2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

小島政二郎「小説 永井荷風」を読む

小島政二郎「小説 永井荷風」(鳥影社)は2007年8月に初版が発行された。著者による「あとがき」の日付は昭和47年10月となっている。どうしたことか? 実は永井家の出版許可が下りなかったのだという。読んでみればなぜ許可されなかったよく分かる。 小島は…

内藤礼の作品がよく分からない

去る17日に東京都現代美術館で内藤礼と茂木健一郎の対談があった。現在同美術館ではユーグ・レブというアーティストの企画した「Parallel Worlds」と題された現代美術の展覧会が開催されており、内藤礼も大きな作品を出品している。それに因んで彼女と茂木健…

東京都現代美術館のトイレ

以前東京オペラシティのトイレについて書いた。 東京オペラシティ3階の男子トイレの平面プラン(2008年6月15日) 今回紹介するのは東京都現代美術館の常設展のトイレの平面プランだ。1階と2階のトイレに共通している。A は大便器、Bは小便器、Cは洗面器…

銀座ギャラリーQの篠原愛展を見てほしい

篠原愛展が銀座のギャラリーQで開かれている(9月6日まで)。 若い娘の体の傷口から植物が生え、金魚がめり込んで血が流れている。水中のようにも見えるし、地上のようでもある。もう1枚の作品では、内緒話をしている少女たちの前に吊り下げられた金魚の…

おこげのお浸し

私が育った長野県の飯田地方は昆虫食のセンターでもあるが、「おこげ」という低木の新芽をお浸しにして食べていた。春芽吹いた時、それを摘んでお浸しにする。ちょっとでも葉が大きくなると硬くなって食べられない。だから食べられるのはほんの短い期間だ。 …

祖母の花壇

祖母は明治の人だった。趣味で花壇を作っていた。祖母の花壇には、百日草、ダリア、菊、グラジオラス、芍薬、福寿草、コスモス、水仙、鳳仙花、サルビア、カンナ、ツツジがあった。なぜか百合とチューリップがなかった。庭は祖父が管理していた。その庭には…

顧客満足

簡単に書きます。35年前入社した時の会社はスライド制作プロダクションから編集プロダクションに変わりつつあるところだった。入社後10年くらいでそれを広告制作プロダクションに変えていった。なぜ変えたか? クライアントの要望に応えるためだ。経営者から…

梅崎義人「動物保護運動の虚像」の衝撃

出版は少し古いが、梅崎義人著「動物保護運動の虚像」(成山堂書店)を読んだ。これが衝撃的な内容だった。 著者はこの本でグリーンピースやWWF(世界自然保護基金)を糾弾している。動物を絶滅から守るとして、まず捕鯨が禁止され、ついでアフリカ象の捕獲…

森ビルと旧丸ビル

港区を中心に森ビルはたくさんの貸しビルを作ってきた。その集大成が六本木のアークヒルズだろう。私が知っているのは第32森ビルまでだったけど、今は何番まで付いているのか。作った順に番号が付けられたようなのだ。 私の勤めた会社も一時期第9森ビルに事…

ANDOギャラリーの中沢研展がすばらしい

東京都現代美術館近くに7月1日からANDOギャラリーがオープンし、中沢研展で幕開けをしたと聞いていて、行きたいと思いながら最終日2日前にやっと行ってきた(8月23日まで)。 もと倉庫というギャラリーは広く天井も高いすばらしいスペースだ。しかし中沢…

小山登美夫ギャラリーの成功の秘密

小山登美夫ギャラリーの小山さんは独立して10年くらいで成功された。その秘密は何か。村上隆や奈良美智と出会ったことだ。しかし他のギャラリーの人たちはなぜ村上や奈良を見逃してしまったのか。ひとり小山さんだけが彼らに注目したのは、アメリカのアート…

小島政二郎の「円朝」という名伝記がなぜ書かれたか

小島政二郎「円朝」(河出文庫)は明治の落語の大名人三遊亭円朝の伝記だ。とても良い伝記で非常に詳しい。どうして? と思ったが、最初にこう書いてあった。 私の祖父は利八と言って、寛永寺お出入りの大工の棟梁だった。(中略)私がまがりなりにも、名人…

中国現代絵画展を見て

東京駅前の丸ビルが新しく建て直されてもう3年くらい経ったのだろうか。私は初めて入ったが、昔の印象とは天と地ほど違った。初代丸ビルは大きな雑居ビルというのが本質で、細かく区分けした狭い部屋にたくさんの小さな会社が入っていた。そのうちの1社が…

ジブリの威力に驚いた

東京都現代美術館へ「パラレル・ワールズ」という現代美術の展覧会を見に行った。現在ここでは同時に「スタジオジブリ・レイアウト展」が開かれている。昨年のジブリ展の時にできていたチケット売場の前の行列が今年はない! どうしたのだろう? まさかジブ…

Chim↑Pomの個展「友情か友喰いか友倒れか/BLACK OF DEATH」がすごい

美術家集団Chim↑Pomについては2度紹介してきた。男5人女1人のユニットだ。「無人島プロダクションのChim Pom 「オーマイゴッド」展が面白かった」 (id:mmpolo:20070806) 「NADiffの移転オープンとChim ↑ Pomの個展」(id:mmpolo:20080723) Chim↑Pomは…

