円城塔『コード・ブッダ』(文藝春秋)を読む。副題が「機械仏教史縁起」。銀行のコンピュータシステムが進化し、ブッダを名乗った。それはさらに進化を重ね、歴史上の仏教の歴史を再現していった。システム上で小乗仏教が生まれ、密教が生まれ、禅が生まれ、法然や親鸞を思わせるホウ然、シン鸞も生まれた。仏教論争が紹介される。
きわめて独創的な発想で、それなりに面白いが、記述がシステムがブッダを産んだことやその後の仏教の展開に集中して、小説としての面白みにはいささか欠けている。私がそんな偉そうなことを言うのは、スタニスワフ・レムと比較しているからだ。レムの短篇集『泰平ヨンの航星日記』には、『コード・ブッダ』以上の独創的な発想の話が、小説としても見事な完成度で語られているからだ。
円城塔の本書が内容の奇抜さにも関わらず、相応の話題を得られなかったのは、小説としての面白みが欠けているからに違いない。

