2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ニホンカワウソ絶滅

8月28日付けの朝日新聞に「ニホンカワウソ『絶滅』」という見出しの記事が掲載された。環境省が絶滅のおそれのある野生生物を調べた「レッドリスト」を見直し、ニホンカワウソを絶滅危惧種から「絶滅種」に指定したというもの。環境省がニホンカワウソの絶…

巷房での作間敏宏展「治癒」を読む

銀座1丁目のギャラリー巷房と巷房2,それに巷房階段下の3カ所で開かれている作間敏宏展「治癒」については昨日紹介した。その際、3階の巷房の展示がよく分からないと書いた。その後私なりに読んだ今回の個展について再度書いてみたい。 巷房階段下の狭い…

巷房での作間敏宏展「治癒」を見る

銀座1丁目のギャラリー巷房と巷房2,それに巷房階段下の3カ所で作間敏宏展「治癒」が開かれている(9月1日まで)。 まず巷房2では薄暗い空間に小さな家型のオブジェが並べられている。10年以上前に当時あった虎の門のギャラリー日鉱で行われた個展が再…

『画廊は小説よりも奇なり』を読む

宮坂祐次『画廊は小説よりも奇なり』(宮祐文庫)を読む。著者は銀座の画廊宮坂のオーナーで、銀座の画廊関係で足掛け40年働いてきて、独立してからも27年になる。その間見聞きしたおもしろいエピソードが100点以上紹介されている。筆が立つのも道理で、手書…

ギャラリーαMの浅見貴子展が良い

千代田区馬喰町のギャラリーαMの浅見貴子展が良い(9月15日まで)。これはαMプロジェクト「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう」の4回目で、東京国立近代美術館の学芸員保坂健二朗がキュレーターとなって全9回10人の作家を取り上げる企画となっている。 浅…

高橋一清『編集者魂』を読む

高橋一清『編集者魂』(集英社文庫)を読む。副題が「私の出会った芥川賞・直木賞作家たち」で、14人の作家たちが取り上げられている。司馬遼太郎、松本清張、和田芳恵、立原正秋、阪田寛夫、中上健次、有吉佐和子、中里恒子、芝木好子、江藤淳、辻邦生、大…

ボルヘスの講義録『詩という仕事について』を読む

ボルヘス『詩という仕事について』(岩波文庫)を読んだ。これは1967年にアメリカのハーヴァード大学で行われたボルヘスの講義録だ。ボルヘスは1899年生まれなので当時68歳。6回に渡るこの講義で創作について語っている。とくに第6回めの講義「詩人の信条…

『棺一基 大道寺将司全句集』を読む

大道寺将司全句集『棺一基』(太田出版)を読む。朝日新聞に田中優子の書評が掲載され(2012年6月17日)、それを読んだのがきっかけだった。 『棺一基』という書名は、本書の中の句「棺一基(かんいっき)四顧(しこ)茫々(ぼうぼう)と霞みけり」から採ら…

「ギャラリー椿オークション2012」が始まる

8月23日から京橋のギャラリー椿でオークションが始まる。 オークションは8月23日(木)、24日(金)、25日(土)、26日(日)の4日間。誰でも自由に入札できる。出品点数が500点以上も予定されている。ギャラリー椿は銀座・京橋地区でも特に大きなギャラ…

女性のからだ

野見山暁治がエッセイでクロッキーを始めた頃のことを書いている(『ユリイカ8月号 総特集 野見山暁治』、初出は『一本の線』)。中学を卒業して東京美術学校へ入学した頃だ。野見山はそれまで裸の女性を見たことがなかった。 一段高い台の上に立って、天井…

暮沢剛巳『自伝でわかる現代アート』がおもしろい

暮沢剛巳『自伝でわかる現代アート』(平凡社新書)を読む。これがとてもおもしろかった。副題が「先駆者8人の生涯」で、フランク・ロイド・ライト、マン・レイ、シャルロット・ベリアン、アンディ・ウォーホル、草間彌生、田中一光、イリヤ・カバコフ、ク…

サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』の柴田元幸訳が文庫になった

サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』の柴田元幸訳が文庫になった。ヴィレッジブックスだ。単行本で出たものが文庫になるのは何も不思議なことではない。ただ、その単行本が問題だった。ヴィレッジブックスから発行されている雑誌『monkey business』2008 F…

ヘミングウェイ『日はまた昇る』を読む

ヘミングウェイ『日はまた昇る』(ハヤカワepi文庫)を読む。これは新訳で土屋政雄が訳している。最初にこれを読んだのは高校生のときだったから、もう40数年前になる。エピグラフのガートルード・スタインの言葉「あなたがたはみんな失われた世代ね」が、土…

高峰秀子『私の梅原龍三郎』を読む

高峰秀子『私の梅原龍三郎』(文春文庫)を読む。これがつまらなかった。なぜか? 高峰には『わたしの渡世日記』という優れた自伝エッセイがある。以前読んでとても面白かった。高峰の文章には定評がある。その高峰が画家の梅原龍三郎について書いている。面…

佐野眞一『新 忘れられた日本人』を読む

佐野眞一『新 忘れられた日本人』(ちくま文庫)を読む。題名は宮本常一『忘れられた日本人』にあやかっているが、似て異なるものだ。宮本の名著のような感動はなく、むしろある種のゴシップ集とも言える。佐野がノンフィクションで取り上げた大物たちの周辺…

中野淳『青い絵具の匂い』を読む

中野淳『青い絵具の匂い』(中公文庫)を読む。副題が「松本竣介と私」、武蔵野美術大学名誉教授の中野淳が、若い頃私淑した松本の思い出を書いている。とても良い評伝だ。中野は松本より13歳下になる。それは私淑するには良い年齢差だ。中野は書く。「若き…

平井玄『愛と憎しみの新宿』を読んで

平井玄『愛と憎しみの新宿』(ちくま新書)を読む。副題が「半径一キロの日本近代史」というもの。近代史という言葉を現代史に換えれば、内容をよく表しているといえる。著者は1952年生まれ、新宿二丁目のクリーニング屋の息子、名門の都立新宿高校を経て早…

フェルメールはユトリロ?

