2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

木田元『現象学の思想』を読む

木田元『現象学の思想』(ちくま学芸文庫)を読む。発行が2000年といささか古く、「ちくま学芸文庫」のために編集したものだとある。内容は現象学に関する6篇の論文を集めたもの。一番古いのは1964年に発表したもので、新しいのも1980年といささか古いのは…

佐藤俊樹『社会学の新地平』を読む

佐藤俊樹『社会学の新地平』(岩波新書)を読む。副題が「ウェーバーからルーマンへ」というもの。ウェーバーは「資本主義の始まり」を論じた『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の著者だ。 毎日新聞に松原隆一郎が書評を書いている(2024年1月…

国立新美術館の「日本アンデパンダン展」を見る

東京六本木の国立新美術館で「第77回日本アンデパンダン展」が開かれている(4月1日まで)。日本アンデパンダン展は日本美術会が主催する無審査の公募展だ。 知人たちの作品を中心に気になった作品を紹介する。 木村勝明「記憶の箱」 井上活魂 SYプロジェ…

東京都美術館の「人人展」を見る

東京上野の東京都美術館で「第47回人人展」が開かれている(3月31日まで)。この「人人展」は異端の日本画家中村正義の発案になるものだ。今回はその中村正義生誕100年を記念して、会場入り口近くに中村正義の作品が展示されている。 知人の作品を中心に気…

ギャルリー東京ユマニテbisの上岡ひとみ展を見る

東京京橋のギャルリー東京ユマニテbisで上岡ひとみ展が開かれている(3月30日まで)。上岡は1983年埼玉県生まれ、2006年女子美術大学大学院美術研究科美術専攻立体アート学科紙・繊維専攻修了、その後数年間ドイツとフランスへ留学している。2004年に神奈川…

コバヤシ画廊の坂本太郎展を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で坂本太郎展が開かれている(3月30日まで)。坂本太郎は1970年、埼玉県生まれ、2000年に愛知県立芸術大学大学院修士課程を修了している。都内では2000年に当時早稲田にあったガルリSOL、2001年以降銀座のフタバ画廊や小野画廊、ギャ…

奥憲介『「新しい時代」の文学論』を読む

奥憲介『「新しい時代」の文学論』(NHKブックス)を読む。副題が「夏目漱石、大江健三郎、そして3.11へ」。 第1章で夏目漱石の『こころ』を取り上げ、全体の半分に当たる第2章で大江健三郎が取り上げられる。3分の1に当たる第3章は「「新しい時代」の文学…

ギャラリー鴻の「表層の冒険」を見る

東京蒲田のギャラリー鴻で「表層の冒険」が開かれている(3月25日まで)。これは谷川渥企画の日本人作家47名の作品展で、副題に「抽象のイコノクリティック」とあり、抽象画の作家たちが選ばれている。 会場のギャラリー鴻は片柳学園(日本工学院専門学校・…

eitoeikoのながさわたかひろ展を見る

東京矢来町のeitoeikoでながさわたかひろ展「顔顔顔~東京編~」が開かれている(3月24日まで)。ながさわは1972年山形県生まれ、2000年に武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コースを修了している。2010年にart data bankで初個展、その後養清堂画…

上野の森美術館のVOCA展を見る

東京上野の上野の森美術館で「VOCA展2024」が開かれている(3月30日まで)。これは「現代美術の展望―新しい平面の作家たち」というもので、全国の美術館学芸員、研究者などから推薦された40歳以下の作家31人が出品している。 部分 山下耕平 部分 大東忍:VO…

伊藤邦武『物語 哲学の歴史』を読む

伊藤邦武『物語 哲学の歴史』(中公新書)を読む。新書という小冊子で哲学史を紹介するという難しい仕事を試している。結果的にそれは成功している。 古代・中世の哲学から、近代の哲学=意識の哲学はデカルトから経験論とカントが語られ、20世紀哲学=言語…

コバヤシ画廊の荻原正人展を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で荻原正人展が開かれている(3月23日まで)。荻原は1953年東京生まれ、1979年東京芸術大学鋳金科を卒業し、1981年同大学大学院を修了している。 今回の展示は3面の壁に同一の大きさの黒い平面が規則正しく並べられている。右側の壁…

片山杜秀『大楽必易』を読む

片山杜秀『大楽必易』(新潮社)を読む。副題が「わたくしの伊福部昭伝」で、伊福部昭はクラシック音楽の作曲家、だが『ゴジラ』の映画音楽の作曲家として名高い。芥川也寸志や黛敏郎の師でもある。伊福部によれば、先祖は因幡の国の宇倍神社の神官を明治維…

