ジョン・ル・カレの評価

先月イギリスのスパイ小説作家ジョン・ル・カレが89歳で亡くなった。松浦寿輝が「追悼ジョン・ル・カレ」を発表した(朝日新聞2021年1月16日)。 松浦はイギリス「純文学」界の雄であるイアン・マキューアンの言葉を引く。「ル・カレの小説になぜブッカー賞…

野見山暁治『どうにもアトリエ日記』を読む

野見山暁治『どうにもアトリエ日記』(生活の友社)を読む。本書は2017年3月から2020年4月までの3年2か月分の日記が収録されている。『アトリエ日記』シリーズは、第1巻が2003年9月から始まっている。単行本にまとめられたのは、『アトリエ日記』『続アトリ…

武田花写真集『眠そうな町』を見る

武田百合子『富士日記』を読んだので、その娘の武田花写真集『眠そうな町』(アイピーシー)を見る。武田花は写真展「眠そうな町」で木村伊兵衛賞を受賞している。 あとがきで、「1987年春から約2年半、浅草から東武伊勢崎線、更に乗り換えて、佐野線、桐生…

武田百合子『富士日記』全3巻を読む

武田百合子『富士日記』全3巻(中公文庫)を読む。 武田泰淳は昭和38年に山梨県鳴沢村に500坪の土地を借り、そこに別荘=山荘を建てる。山荘名はいろいろ呼んでいたが、表札は武田山荘としていた。昭和39年の晩春あたりから東京と山梨を妻の百合子の運転する…

酒井忠康『美術の森の番人たち』を読む

酒井忠康『美術の森の番人たち』(求龍堂)を読む。世田谷美術館長酒井が、36人の美術関係者を描いている。美術関係者というのは、美術館の学芸員や館長、美術批評家、画廊主らだが、神奈川県立近代美術館で酒井の上司だった土方定一は他のところで詳しく語…

藤森照信著『藤森照信 建築が人にはたらきかけること』を読む

藤森照信著『藤森照信 建築が人にはたらきかけること』(平凡社)を読む。平凡社の「のこす言葉」というシリーズの1冊。藤森が自分の歴史を語っているとても分かりやすい自伝。 藤森は現茅野市の山間の小さな村に昭和21年に生まれた。そこは小さな扇状地にあ…

松尾亮太『考えるナメクジ』を読む

松尾亮太『考えるナメクジ』(さくら舎)を読む。松尾はナメクジの脳機能の研究者、その長い研究歴から、ナメクジは「論理思考をともなう連合学習」もこなすと断定する。論理思考ができるとは「A=BでB=Cであれば、A=C」といった理屈がわかる、ということです…

日本橋高島屋本館8階ホールの野見山暁治展を見る

東京日本橋高島屋本館8階ホールで「100歳記念 野見山暁治のいま展」が開かれている(1月18日まで)。また6階美術画廊でも野見山暁治個展が開かれ、こちらは小品が並んでいる。 野見山さんは100歳になった。その年でこれだけの大作の新作を並べるのは凄いこ…

読売新聞書評委員が選ぶ2020年の3冊

読売新聞書評委員が選ぶ2020年の3冊が読売新聞に発表された(2020年12月27日付け)。読売新聞の書評委員20人、それによみうり堂店主が3冊ずつあげている。都合63冊だ。そのうち、私が読みたいと思ったのが3冊だった。それを紹介する。 栩木伸明、アイルラン…

原武史『地形の思想史』を読む

原武史『地形の思想史』(角川書店)を読む。面白く読んだが、題名は少し立派過ぎる。ある土地にまつわる歴史を実際に現地を訪ねてある視点からのみ記述している。訪ねた(取り上げた)土地は7カ所。 初めに静岡県浜名湖のプリンス岬を訪ねる。それは地元の…

岡本太郎と長谷川利行の共通点

岡本太郎と長谷川利行の共通点について考えてみたい。私見では二人に共通するものは筆触であると思う。端的に言ってしまえば筆触が汚い。ここに長谷川利行の「水泳場」の一部を掲載したが、先に描いた色が乾かないうちに次の色を重ねている。色は濁り線が確…

小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っている』を読む

小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っている』(春秋社)を読む。面白い読書だった。チョンキンマンションのボスことカラマは香港在住のタンザニア人。安ホテルチョンキンマンションの住人で、中古自動車のブローカーなどをしている。香港のタンザ…

朝日新聞恒例「書評委員が選ぶ『今年の3冊』」から

朝日新聞恒例「書評委員が選ぶ『今年の3冊』」が発表された(2020年12月26日)。書評委員20名がそれぞれ3冊を選んで、都合60冊が並んでいる。その中で興味を惹いたものを紹介してみる。 まず須藤靖。須藤は東京大学大学院物理学専攻教授とある。専門は宇宙物…

