ギャラリイKの葉緑素為吉展を見て、井上智洋『人工知能と経済の未来』を読む

 東京京橋のギャラリイKで「葉緑素為吉の質問があります10」が開かれている(2月17日まで)。画廊へ行くと葉緑素さんがお客さんに何やら説明していた。麻袋で作った着ぐるみを着ているのが作家の葉緑素さんだ。壁に描かれた縦棒が今回の作品で、葉緑素さんによれば労働需要の減少化傾向を表している棒グラフだという。左端が現在で、右端が2045年ころになる。上の青色がAI(人工知能)・ロボットの労働需要、次の緑が肉体労働、オレンジが頭脳労働、紫色が事務労働の需要を表している。なんと事務労働は2040年ころには無くなってしまっている。2045年にはAI・ロボットの仕事が7割を占めていて、頭脳労働も肉体労働もずっと減っている。それらがほとんど人工知能で代替されてしまっているという。葉緑素さんはこの図を示して、来場者にこのことをどう思うか考えさせている。



 実はこの考えは井上智洋が『人工知能と経済の未来』(文春新書)で提示しているものなのだ。井上は25年後にはほとんどの仕事をAIが行っていて、多くの人間は失業しているだろうと言う。その時労働者の所得を保証するために、井上はベーシックインカムという制度を導入すべきだと言う。政府が国民全員に一定額を支給するという制度。全国民1人あたりに7万円を支給するとすれば、財源が100兆円ほど必要になる。それは増税を当てるという。計算すると年収300万円ほどの人は支給額と増税額が釣り合って損得なし。300万円以上なら増税に、以下なら増収になるとのこと。
 このことに対する意見を葉緑素さんが質問している。それで早速井上智洋『人工知能と経済の未来』(文春新書)を購入して読んでみた。本書は2016年7月に初版が発行されていて、私が買ったのが2017年12月発行の16刷りになっているベストセラーだった。よく売れて読まれているのが納得できる面白さだった。
 昔ギリシアアテネだったか、奴隷が働いて一般市民は働かないで毎日議論やスポーツに明け暮れていた。あの奴隷の代りにAIが働くのなら、それも良いのかもしれない。H.G.ウェルズは『タイムマシン』で未来の世界を描いて、地上に住む人類はただ遊んで暮らしていて、その消費材は地下に住む人類が作っているとした。イギリスの上流階級と労働階級の未来図なのだろう。だが地上の人類は面白おかしく暮らしているが知能も衰えてしまっているのじゃなかったか。地下の人類が高い知能を誇って財を生産していた。
 井上も危惧しているが、もしAIが意識をもって進化したら、人類の未来はAIの奴隷になってしまうかもしれないが。

 上の画像は今回のDM葉書で、棒グラフの代りに色面で表している。
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葉緑素為吉の質問があります10」
2018年2月12日(月)―2月17日(土)
11:30−19:00(土曜は17:00まで)
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ギャラリイK
東京都中央区京橋3-9-7 京橋ポイントビル4F
電話03-3563-4578
http://galleryk.la.coocan.jp/