ギャラリーCASHIの酒々井千里個展を見る

東京浅草橋のギャラリーCASHIで酒々井千里個展「むだな抵抗」が開かれている(7月27日まで)。酒々井は1998年岐阜県生まれ、現在東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画研究室に在籍している。個展は今回が初めてとなる。 展示は極めて奇妙なものだ。ギ…

ハルノ宵子『隆明だもの』を読む

ハルノ宵子『隆明だもの』(晶文社)を読む。ハルノ宵子は漫画家で吉本隆明の長女、本書は晶文社の『吉本隆明全集』の月報にハルノが書いたのをまとめたもの。それに妹の作家吉本ばななとの姉妹対談などを併せて編集している。あの大思想家にして詩人の吉本…

『吉本和子句集 七耀』を読む

夭折の霊か初蝶地を慕う 墓までの遠き道辺の姫女苑 家重し七耀歩む蝸牛 大夕立人は魚となりて跳ね 眠られぬ夜はまず風鈴を眠らせる 秋燕の並みて越ゆべき海を見る コスモスの背き合いつつみなやさし 血の色に昇るもやがて名月に 触れられて触れて芒の道を行…

ステップス ギャラリーの甲斐千香子展を見る

東京銀座のステップス ギャラリーで甲斐千香子展「Scales」が開かれている(8月3日まで)。甲斐は1987年宮城県生まれ、2014年に武蔵野美術大学造形学部通信教育課程油絵学科日本画コースを卒要している。2016年にステップス ギャラリーで初個展、以来様々…

「画廊からの発言 新世代への視点2024」が始まる

東京銀座・京橋を中心とする現代美術の画廊が共同主催する「画廊からの発言 新世代への視点2024」が始まった。これは7軒の画廊が推薦する40歳以下の若手作家7人の個展だ。現代美術の代表的な貸画廊が選んだ作家たちだから見逃せない重要な企画で、7月22日…

スタニスワフ・レム『火星からの来訪者――知られざるレム初期作品集』を読む

SF

スタニスワフ・レム『火星からの来訪者――知られざるレム初期作品集』(国書刊行会)を読む。スタニスワフ・レム・コレクションの1冊。「火星からの来訪者」はレムの最初のSF中篇小説。ファースト・コンタクトものの作品で、アメリカに到着した火星人との遭…

ギャラリーなつかの遠藤美香展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで遠藤美香展が開かれている(8月3日まで)。遠藤美香は1984年静岡県生まれ、2007年日本芸術大学美術学科版画専攻を卒業し、2009年愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画・版画領域を修了している。2009年にギャラリーなつかbis…

ギャラリーHAGISOの川口祐展を見る

東京谷中のギャラリーHAGISOで川口祐展「HOPE」が開かれている(8月4日まで)。川口祐は1970年東京生まれ、2003年から3年間ギャラリイKで個展をし、その後数カ所のギャラリーで個展を開き、2013から2016年までSTORE FRONTで、2018年にはスイッチポイント…

ギャラリー58の川崎英世展を見る

東京銀座のギャラリー58で川崎英世展が開かれている(7月20日まで)。川崎英世は1981年生まれ、2019年にCLOUDSギャラリー、2020年と2022年にギャラリー美庵で個展を開いている。 「DELUGE」 「DELUGE」の部分 「DELUGE」の部分 川崎はパネルにペンで精密な…

白石典之『元朝秘史』を読む

白石典之『元朝秘史』(中公新書)を読む。副題が「チンギス・カンの一級資料」というもの。まさにモンゴル帝国を築いたチンギス・カンの物語。『元朝秘史』にはモンゴル遊牧民の叙事詩という側面もある。ドイツの『ニーベルンゲンの歌』やわが国の『平家物…

ギャラリイKの広瀬里美展を見る

東京京橋のギャラリイKで広瀬里美展「小さな重み」が開かれている(7月20日まで)。広瀬は1998年埼玉県生まれ、2022年に東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業し、2024年同大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了している。2023年にガルリH(アッシュ)で初個展。…

馬場あき子『掌編 源氏物語』を読む

馬場あき子『掌編 源氏物語』(潮文庫)を読む。あの長大な源氏物語を文庫本1冊にまとめたもの。香老舗松栄堂が法人設立50周年の記念事業で『源氏物語』54帖の物語の絵をそろえたいと企画したもの。京都画壇の日本画家54人に依頼して描かれた絵に、馬場あき…

ギャラリー58のフクダユウヂ展を見る

東京銀座のギャラリー58でフクダユウヂ展「ちぎれた太陽」が開かれている(7月13日まで)。フクダユウヂは1974年横浜市生まれ、1998年大正大学文学部国際文化学科を卒業し、2013年に講談社フェーマススクールズを卒業している。2016年にギャラリー58で初個…

コバヤシ画廊の渋谷和良展を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で渋谷和良展が開かれている(7月20日まで)。渋谷は1958年東京生まれ、1981年に東京藝術大学美術学部油画科を卒業し、1983年に同大学大学院美術研究科版画専攻修士課程を修了している。2002年から1年間、文化庁在外派遣研修員として…

ファーガス・マカフリーのアンゼルム・キーファー展を見る

東京表参道のファーガス・マカフリーでアンゼルム・キーファー展が開かれている(7月13日まで)。キーファーはドイツを代表する現代美術家。1993年のセゾン美術館での個展は圧倒的だった。以来私にとってキーファーこそ世界最高の美術家となっている。 今回…

