2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

本江邦夫『現代日本絵画』を読む

本江邦夫『現代日本絵画』(みすず書房)を読む。344ページの本に51項目の主として画家論と絵画論が収録されている。うち画家について論じたのが36人分、VOCA展を総括したのが12年分となっている。画家論のうち美術館で開かれた個展の図録のために執筆したも…

エズラ・F・ヴォーゲル『トウ小平』を読む

エズラ・F・ヴォーゲル/聞き手=橋爪大三郎『トウ小平』(講談社現代新書)を読む。3年ほど前、エズラ・F・ヴォーゲル『トウ小平』(日本経済新聞社)が刊行された。今回聞き手を勤めた橋爪は、それが極めて優れたトウ小平論でありながら、日本語版で上下2…

ギャラリーカメリアの寺田彩乃・石川奈津美展がおもしろい

東京銀座のギャラリーカメリアで寺田彩乃・石川奈津美展が開かれている(2月28日まで)。 寺田は1991年茨城県生まれ、2012年に女子美術大学短期大学部を卒業し、2014年に女子美術大学芸術学部立体アート専攻を卒業している。行動展などに入選しているが、ギ…

山下清『ヨーロッパぶらりぶらり』を読む

山下清『ヨーロッパぶらりぶらり』)を読む。指導する式場隆三郎が医者の団体旅行と一緒に山下を連れてヨーロッパ旅行をした体験記。割合まとまった文章なので式場が手を入れたのだろうと思ったが、式場の「あとがき」を読むと、式場は校正刷りで初めて眼を…

ASK?で中村恭子展「首を擡げたアルシブラ」を見る

東京京橋のアートスペースkimura ASK?で中村恭子展「首を擡げたアルシブラ」が開かれている(2月27日まで)。中村は長野県下諏訪町生まれ、東京芸術大学大学院美術研究科美術専攻日本画研究領域博士課程修了、博士(美術)を2010年3月に取得している。その…

コバヤシ画廊の荻原正人展を見る

東京銀座の小林画廊で荻原正人展が開かれている(2月27日まで)。荻原は1953年東京生まれ、1979年東京芸術大学鋳金科を卒業し、1981年同大学大学院を修了している。 今回の展示は3面の壁に同一の大きさの赤い平面が規則正しく並べられている。これは何なの…

中和ギャラリーの「柴田和 今昔展」を見る

東京銀座の中和ギャラリーで「柴田和 今昔展」が開かれている(2月27日まで)。柴田は1934年生まれ、帝国美術学校(武蔵野美術大学の前身)を卒業。1960年代、美術グループ乱立の時代は堀内康司(実在者)らと一緒に活動していた。1963年、読売アンデパンダ…

バッハマン『三十歳』の書評と、一体何歳が一番良いのか(再掲)

インゲボルグ・バッハマン『三十歳』(岩波文庫)の書評が池内紀によって毎日新聞に紹介された(2016年2月21日)。池内はバッハマンを1年年下のギュンター・グラスと比較しつつ紹介する。2人とも詩人として出発している。グラスは1959年、長篇小説『ブリ…

『脳には妙なクセがある』を読む

池谷裕二『脳には妙なクセがある』(扶桑社新書)を読む。巻末に欧文の参考文献が掲載されていて、その数が207もある。池谷は脳に関する膨大な学術論文を読み込んでそれらを簡潔に紹介している。逆に言えば池谷が綴っている脳に関する奇妙なトピックはいずれ…

深沢七郎『人間滅亡的人生案内』を読む

深沢七郎『人間滅亡的人生案内』(河出文庫)を読む。単行本初版が1971年、雑誌『話の特集』の1969年から1971年にかけて掲載された読者からの人生相談に深沢が答えたもの。ひと口で言ってつまらなかった。深沢の変った人生相談、奇書として話題にはなってい…

『信州人 虫を食べる』を読む

『信州人 虫を食べる』(信濃毎日新聞社)を読む。著者は田下昌志・丸山潔・福本匡志・横山裕之・保科千丈の5名。太田寛長野県副知事が巻頭言を書いている。3つの章に分かれていて、第1章が「虫の4大珍味 伝統的な信州の味」となっており、ジバチ、イナゴ…

無人島プロダクションの風間サチコ展「電撃!! ラッタイト学園」を見る

東京江東区の無人島プロダクションで風間サチコ プチ回顧展「電撃!! ラッタイト学園」が開かれている(3月6日まで)。風間は1972年東京生まれ、1996年武蔵野美術学園版画研究科を修了している。1998年にギャラリー山口で初個展、その後、ギャラリー手、マ…

福寿草と蕗のとう

先の日曜日14日、一向にチョコレートの気配もないので近所の小さな植物園へ行った。福寿草が咲きほこっていた。午前に雨が降ったけど、午後こんなに晴れたから一斉に開いたのよと管理の小母さんが教えてくれた。 子供の頃、福寿草の芽が出たのを見つけると嬉…

ギャラリー現の尾崎拓磨展-CELLS-がおもしろい

東京銀座のギャラリー現で尾崎拓磨展-CELLS-が開かれている(2月20日まで)。尾崎は1992年神奈川県生まれ、2015年に筑波大学芸術専門学群構成専攻領域を卒業し、現在同大学大学院人間総合科学研究科芸術専攻に在学中。2016年につくば市の画廊で初個展、東京…

