2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

山梨俊夫『絵画逍遥』を読む

山梨俊夫『絵画逍遥』(水声社)を読む。山梨は長く神奈川県立近代美術館に勤め、現在は国立国際美術館館長。神奈川県立近代美術館で3回開かれた田淵安一展の企画は山梨だったと思う。早川重章展もジャコメッティ展も。かつて読んだ山梨の『現代絵画入門』(…

ギャラリーなつかの中嶋由絵・濱田富貴・吉永晴彦展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで「View’s view 中嶋由絵・濱田富貴・吉永晴彦展」が開かれている(7月18日まで)。ここでは3人のうちの濱田富貴を紹介したい。濱田は1972年福岡県生まれ、2000年に武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コースを修了して…

信濃毎日新聞に紹介された山本弘

長野県安曇野市にギャルリー留歩(るぽ)という画廊がある。いまここで「栗原一郎展 おんなを描く」が開かれている(7月31日まで)。その一隅に山本弘『湘(しょう)』が特別展示されている。油彩3号(27.3×22.0cm)、1974年制作。湘は山本弘の一人娘、この…

はみだしYouとPia

「はみだしYouとPia」というツイッターを書いている人がいる。昔発行されていた『Weeklyぴあ』にその名前のコラムがあった。その中から面白いと思ったものを選んで載せているらしい。私もそこに投書していたことがあるので見てみた。この雑誌は創刊半年後か…

ツルティム・ケサン、正木晃『増補 チベット密教』を読む

ツルティム・ケサン、正木晃『増補 チベット密教』(ちくま学芸文庫)を読む。本書裏表紙の惹句から、 インド仏教の本流を汲むチベット密教は、解脱への手段として、長らくタブー視されていた「性」まで取り込んだため、興味本位による憶測と恣意的な解釈が…

トキ・アートスペースの四塚祐子展を見る

東京渋谷区外苑前のトキ・アートスペースで四塚祐子展が開かれている(6月28日まで)。四塚は1970年京都生まれ、1990年に成安女子短大(現成安造形大学)日本画専攻を卒業し、その後フランスへ行って、2000年にヴェルサイユ美術学校を卒業している。2001年に…

『定本 黒田三郎詩集』を読む

『定本 黒田三郎詩集』(昭森社)を読む。600ページ余の厚い本に200篇ほどの詩が収録されている。黒田三郎は好きで読んできたが、こんなまとまったものを読むのは初めてだ。 まとめて読んで、やはり良いのは『ひとりの女に』として出版された詩集だ。奥さん…

片山杜秀『皇国史観』を読む

片山杜秀『皇国史観』(文春新書)を読む。皇国史観とは、日本の歴史を万世一系である天皇が君臨する神国の歴史として描く歴史観、と取りあえず『広辞苑』を引いて、さらに、明治以来近代日本の大きな枠組みを作り上げているもの、とする。その枠組みが「天…

幽草の句

先日曽根原幽草のあじさいの句を紹介したが、『合同句集 岳樺』(雲母長野句会発行)に載っているほかの句も紹介したい。発行は平成2年、1990年1月1日。 あぢさゐや南溟遠く沈みし船悲しみを頒つひとありさくらんぼ甚平やどこから見ても小さき耳さぎ草の揺る…

菊のアザミウマ

ベランダの鉢植えの野菊が少しおかしい。鉢土は濡れていて乾いていないのに、葉が内側にカールしている。葉の色も汚れたような感じだ。ルーペで見てみる。葉の表面にごく小さな黒っぽい粒々がびっしり付いている。 すぐに分った。これはアザミウマの幼虫(若…

羽黒洞の亀井三千代展「カルマフリー」を見る

東京湯島の羽黒洞で亀井三千代展「カルマフリー」が開かれている(6月28日まで)。亀井は1966年生まれ、慶應義塾大学文学部哲学科卒業。1996年より東京医科歯科大学・解剖学講座にて解剖学聴講、解剖図を描き始める(2004~2010専攻生 )。現在、墨、日本画…

祝田秀全『近代建築で読み解く日本』を読む

祝田秀全『近代建築で読み解く日本』(祥伝社新書)を読む。近代日本建築史のつもりで読み始めたら違っていた。タイトルを見れば、そう考えた私が間違っていた。建築を歴史の視点から見るという本だった。それはそれでなかなか興味深く読めた。 明治維新後、…

日本橋高島屋の美術展を見る

東京日本橋の日本橋高島屋S.C.本館6階美術画廊の天野裕夫彫刻展と同じく本館6階の美術画廊Xの長沢明展を見る。 天野は1954年岐阜県生まれ、1978年に多摩美術大学大学院彫刻科を修了している。天野はここ日本橋高島屋や椿近代画廊で何度も個展を繰り返してい…

紫陽花の句

紫陽花が咲いている。日本古来のガクアジサイに加えて、それがヨーロッパへ渡って改良され、西洋アジサイとかハイドランジアという名前で街のあちこちに青、ピンク、白などの花を咲かせている。 ここにアジサイの句を紹介する。 あ ぢ さ ゐ や 南 溟 遠 く …

