2007-12-01から1ヶ月間の記事一覧

認識の到来について

京橋の画廊の前を通りかかったとき、画廊の奥に黄色と黒のはっきりした色彩が目に入った。一瞬の後それが壁に掛けられた絵で、壁らしき黄色と黒、それに黄色い花が描かれていることが分かった。それが分かると同時に画家がカトランであることも確信した。頭…

角田光代「三面記事小説」を読む

角田光代「三面記事小説」(文芸春秋)を読む。新聞の三面記事を元に6つの短編小説を書いている。小さな記事から豊かな物語が構築されているのは事実だ。しかしながら…… 26年前に同僚の教師を殺して自宅の床下に埋めたが、区画整理で発覚することを恐れて自…

「Kai-Wai 散策」というブログ

「Kai-Wai 散策」というブログを楽しみに見ている。 http://mods.mods.jp/blog/ 東京を中心にあちこちに出かけて、主に古びて壊れそうな建物を撮影し、それに割と長いコメントを付けている。写真も面白いしコメントも興味をそそられる。文京区に住むけっこう…

昭和万葉集と堕落論

1980年頃、講談社が創立何十周年記念とかで「昭和万葉集」なるものを企画した。既刊歌集、雑誌はもとより一般からも短歌を募集して膨大なアンソロジーを編集出版した。私はその内の戦争詠を読んだのだったか、一番気に入った短歌が成島やす子の次の歌だった…

三宅榛名の「いちめん菜の花」というCD

三宅榛名のレクチャーコンサートを聴いたことがある。ずっと昔だ。講義をしながらピアノを弾いていた。講義の合間に三宅が飲み物を飲んだ。その時の仕草がある女性グラフィックデザイナーを思い出させた。2人とも手を頼りなくひらひらさせるのだ。とまどっ…

飾って恥ずかしくないだろうか

ある通販会社が新聞広告を出して彫刻作品を売っている。彫刻家K氏のブロンズ「ひざまずく」が限定20点で30万円だ(高さ40cm)。 時に超保守的な主婦が公共空間に設置されている裸婦の彫刻がエロだから撤去しろと言っていると聞いて、何をバカなことをと思っ…

南Q太という変わった名前の漫画家のこと

南Q太という女性漫画家がいる。20代の一人暮らしの女性の恋なんかを描いている。彼女のマンガから若い女性たちの心理を教わったと思っている。好きな漫画家の一人だ。 でも変わった名前だ。何でこんな名前を付けたのだろうと長年疑問だった。それが不意に分…

吉田秋生「海街diary1 蝉時雨のやむ頃」がすばらしい

「読売新聞読書委員が選ぶ2007年の3冊」が発表されたが、西洋美術史の林道郎は3冊ともマンガを選んでいる。 山岸涼子「舞姫 テレプシコーラ 1〜10巻」(メディアファクトリー) 吉田秋生「海街diary 1 蝉時雨のやむ頃」(小学館) 安田弘之「ちひろ 上・…

家族は3人だった

家族は3人だった。 上京してきた時東京に家族はいなかった。 友だちはいたが、家族はいなかった。 5年経って家族が2人になった。 有頂天だった! それから8年経って家族が3人になった。 小さな家族がやってきた。 後ろから両手を握って、やっと立った小…

村上隆は自分では描かない!

朝日新聞に村上隆へのインタビューが載っている。村上隆は絵を描いていない! ーー事業家として多忙を極めているのですね。今はほとんど絵を描いていないのですか。 村上 全然描いてない時期があった。今でも1点ものの絵画はほとんど、スタッフが全部描いて…

身体感覚

夕べは忘年会だった。終電で帰宅して風呂にも入らずに寝た。風呂に入らないで寝るのは年に数回くらいだ。明け方眼がさめてどうにも気になる。昼間力仕事をして汗をかき、そのまま忘年会に行ったのだ。蒲団の中で自分の身体の輪郭が分かるような感じがする。…

岩瀬徹「形とくらしの雑草図鑑」

岩瀬徹「形とくらしの雑草図鑑」がよくできている。副題が「見分ける、身近な280種」、よく似た2種の雑草を見開き1ページづつで紹介している。たとえば、オオアレチノギクとヒメムカシヨモギ、それぞれ芽生え、ロゼット、茎と葉、花期の姿、全体、頭花のア…

栗山民也「演出家の仕事」を読む

栗山民也「演出家の仕事」(岩波新書)が面白かった。著者は最近まで新国立劇場演劇部門芸術監督を務めていた人。最近もチェーホフを描いた井上ひさしの新作「ロマンス」を演出した。 芝居の演出の現場の具体例が紹介されていて、演出ってこんなに面白く、し…

川上宗薫と泉大八、同じポルノ作家でも似ていて違うもの

川上宗薫と泉大八はポルノ作家として知られていた。川上宗薫は筋金入りだったと思う。何百人の女性と寝ていて豊富な経験を描いていた。泉大八はそうではなかった。おそらく女性経験も大してなかったのではないか。泉大八の書くポルノ小説からそういう裏付け…

低音が響くスピーカーの原理

ヤマハのスピーカーにサブウーファーのYSTシリーズがある。ヤマハのホームページによれば、 サイズを超えた重低音再生を実現するヤマハの独創技術、A-YST方式Advanced YST 空気そのものを振動板として利用する“エア・ウーファー”の考え方に基づき、小型キャ…

多木浩二「肖像写真」を読む、思わぬ収穫!

