2024-01-01から1年間の記事一覧
今年は125冊の本を読んだ。そのうち特に優れていると思ったのは21冊だった。それらを紹介する(読書順)。 ・海老坂武『戦後文学は生きている』(講談社現代新書) https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/2024/02/03/215712 ・井上ひさし『芝居の面白さ、教…
吉田秋生『増補 ハナコ月記』(ちくま書房)を読む。1988年に創刊されたマガジンハウスの週刊誌『Hanako』に連載されたマンガ。ただし高野文子、吉田秋生、しりあがり寿、江口寿史の4人のマンガ家が、毎週1人ずつ交代で描いていたので4週に1回、月に1回…
年末恒例の朝日新聞「書評委員19人が選ぶ今年の3点」が発表された(12月28日付け)。その中から気になったものを紹介する。 福嶋亮太推薦 岡崎乾二郎『而今而後 批評のあとさき』(亜紀書房) 本書はモダニズムという「妖怪」を探求してきた美術家の評論集…
年末恒例の読売新聞「読書委員が選ぶ2024年の3冊」が発表された(12月22日付け)。その中から気になったものを紹介する。 小泉悠推薦 成田雅文『日ソ戦争』(中公新書) 今年の3冊にはまず本書を挙げたい。短いが悲惨な戦争の様相を、新史料を駆使して見事…
金井久美子・金井美恵子『鼎談集 金井姉妹のマッド・ティーパーティーへようこそ』(中央公論新社)を読む。画家と作家の金井姉妹がホステス(?)になって、9名の作家たちと鼎談をしている。順番に蓮見重彦、武田百合子、西江雅之、大岡昇平、山田宏一、フ…
椎根和『銀座Hanako物語』(紀伊國屋書店)を読む。雑誌『Hanako」は1988年に女性向け週刊誌としてマガジンハウスから創刊された。ちょうどバブル経済の真っただ中で、翌年には誌名そのものが,新語・流行語大賞の新語部門銀賞を受賞した。選考理由は、「ハ…
東京神楽坂のeitoeikoで木村了子展「神楽坂の愛人の家」が開かれている(1月18日まで)。木村了子についてはギャラリーのホームページより、 1971 京都生まれ。1997 東京藝術大学大学院修士課程壁画専攻修了。美男におわす 埼玉県立近代美術館、島根県立石…
東京新富町のガルリSOLで石下雅斗個展「鳩が死んでいる」が開かれている(12月28日まで)。石下は1990年東京生まれ、2011年に東京ビジュアルアーツメイク学科特殊メイク専攻を卒業し、2018年に東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業し、2020年に同大学大学院美術…
毎日新聞年末恒例の今年の「この3冊」が発表された。書評委員が年間で最も良かったと挙げた3冊だ。その内私が印象に残ったものを拾ってみた。 *蜂飼耳編『吉本隆明詩集』(岩波文庫) 荒川洋治・選 吉本隆明詩集 (岩波文庫 緑233-1) 岩波書店 Amazon 本書…
岡田暁生『西洋音楽史講義』(角川ソフィア文庫)を読む。一見地味なタイトルだが、これが素晴らしい。岡田暁生といえば、吉田秀和賞を受賞した『音楽の聴き方』(中公新書)や『オペラの運命』(同)、『西洋音楽史』(同)、『音楽の危機』(同)といった…
斎藤美奈子が高齢者差別について紹介している。(『ちくま』2024年12月号) 高齢者差別の原因は、大きく二つあるように思われる。第一の原因は、個人差が無視され、すべてが年齢で一律に判断される傾向だ。(中略)第二の原因は、生産性を重んじる資本主義社…
東京上野の東京藝大で「東京藝術大学大学院美術研究科博士審査展2024」が開かれている(12月23日まで)。正確な会期は、陳列館と正木記念館が12月21日まで、大学美術館本館と大学会館、A&S LAB.が12月23日までとなっている。 印象に残った作品を見た順に紹介…
東京南青山の始弘画廊で嶋村有里子個展「流星を射抜く」が開かれている(12月21日まで)。嶋村有里子は1979年静岡県生まれ、2002年日本芸術大学美術学科絵画コースを卒業している。2003年にアートスペース羅針盤で初個展、以来始弘画廊や高輪画廊などで10数…
東京京橋のギャラリー・ビー・トウキョウで高橋冴個展「貴方 彼方 此方」が開かれている(12月21日まで)。高橋冴は1997年栃木県生まれ、2022年武蔵野美術大学油絵学科油絵専攻を主席卒業、現在同大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース在学中。今回が初個…
喪中につき年賀欠礼という葉書の中に昆虫学者湯川淳一先生の奥様からのものがあった。今年2月29日に「夫 淳一」が83歳にて永眠したとあった。湯川先生は1940年和歌山県生まれ、大阪府立大学農学部を卒業し、九州大学大学院農学研究科博士課程を修了した。一…
