2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

藍画廊のしばた みづき展「―みることについて―」を見る

東京銀座の藍画廊でしばた みづき展「―みることについて―」が開かれている(8月4日まで)。これは「新世代への視点」の一環で、銀座・京橋などの11の画廊が企画して、40歳以下の作家を取り上げて開く共同個展だ。藍画廊はしばた みづきを取り上げている。 し…

森洋子『ブリューゲルの世界』を読む

森洋子『ブリューゲルの世界』(新潮社とんぼの本)を読む。今春大規模な展覧会があった「バベルの塔」や「雪中の狩人」の画家だ。とても良い本だ。 森はお茶の水女子大で哲学を学んだのち、米プリンマーカレッジ美術史学科で修士号を取得、ベルギー政府給費…

山本弘の作品解説(81)「壺」

山本弘「壺」、油彩、F6号(41.0cm×32.0cm) 1976年制作。単純な形の壺を画面いっぱいに描いている。壺の表面そのものは筆で平塗りをしているが、壺の模様なのか荒れたような釉薬の表情なのか、それをかなり激しく筆跡を暴れさせて描き込んでいる。つるんと…

新宿の小浜藩邸跡

東京新宿の矢来町に小さな矢来公園がある。そこに小ぶりな石碑が立っていて、その下に公園の由緒が書かれている。 小浜藩邸跡 若狭国(福井県)小浜藩主の酒井忠勝が、寛永五年(1628)徳川家光からこの地を拝領して下屋敷としてもので、屋敷の周囲に竹矢来…

東京都写真美術館の杉浦邦惠展を見る

東京都写真美術館で杉浦邦惠「美しい実験/ニューヨークとの50年」が開かれている(9月24日まで)。杉浦は1942年名古屋市生まれ、お茶の水女子大学物理学科を中退したのち渡米してシカゴ・アート・インスティテュートで写真と出会う。留学当初、写真を専攻す…

阪田寛夫『庄野潤三ノート』を読む

阪田寛夫『庄野潤三ノート』(講談社文芸文庫)を読む。阪田は宝塚のスター大浦みずきの父で芥川賞受賞の小説家、童謡「さっちゃん」の作詞家でもある。娘の内藤啓子が『枕詞はサッちゃん』で父・阪田寛夫の人生を書いている。それは最近エッセイスト・クラ…

桐野夏生『夜の谷を行く』を読む

桐野夏生『夜の谷を行く』(文藝春秋)を読む。連合赤軍事件を描いたと評判の作品だ。読み始めて家族小説のような男と女の物語のような展開に戸惑った。凄惨な連合赤軍事件を描くのに、こんなかったるいようなところから書くのか? しかしそれは図を描くため…

ギャラリーゴトウの野見山暁治展を見る

東京銀座のギャラリーゴトウで野見山暁治展が開かれている(8月3日まで)。野見山は大作の作家だが、今回は油彩の小品と版画にドローイングをした小品を展示している。小品のドローイングは10万円からの値段が付いている。せめて20号や30号の油彩作品があっ…

コバヤシ画廊の滝本優美展を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で滝本優美展が開かれている(8月4日まで)。これは「新世代への視点」の一環で、銀座・京橋などの11の画廊が企画して、40歳以下の作家を取り上げて開く共同個展だ。コバヤシ画廊は滝本を取り上げている。 滝本は1992年、東京都生まれ…

明日から「画廊からの発言−新世代への視点2018」が始まる

明日から始まる「画廊からの発言−新世代への視点2018」は、恒例の11軒の画廊が推薦する40歳以下の若手作家11人の個展だ。現代美術の代表的な貸画廊が選んだ作家たちだから見逃せない重要な企画で、7月23日から2週間開かれる(8月4日まで)。 11の画廊とそ…

筒井清忠 編『明治史講義【人物篇】』を読む

筒井清忠 編『明治史講義【人物篇】』(ちくま新書)を読む。明治史における重要な人物22人を取り上げ、それを20人の研究者が分担して書いている。1項目が15〜20ページと短い。それでも全体は400ページほどある。短いとはいえ、大項目主義の事典と考えればい…

宇フォーラム美術館の柴田美智子個展「猿が家の中に居る」を見る

東京国立の宇フォーラム美術館で柴田美智子個展「猿が家の中に居る」が開かれている(7月29日まで)。柴田は1955年東京都江東区生まれ、1980年〜83年に美学校で菊畑茂久馬に師事している。1994年日本橋好文画廊で初個展、以来ギャラリーフレスカ、Keyギャラ…

会田誠 編『藤田嗣治の少女』を読む

会田誠 編『藤田嗣治の少女』(講談社)を読む(見る)。藤田の描いた少女の絵をまとめたもの。冒頭で会田が書く。 多作な藤田嗣治の画業の中でも、少女を描いたものはやはり多い。ただし、いわゆる「少女愛」、もっと言えば「ロリータ・コンプレックス」に…

山本弘の作品解説(80)「河」

山本弘「河」、油彩、F20号(61.0cm×73.0cm) 1977年制作。河の水面が逆光で白く光っている。山本が住んだ飯田地方は南北に天竜川が流れ、そこに何本もの支流が流れ込んで深い谷を作っている。天竜川の両脇に段丘が作られていて、対岸が階段状に見えている。…

高橋三千綱『作家がガンになって試みたこと』を読む

高橋三千綱『作家がガンになって試みたこと』(岩波書店)を読む。高橋が岩波書店のPR誌『図書』に2017年4月号から1年間連載したもの。途中から連載を読み始め、単行本になって通して読んだ。現在70歳の高橋は34歳の時に十二指腸潰瘍になり胃の3/4を切除され…

