2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

東京国立近代美術館の吉川霊華展を見て

東京国立近代美術館で行われた吉川霊華展「近代にうまれた線の探求者」を見た(2012年6月12日−7月29日)。吉川霊華は1875年生まれ、1929年に54歳で亡くなっている。展覧会のちらしから、 吉川霊華といってもほとんどの人はご存知ないかもしれません。 物語…

風知草について

鉢植えなどにされるフウチソウ(風知草)は標準和名がウラハグサ(裏葉草)。ウラハグサと呼ばれるのは、普通の植物では裏側にあたる葉裏がウラハグサでは表だからだ。葉鞘から葉に続くとき、ねじれているのが分かるだろうか。 フウチソウと呼ばれるのは、葉…

『東京大学のアルバート・アイラー』を読む

菊地成孔+大谷能生『東京大学のアルバート・アイラー』(文春文庫)を読む。副題が「東大ジャズ講義録・歴史編」とあり、2巻本の上巻で、下巻が「東大ジャズ講義録・キーワード編」となる。これが途方もなくおもしろかった。本書は2005年5月にメディア綜…

芥川喜好の『時の余白に』を読む

芥川喜好のエッセイ集『時の余白に』(みすず書房)を読む。芥川は1948年長野県飯田市生まれの東京育ち。早稲田大学を卒業し、読売新聞社へ入社。水戸支局を経て東京本社文化部で美術展評、日曜版美術連載企画などを担当と著者略歴にある。 本書は毎月1回読…

日経新聞小説大賞を受賞した『野いばら』を読む

梶村啓二『野いばら』(日本経済新聞出版社)を読む。日本経済新聞小説大賞を受賞し、辻原登が毎日新聞の書評で絶賛していた(2012年1月29日)。その書評から、 日本原産の野いばらがヨーロッパのバラの基礎になったことはよく知られている。5月から7月、…

ギャラリーQの永井優個展を見て

「新世代への視点2012」のギャラリーQは初個展となる永井優を取り上げている。永井は1987年東京生まれ、今年多摩美術大学大学院油画美術研究絵画専攻を修了したばかりだ。 永井は昨今流行の若い娘を描いているように見える。しかしどの人物も能面を被ってい…

藍画廊の本橋大介展を見る

「新世代への視点2012」が始まった。銀座1丁目の藍画廊では本橋大介を取り上げた。本橋は1976年茨城県生まれ、2003年に東京芸術大学大学院版画研究領域を修了している。その後中国に国費留学生として学ぶ。2006年に表参道のギャラリーエスで初個展、以後藍…

ギャラリー現の内山聡展が興味深い

「新世代への視点2012」が始まった。銀座1丁目のギャラリー現では内山聡を取り上げた。内山は1978年神奈川県生まれ。2005年に多摩美術大学大学院日本画研究領域を修了している。2003年にアートスペース羅針盤で初個展、その後神奈川県のギャラリーHIRAWATA…

「新世代への視点2012」が始まる

東京現代美術画廊会議が主催する「新世代への視点2012」が今日から始まる(8月4日まで)。東京現代美術会議は、12のギャラリーで構成されている。京橋ではギャラリーなつか、ギャラリイK、ギャルリー東京ユマニテ、ギャラリー川船の4軒、銀座ではコバヤシ…

ギャラリーαMの安藤陽子展

東京千代田区東神田のギャラリーαMの安藤陽子展を見た。これはαMプロジェクト「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう」の3回目で、東京国立近代美術館の学芸員保坂健二朗がキュレーターとなって全9回10人の作家を取り上げる企画となっている。前回俵萌子に続…

ドナルド・ジャッドのミニマルな作品

朝日新聞にドナルド・ジャッドが紹介されていた(2012年7月18日夕刊)。 この「無題No.306」という作品は東京都現代美術館の常設で展示されている。記事は大西若人が書いている。 作品とは、誰かによって作られたものだろう。この1点なら、引き出しのよう…

国立新美術館の「具体」を見て

六本木の国立新美術館で「具体」展が開かれている。副題が「ニッポンの前衛 18年の軌跡」という。同展のパンフレットより、 世界が認めた日本の前衛美術グループ、「具体」 その全貌が、ついに東京で明らかになる ・ 具体美術協会(「具体」)は、1954年、吉…

由良君美『みみずく偏書記』を読む

由良君美『みみずく偏書記』(ちくま文庫)を読む。由良は東京大学名誉教授、英文学者。博覧強記で眩いような広く深い知識を持っている。本書は50篇近いエッセイを集めている。袖のプロフィールによると、 専門は、コールリッジを中心とした英国ロマン派文学…

スカイ・ザ・バスハウスの平野薫展を見る

JR山手線を日暮里で降り、谷中の墓地を抜けてスカイ・ザ・バスハウス SCAI THE BATHHOUSE へ行く。昔銭湯だった建物を白石コンテンポラリーアートがギャラリーに改造したもの。白石さんはフジテレビギャラリー出身。フジテレビギャラリー出身のギャラリスト…

水を飲む箱男

地下鉄のホームで、安部公房の箱男が水を飲もうとしているのを見た。私のほかに気付いた者はいなかったようだ。でも、どうやって地下鉄のホームまで入り込めたんだろう。ちゃんと改札を通ってきたんだろうか。 箱男 (新潮文庫)作者: 安部公房出版社/メーカー…

