2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

靉光とセザンヌ

酒井忠康は「早世の天才画家ーー近代洋画の12人」(中公新書)のなかで、靉光(あいみつ)を取り上げて次のように書いている。 《魚(ひもの)》……靉光の作品について、その出会いのもっとも個人的な必然を語ろうとすると、わたしは1点の小さな《静物》をと…

「向日葵の咲かない夏」への不満

「このミステリがすごい」という賞は不思議な賞で、選ばれた作品が本当に面白かったりものすごくつまらなかったりする。私はミステリの良い読者ではないので偉そうなことは言えないが、「このミス(このミステリがすごい)」の国内版2003年度1位の横山秀夫…

私の文庫ベスト3

私の選んだ文庫本ベスト3。 1.佐多稲子「夏の栞」(新潮文庫) 佐多稲子の若い頃からの大切な友人であり恩人である中野重治の最後を描いた作品。微妙な心理の機微を描く文体が絶妙だ。 ●佐多稲子「夏の栞」(20070103)夏の栞―中野重治をおくる (新潮文庫…

山本弘の作品解説(26)「土の男」

山本弘「土の男」油彩、F20号(72.7cm×60.5cm) 1976年9月の飯田市勤労福祉センターでの個展で発表された。この時山本弘46歳。アル中治療のため入院していた病院をこの年の1月退院し、それから2年間禁酒したという。禁酒のせいか神経がピリピリしていて、…

山本弘の作品解説(25)「題不詳」

山本弘「題不詳」油彩、F10号(53cm x 45.5cm) 制作年不明、1970年代後半頃に描かれたものと思われる。1994年の東邦画廊での第1回遺作展で展示されすぐに売れた。野見山暁治さんも好きな絵だと言われた。 何が描かれているのだろう。中間の緑色は山本の好…

胸を露わにしていた昔の生活

子供の頃の夏、タバコ屋の太ったおばさんは「暑い暑い」と言って上半身裸でうちわを使っていた。友だちのお父さんは畑仕事の後、川で身体を洗っていて近所のおばさんに「ご立派なお道具だこと」とほめられていた。昔の村の生活は純朴だった。 以前、雑誌「We…

飯田線市田駅のノイバラ

JR飯田線の市田駅のホームにノイバラの大きな株がある。市田駅は今年御開帳でにぎわっている元善光寺のある元善光寺駅から北に2駅、飯田駅からでは北に5駅のところにある小さな有人駅だ。といっても駅員はたった1人。 なぜこの駅のホームにノイバラの大き…

子母沢寛のおじいちゃん

私の娘の母方のおじいちゃんは長く高校の英語の教師をしていた。謹厳実直な人だが優れた教養人でもある。その人が初孫が生まれたとき、孫が喜ぶからとタコ踊りをしたので本当に驚いた。孫ってそんなに可愛いのだ。 「新撰組始末記」を書いた子母沢寛は画家三…

名文家になる方法

おおかた事を記すに、漏らさじとすれば煩わしく、省けばまた要を失う。 これは松平定信の言葉らしい。ところが画家野見山暁治の文章は、省いて要を失わない名文だ。省略がほれぼれするほど巧い。画家にして名文家はほかに芥川賞を受賞した池田満寿夫、エッセ…

種内変異

小学校5、6年生の時の担任が宮嶋光男先生だった。植物学が専門のようだった。たくさんの植物の名前を教わったし、時々花や野菜の種、樹木の苗木などを分けてくれた。もらったオオイボタの苗は数年後花を咲かせ、それが臭くて閉口した。学校の裏庭に死んで…

「現代プレミア ノンフィクションと教養」がお勧め

「月刊現代」が休刊した講談社から佐藤優責任編集なる「現代プレミア」と冠のついた「ノンフィクションと教養」というムックが出版された。定価1,200円。ノンフィクション好きの私にはこたえられない企画だ。 まず10人がそれぞれ100冊ずつのノンフィクション…

上品な作家玄侑宗久とその友人伊藤彰規

玄侑宗久には会ったことがない。芥川賞を受賞した「中陰の花」(文春文庫)を読んだことがあるだけだ。一読後なんという上品な人かと思った。私とは品の格が全く違う。比べる相手が違うのはよく分かっているが。 玄侑宗久には会ったことがないが、彼の高校時…

新型インフルエンザウイルス流行に対するノロ・ウイルス感染体験のささやかな教訓

3年ほど前にノロ・ウイルスが流行ったことがあった。私もそれに感染して大変な目にあった。健康診断で大腸検診を勧められ、そのため下剤を飲まされて何度もトイレに行った。病院でもトイレに行って、つらい検査の結果何も問題がなかった。朝から絶食してい…

山本弘の作品解説(24)「伐木」

山本弘「伐木」油彩、F15号(65cm x 53cm) 1977年に制作された。伐木とは文字どおり伐られた木だ。どうしてこんなものを描いたのだろうと不思議だった。 最近、酒井忠康「早世の天才画家」(中公新書)を読んだ。萬鉄五郎から松本俊介まで12人の画家が取り…

早坂暁が「公園通りの猫たち」で語るいい話

一昨日紹介した早坂暁「公園通りの猫たち」には、人を救助した猫のエピソードが語られている。猫って想像以上に賢いのかもしれない。 ある日、ブーツ(という名前の猫)が珍しく、私の足もとにぶつかってくる。ブーツは、これまたホルモン異常のせいか、鳴き…

