Chim↑Pomの『芸術実行犯』を読む

 Chim↑Pomの『芸術実行犯』(朝日出版社)を読む。Chim↑Pomは現代美術のユニットで、男5名女1名で構成されている。世間ではお騒がせ集団と認識されているかもしれない。広島の空に飛行機雲で「ピカ」と書いたり、渋谷駅の岡本太郎の壁画「未来の神話」の空隙に福島原発の絵を付け加えたりといった事件で話題になったのだから。
 読んでみて意外に真っ当なことが書かれていてちょっと拍子抜けした。彼らにしてみたら、色物と思われるのが嫌で真面目に書いたのだろうけれど。
 Chim↑Pomは最初から現代美術のユニットではなかった。むしろ悪乗り集団というか、おふざけグループといった存在だったと思う。初期活動がDVDになっており、それを見る限りそう断定してよいだろう。エリイが赤く着色した牛乳を飲んで吐き続けるパフォーマンスとか、三越デパートの館内放送で「チンポン様」と呼び出させるとか、ディズニーシーでみな裸で記念撮影するとか、メンバーの垢を固めて仏像を作るとか。
 しかしやがて次第に彼らのパフォーマンスが「何か」に変わっていく。青木ヶ原の樹海から採集してきた自殺者が縊死しただろう枝とそれに巻き付いていた紐の展示、渋谷で捕獲したネズミとカラスと一緒にギャラリーの狭い空間に閉じこもった3週間、ビルの屋上に立ち続ける忍者、カンボジアでの地雷除去のパフォーマンス、岡本太郎の壁画への追加作品、等々。
 なるほど、アーティストはアーティストに生まれるのではない、アーティストになるのだ。私も何度か彼らの展示やパフォーマンスを紹介してきた。いまはなかなか目が離せないアーティスト集団になっていると思う。
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無人島プロダクションのChim↑Pom展「REAL TIMES」(2011年5月21日)
無人島プロダクションのChim↑Pom展(2009年8月9日)
Chim↑Pomのパフォーマンス終了!((2008年9月1日)
Chim↑Pomの個展「友情か友喰いか友倒れか/BLACK OF DEATH」がすごい(2008年8月17日)
NADiffの移転オープンとChim ↑ Pomの個展(2008年7月23日)
無人島プロダクションのChim Pom 「オーマイゴッド」展が面白かった(2007年8月6日)


芸術実行犯 (ideaink 〈アイデアインク〉)

芸術実行犯 (ideaink 〈アイデアインク〉)