2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

中沢新一『アースダイバー 東京の聖地』を読む

中沢新一『アースダイバー 東京の聖地』(講談社)を読む。2005年に発行された前著『アースダイバー』は、現代の東京が縄文時代の地形と密接な関係を持っていることを解き明かしたものだった。その後『大阪アースダイバー』も発行されたが、これは読んでいな…

中和ギャラリーの柴田和展を見る

東京銀座の中和ギャラリーで柴田和展「偏と旁の関係」が開かれている(3月3日まで)。柴田は1934年生まれ、帝国美術学校(武蔵野美術大学の前身)を卒業。1960年代、美術グループ乱立の時代はネオ・ダダのメンバーらとも一緒に活動していた。1963年、最後の…

新国立劇場の『美しい日々』を見た

松田正隆作の芝居『美しい日々』を新国立劇場で、同劇場演劇研修所第11期生修了公演として見た(2月6日)。演出は宮田慶子。忘れていたが、7年前にも第4期生の修了公演で見ていた。今回見ている間も見終わっても全く覚えていなかった。観劇記をこのブログに…

岡野宏文・豊崎由美『百年の誤読』を読む

岡野宏文・豊崎由美『百年の誤読』(ぴあ)を読む。1900年から2004年までのベストセラーから10年ごとに10冊を選んで岡野と豊崎が寸評を加えている。これがやたら面白かった。 1914年のベストセラー、阿部次郎『三太郎の日記』について、「こいつとにかく、と…

島薗進・橋爪大三郎『人類の衝突』を読む

島薗進と橋爪大三郎の対談『人類の衝突』(サイゾー)を読む。雑誌『月刊サイゾー』に2015年に連載したもので、副題が「思想、宗教、精神文化からみる人類社会の展望」というもの。知人から勧められて読んだ。島薗は宗教学者、橋爪は社会学者で、この二人の…

『もっと知りたい 熊谷守一』を読む

池田良平・蔵屋美香『もっと知りたい 熊谷守一』(東京美術)を読む。副題が「生涯と作品」。初期から作品をたどり、昭和14年、59歳の頃、輪郭線を赤い線で描き、その線を塗り残す方法、いわゆる「モリカズ様式」が確立したという。 輪郭の中を塗りつぶし、…

今井信吾『宿題の絵日記』を読む

今井信吾『宿題の絵日記』(リトルモア)を読む。今井は多摩美術大学名誉教授。二人目の娘が強度の難聴だった。住んでいるところに近い私立日本聾話学校に通わせた。ここは手話を使わずことばを話す教育をしていた。聾話学校ではそのころ補聴器の力を借りて…

ギャラリー檜Bの大場さやか展を見る

東京銀座界隈の画廊16軒ほどで、東北芸術工科大学の卒業生支援プログラム「東北芸術工科大学アートウォーク」が開かれている(2月24日まで)。その一つ、京橋のギャラリー檜Bで大場さやか展が開かれている。大場は1980年宮城県生まれ、2006年に東北芸術工科…

古田亮『日本画とは何だったのか』を読む

古田亮『日本画とは何だったのか』(角川選書)を読む。優れた日本画論だ。古田は日本画はクレオールだという。クレオール語とは現地の住民が支配者の言葉をまねて話したピジン語が、その子孫になって独立した言葉になったもの。古田は日本画ははじめ中国絵…

豊島区立郷土資料館の「アトリエのときへ」を見る

東京池袋の豊島区立郷土資料館企画展示室で「アトリエのときへ――10の小宇宙」が開かれている(3月25日まで)。小さくだが「豊島区ミュージアム開設プレイベント」と銘打たれている。 戦前の豊島区旧長崎村を中心とした地域には画家たちが集まるアトリエ村と…

ギャラリイKの葉緑素為吉展を見て、井上智洋『人工知能と経済の未来』を読む

東京京橋のギャラリイKで「葉緑素為吉の質問があります10」が開かれている(2月17日まで)。画廊へ行くと葉緑素さんがお客さんに何やら説明していた。麻袋で作った着ぐるみを着ているのが作家の葉緑素さんだ。壁に描かれた縦棒が今回の作品で、葉緑素さんに…

山本義隆『近代日本一五〇年』を読む

山本義隆『近代日本一五〇年』(岩波新書)を読む。山本は元東大全共闘代表で、その後駿台予備校で教師をしている。数年前に出版された『磁力と重力の発見』は各方面から絶賛されたが、何分全3巻と大著なので、手が出せないでいた。それが新書という形で出版…

『磯崎新と藤森照信の「にわ」建築談義』を読む

『磯崎新と藤森照信の「にわ」建築談義』(六耀社)を読む。二人の建築家が毎年対談を行っていて、『〜の茶室建築談義』『〜のモダニズム建築談義』に続く3冊目。藤森は建築史が専門なので、前2冊については、藤森が歴史を語ることが多かったが、本書では磯…

