あなたは女にはもてない

 以前カミさんから、あなたは昔から女にはもてなかったけど男にはもてたわねえと言われた。それで思い出したことがある。小学校3、4年生の頃、学級委員長をクラス全員のの投票で決めた。どちらの年も川口君がトップ当選で私は次点だった。帰り道ガキ大将が慰めてくれたのを今でも憶えている。川口は女が投票しているんだ。男だけだったらおまえの方が当選しているぞ。川口君はハンサムだった。そんなことをまだ憶えているのは、やはりそのことが微妙に悔しかったのだろう。
 カミさんは別の時に、あなたの村の人はみんな宇宙人よと言った。足が1センチ地球から離れている。村の人じゃなくて、村の私の友人たちがという意味だが。宇宙人というのは足が地に着いていないと言うことだ。高校を卒業した時、村で親しい友人は4人いた。優秀だった原は組合活動に専念して今も中学の一教師だ。もう一人の優秀だった原は土方をしていたが4年前に自殺した。これも優秀だったハムは今も独身で獣医師ながら養豚農家だ。ひとり小池だけが一部上場企業の重役になっている。かく言う私も派遣社員で肉体労働をしている。
 彼女とは34年間一緒に住んだのだから私の大概のことは分かるだろう。いや私は彼女のことがあまり分からないが。