片山杜秀『未完のファシズム』を読んで

思想史研究者、音楽評論家という不思議な肩書きを持つ片山杜秀の新著『未完のファシズム』(新潮選書)を読む。これがとてもおもしろかった。片山には佐藤卓己から「構成と文体の見事さは芸術品」と評された『近代日本の右翼思想』(講談社選書メチエ)とい…

山本弘31回目の祥月命日

7月15日は山本弘の祥月命日だ。今年で31年目になる。1981年のこの日亡くなった。アル中治療のため1年以上入院していた飯田市営病院を退院して100日ほどだった。家族を実家へ帰し、ひとりで自死した。51歳だった。 山本弘は15歳で終戦を経験してから、なぜ…

ギャラリーQの茂呂剛伸個展の太鼓

東京銀座1丁目のギャラリーQで茂呂剛伸個展が開かれている(7月14日まで)。茂呂の展示しているのが彼が作った太鼓だ。茂呂は1978年北海道江別市生まれ。幼少より和太鼓奏者として世界各地を回ったという。一時期アフリカのガーナに渡り、演奏と太鼓制作を…

岡部貴子のドローイングが良い

東京京橋のギャラリー檜B・Cとギャラリー檜plusで「Drawing Show」が開かれている(7月14日まで)。2つの会場に12人のドローイングが並んでいる。 これらのうち、とくにギャラリー檜plusに展示されていた岡部貴子のドローイングが良かった。5点が並んでい…

LIXILギャラリーの2つの個展

東京京橋のLIXILギャラリーで2つの個展が開かれている。藤井秀全展とガレリアセラミカの毛塚友梨展だ。 藤井秀全はLEDを使った作品。LEDという新しい素材を使った作品は当然現れるものだが、やはりおもしろく見た。ただ、完成度ではもう少しという印象は否…

LIXILギャラリーの「聖なる銀−−アジアの装身具展」が興味深い

東京京橋のLIXILギャラリーで「聖なる銀−−アジアの装身具展」が開かれている(8月25日まで)。LIXILギャラリーはもとINAXギャラリー、社名が変わってギャラリー名も変わった。ギャラリーのホームページから、 月光のごとく煌く銀 身を守り喜びを表すかたち…

大栗博司『重力とは何か』を読む

大栗博司『重力とは何か』(幻冬舎新書)を読む。朝日新聞の書評(7月1日)で、瀧井朝世が「"素人の目"で読みやすく」と書いていたから。その書評を一部再録すると、 素粒子論の研究者が重力の基本から最新の超弦理論(超ひも理論)までを解説し、宇宙の謎…

ノンブルの振り方

本のページを表す数字をノンブルと言う。ノンブルはナンバーに相当するフランス語。出版界ではノンブルで通っている。ノンブルを付けるのを「ノンブルを振る」と言う。 日本では本や雑誌に縦組みと横組みがある。縦組みでは見開きページの右が小さい数字にな…

ルテシアという名前を巡って

以前、渋谷のホテル街で東電OL殺人事件の事件現場アパートを探し歩いていたとき、ルテシアという名前のホテルを見つけ、その名前がなぜか気になった。しばらくして、ロベール・アンリコが監督したフランス映画『冒険者たち』のヒロインの名前がレティシアだ…

七夕の芋の露

子どもの頃は七夕の朝、里芋の葉の露を採って、それで墨をすって短冊に願い事を書いた。あの頃なんて書いたのだろう。住んでいたのが長野県の田舎だったので、七夕はひと月遅れの8月7日だったけど。ちょうど夏休みの最中だった。里芋は家の前の畑にたくさ…

井上理津子『旅情酒場をゆく』を読む

以前、丸谷才一『食通知ったかぶり』を紹介して、つまらないエッセイだったと書いた。そんな生意気なことを書いたのも、食べ歩きの面白いエッセイを知っていたからだ。 つまらないなどと丸谷大先生に対して断定的なことが言へるのも、同じやうに全国各地のう…

Stepsギャラリーの吉岡まさみの展示が見事!

銀座4丁目のStepsギャラリーでミリッツァ・ニコリッチ写真展が開かれていた(7月5日まで)。先月28日に同ギャラリーに行くと、画廊主の吉岡まさみさんが展示をしている最中だった。29日から始まるのだという。赤いレーザー光線を使って水平を出していた。…

柳広司『漱石先生の事件簿 猫の巻』を読む

柳広司『漱石先生の事件簿 猫の巻』(角川文庫)を読む。誰かが大変ほめていたから。夏目漱石だか『吾輩は猫である』の苦沙弥先生だかの家に書生として住みこんでいる青年が、事件というより小さな謎を次々と解決していくという話。『吾輩は猫である』の世界…

東京都写真美術館の写真展3つ

東京都写真美術館の写真展を見る。コレクション展「光の造形 操作された写真」と「川内倫子展」それに「世界報道写真展」の3つ。それぞれ3階、2階、地下1階のフロアを使って開かれている。 まず「光の造形」を見る。 ちらしのテキストから、 「操作され…

十一月画廊のサディエ・R. スターネス展のCPが高い

東京銀座7丁目の十一月画廊でサディエ・レベッカ・スターネス展が始まった(7月14日まで)。サディエは1985年アメリカ、ノース・カロライナ生まれ。最近は東京に滞在している。昨年は銀座のメグミ・オギタ・ギャラリーでも個展をしている。8月には渋谷ヒ…