高田里惠子『グロテスクな教養』を読む

高田里惠子『グロテスクな教養』(ちくま新書)を読む。「教養」はふつうプラスの価値観をまとっているが、ときにマイナスの価値観を込めて語られることもある。表紙裏の惹句から、 「教養とは何か」「教養にはどんな効用があるのか」――。大正教養主義から、…

ギャラリー・オカベの番留京子展「Made in Japan」を見る

東京銀座のギャラリー・オカベで番留京子展「Made in Japan」が開かれている(2月24日まで)。番留は富山県生まれ。1985年、創形美術学校を卒業している。1986年、ギャラリー青山で初個展。以来多くのギャラリーで個展を開いてきたが、最近はギャラリー・オ…

Shonandai Galleryの高島進展を見る

東京六本木のShonandai Galleryで高島進展が開かれている(2月19日まで)。高島は1959年兵庫県生まれ、1982年に武蔵野美術大学建築学科を卒業したあと、1984年に武蔵野美術学園油絵科を卒業している。その後メキシコのアジェンデ美術学校に1年間留学した。 …

KANZANギャラリーのヨシダ ナギ展を見る

東京馬喰町のKANZANギャラリーでヨシダ ナギ展が開かれている(2月25日まで)。ヨシダは1986年生まれ、独学で写真を学び、2009年から単身アフリカへ渡り、少数民族をテーマに写真を撮り、写真集を出版し、西武渋谷で写真展を開いた新進の女性カメラマンだ。 …

さすらい日乗さんによる長谷川康夫『つかこうへい正伝1968−1982』評

さすらい日乗(指田文夫)さんが、長谷川康夫『つかこうへい正伝1968−1982』(新潮社)について、大変興味深い書評を寄せてくれた。それを掲載する。 長谷川康夫の『つかこうへい正伝』を読んだ。 非常に面白いが、彼の作劇術は、実は小津安二郎が、野田高梧…

ガレリア・グラフィカの藤原泰佑展を見る

東京銀座のガレリア・グラフィカで藤原泰佑展が開かれている(2月17日まで)。藤原は1988年群馬県生まれ。2013年に東北芸術工科大学大学院芸術文化専攻洋画領域を修了している。2011年にギャラリーツープラスで初個展、以来スルガ台画廊やアートフロントギャ…

メゾンエルメス フォーラムの中谷芙二子展を見る

東京銀座のメゾンエルメス フォーラムで中谷芙二子+中谷宇吉郎展「グリーンランド」が開かれている(3月4日まで)。中谷芙二子は雪の研究で名高い宇吉郎の次女として1933年に札幌に生まれる。米国ノースウェスタン大学を卒業する。1970年の大阪万博で初めて…

ギャラリーなつかの石森晴菜展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで石森晴菜展が開かれている(2月10日まで)。石森は1993年神奈川県生まれ。2016年に多摩美術大学美術学部生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻を卒業し、現在同大学院美術研究科博士前期課程デザイン専攻テキスタイルデザイ…

加藤周一+池田満寿夫『エロスの美学』を読む

加藤周一+池田満寿夫『エロスの美学』(朝日出版社)を読む。「比較文化講義」というシリーズの1冊で、二人がエロスをテーマに対談をしている。日本でトップクラスの評論家と、エロチックな版画を作り、エロ小説も書いている作家という組み合わせは「エロス…

d-labギャラリーのこづま美千子展を見る

埼玉県入間市のd-labギャラリーでこづま美千子展が開かれていた(2月4日まで)。こづまは1963年東京生まれ。1987年に多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業。1984年から個展やグループ展で発表を続けている。1988年ホルベインスカラシップ奨学生、2004年…

高田里惠子『文学部をめぐる病い』を読む

高田里惠子『文学部をめぐる病い』(ちくま文庫)を読む。副題が「教養主義・ナチス・旧制高校」となっている。主として戦前・戦後の旧制高校―東京帝国大学出身のドイツ文学者が対象になっている。東京帝国大学で法学部でなく文学部を選んだことで、すでに立…

武澤林子句集『遍歴』を再読する

武澤林子句集『遍歴』(本阿弥書店)を読む。武澤林子は伯母で先月14日に亡くなった。翌日が96歳の誕生日だった。大正11年に東京上野桜木町に生まれている。以前読売新聞の長谷川櫂のコラム「四季」に伯母の「雲の峰越えて移すや父祖の墓」が取り上げられた…

ギャラリー惺のグループ展「紙の上の思考V」で佐藤万絵子を見る

東京吉祥寺のギャラリー惺でグループ展「紙の上の思考V」が開かれている。参加しているのは4名で、小高由里子、佐藤万絵子、藤崎美和、山神悦子だ。 このうち、佐藤は以前から気になる作家で1975年、秋田県生まれ。1998年に武蔵野美術大学油絵学科を卒業し、…