謹賀新年

初空やスカイツリーが1のごと 1週間ぶりに自宅へ戻ったらベランダのプランターのスミレが咲いていた。 初春やスミレが2輪咲き誇り

野見山暁治100歳記念展が新春に企画されている

東京日本橋の高島屋で野見山暁治100歳記念展が1月9日から始まる(1月18日まで)。髙島屋日本橋店本館8階ホールで開催というからいつもの6階美術ギャラリーではない。大きな会場で高島屋もリキを入れているようだ。それはそうだろう、100歳記念展なんてほと…

佐藤秀明『三島由紀夫』を読む

佐藤秀明『三島由紀夫』(岩波新書)を読む。佐藤は三島由紀夫文学館館長。その地位に相応しく三島に関する資料を徹底的に読み込んでいるように見える。 三島は早熟な少年だった。15歳の頃詩を量産している。「詩はまつたく楽に、次から次へ、すらすらと出来…

美術の社会性について

古い資料を処分するため押し入れの奥から引っ張り出していた中に、「針生一郎氏『芸術の役割』を語る」という小冊子があった。銀座のギャラリイKで行われたギャラリー・トークをまとめてギャラリイKが発行したものだ。トークの日付は24年前の1996年4月10日…

人間の意識が出来事に立ち遅れて出現すること

今年の大仏次郎賞は内海健の『金閣を焼かねばならぬ 林養賢と三島由紀夫』(河出書房新社)に決まった。現実に金閣寺を焼いた僧とそれをモデルに『金閣寺』を書いた三島由紀夫を比較検討している。 私は本書を読んでいないが、選考委員の田中優子の選評に興…

ジョン・ル・カレが亡くなった!

イギリスのスパイ小説作家ジョン・ル・カレが12月12日夜、亡くなった。89歳だった。ル・カレは『寒い国から帰ったスパイ』で大成功を収め、その後、のちにスマイリー3部作と呼ばれる連作『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』『スクールボーイ閣下』…

浜崎洋介『三島由紀夫』を読む

浜崎洋介『三島由紀夫』(NHK出版)読む。「シリーズ・戦後思想のエッセンス」の1冊。 序章で浜崎が「自選短編集」の「解説」に(三島自身が)次のように書いていた、と紹介する。 集中、「詩を書く少年」と「海と夕焼」と「憂国」の3編は、一見単なる物語…

ブログしばらく休み

しばらく(1週間くらい)ブログの更新を休みます。

抜け感という言葉

朝日新聞のコラム「古田徹也の言葉と生きる」が、「〇〇感、独特の面白さも」と題して書いている(11月26日)。 昨今濫用されがちな「〇〇感」という言葉だが、この種の言葉には独特の面白い側面も見て取れる。 たとえば、ファッションの分野などでいま頻出…

ヤギのミルクを飲む

毎日新聞のコラム「今週の本棚・なつかしい一冊」に柚木麻子・選 『ハイジ』=J・シュピーリ作、矢川澄子・訳(福音館書店)が取り上げられている(11月14日付け)。 大人になって一番良かったことは、小さな頃、活字で読んで「これはなんだろう?」と不思…

南天子画廊の岡崎乾二郎展「TOPICA PICTUSきょうばし」を見る

東京京橋の南天子画廊で岡崎乾二郎展「TOPICA PICTUSきょうばし」が開かれている(12月12日まで)。岡崎は1955年東京生まれ、昨年から今年にかけて豊田市美術館で大規模な回顧展が開かれた。 夏に天王洲アイルのTakuro Someya Contemporary Artで個展が開か…

アートコンプレックスセンターの谷口ナツコ展「得体」

東京新宿のアートコンプレックスセンターで谷口ナツコ展「得体」が開かれている(11月29日まで)。私は外出を控えているので見に行くことができないが、過去の展示歴から見れば優れた展示であるのは間違いないだろう。 谷口は1968年北海道生まれ。今までギャ…

渡辺えりの人生相談

毎日新聞の「人生相談」で65歳の男性の相談に渡辺えりが答えている(11月21日)。 妻がいるのですが、この年になっても女性にもてたいと思う気持ちが抑えられません。真面目な顔をしていても、街ゆく女性を見ていやらしい妄想をしてしまいます。これからの人…

河野裕子『歌集 蝉声』を読む

河野裕子『歌集 蝉声』(青磁社)を読む。河野は2010年8月12日、乳がんのため64歳で亡くなった。本書は夫の歌人永田和宏とやはり歌人の息子と娘の永田淳、永田紅の3人が没後編集して出版したもの。第1部が雑誌に2009年4月に発表したものから、2010年8月号に…

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ギャラリーなつかの桑原理早展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで桑原理早展が開かれている(11月14日まで)。桑原は1986年、東京都出身。2011年に武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業し、2013年同大学大学院造形研究科日本画コースを修了している。2013年アートスペース羅針盤で初個展、2…