フェルメールばやりだ。フェルメールが1点含まれていれば○○○美術館展に行列ができる。突然のこのブームは何なんだろう。たまたま会ったさとうさんに、そのことを質問した。さとうさんは抽象画を描いている。彼女の答えはなんとユトリロよ、というものだった…

ドイツのミステリ『深い疵』がおもしろかった

ドイツの作家ネレ・ノイハウスのミステリ『深い疵(きず)』(創元推理文庫)がおもしろかった。ドイツで累計200万部突破の警察小説シリーズとのこと。裏表紙の紹介より、 ホロコーストを生き残り、アメリカ大統領顧問をつとめた著名なユダヤ人が射殺された…

コレクションの行方

美術品などの個人コレクターが増えているように思う。そんなコレクターたちの集まりもある。昨日も誘われて浅草近くの吾妻橋のギャラリー ア・ビアントへ『第8回「わの会」コレクション展』を見に行ってきた。34人のコレクターが60点の作品を出品している。…

戦没画学生の絵について

戦没画学生の絵について野見山暁治が語っている。NHKの取材で戦没画学生の遺族を訪ね、のちにそれらの絵を「無言館」に収蔵して展示することになる。『ユリイカ8月号 野見山暁治総特集』の対談より、 だけど、(戦没画学生たちの絵は)絵として下手くそで、…

『ユリイカ 野見山暁治特集号』がすばらしい

『ユリイカ』8月臨時増刊号「総特集 野見山暁治 絵とことば」がすばらしい。本号には野見山暁治以外の記事は一つもないし、雑誌なのに広告一つない。すべて野見山暁治なのだ。 最初に小川格を聞き手とするインタビューが43ページも載っている。ついで中村稔…

丸谷才一『女ざかり』を読む

丸谷才一『女ざかり』(文春文庫)を読む。1993年に単行本が発行されて1年そこそこで35万部のベスト・セラーになったと巻末の解説で瀬戸川猛資が書いている。先に金井美恵子が『本を書く人読まぬ人とかくこの世はままならぬ PART II』で本書を酷評していたの…

『東京都美術館ものがたり』展を見る

上野の東京都美術館が改装をし、リニューアルオープン記念として『東京都美術館ものがたり』という企画展を開いている(9月30日まで)。副題が「時代を駆けぬけた芸術家たち」というもの。ちらしには佐伯祐三、梅原龍三郎、藤田嗣治、赤瀬川原平、舟越桂な…

収集家は男たち

ササラダニの専門家青木淳一が東大出版会のPR誌『UP』8月号に「採集の楽しみ」というエッセイを書いている。 自然のなかでものを採集したり集めたりすることは、子どもたちにとっても、趣味で動植物や鉱物を集めている人たちにとっても、専門家や研究者たち…

オリンパスOM-Dの訴求対象は誰か

新聞にオリンパスのデジタル一眼レフOM-Dの広告が載っていた。モデルが宮崎あおいで黒い皮の上着を着てカメラを構えている。コピーを読むとミラーレス設計で小型軽量ボディーに、とある。このカメラの購買層は誰を考えているのだろう。男なのか、女なのか。 …

『江戸の神社・お寺を歩く[城東編]』を読む

黒田涼『江戸の神社・お寺を歩く[城東編]』(祥伝社新書)を読む。城東地区に残る江戸時代に作られ今も残っている寺社が1,600、そのほとんどを訪れそのうち約570の寺社を紹介している。これはすごいことだ。紹介した寺社には最低2回、多いところは10回以…

金井美恵子の毒舌を堪能する

金井美恵子『本を書く人読まぬ人とかくこの世はままならぬ PART II』(日本文芸社)を読む。例の如く毒舌満載のエッセイ集。 宮沢賢治の童話に『どんぐりと山猫』というのがあって、山のなかにうじゃうじゃ住んでいるどんぐりたちが誰が一番エライかと争いを…

Chim↑Pomの『芸術実行犯』を読む

Chim↑Pomの『芸術実行犯』(朝日出版社)を読む。Chim↑Pomは現代美術のユニットで、男5名女1名で構成されている。世間ではお騒がせ集団と認識されているかもしれない。広島の空に飛行機雲で「ピカ」と書いたり、渋谷駅の岡本太郎の壁画「未来の神話」の空…

雑司ヶ谷の千登世橋

先月半ば目白の望美楼ギャラリーへ山崎万亀子水彩画展を見に行った。東京で水彩画だけの個展をするのは初めてと言っていたが、水彩画もとても良かった。その後表参道のギャラリーへ行こうと地下鉄雑司ヶ谷駅に向かった。駅のすぐ手前に古そうな趣のある陸橋…