吉行淳之介『私の東京物語』を読む

吉行淳之介『私の東京物語』(文春文庫)を読む。編集が山本容朗となっている。単行本の出版が1993年だから吉行が亡くなる1年前だ。すると吉行の監修というか了承を得ているのだろう。 東京を舞台にした短篇小説とやはり東京を舞台にしたエッセイを集めてい…

東京画廊の小清水漸「垂線」展を見る

DM葉書 東京銀座の東京画廊で小清水漸「垂線」展が開かれている(4月17日まで)。ギャラリーが配布しているちらしから、 小清水漸は1944年愛媛県宇和島生まれ。1966年から1971年まで多摩美術大学彫刻科在籍。(……)1960年代後半から木、石、紙、土、鉄など…

うしお画廊の井上敬一展を見る

東京銀座のうしお画廊で井上敬一展が開かれている(4月17日まで)。井上は1947年、福岡県田川市生まれ。1980年に福岡教育大学美術研究科を修了している。井上は銀座のみゆき画廊で個展をしていたが、みゆき画廊が閉じてからはうしお画廊で個展を開いている…

ギャラリーなつかの瀧田亜子展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで瀧田亜子展が開かれている(4月17日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。2年間ほど中国へ留学し書を学んできた。毎年ほぼ2回の個展を繰り返してきて、旺盛な制作意欲を示している。 今回大きな作品は左右5メートルもある。今ま…

半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版』を読む

半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版』(文春文庫)を読む。昭和20年8月15日の前日8月14日の正午から15日の正午の玉音放送までの24時間を1時間刻みで描いている。およそ300人にもの当事者たちにインタビューを重ねて、大臣たちや軍人たちが終戦を巡って…

吉行淳之介『ダンディな食卓』を読む

吉行淳之介『ダンディな食卓』(グルメ文庫)を読む。グルメ文庫というのは角川春樹事務所が発行している文庫。吉行が亡くなって12年後に出版されている。内容は昔『夕刊フジ』に連載した食べ物に関する短いエッセイをまとめた『偽食物誌』(新潮文庫)に、…

酒村ゆっけ、『無色、ときどきハイボール』が面白そう

東大教授で、宇宙論・地球系外惑星の専門家須藤靖が朝日新聞の書評欄に、酒村ゆっけ、『無色、ときどきハイボール』(ダイヤモンド社)を紹介している。(4月10日付) 須藤はテレビ番組「孤独のグルメ」が好きだが、酒抜きである点がやや残念と書き、本書は…

√kコンテンポラリーとスペース√kの堀江栞展を見る

東京神楽坂の√kコンテンポラリーとスペース√kで堀江栞展「声よりも近い位置」が開かれている(5月15日まで=コンテンポラリー、4月17日まで=スペース)。堀江は1992年生まれ、2014年多摩美術大学美術学部日本画専攻を卒業している。2014年に加島美術で初個…

山本弘の作品解説(101)「どんど」

山本弘「どんど」、油彩、F4号(24.2cm×33.3cm) 制作年不詳。実は30年近く前買ってくれた人がいて、それ以来見る機会を失った。これも古い写真からスキャンしているが、色はかなり濃くなっているのではないか。 「どんど」はどんど焼きのこと。正月明けに…

司馬遼太郎『この国のかたち 三』を読む

司馬遼太郎『この国のかたち 三』(文春文庫)を読む。司馬のエッセイは優れていて好きだ。司馬の小説はほとんど読んでこなかったけれど、『街道をゆく』は全43巻を2回通読したくらい好きなのだ。 『この国のかたち』は雑誌『文藝春秋』の巻頭言として連載し…

小川敦生『美術の経済』を読む

小川敦生『美術の経済』(インプレス)を読む。小川は多摩美大学教授、美術ジャーナリスト、元『日経アート』編集長。 本書は7つの章からなり、「1枚の絵から見えてくる経済の成り立ち」「浮世絵に見る商業アート」「時代とともに変わる美術の価値観」「「…

白取千夏雄『「ガロ」に人生を捧げた男』を読む

白取千夏雄『「ガロ」に人生を捧げた男』(興陽館)を読む。数日前、高野慎三『神保町「ガロ編集室」界隈』(ちくま書房)を読み、「高野が退職したあと、何年かして青林堂は人手に渡る。そのあたりのことを高野ははっきりとは書いてくれない」とブログに書…

澁谷知美『日本の包茎』の書評を読んで

澁谷知美『日本の包茎』(筑摩選書)の書評を渡邊十絲子が書いている(毎日新聞4月3日付)。本書の副題が「男の体の200年史」というもの。渡辺は書く。 ……多くの男性は包茎を恥と感じるが、その価値観は男性だけのもので、女性は全然気にしていない。包茎…

橋本治『そして、みんなバカになった』を読む

橋本治『そして、みんなバカになった』(河出新書9を読む。橋本治の対談集というかインタビュー集。橋本は『桃尻娘』でデビューした作家だが、あまり注目してこなかった。でもきわめてユニークな作家で、『枕草子』や『源氏物語』、『平家物語』などを現代…

ジェームス・W・ヤング『アイデアのつくり方』を読む

ジェームス・W・ヤング『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス)を読む。毎日新聞書評欄の「なつかしい一冊」というコラムに田中里沙が紹介していた(3月20日付け)。 そして先輩から紹介されて出会った一冊が『アイデアのつくり方』だった。米国の広告…