山本弘「削道AB」に関するコメント

昨日アップした山本弘の作品解説(79)「削道AB」に関してティーグル・モリオンさんがコメントを寄せてくれた。短いがとても的確なコメントだと思うので、ここに再録させていただく。 これは実物を拝見したい作ですね。この地の部分はどういう塗りなのでしょ…

山本弘の作品解説(79)「削道AB」

山本弘「削道AB」、油彩、F30号(73.0cm×91.0cm) 1978年制作。この年2回目の飯田市公民館での個展に出品された。展示作品は55点で、これが生前最後の個展になった。生涯ほとんど飲酒をやめなかったのに、アル中治療のため入院し退院してから2年間酒を飲まな…

瀬川拓郎『縄文の思想』を読む

瀬川拓郎『縄文の思想』(講談社現代新書)を読む。「縄文の思想」と題されている。瀬川は「はじめに」で、本書は「考古学と神話から具体的な資料にもとづいて縄文の思想をあきらかにします」と書いている。縄文の思想? って思ったが、読み終わって、それに…

山田昌弘『悩める日本人』を読む

山田昌弘『悩める日本人』(ディスカヴァー携書)を読む。副題が「“人生案内”に見る現代社会の姿」というもので、読売新聞に大正3年から続いている「人生案内」という人生相談を回答者の一人である山田が分析している。山田は家族社会学が専門の社会学者で、…

星野桂三『石を磨く』を読む

星野桂三『石を磨く』(産経新聞社)を読む。産経新聞大阪本社版に平成14年4月から毎週1回2年間にわたって連載したもの。著者は京都の星野画廊のオーナーで、副題が「美術史に隠れた珠玉」とあるように、多くはほとんど知られることのない日本の近代美術の画…

太田博樹『遺伝人類学入門』を読む

太田博樹『遺伝人類学入門』(ちくま新書)を読む。副題が「チンギス・ハンのDNAは何を語るか」という興味深いもの。何年か前にチンギス・ハンの遺伝子が広くアジアからヨーロッパに拡がっているという説を読んだことを思い出した。モンゴル帝国がアジアを席…

ガルリSOLの菅田比歩海展「GAZE」を見る

東京銀座のガルリSOLで菅田比歩海展「GAZE」が開かれている(7月14日まで)。菅田は1992年富山県生まれ、2015年に女子美術大学芸術学部美術学科立体アート専攻を卒業している。2017年に同大学大学院博士課程立体芸術研究領域を修了した。 2015年横浜の黄金町…

山本弘の作品解説(78)「第三病棟」

山本弘「第三病棟」、油彩、F50号(116.7cm×90.9cm) 1976年制作。「3号病棟」とも書かれている。1975年、45歳のとき、アルコール中毒治療のため飯田病院精神科に入院した。翌1976年1月に退院したと年譜にある。以後2年間断酒した。退院した1976年9月に飯田…

久保田晃弘+畠中実 編『メディア・アート原論』を読む

久保田晃弘+畠中実 編『メディア・アート原論』(フィルムアート社)を読む。メディア・アートの定義は難しいという。一般的にはコンピュータをはじめとする同時代のメディア・テクノロジーを使用した美術作品を総称するものとして使用されているという。 …

亀山郁夫『ショスタコーヴィチ』を読む

亀山郁夫『ショスタコーヴィチ』(岩波書店)を読む。ソ連で最も著名な作曲家ショスタコーヴィチ。大きな栄誉とともに権力に媚びたとして激しい批判にもさらされてきた。国家的褒賞を13回も受けながら、スターリンの批判に心身とも深く傷ついてきた。亀井は…

徳川夢声『話術』を読んで

徳川夢声『話術』(新潮文庫)を読む。裏表紙の惹句に「人生のあらゆる場面で役に立つ、“話術の神様”が書き残した(話し方)の教科書」とある。しかしながら、私にはほとんど役に立たなかった。気になった個所がある。 小学校の先生方よ、次の時代の国民を、…

抽象美術とは何か

1992年頃、今から25年ほど前、美術評論家の針生一郎さんから、現在なぜ抽象表現主義が行われているのか、その社会的背景を考えてみなさいと言われた。その後15年間考えたが分からなかった。 しかし分かった事がある。なぜ針生さんがそう言われたかだ。 作家…

うしお画廊の深沢軍治展を見る

東京銀座のうしお画廊で深沢軍治展が開かれている(7月14日まで)。深沢は1943年山梨県生まれ、1971年に東京芸術大学大学院美術研究科を修了している。昨年の10月に東京小金井のギャラリーブロッケンで個展を開いていた。一方毎年のようにみゆき画廊で個展を…

GALERIE PARISの野沢二郎展「たたずむ」を見る

横浜中区のGALERIE PARISで野沢二郎展「たたずむ」が開かれている(7月14日まで)。野沢は茨城県生まれ、1982年に筑波大学大学院を修了している。これまで「VOCA展'97」や同年の「バングラデシュ. アジア美術ビエンエーレ」に参加し、2012年はDIC川村記念美…

山本弘の作品解説(77)「てるてる坊主」

山本弘「てるてる坊主」、油彩、F30号(72.5cm×60.8cm) 1977年制作。サインなし。30号と山本にしてはやや大きいサイズだ。てるてる坊主が描かれている。両目の目頭から涙が流れているように見える。頭の右側にあるのは太陽だろうか。てるてる坊主にしては細…