川越市立美術館に行って長沢秀之展を見る

川越市立美術館で長沢秀之展を見た(9月12日まで)。長沢は1947年生まれ、現在武蔵野美術大学の教授だ。私の好きな沓澤貴子の師でもある。狭山市に生まれ名門川越高校を卒業していることで今回「川越の美術家たち」の企画に選ばれた。 一応回顧展を謳ってい…

丸木スマ展が面白かった

丸木スマ展を見てきた。埼玉県立近代美術館で8月31日まで。丸木スマ(1875ー1956)は原爆の絵で有名な画家丸木位里の母親、画家丸木俊は嫁になる。 生涯農婦としてすごしてきたが、70歳になったとき丸木俊に勧められて初めて絵筆を握り、それが好評だったた…

派遣社員の悩み

派遣社員の仕事の大変さが取りざたされている。その問題の一つに、上司との関係があるのではないか。普通、社員の上には係長、課長、部長などの管理職がいて、彼らが社員を指導している。彼ら管理職にも問題のない人間がいないわけではないが、一応管理職に…

印象に残った講演会3つ

今までに強く印象に残った講演会が3つある。もう30年以上前にNHK教育テレビで見た加藤周一の講演会、しかし感動したこと以外もう覚えていない。 十数年前に目黒区立美術館で聴いた宇佐美圭司の講演会。はじめに、この間ジャスパー・ジョーンズと飯を食べた…

表現主義建築

昔読んだ建築のエッセイで、国鉄(現JR)総武線水道橋駅のホームの建築が表現主義様式だと書かれていて、どのように見たらよいのか気になっていた。最近表現主義の定義を知ってなるほどと思った。 ・大正期に誕生。 ・放物線のアーチ、上に行くに従って太く…

セミを食べる人

ベランダに落ちゼミがあったらしく飼っている猫「チビ」が獲ってきた。しばらくジージー鳴いていたが、静かになったので見ると2枚の羽根と脚が1本、そして眼のところだけが残っていた。 娘が嫌がってまるで昆虫学者のようだねと言う。そう言えばそんな昆虫…

ハッタリがばれたとき

われわれの勤めていた会社が新しいビルに引っ越したあと、経営者が言った。電気代がいくらか分かるか、月に○十万円だぞ、これからは電気を倹約して使え! ナイーブな社員が質問した。それってうちの会社だけですか? いや、このビル全体だ。われわれの会社は…

ビーバーの家、チメンカノヤ

中野区沼袋にチメンカノヤという変わった名前のギャラリー兼カフェがあった。もうホームページも閉鎖されているので、いつの間にか閉店したのだろう。もともと住宅として名のある建築家に設計を依頼して作ったらしい。名前の由来は「地面下の家」を音読みし…

冷泉彰彦「『関係の空気』『場の空気』」が面白かった

横浜逍遙亭で冷泉彰彦「『関係の空気』『場の空気』」(講談社現代新書)が紹介されていた(id:taknakayama:20080716)。 私も読んでみたが大変おもしろかった。まず最近の若い娘たちが男言葉を使うきっかけが1996年のテレビドラマ「ロングバケーション」で…

皇后さんが京橋の画廊を訪ねた話

昔友人の勤めるメーカーの工場へ天皇が訪問したことがある。「訪問」じゃなくて何て言ったっけ? その時友人の会社は天皇専用のトイレを新設した。使うかどうか分からないが、仮にも天皇に少しでも汚れたトイレを使って頂いては申し訳ないということなのだろ…

ひと思いに殺された方がいいか

農作物の害虫防除の一般的なものは殺虫剤によるものだが、ほかに天敵を利用したものや誘引剤を使用するものがある。誘引剤のうち性フェロモンを利用する方法があり着実な効果を収めている。 これは鱗翅目害虫などの交尾を攪乱するもので、雌の出す性フェロモ…

美術品の鑑定

富岡鉄斎の作品と言われているものには贋作が多いことはよく知られている。私も何点かの贋作を見た。私でも分かるくらいの稚拙な贋作が多いのだ。私は鉄斎の作品をたくさん見てきたが、それらのほとんどは美術館で見た。その中には贋作は少ないだろう。それ…

組版の規則

活字の時代から写真植字(写植)に代わり、それもいまはDTPになった。活字では物理的な条件による規制が大きく、自由が少なかった。それでか、組版にさまざまな規則があった。 改行した次の文章の頭を1字落とすときも、最初に「が来る場合、1字(全角)空…

吉田喜重監督の作品を追いかけていた

ヴィスコンティが1972年に制作した映画「ルートヴィヒ」の完全版をシネマヴェーラ渋谷で見た。上映時間4時間の完全版、途中全くだれることがなく至福の時間を体験した。豊かな映画だった。 ヴィスコンティを見たのは昨年の「山猫」完全版に続いてやっと2本…

アリを飼育した夏休みの思い出

娘が小学生だった頃アリの飼育セットを買ったことがある。平べったい(奥行きのない)透明なプラスチックの箱に砂が入っており、アリを採集してきて入れると地下に穴を掘って巣を作るので、それを横から観察することができる。 観察の手引きに書かれていたの…