コバヤシ画廊の坂本太郎展を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で坂本太郎展が開かれている(4月3日まで)。坂本太郎は1970年、埼玉県生まれ、2000年に愛知県立芸術大学大学院修士課程を修了している。都内では2000年に当時早稲田にあったガルリSOL、2001年以降銀座のフタバ画廊や小野画廊、ギャ…

高野慎三『神保町「ガロ編集室」界隈』を読む

高野慎三『神保町「ガロ編集室」界隈』(ちくま書房)を読む。高野は大学卒業後日本読書新聞に入社し、その後『ガロ』を発行していた青林堂に転職する。青林堂は社長の長井勝一とパートナーで経理担当の香田明子の二人だけだった。結局1966年9月から5年少し…

サティやショパンの教え

青柳いづみこが『図書』2月号から「響きあう芸術 パリのサロンの物語」という連載を始めた。その第1回が「サロンという登竜門」、若く無名でお金のない芸術家が世に出る手段は、21世紀ではショパン・コンクールやチャイコフスキー・コンクールだが、19世紀は…

大岡昇平『常識的文学論』を読む

大岡昇平『常識的文学論』(講談社文芸文庫)を読む。このタイトルは生ぬるい、「好戦的文学論」だろう。昭和36年(1961年)に雑誌『群像』に連載した文芸時評的なものだが、初回から当時世評きわめて高かった井上靖の『蒼き狼』に激しく嚙みついている。 井…

無人島プロダクションの八谷和彦個展「秋水とM-02J」を見る

東京江東区の無人島プロダクションで八谷和彦個展「秋水とM-02J」が開かれている(4月18日まで)。秋水もM-02Jも一人乗りの飛行機で八谷は実際にこのM-02ジェット機で何度も飛行を成功させている。画廊にはその実機が展示されている。 画廊のホームページか…

東京都現代美術館のマーク・マンダース展「マーク・マンダースの不在」を見る

東京都現代美術館でマーク・マンダース展「マーク・マンダースの不在」が開かれている(6月20日まで)。マンダースは1968年オランダ生まれでベルギー在住。日本では初個展となる。 巨大な彫刻作品が並んでいる。粘土を乾燥させたままではないだろうなと思っ…

東京都現代美術館の「Tokyo Contemporary Art Award 2019-2021受賞記念展」で風間サチコを見る

東京都現代美術館で「Tokyo Contemporary Art Award 2019-2021受賞記念展」が開かれている(6月20日まで)。受章者は風間サチコと下道基行の二人。ここでは風間サチコを紹介したい。 風間は1972年東京生まれ、1996年武蔵野美術学園版画研究科を修了している…

中村稔『現代詩の鑑賞』を読む

中村稔『現代詩の鑑賞』(青土社)を読む。これがとても素晴らしかった。中村は詩人で、また駒井哲郎などの伝記作者、本職は弁護士である。現代詩の実作者であるから「現代詩の鑑賞」にはぴったりだ。 本書には鮎川信夫、田村隆一から荒川洋治、高橋順子、小…

半藤一利『「昭和天皇実録」にみる開戦と終戦』を読む

半藤一利『「昭和天皇実録」にみる開戦と終戦』(岩波ブックレット)を読む。「昭和天皇実録」を読み込んで、開戦と終戦に関する昭和天皇の関与を分析している。実は1年半前にも読んでブログに紹介していたのに忘れていた。だが何度読んでも良い本だ。 いよ…

山梨俊夫の美人論

以前にも紹介したが、山梨俊夫の『絵画逍遥』(水声社)が素晴らしい。今回はその中の美人論を引く。 美しい人を見て、その美貌を描こうと思い立つ。あるいは、風が渡り樹木を煌めかせる光の晴れやかな自然に身を浸し、精神を解放させるその光景を描こうとす…

若井敏明『謎の九州王権』を読む

若井敏明『謎の九州王権』(祥伝社新書)を読む。大和王権の前に九州王権があったという主張。そういわれればすぐ古田武彦の九州王朝を連想する。若井も古田のこと十分は意識していて、「はじめに」で古田との違いを述べている。 ……古田武彦氏の九州王朝説と…

秋吉久美子・樋口尚文『秋吉久美子 調書』を読む

秋吉久美子・樋口尚文『秋吉久美子 調書』(筑摩書房)を読む。映画評論家で映画監督でもあり、秋吉の大ファンでもある樋口が、秋吉久美子に長時間インタビューしたもの。秋吉久美子といえば藤田敏八の映画『赤ちょうちん』『妹』『バージンブルース』に出演…

高橋源一郎『たのしい知識』を読む

高橋源一郎『たのしい知識』(朝日新書)を読む。副題が「ぼくらの天皇(憲法)・汝の隣人・コロナの時代」となっている。本書はこの3つのテーマを独立に論じたもの。雑誌『小説トリッパー』に連載した。 地味なタイトルだがとても面白かった。高橋は教科書…

山本弘の作品解説(100)「題不詳」

「題不詳」1976年制作 山本弘「題不詳」、油彩、F10号(45.5cm×53.0cm) 1976年10月制作、46歳のときのほとんど最晩年の作品。何が描かれているのだろう。左下に「ヒロシ」のサイン。片仮名のサインは珍しいが時々書かれている。 実はほとんど同じ構図、同じ…

藍画廊の番留京子展「The Savior is coming」を見る

東京銀座の藍画廊で番留京子展「The Savior is coming」が開かれている(3月20日まで)。番留は富山県生まれ。1985年、創形美術学校を卒業している。1986年、ギャラリー青山で初個展。以来多くのギャラリーで個展を開いてきたが、最近はギャラリー・オカベ…