多木浩二「肖像写真ーー時代のまなざし」(岩波新書)を読む。そんなに期待していなかったのにこれは思わぬ収穫だった。多木はこの本で3人の写真家、19世紀後半のナダール、20世紀前半のザンダー、20世紀後半に活躍したアヴェドンを取り上げ、それぞれ「ブ…

絵画バブルが始まっている

絵画バブルが始まったようだ。オークションで非常識とも言える高値が付いている。石田徹也の生前せいぜい30〜40万円で取引されていた作品が、香港のオークションで1,200万円の値が付いたと聞いていたのに、ギャラリー椿の椿原さんの日記では6,000万円だとい…

団鬼六「最後の愛人」を読む

元来SMに興味がなかったので団鬼六の小説を読んだことがなかった。それが「最後の愛人」は良い作品だと聞いたので初めて団鬼六を読んでみた。 作家が70歳のときに出会ったキャバクラ嬢さくら23歳に惚れて彼女を愛人にする。奥さんも公認し、作家仲間や編集者…

「ひょっこりひょうたん島」の世界

「ひょっこりひょうたん島」はNHKの人形劇で、最初1964年に放映された。作者は井上ひさしと山元護久、もう、とてつもなく面白かった。この年高校へ入学した私は、早稲田大学を卒業して赴任してきた世界史の教師小宮山先生から、面白い番組が始まったから見な…

藤本ひとみ「離婚まで」を読んで知った公務員の驚くべき常識

友人が藤本ひとみ「離婚まで」(集英社)を貸してくれて、この作家飯田市出身で、飯田が舞台なんだと言った。同郷の作家というわけだ。読み終わって何年も経つけれど強く印象に残っている場面がある。作家は杉並区役所に勤めていたらしい。公務員の意識がこ…

なぜ日夏耿之介のポーの詩の訳文が大江健三郎の新作の題名に選ばれたのか

大江健三郎の新作「臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ」の題名は日夏耿之介訳のポーの詩「アナベル・リイ」から採られたという。 その日夏耿之介訳(講談社文芸文庫) 月照るなべ 臈たしアナベル・リイ夢路に入り、 星ひかるなべ 臈たしアナベル・…

15年前の戦後美術ベストテン

書棚の奥からほぼ15年前の「芸術新潮」1993年2月号が出てきた。特集が「アンケート 戦後美術ベストテン」、惹句が「30氏が厳選した、これぞ戦後美術の傑作だ!」 選ばれた作家を上位から紹介すると、 1. 河原温 2. 斎藤義重 3. 草間弥生・白髪一雄・リーウ…

あなたは女にはもてない

以前カミさんから、あなたは昔から女にはもてなかったけど男にはもてたわねえと言われた。それで思い出したことがある。小学校3、4年生の頃、学級委員長をクラス全員のの投票で決めた。どちらの年も川口君がトップ当選で私は次点だった。帰り道ガキ大将が…

フォトエージェンシーの写真

フォトエージェンシーと呼ばれる類の会社がある。カメラマンたちから作品(写真)を預かり管理する会社だ。その写真をストックフォトとも言う。広告代理店やデザインプロダクション、出版社や編集者が写真を借りに行く。だいたいが季節はずれに制作をするの…

大江健三郎「臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ」を読む

大江健三郎「臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ」を読んだ。少女陵辱の体裁を採っているが、これはまぎれもなく戦後日米関係史だ。ヒロインの映画女優の名前は「サクラ」、これは桜=日本を表している。 終戦後サクラは孤児になり、戦争の間軍医の…

中津川浩章の「上海アート紀行」からー中国の現代アートについて

画家の中津川浩章さんから「上海アート紀行」を送っていただいた。中津川さんは優れた現代美術家(画家)で、また筆も立つ人だ。以前浅草橋のマキイマサルファインアートでの個展を紹介したことがあった。「中津川浩章個展を見る」。今年、上海アートフェア…

塩田千春展「沈黙から」は今年のベスト3に入るだろう

11月に神奈川県民ホールで塩田千春展「沈黙から」を見た。5つの部屋をすべて使ってインスタレーションを行っている。一番大きいホールでは中央に黒く焼けたグランドピアノが置かれ、その周囲にやはり焼けた椅子が取り囲むように置かれている。ピアノも椅子…

チェン・カイコー「私の紅衛兵時代」の読書会に参加した

読書会なるものに参加した。思うに50年ぶりだ。50年前は村の社会教育主事が青年団員を集めて「空想から科学へ」の読書会を企画したのに参加したことがある。その社会教育主事は「赤い」ということで左遷され、村の小中学校の図書館司書にされた。その後中央…

黒いオルフェ

まだ20代の頃、映画「黒いオルフェ」の音楽に歌詞を付けた。 寒い秋の夜は 昔のことを 思い出して とてもつらい 今はどこに いるだろ 会いたい ああ 二度と来ない 二度と来ない 二度と来ない日

アグネス・ラムは今も魅力的だ

mixiのアグネス・ラムのコミュに入っている。そこでアグネス・ラムの写真が次々に紹介されている。私は年のせいか最近の若い女性タレントに全く興味を持てないのに、なぜ同時代だったアグネス・ラムには今でも惹かれるのだろう。おそらく彼女が現在の年齢(…