悩ましい広告表現

ED対策の3つの商品の新聞広告。EDとは勃起不全のこと。品良く表現すれば伝わりにくく、分かりやすい道を選べば品を失う。広告の発注者も表現者も悩ましいところだ。 漫画の女性は「彼、どうやらのんだらしい」と言っている。

早坂暁「公園通りの猫たち」を読んで

「夢千代日記」などの脚本を書いている早坂暁の「公園通りの猫たち」(ネスコ)を読む。これが大変面白く、また猫の生態についても知らなかったことを教えられた。公園通りとは東京渋谷のNHKに続いている通りのことだ。 まず猫の喧嘩の実態が詳しく語られて…

職場の原理主義者

まれにだが職場にも原理主義者が存在する。イスラム原理主義と共通するものがある。原理主義者は原理を押し通してくる。職場ではささいな事柄でも妥協を許さなく原則通りに実行することを強制してくる。車のブレーキでも「遊び」があるが、原理主義者はその…

犬の顔は飼い主に似る?

niftyニュースが紹介する読売新聞に「犬の顔は飼い主に似る?大学教授らが「顔面相似」調査」という記事が紹介されていた。 犬の顔は、やっぱり飼い主に似る?−−。関西学院大(兵庫県西宮市)の研究グループがペットと人間の「顔面相似」に関する調査結果を…

針生一郎が語る戦後美術概論の一端

先月末の週に銀座の地球堂ギャラリーで奈良達雄遺作展が開かれた。奈良は独立美術の会員だったが、1997年に47歳で亡くなっている。没後10年展として府中市美術館市民ギャラリーで個展が開かれた一昨年と今回、針生一郎、本江邦夫、宮田徹也の3人の美術評論…

「形体心理学」という言葉

以前、韓国の哲学者李奎浩著「言葉の力」(成甲書房)を読んだ。ずいぶん昔の事で、何やらはっきりしない本だという印象しかないが、1点だけ奇妙な訳語を覚えている。繰り返し現れる「形体心理学」という言葉だった。おそらくドイツ語のゲシュタルトが韓国…

東の空に巨大な虹を見た

8日の夕方、日が差しているのに小雨が降ってきた。ベランダから南東の方角に大きな虹が見えた。太い虹が大きな弧を描いて反時計回りに立ち上がっている。玄関に回ってみると北東の方角にも同じく太い虹が見える。真東に高い建物があるので見えないが、二つ…

春画で優れているのは春信と歌麿

田中優子の「春画のからくり」(ちくま文庫)が面白い。江戸文化が専攻の田中はこんな過激な発言をしている。 「平等」とか「平和」というのなら、女性ヌードを取り締まって、性交写真を自由化すべきなのだ。 浮世絵の天才は北斎が最高なのだが、春画に限っ…

二つの目新しかったこと

30歳を過ぎた頃から目新しいと感じることが少なくなった。たいていどこかで聞いたり経験したことばかりだと感じていた。しかし、その頃二つの目新しことに出会った。一つはオートバイだった。オートバイは若者の乗り物で、私の友人たちもたいてい高校生の頃…

田中優子「春画のからくり」

田中優子「春画のからくり」(ちくま文庫)に面白いことが書かれている。 ところで、もし私がフェミニストの運動家だったら、許さないだろうと思う現象が巷では起きている。女性ヌードの氾濫である。なぜ、女性なのだろうか、なぜヌードなのだろうか。これは…

「こんなにもある 善光寺のなぞ」

40年来の友人から最近発行された彼の新著が贈られてきた。田中博文「こんなにもある 善光寺のなぞ」(一草舎)は6年ぶりに開催されている長野市善光寺の御開帳に合わせて発行されたようだ。 善光寺には10代の頃1回、20代と50代にそれぞれ1回ずつ行ってい…

銀座にもある番外地

以前、カラーポジ専用の現像所である銀座のスポット商会と付き合っていた。写真がデジカメに移行してゆき、フィルムの現像が極端に減少して経営が大変になったとかで、大手のラボの傘下に入ったとスポット商会が挨拶に来たことがあった。その時の挨拶状に不…

モンポウから連想したこと

雑誌「考える人」春号に高橋悠治へのインタビュー「ピアニストになりたいと思ったことはなかった」が載っている。その中で高橋が昨年フォンテックからモンポウとブゾーニのCDを出したことについて聞かれている。高橋はモンポウの「沈黙の音楽(ひそやかな音…

銀座でシロアリのスウォーミングに遭遇する

昨年の4月29日に銀座でシロアリのスウォーミングを見たので、今年もと期待して、4月26日(日曜)、29日(祝日)と通ってみたがいずれも空振りだった。26日は前日が雨だったのでまず間違いないだろうと思ったのだったが。・「銀座にシロアリのスウォーミン…

動物は困らないか?

いがらしみきおの「ぼのぼの」第2巻(竹書房、1987年発行)で、ぼのぼのが困る状況が語られる。 ぼのぼの アライグマくん アライグマ あ? ぼのぼの ボクお腹がすいて またこまるかもしれないなァ アライグマ こまりそうになったらサカナを食えばいいじゃね…