宇フォーラム美術館の柴田美智子個展「猿が家の中に居る」を見る

 東京国立の宇フォーラム美術館で柴田美智子個展「猿が家の中に居る」が開かれている(7月29日まで)。柴田は1955年東京都江東区生まれ、1980年〜83年に美学校で菊畑茂久馬に師事している。1994年日本橋好文画廊で初個展、以来ギャラリーフレスカ、Keyギャラリー、スパンアートギャラリー、新宿眼科画廊、ギャラリー・ブロッケン、昨年はSPCギャラリーで個展を行ってきた。
 昨年のSPCギャラリーでの個展はこのブログでも紹介したが、「変容」と題されていた。今回のテキストに柴田は書く。

『STORY』は1994年の最初の個展で展示した作品で、10体で構成された1点の作品である。
テーマは「生と死」である。
生については現実に多くの現象に触れることが出来るためとらえやすいように思えるが果たしてどうなのか。死を理解するということは不可能に思える。死は生の対義語ではない。関連性はあるが別の事象としてとらえるべきものである。
作品は金属製の繊維と麻の繊維とを貼り合わせたり編んだり絡めたりしてつかの間の強度を得、アルミを鋳造した骨格をたよりにして立ち上がった形を保っている。一方で顔は落ち、体の一部は欠落し、外部に向かって開きながら、梯子を登るという運動を続けている。最終的には梯子から体全体が落ち運動が止まるまで運動をし続けるのだ。
 生はつかの間の強度と運動の連続によって支えられている。
『変容』は9体で構成された1点の作品である。上記の『STORY』の続編にあたり2017年の個展で展示した。テーマは「死と再生」である。多くの民族の神話や儀式に登場する死と再生を疑似体験してみたく作り始めたものである。
ゆっくりと地面に向かって下降してゆき、やがて落下してばらばらに崩壊し地面に染みこんだ体が再結合して立ち上がる様子を作ったもの。……











 最初の会場には舟に乗る原始人? 母子、戦っている二人や、教室の椅子に座る子供と猿と半人半猿などが展示されている。次の会場にはSPCギャラリーで展示された「変容」が左手に天井から吊り下げられた形で展示されている。猿が尻尾で吊下げられている。死と再生を表わしているのか。
 右手には梯子を登る猿たちが展示されている。みな顔がなく、顔は床に落ちている。最後の1頭は体ごと床に落ち、腐乱したのかあばら骨が見えている。これが「STORY」なのか。
 興味深い個展だと思う。宇フォーラム美術館はJR国立駅から徒歩20〜25分、バスも出ているようだ。ちょっと遠いけどその価値はあると思う。月〜水曜日休館、入場料300円。
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柴田美智子個展「猿が家の中に居る」
2017年7月12日(木)―7月29日(日)
13:00−18:00(月火水曜日休館)
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宇フォーラム美術館
東京都国立市東4-21-10
電話042-580-1557
http://kunstverein.jp/