を描いていた画家で、しばしば渋谷の美蕾樹というギャラリーで個展を行っていた。美蕾樹が閉廊して、そのオーナーだった越…

山本弘の作品解説(19)「日だまり」

2008年12月28日にこの「日だまり」を紹介しているが、今回それを撮影したポジフィルムが見つかったので、改めて再録する。以前はポジフィルムをカラープリントしたものからスキャンしていた。ポジを直接スキャンした今回の方が鮮明になっているはずだ。 「日…

なびす画廊の宮崎健太郎展がおもしろかった

東京銀座1丁目のなびす画廊の宮崎健太郎展がおもしろかった(9日まで)。宮崎は1979年群馬県生まれ、2005年に日本大学大学院造形芸術専攻を修了している。何度かのグループ展のあと、2009年なびす画廊で二人展、個展は今回が初めてである。 百日紅(サルス…

奇書「教養としての官能小説案内」

永田守弘「教養としての官能小説案内」(ちくま新書)が奇妙で興味深い。カバーの惹句から、 美少女から人妻、熟女、女教師、くノ一に尼僧。少年ものに性豪もの。凌辱系から癒し系まで−−官能小説の世界は、欲深い読者たちの嗜好に応じて多種多様なジャンルの…

サガンの「悲しみよ こんにちは」の新訳

フランソワーズ・サガンの「悲しみよ こんにちは」の新訳が新潮文庫から発行された。いや昨年の1月に発売されたから新しい話題ではないけれど。訳者は河野万里子、前の訳者朝吹登美子の訳本を読んで育った人だ。私も45年ぶりくらいの再読。当時私は高校生だ…

山本健吉「古典と現代文学」を読む

以前も紹介したが、丸谷才一の「文学のレッスン」(新潮社)に山本健吉「古典と現代文学」が絶賛されていた。 湯川豊 日本のこの分野、文学史的批評の代表というと……。 丸谷才一 まず頭に浮かぶのは、山本健吉『古典と現代文学』。エリオットの「伝統と個人…

東京電機大学キャンパスで「国際野外の表現展」を見た

先週、埼玉県鳩山町にある東京電機大学の鳩山キャンパスで「国際野外の表現展」を見た。東京電機大学は東武東上線高坂駅で降り、大学専用の無料送迎バスがある。毎年この時期キャンパスの内外を使って展覧会が開かれている。大学入口近くに作品の設置地図が…