城塚登『社会思想史講義』を読む

 城塚登『社会思想史講義』(ちくま学芸文庫)を読む。本書はもともと「放送大学」の「社会思想史」という講義のテキストとして1985年に出版されたものを、加筆して1998年に有斐閣から出版された。昨年それをちくま学芸文庫として出版した。

 元来が放送大学の講義テキストとして書かれたものなので、分かりやすく手際よくまとめられている。講義テキストという性格から比較的幅広い視点から記述されているし、あまり偏った見方は避けたかったのではないか。

 城塚登有斐閣版を出版した5年後76歳で亡くなっている。もう50年ほど前に城塚の『新人間主義の哲学』(NHKブックス)を読んだのだった。岩波文庫マルクス『経済学・哲学草稿』の翻訳も、ルカーチ『歴史と階級意識』の翻訳も城塚だった(共訳)。城塚をたくさん読んだわけではなかったのに、なぜか懐かしい気がするのは感受性の強かった若い頃その著書に触れたためだったのか。