田中優子「春画のからくり」

 田中優子春画のからくり」(ちくま文庫)に面白いことが書かれている。

 ところで、もし私がフェミニストの運動家だったら、許さないだろうと思う現象が巷では起きている。女性ヌードの氾濫である。なぜ、女性なのだろうか、なぜヌードなのだろうか。これは、春画を見慣れていると自然に起きてくる疑問である。春画に女性ヌードは皆無だからだ。春画は性交の絵であり、性交は男女がいて成りたつ。男だけの春画や女性だけの春画はない。そして、春画は必ずといっていいほど、着物を着ていたりかけていたりする。ヌードを見せるための絵ではなく、性交を見せるための絵だからである。後期になればなるほど、春画は着物やついたてや襖などで、身体をできるだけ隠し、交接部分を強調する。そして多くの春画は、男女ほぼ同じ露出度である。時には男性器の方が目立つように描かれる。春画の顔の縦サイズと、その人の性器のサイズは常に同じである、という研究もある。性器を顔に見立てた漫画もある。性器には個性があり、顔と同等の扱いを受けていた。

 この春画を擁護し、女性ヌードを批判する姿勢は目新しく、久しぶりに新しいことを教わった気がした。まだ読み始めたばかりだが、この先が楽しみな本だ。

春画のからくり (ちくま文庫)

春画のからくり (ちくま文庫)