幸田文『崩れ』を読む

幸田文『崩れ』(講談社文庫)を読む。幸田72歳のとき、『婦人の友』に14回に渡って連載したもの。全国の大きな崩壊現場を訪ねてそれを詳しく書いている。静岡県の大谷崩れ、富山県の鳶山崩れ、富士山の大沢崩れ、日光男体山の崩れ、長野県の稗田山崩れ、北…

池上彰・佐藤優『激動 日本左翼史』を読む

池上彰・佐藤優『激動 日本左翼史』(講談社現代新書)を読む。副題が「学生運動と過激派 1960-1972」、先に発行された『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960』の続編。池上と佐藤の対談で構成されている。 「はじめに」で佐藤優が書いている。「本書…

『吉野弘詩集』を読む

『吉野弘詩集』(角川春樹事務所)を読む。これは「にほんの詩集」という12冊のラインナップの1冊だ。ほかには、『谷川俊太郎』『長田弘』『中島みゆき』『金子みすゞ』『萩原朔太郎』『中原中也』『石垣りん』『まど・みちお』『寺山修司』『工藤直子』『宮…

東京都美術館の「眼差しに熱がこぼれる」を見る

東京都美術館で「眼差しに熱がこぼれる」が開かれている(7月1日まで)。本展は「都美セレクション2022」のひとつで、金田実生、高橋大輔、長谷川友香、丸山直文が参加している。企画の金森千紘によると、「 本企画は、絵画だけで構成された展覧会を見たい…

人生相談・なぜこんなにも働く?

毎日新聞の「渡辺えりの人生相談」で25歳の女性が、なぜこんなにも働くのかと相談している(6月18日付け)。 なぜ人は必死に汗水流して働くのでしょうか。「1億総うつ時代」という言葉を耳にしますが、心の病にかかる人は多く、過労や職場での人間関係の問…

SCAI ザ・バスハウスの和田礼治郎展を見る

東京上野桜木のSCAI ザ・バスハウスで和田礼治郎展が開かれている(7月9日まで)。和田は1977年広島県生まれ、2000年に広島市立大学芸術学部美術学科彫刻専攻を卒業、2002年同大学大学院芸術学研究科博士前期課程彫刻専攻修了、2008年東京藝術大学大学院美…

ギャラリーQの李晶玉展を見る

東京銀座のギャラリーQで李晶玉展が開かれている(7月9日まで)。李は1991年東京生まれ、2018年に朝鮮大学校研究院総合研究科美術専攻課程を修了している。2018年にeitoeikoで初個展、昨年はここギャラリーQで、今年はすでに原爆の図丸木美術館で個展を行…

児玉博『堤清二 罪と業』を読む

児玉博『堤清二 罪と業』(文春文庫)を読む。副題が「最後の告白」。セゾングループの総帥堤清二は2013年に亡くなった。児玉博はその前年2012年に堤に7回に渡ってインタビューを行った。その結果が本書だが、単行本は堤が亡くなった3年後に発行された。 …

幸田文『木』を読む

幸田文『木』(新潮文庫)を読む。名文家といえば私にとって、佐多稲子、幸田文、そして野見山暁治だ。幸田文は幸田露伴の娘、青木玉の母親。本書は単行本が発行された1992年に読んでいるから30年ぶりの再読になる。 最初の「えぞ松の更新」はとても印象に残…

ポルトリブレの野津晋也展を見る

東京高円寺のポルトリブレで野津晋也展が開かれている(6月27日まで)。野津は1969年島根県松江市生まれ、1992年に鳥取大学農学部を卒業した。さらに2000年に東京芸術大学美術学部油画専攻を卒業し、2002年に同じく東京芸術大学大学院油画専攻を修了してい…

赤瀬川原平『ふしぎなお金』を読む

赤瀬川原平『ふしぎなお金』(ちくま文庫)を読む。赤瀬川の哲学絵本。まず財布は拳銃に似ていると言う。西部劇のガンマンのガンベルトはむき出しの現金を装着したベルトなのだと。ガンマンはその現金でいつも勝負をしている。日本の場合は刀だった。拳銃も…

みぞえ画廊の野見山暁治展を見る

東京田園調布のみぞえ画廊で野見山暁治展が開かれている(7月3日まで)。みぞえ画廊では2年前にも野見山暁治展が開かれていた。その時はあるコレクターが所蔵する旧作だったが、今回は新作が発表されている。玄関を入った正面に2022年制作の100号が展示さ…

国立新美術館のタムラサトル展「ワニがまわる」を見る

東京六本木の国立新美術館でタムラサトル展「ワニがまわる」が開かれている(7月18日まで)。タムラは1972年栃木県生まれ、1995年に筑波大学芸術専門群総合造形を卒業し、日本大学芸術学部デザイン科非常勤講師、および宇都宮メディア・アーツ専門学校ビジ…

森村誠一『老いる意味』を読む

森村誠一『老いる意味』(中公新書ラクレ)を読む。副題が「うつ、勇気、夢」というなんだか取り留めないもの。90歳近い老作家が老いについて書いている。ある日、鬱になった自分を発見した。朝がどんよりしていた。言葉が出て来なくなった。認知症を併発し…

萩尾望都『一度きりの大泉の話』を読む

萩尾望都『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)を読む。萩尾は福岡の高校時代から漫画家を目指し、雑誌に投稿していた。やがて高校の友人で手塚治虫のアシスタントになっていた原田千代子から、大泉に住んでいる手塚ファンだという増山法恵を紹介される。…