佐久間文子『美しい人』(芸術新聞社)を読む。副題が「佐多稲子の昭和」、作家佐多稲子の伝記である。佐多稲子はプロレタリア作家に分類されるが、その狭いジャンルに留まらず、現代日本のきわめて優れた作家のひとりと言える。佐多は明治37年生まれで、平…
東京練馬区の練馬区立美術館で野見山暁治展「野っ原との契約」(後期)が開かれている(12月25日まで)。昨年亡くなった野見山さんの展覧会を練馬区立美術館のコレクションを中心に前期と後期で約80点展示するという。野見山さんは練馬区に住んでいて練馬区…
東京京橋のギャルリー東京ユマニテで野田裕示展「布に宿るものたち」が開かれている。野田は1952年和歌山県生まれ、多摩美術大学を卒業した翌年すでに伝説の南画廊で個展を開いている。その後ギャルリー東京ユマニテで個展を繰り返してきた。2012年には国立…
東京京橋のギャラリーなつかとCross View Artsでチョン・ダウン展「Manifesto for a Bird of Passage(渡り鳥のための宣言)」が開かれている(12月19日まで)。チョンは1989年韓国生まれ、2015年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画専攻を卒業し、2017年…
東京京橋のギャラリー檜B・Cでシマヅヨウ彫刻展「脈の感じ2」が開かれている(12月14日まで)。シマヅヨウは1962年兵庫県生まれ、1986年に武蔵野美術短期大学専攻科を修了している。1986年より個展を続けているという。昨年に続いてギャラリー檜B・Cで個展…
谷川俊太郎が亡くなった。巷には谷川俊太郎を惜しむ声が溢れている。皆がほとんど谷川俊太郎を絶賛している。谷川が第一級の詩人だったことは間違いない。しかしここまで無批判に絶賛して良いものか。私が持っている谷川の詩集は『自選 谷川俊太郎詩集』(岩…
ジョン・ル・カレ『スパイはいまも謀略の地に』(ハヤカワ文庫)を読む。2020年に亡くなったル・カレの最後から2番目のスパイ小説。さすがにいつも通りの人間性を掘り下げた見事なスパイ小説だ。読みながらいつも通り圧倒された。 だが、私には本書を簡潔に…
東京銀座のギャラリー58で「自画像:Reflections」が開かれている(12月27日まで)。ギャラリーのホームページより、 本展では、1960年に結成した伝説の前衛芸術グループ「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」で従来の芸術概念に反旗を翻した赤瀬川原平、…
東京銀座の藍画廊で日比野絵美展「New Chapter」が開かれている(12月7日まで)。日比野絵美は1986年神奈川県生まれ、2009年に日本大学芸術学部美術学科版画コースを卒業し、2011年同大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程を修了している。2011年…
東京銀座のコバヤシ画廊で佐藤希展「深淵」が開かれている(12月7日まで)。佐藤希は1986年神奈川県生まれ、2011年武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業し、2013年同大学大学院造形研究科美術専攻日本画コースを修了、2013-2017年武蔵野美術大学日本画学…
東京京橋のギャラリー川船で恒例の「歳末入札展示会」が始まった(12月7日まで)。 入札の方式は「二枚札方式」、これは入札カードに希望価格の上値(上限)と下値(下限)の二つの価格を書いて入札するもの。他に入札者のない場合は下値で落札する。上値が…
梯久美子『戦争ミュージアム』(岩波新書)を読む。梯久美子が戦争や平和の博物館を訪ね歩いた記録。大久野島毒ガス資料館、予科練平和記念館、戦没画学生慰霊美術館 無言館、周南市回天記念館、対馬丸記念館、象山地下壕(松代大本営地下壕)、東京大空襲・…
小川洋子『妊娠カレンダー』(文春文庫)を読む。「妊娠カレンダー」「ドミトリイ」「夕暮れの給食室と雨のプール」の3短編が収録されている。ちょっと変わった小説集。『博士の愛した数式』が面白かったので手に取った。『博士~』の面白さには及ばなかっ…
原武史『象徴天皇の実像』(岩波新書)を読む。副題が、「『昭和天皇拝謁記』を読む」というもの。政治学者の原武史が、田島道治がまとめた昭和天皇とのやりとりを記した『拝謁記』を分析したもの。田島は戦後の2代宮内府長官、次いで初代宮内庁長官を務め…
東京神宮前のギャラリー砂翁&トモスで菅野美榮展「旅スル種子・アオギリ」が開かれている(12月7日まで)。菅野美榮は群馬県出身、1968年共立女子短期大学を卒業したのち、1971年日本デザインスクールを卒業している。1990年、銀座のギャラリー・オカベで…