スタニスワフ・レム『火星からの来訪者――知られざるレム初期作品集』(国書刊行会)を読む。スタニスワフ・レム・コレクションの1冊。「火星からの来訪者」はレムの最初のSF中篇小説。ファースト・コンタクトものの作品で、アメリカに到着した火星人との遭遇を描いている。レムのことだから、火星人と言っても全く人間ぽくはなく、「脳の形をしたゼリー状の光る物質を持った金属製の円錐体」がその正体だ。しかしレムが長く若書きとして封印していたというように、完成度は今一歩の感が強い。
ほかに4篇の初期短篇と初期詩集が収録されている。4篇の短篇はいずれも非SF小説で、ナチ・ドイツのユダヤ人収容を描いたものや、アメリカの広島への原爆投下を描いたものなどだ。
「青春詩集」は12篇の詩が集められている。本書は3人の訳者が翻訳を担当しているが、この詩集のみ沼野充義が担当している(他は芝田文乃と木原慎子)。沼田は解説も担当している。さて、この詩集の翻訳が気に入らない。もちろん私にはポーランド語など全く分からない。しかし御大沼野が訳しているのだから訳は正確なのだろう。あるいは原詩が悪いのだろうか、あるいは訳が正確でも詩の言葉になっていないのだろうか。「青春詩集」だけは面白くなかった。