ギャラリー58の山下耕平展を見る

東京銀座のギャラリー58で山下耕平展「底裏の間」が開かれている(3月23日まで)。山下耕平は1984年兵庫県生まれ、2007年に佐賀大学文化教育学部デザイン専攻を卒業している。東京では、2011年からほぼ毎年このギャラリー58で個展を続けていて今回で13回目…

ギャラリーSAOH & TOMOSの佐藤杏子展を見る

東京神宮前のギャラリーSAOH & TOMOSで佐藤杏子展「識閾」が開かれている(3月23日まで)。佐藤杏子は1954年、茨城県土浦市生まれ。1980年、多摩美術大学大学院を修了している。1978年から日本版画協会展に毎年出品し、1995年に準会員優秀賞受賞。1989年ギ…

トキ・アートスペースの吉川和江展を見る

東京神宮前のトキ・アートスペースで吉川和江展が開かれている(3月24日まで)。吉川和江は東京生まれ、1969年に武蔵野美術大学を卒業し、1976年ドイツのハンブルグ国立美術大学に入学し、1986年に同校を卒業している。現在ハンブルグ在住。1983年ハンブル…

ギャラリーなつかの桑原理早展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで桑原理早展「Not Perfect Tracking」が開かれている(3月16日まで)。桑原理早は1986年東京都生まれ、2011年武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業し、2013年同大学大学院美術研究日本画コースを修了している。2013年にアー…

木之庄企畫の谷口ナツコ個展を見る

東京京橋の木之庄企畫で谷口ナツコ個展「日常の極楽」が開かれている(3月21日まで)。谷口は1968年北海道生まれ。今までギャラリー砂翁、デザインフェスタギャラリー、ヴァニラ画廊、スタジオ・ゾーン、アンド・ゾーン、ギャラリー・テオなどで個展を開き…

松尾剛次『日蓮』を読む

松尾剛次『日蓮』(中公新書)を読む。日蓮宗を開いて法華経の信仰を説いた。新宗教の霊友会、立正佼成会、創価学会もみな日蓮系だ。 日蓮は他宗に対して激しく攻撃的だった。それは創価学会の折伏を経験して私も多少は知っていた。しかしここまで攻撃的だっ…

SOMPO美術館の「FACE展2024」を見る

東京新宿のSOMPO美術館で「FACE展2024」が開かれている(3月10日まで)。今回で12回目となるという。 津村光璃:グランプリ 塩足月和子:優秀賞 文無:読売新聞社賞 菊野祥希:大島徹也審査員賞 東菜々美:秋田美緒審査員賞 宮﨑菖子:森谷佳永審査員賞 巽…

川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』を読む

川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(ちくまプリマ―新書)を読む。はじめあまり興味を持たなかったが、書評などで評判が良いようなので読んでみた。 本書の一節に次のような箇所があった。 以前読んだ記事の中で、グルメリポーターとして有名な彦摩呂さ…

ギャルリー東京ユマニテの井上雅之展を見る

東京京橋のギャルリー東京ユマニテで井上雅之展「形に囲まれる」が開かれている(3月23日まで)。井上は1957年神戸市出身、1985年多摩美術大学大学院美術研究科修士課程修了。2017年第24回日本陶芸展大賞受賞。1980年代から陶を素材に立体作品の制作を試み…

巷房の象山隆利展を見る

東京銀座のギャラリー巷房で象山隆利展「風と歩行」が開かれている(3月9日まで)。象山は1964年静岡県生まれ、1989年に東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業、1991年に同大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了している。1990年以来様々な画廊で個展を行い、巷房…

ギャルリー東京ユマニテbisの都丸志帆美展を見る

東京京橋のギャルリー東京ユマニテbisで都丸志帆美展「内側に溜まった水溜まり」が開かれている(3月9日まで)。都丸は1977年群馬県渋川市生まれ、2002年創形美術学校ファインアート科を卒業している。個展は2006年ギャラリー坂巻、その後現代HEIGHTS ギャ…

ギャルリーためながの吉川民仁展を見る

東京銀座のギャルリーためながで吉川民仁展が開かれている(3月24日まで)。吉川民仁は1965年千葉県生まれ、1989年に武蔵野美術大学を卒業し、1991年に同大学大学院造形研究科油絵コース修士課程を修了している。1990年に鎌倉画廊で初個展、以来様々な画廊…

山本文緒『無人島のふたり』を読む

山本文緒『無人島のふたり』(新潮社)を読む。作家である山本文緒が2021年4月膵臓がんと診断され、そのとき既にステージ4bだった。治療法はなく、抗がん剤で進行を遅らせることしか手立てはなかった。抗がん剤治療は地獄だった。山本は医師やカウンセラー…