東京京橋のギャラリーなつかで「View’s view 中嶋由絵・濱田富貴・吉永晴彦展」が開かれている(7月18日まで)。ここでは3人のうちの濱田富貴を紹介したい。濱田は1972年福岡県生まれ、2000年に武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コースを修了している。その後、カナダのアルバータ大学やアメリカのユタ州立大学で学び、2009年には文化庁からフィンランドに派遣されている。さらに2018年はノルウェーの北極圏に滞在して制作している。
今回濱田が用意した「制作こぼれ話」によると、半年前の健康診断で重度の鉄欠乏性貧血を指摘されたという。疲労しやすく集中力が続かないといったことに加えて、このコロナ禍で版画工房が閉鎖され、版画制作ができなくなってしまった。そんなこともあって、今回は墨のドローイング作品を展示している。
4点並んだうちの左端の1点が植物をモチーフにしているほかは、血液をモチーフにしているという。そのことについて、「制作こぼれ話」には次のように書かれている。
結果的に、今回の作品が少なからず血液に関係してくるのは至極当然の事だった。それだけ血液や貧血というものに対して注意を払う必要がある日々を過ごし、生活する上で大きな比重を占めていた。じわりと滲んで、ただとめどなく流れ出て、それを補うように生成された血液が身体中を巡って恢復していく。これらを繰り返す身体との対話が今展の制作において最も重要な軸となった。
中でも左から2番目の大きな作品がとても良かった。濱田の制作意図とは別に、それは流れる雫のようでもあり、有機的な生命のようでもある。つまり必ずしも血液のイメージに回収されない。いずれにしろ美しい作品だ。
濱田は現在は投薬治療によって血液数値は正常に近づいているという。画廊で会った限りでは、不調という感じは少しもなく、作品同様好調な印象だったが。
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View’s view 中嶋由絵・濱田富貴・吉永晴彦展
2020年6月29日(月)―7月18日(土)
11:00-18:30(土曜日17:00まで)日曜休廊
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ギャラリーなつか/Cross View Arts
東京都中央区京橋3-4-2 フォーチュンビル1F
電話03-6265-1889
http://gnatsuka.com/