ギャラリー檜B・Cの岡部貴子展が良い

東京京橋のギャラリー檜B・Cで岡部貴子展が開かれている(2月20日まで)。岡部は1977年、兵庫県生まれ。2000年に大阪芸術大学を卒業、2002年に大阪芸術大学大学院を修了している。2005年から大阪の番画廊で個展を繰り返している。ギャラリー檜では2011年、2…

山根明弘『ねこはすごい』を読む

山根明弘『ねこはすごい』(朝日新書)を読む。山根は以前ここでも紹介した『ねこの秘密』(文春新書)の著者。北九州市博物館に勤める動物学者で、動物生態学や集団遺伝学の専門家。だから数ある猫本の中でも記述が深い。 全体が5章からなっていて、「ねこ…

A. ストー/河合隼雄 訳『ユング』を読む

A. ストー 著/河合隼雄 訳『ユング』(岩波現代文庫)を読む。一昨年読んだ最相葉月『セラピスト』(新潮社)でユングに興味を持ち、ついで読んだ河合隼雄『影の現象学』(講談社学術文庫)と河合隼雄『河合隼雄自伝』(新潮文庫)でいっそう興味が増した。…

いま、北参道が熱い

東京メトロ副都心線ができて秋山画廊への連絡がとても改善された。今まではJR総武線代々木駅から歩いて10分以上かかっていたのに、北参道駅ができて3分ほどの距離になった。しかも、昨年それまで清澄白河のギャラリービルに入っていた小山登美夫ギャラリーと…

西堂行人『[証言]日本のアングラ』を読む 

西堂行人『[証言]日本のアングラ』(作品社)を読む。副題が「演劇革命の旗手たち」といい、8人のアングラ演劇の中心的な関係者たちにインタビューしたもの。取り上げられているのは9人で、唐十郎、別役実、瓜生良介、佐藤信、太田省吾、蜷川幸雄、寺山…

吉田秋生『海街diary7 あの日の青空』を読む

吉田秋生『海街diary7 あの日の青空』(小学館フラワーコミックス)を読む。6巻が出たのが一昨年の夏だった。半年ほど前から書店のコミック売場をひと月に1回くらい覗いていた。以前は庵野モヨコとか南Q太とか、魚喃キリコとかも読んでいたけれど、ここ何…

銀座ニコンサロンで中筋純写真展を見る

東京銀座の銀座ニコンサロンで中筋純写真展が開かれている(2月16日まで)。中筋は1966年和歌山県生まれ。東京外国語大学を卒業後、出版社勤務を経て中筋写真事務所を設立。雑誌、広告写真と平行して日本の産業遺構を撮影。2007年に訪問したチェルノブイリ…

巷房2の秦俊也展「CALENDRIER II」を見る

東京銀座の巷房2で秦俊也展「CALENDRIER II」が開かれている(2月20日まで)。秦は1954年生まれ。若い頃は新制作展や埼玉近代美術館野外展などに参加し、1991年から94年にかけて銀座のなびす画廊で個展を行っていた。1996年からはモンゴル語の翻訳を行って…

埴谷雄高『酒と戦後派』を読む

埴谷雄高『酒と戦後派』(講談社文芸文庫)を読む。副題を「人物随想集」といい、主として仲間の文学者たちについて折々に書かれたエッセイを『埴谷雄高全集』から本書のために編集したもの。400ページの本文に65篇のエッセイが収録されているので、1篇約6…

東京の海抜(その3)

東京中央〜東部の海抜。 東京メトロ半蔵門線・銀座線・千代田線 表参道駅:海抜33.7m 東京メトロ副都心線 北参道駅:26.3m 都営地下鉄大江戸線 国立競技場駅:海抜24.9m 東京メトロ東西線 神楽坂駅:21.9m 東京メトロ千代田線 千駄木駅:6.7m 東京メトロ千代…

高階秀爾『日本人にとって美しさとは何か』を読んで

高階秀爾『日本人にとって美しさとは何か』(筑摩書房)を読む。高階は現存の美術評論家として第一人者の大御所だ。新しい日本の作家たちを紹介した3部作『日本の現代アートをみる』『ニッポン現代アート』『ニッポン・アートの躍動』(いずれも講談社)は…

安藤宏『「私」をつくる』を読む

安藤宏『「私」をつくる』(岩波新書)を読む。副題が「近代小説の試み」という。このぶっきらぼうな題名に反して内容はとても面白い。近代小説は主人公を「私」としたり「彼」としたりする。一人称小説が実体験を語ることが多く、その究極の姿が日本独特の…

井ヶ田彩彫刻展を見る

東京銀座のギャルリー志門で井ヶ田彩彫刻展が開かれている(2月6日まで)。井ヶ田は1981年東京都生まれ、2004年に多摩美術大学美術学部彫刻学科木彫専攻を卒業している。2009年にギャラリー・オカベで初個展。多摩美在学中に聖路加病院での「木の語らい展…

恵方巻への疑問

昔ペットボトルが登場してからしばらくの頃だったと思う。ドリフターズの志村けんが、ペットボトルのお茶を飲むとき、ボトルに直に口を付けないで必ず茶碗やグラスに注いでから飲んでいると雑誌か何かに書かれていた。どちらかと言えば決して上品ではないド…

アーサー・ミラー『転落の後に』を見る

アーサー・ミラー作の芝居『転落の後に』を見た。文学座付属演劇研究所研修科卒業発表会、演出は西川信廣、会場は文学座アトリエだった。 アーサー・ミラーの芝居は『セールスマンの死』の戯曲を読んだことがあるだけ、芝居を見るのは初めてだった。3時間の…