アートスペース羅針盤の荒井裕太郎展を見る

東京京橋のアートスペース羅針盤で荒井裕太郎展「2001~2003年作を中心に」が開かれている(7月12日まで)。荒井裕太郎は1960年東京生まれ、1985年東京藝術大学美術学部工芸科を卒業し、1987年同大学大学院修士課程彫金科を修了している。1986年にかねこあ…

ギャラリーなつかの平野瞳展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで平野瞳展「反射光」が開かれている(7月13日まで)。平野瞳は1994年石川県生まれ、2022年に武蔵野美術大学通信教育課程油絵学科版画コースを卒業している。グループ展には何度も参加しているが個展は初めてとなる。 作家の言葉…

アーティゾン美術館のブランクーシ展を見る

東京京橋のアーティゾン美術館でブランクーシ展が開かれている(7月7日まで)。ブランクーシは今まで一つ二つは見てきたがまとめて見るのは初めてだった。ルーマニア出身の抽象彫刻家。1876年に生まれて1957年に亡くなっている。明治8年生まれで、こんな…

城塚登『社会思想史講義』を読む

城塚登『社会思想史講義』(ちくま学芸文庫)を読む。本書はもともと「放送大学」の「社会思想史」という講義のテキストとして1985年に出版されたものを、加筆して1998年に有斐閣から出版された。昨年それをちくま学芸文庫として出版した。 元来が放送大学の…

ウィリアム モリスの尾田美樹版画展を見る

東京渋谷のウィリアム モリスで尾田美樹版画展「線の練習」が開かれている(7月30日まで)。尾田美樹は1971年神奈川県生まれ、1998年創形美術学校研究科版画課程修了、2001年日本版画協会展山口源新人賞受賞。青樺画廊や養清堂画廊などで個展を行ってきた。…

移転した「いりや画廊」の松田文平展を見る

東京入谷のいりや画廊で松田文平展「バックボーンPart 1」が開かれている(7月13日まで)。松田文平は1959年富山県生まれ、1985年に武蔵野美術大学実技専修科油画専攻を修了し、1989年ミュンヘン造形美術大学を修了している(マイスターシューレ)。以後石…

ギャラリーQの奥山庸子展を見る

東京銀座のギャラリーQで奥山庸子展が開かれている(7月7日まで)。奥山庸子は1985年青森県生まれ、2008年に日本大学芸術学部美術学科版画専攻を卒業している。2012年にギャラリー同潤会で、2019年と2022年にここギャラリーQで個展を行って、ギャラリーQで…

ギャラリー川船の「夏期入札展示会」を見る

東京京橋のギャラリー川船で恒例の「夏期入札展示会」が始まった(7月6日まで)。 入札の方式は「二枚札方式」、これは入札カードに希望価格の上値(上限)と下値(下限)の二つの価格を書いて入札するもの。他に入札者のない場合は下値で落札する。上値が…

松本清張『美術ミステリ』を読む

松本清張『美術ミステリ』(双葉文庫)を読む。清張の美術に関するミステリの短篇を集めている。「真贋の森」「青のある断層」「美の虚像」「与えられた生」の4篇。 「真贋の森」はなるほど良く出来ている。浦上玉堂の贋作を作る話。古美術の学者と骨董屋、…

ギャラリー檜e・Fの丸山芳子展を見る

東京京橋のギャラリー檜e・Fで丸山芳子展「雨の名前」が開かれている(7月6日まで)。丸山芳子は1957年福島県生まれ、1981年に創形美術学校造形科を卒業している。ギャラリー21+葉、なびす画廊、秋山画廊などで個展を繰り返し、2011年からは「精神の〈北…

ユクスキュル『生物から見た世界』を読む

ユクスキュル『生物から見た世界』(岩波文庫)を読む。1973年に思索社版が出て、生態学では必読とされた。読もう読もうと思っていたのに今まで読んでいなかった。2005年に岩波文庫版が出て、それから20年経ってようやく読んだことになる。 冒頭マダニの生態…

CCAAアートプラザの「紙神の遊び:朝倉俊輔+柳井嗣雄二人展」を見る

東京四谷のCCAAアートプラザで「紙神の遊び:朝倉俊輔+柳井嗣雄二人展」が開かれている(7月15日まで)。 柳井嗣雄は1953年山口県生まれ、1977年創形美術学校版画科を卒業し、その後パリでスタンリー・W・ヘイターに師事。今回は繊維を編んだ大きな立体を…

東京芸術劇場ギャラリー2の松尾多英個展を見る

東京池袋の東京芸術劇場ギャラリー2で松尾多英個展「砂」が開かれている(6月30日まで)。松尾は1947年生まれ、1970年にフランスの美術学校を修了している。1983年から砂丘・風紋を発表し始め、1995年から「砂」の100号の連作を発表している。 今回はF100…

ギャラリー惣の横田節子展を見る

東京銀座のギャラリー惣で横田節子展が開かれている(6月29日まで)。横田節子は1934年群馬県生まれ、60歳から絵を描き始め、70歳でギャラリー汲美で初個展、最近は毎年ギャラリー惣で個展を開いている。 横田は紙に水彩で描いている。まったく年齢を感じさ…

熊野純彦『サルトル』を読む

熊野純彦『サルトル』(講談社選書メチエ)を読む。熊野純彦は廣松渉門下の優れた哲学者、サルトルは若い頃夢中になって読んだ哲学者、では読まずばなるまい。それにしても熊野純彦はドイツ哲学が専門でレヴィナスの研究者なのに、サルトルに対するこの理解…