東京都現代美術館の「MOTコレクション 光みつる庭・途切れないささやき」を見る

東京木場公園の東京都現代美術館で「MOTコレクション 光みつる庭・途切れないささやき」が開かれている(6月19日まで)。 1階の「光みつる庭」では、中西夏之、石川順恵、堂本右美など絵画を中心に、2階の「途切れないささやき」では、舟越桂の木彫や、ボ…

東京都現代美術館の藤井光「日本の戦争画」を見る

東京木場公園の東京都現代美術館で「東京コンテンポラリー アート アワード 2020-2022 受賞記念展」が開かれている(6月19日まで)。受賞作家は藤井光と山城知佳子、山城は30分ほどの動画「チンピン・ウェスタン 家族の表彰」を展示している。 ここでは藤井…

高島屋美術画廊Xの村松英俊展を見る

東京日本橋の日本橋高島屋本展S.C.本館6階の美術画廊Xで村松英俊展「with stone」が開かれている(7月4日まで)。村松英俊は1988年静岡県生まれ、2016年に東北芸術工科大学大学院彫刻領域を修了している。 村松はバイクやメジャーなど、古い既製品(レディ…

クロスビューアーツの「植物区」を見る

東京京橋のクロスビューアーツで「植物区」展が開かれている(7月2日まで)。参加作家は濱田富貴と吉田収。濱田は1972年福岡県生まれ、2000年に武蔵野美術大学大学院美術専攻版画コースを修了している。ギャラリーなつかではもう8回も個展をしている。 吉…

ギャラリーなつかの王麗楠展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで王麗楠展「増殖」が開かれている(6月18日まで)。王は1993年中国河北省出身、2016年に湖北美術学院大学漆工芸を卒業。2020年金澤美術工芸大学大学院漆工芸を修了し、現在同大学院後期博士課程在籍中。昨年ギャラリイKで日本初…

赤瀬川原平『純文学の素』を読む

赤瀬川原平『純文学の素』(ちくま文庫)を読む。40年ほど前に写真・エロ雑誌『ウィークエンド・スーパー』に連載したエッセイ。 私が小学生のころの娯楽はラジオだった。ドラマのほかに寄席が娯楽の中心だった。私は落語は好きだったが漫才は嫌いだった。わ…

死ぬ前に誰に会いたいか

先日友人二人とzoomで雑談した。その時一人の友人がいよいよ死ぬとなったらぜひ会いに来てくれと言った。私はそんな状態では誰とも会いたくないから来ないでくれ、もし最後の別れをするなら元気なうちに会いに来てくれと言った。 その友人は元気で当分死とは…

櫻木画廊の酒井香奈展を見る

東京上野桜木の櫻木画廊で酒井香奈展が開かれている(6月19日まで)。酒井は1969年茨城県生まれ、1992年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業、1994年同大学大学院造形研究科美術専攻油絵コースを修了している。2008年と2010年、2020、2021年年になつかで…

TS4312のヴラディスラヴ・シュチェバノヴィッチ展を見る

東京四谷三丁目のTS4312でヴラディスラヴ・シュチェバノヴィッチ展が開かれている(6月26日まで)。シュチェバノヴィッチ(愛称ワーニャ)は、1971年セルビアモンテネグロに生まれる。1994年チェトニェの美術学部を卒業し、2009年ベオグラード芸術大学学際…

山本弘の絵画の特質について

来る6月15日は山本弘生誕92年の誕生日になる。これを機に山本弘の絵画の特質について書いてみたい。 山本弘の絵画を理解するキーワードは3つある。「アル中」「アンフォルメル」「象徴派」だ。まず、アル中について。山本弘は15歳で終戦を体験し、それまで…

銀座蔦屋書店ギンザ アトリウムの青木野枝+山口藍「山と空」を見る

東京銀座の銀座蔦屋書店ギンザ アトリウムで青木野枝+山口藍「山と空」が開かれている(6月21日まで)。青木は著名な抽象彫刻家。鉄の輪を組み合わせて立体作品を作っている。今回は山口藍ともども版画にも挑戦している。 まず青木野枝を見る。青木は鉄の輪…

Oギャラリーの「現代メキシコ版画展」を見る

DM葉書 東京銀座のOギャラリーで「現代メキシコ版画展」が開かれている(6月12日まで)。本展はプリントザウルス国際版画交流協会のメキシコとの交流展で、10名のメキシコ作家の版画が並んでいる。 Sergio Toledo Nancy Valdez Ramírez Jeannette Betancour…

赤瀬川原平『自分の謎』を読む

赤瀬川原平『自分の謎』(ちくま文庫)を読む。100ページ余の薄い文庫本で、半分がイラストになっている絵本みたいなエッセイだ。5つの章があって、「目の問題」「痛い問題」「国境問題」「一つだけの問題」「強い自分、弱い自分」となっている。 「目の問題…

阪本良弘『がんと外科医』を読む

阪本良弘『がんと外科医』(岩波新書)を読む。先月読んだ坂井律子『〈いのち〉とがん』(岩波新書)の著者坂井の主治医をして膵がんの手術を担当した外科医の著書だ。阪本は肝胆膵外科の専門医。(肝胆膵とは肝臓・胆管・膵臓の略称)。肝胆膵外科とは何か…

ガルリHの栗原優子展を見る

東京日本橋小舟町のガルリHで栗原優子展が開かれている(6月11日まで)。栗原は1983年東京生まれ、2008年に女子美術大学大学院修士課程美術専攻立体美術領域を修了している。2007年にガレリア・グラフィカbisで初個展、2009年にギャラリー山口、2013年、201…