山本弘生誕90年

昨日6月15日は山本弘の誕生日だった。生誕90年となる。 ・ 山本弘を偲んで、暮沢剛巳『現代美術のキーワード100』(ちくま新書)を手に取った。購入したのは11年前、しかしこれは一種の事典だから興味のあるところだけ拾い読みしてきた。今回初めて「アンフ…

Stepsギャラリーの「うのぜみ2020 ブレと滲みと不定形」を見る

東京銀座のStepsギャラリーで「うのぜみ2020 ブレと滲みと不定形」が開かれている。これは嵯峨美術大学で教えている宇野和幸が教え子を選んでここStepsギャラリーで「うのぜみ」展として毎年行っているものだ。今年は宇野のほか勝木有香と蘇理愛花が参加して…

佐藤正午『小説の読み書き』を読む

佐藤正午『小説の読み書き』(岩波新書)を読む。岩波書店のPR誌『図書』に2年間連載したもの。作家佐藤正午が著名な12冊の小説を取り上げて感想を書いている。これが面白い。作家らしく文体などのある種細部にこだわり、それを追求していく。 中勘助の『銀…

島泰三『ヒト、犬に会う』を読む

島泰三『ヒト、犬に会う』(講談社選書メチエ)を読む。副題が「言葉と論理の始原へ」で、タイトルとそぐわない。実は本書は言葉の発生を追求している。ヒトは犬との共生によって言葉を得たという驚くべき仮説を論証するのだ。 全体の20%を占める第1章が「…

JINENギャラリーの滝本優美展を見る

東京日本橋小伝馬町のJINENギャラリーで滝本優美展が開かれている(6月14日まで)。滝本は1992年、東京都生まれ、2016年に武蔵野美術大学造形学部油絵専攻を卒業し、2018年に同大学大学院造形研究科修士課程油絵コースを修了している。2016年にJINENギャラリ…

佐藤優の書評、冨山和彦著『コロナショック・サバイバル』が興味深い!

佐藤優が冨山和彦著『コロナショック・サバイバル』(文藝春秋)を毎日新聞に紹介している(6月6日)。それがとても興味深い。 冨山氏は、新型コロナウイルスがもたらす経済危機は3段階で到来すると予測する。第1波がローカルクライシスだ。〈出入国制限はも…

原美術館の森村泰昌展を見る

東京品川御殿山の原美術館で森村泰昌展が開かれている(7月12日まで)。コロナ禍でしばらく休館していたが、今日から再開した。 森村は「名画や映画の登場人物あるいは歴史上の人物に自らが扮するセルポートレイト作品で知られる」(ちらしより)、今回もマ…

山本弘の評価

山本弘に関して何人もの評論家や新聞雑誌記者が語ってくれたが、ダントツに優れていたのは針生一郎さんだったと思う。海外の新しい美術潮流や運動に関しては中原佑介や東野芳明の方が適任だったかもしれないが、絵画を見る眼は針生さんがダントツだった。 山…

戸田名草という画家

朝日新聞の「画壇・俳壇」のページに「うたをよむ」というコラムがある。今回(6月7日)は広渡敬雄が「森の豊かさ」という表題で書いている。広渡は宇田喜代子の句を紹介する。 雨あとの森を背負うて蝸牛 長野の俳人小林貴子は「宇田喜代子さん曰く」として…

松岡正剛『日本文化の核心』を読む

松岡正剛『日本文化の核心』(講談社現代新書)を読む。カバーに「松岡日本論」の集大成とある。いくつかの新聞の書評で絶賛されていたと思うが、その記事が見当たらない。 松岡は古代からの日本の文化を取り上げて、それを編集して松岡日本論を提出する。そ…

eitoeikoの「天覧美術」を見る

新宿区神楽坂のeitoeikoで「天覧美術」が開かれている(6月20日まで)。これがとても過激で興味深い。キュレーターは作家としても参加している岡本光博、そのプレスリリースを引用する。 KUNST ARZTでは、VvK(アーティスト・キュレーション)展覧会の27回…

ギャラリーOUT of PLACEの西川茂展を見る

東京秋葉原(外神田)のギャラリーOUT of PLACEで西川茂展が開かれている(6月7日まで)。西川は1977年岐阜県生まれ、近畿大学理工学部土木工学科を中退し、2002年に大阪芸術大学付属大阪美術専門学校芸術研究科絵画コースを修了している。2003年から大阪を…

数寄和の沓澤貴子展を見る

東京西荻窪の数寄和で沓澤貴子展が開かれている(6月6日まで)。急遽決まったものらしい。画廊主が選んだ旧作を展示している。 沓澤は1971年、静岡県生まれ、1996年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業し、1998年に同大学大学院油絵コースを修了してい…

東京ステーションギャラリーの神田日勝展を見る

東京ステーションギャラリーで神田日勝展が開かれている(6月28日まで)。コロナ自粛で休館していたが、今日から再開した。ただし3密を避けるために日時指定の前売り券が必要だ。私は今朝ネットで予約してローソンで入手した。 日勝は1937年東京の練馬で生…

藍画廊の日比野絵美展「landscape」を見る

東京銀座の藍画廊で日比野絵美展「landscape」が開かれている(6月6日まで)。日比野は1986年神奈川県生まれ、2009年に日本大学芸術学部美術学科版画コースを卒業し、2011年に同大学大学院芸術学研究科博士前期過程を修了している。2011年に藍画廊で初個展、…