2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

春風亭昇太師匠の思い出

春風亭昇太師匠が「笑点」の司会者を継ぐことになった。昇太師匠とは会ったこともないし高座を見たこともない。ただわずかばかりの接点があって、私にとって懐かしい。それは、昇太師匠が雑誌『Weeklyぴあ』の投稿欄「はみだしYOUとPIA」の選者をしていた期…

巷房で弓良麻由子展を見る

東京銀座のギャラリー、巷房で弓良麻由子展が開かれている(6月4日まで)。弓良は1984 年生まれ、日大芸術学部彫刻コースを卒業した後、2009年武蔵野美術大学大学院彫刻コースを修了している。ギャラリイKを始め、いくつかのギャラリーで何度も個展を開い…

三島由紀夫『作家論』を読む

三島由紀夫『作家論』(中公文庫)を読む。森鴎外、尾崎紅葉、泉鏡花、谷崎潤一郎、内田百�瑶、牧野信一、稲垣足穂、川端康成、尾崎一雄、外村繁、上林暁、林房雄、武田麟太郎、島木健作、円地文子の15人が取り上げられている。全体の3割を占める林房雄論を…

マホ クボタ ギャラリーの富田直樹展「郊外少年」を見る

東京渋谷のMAHO KUBOTAギャラリーで富田直樹展「郊外少年」が開かれている(6月11日まで)。富田は1983年茨城県生まれ、2012年に京都造形芸術大学美術工芸学科を卒業し、2015年東京藝術大学 大学院美術研究科修士課程油画専攻を修了している。同年東京オペ…

東京高円寺にあるChim↑Pomが運営するアーチスト ラン スペース Garterへ行ってみた

東京高円寺にあるアーチスト ラン スペース Garterへ行ってみた。ここは美術家集団Chim↑Pomが運営するギャラリー空間で、現在涌井智仁展「Long, Long, Long」が開かれている(6月5日まで)。 住所を書いたメモを見ながらGarterを探す。私はスマホを持ってな…

吉村武彦『蘇我氏の古代』を読んで

吉村武彦『蘇我氏の古代』(岩波新書)を読む。蘇我氏が歴史に登場するのが蘇我稲目からで、宣化天皇の時代になる。大臣に就任している。宣化は継体の子にあたり、次の天皇が欽明になる。稲目は娘を欽明の妃にし、天皇の外戚の地位にあって、政治的影響力を…

野見山暁治『でんでんむしのかなしみ』を読んで

野見山暁治・絵『でんでんむしのかなしみ』(星の環会)を読んだ(見た?)。新美南吉絵童話集と題された絵本で、野見山が絵を描いている。小学校中学年〜中学生向けとある。冒頭数ページの文章を紹介する。 いっぴきの でんでんむしが ありました。 ・ ある…

ギャラリーなつかの豊泉綾乃のドローイングが良い

東京京橋のギャラリーなつかで、「そこからの景色」と題した豊泉綾乃と西山ひろみの2人展が開かれている(6月4日まで)。ここでは豊泉を紹介したい。豊泉は1981年埼玉県生まれ、武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コースを修了している。2014年…

東京国立近代美術館の安田靫彦展を見て

東京国立近代美術館で安田靫彦展が開かれた(5月15日まで)。私は最終日の2日前に見に行った。さすが入場者は多かった。安田靫彦展ちらしのテキストから、 《飛鳥の春の額田王》、《黄瀬川陣》など、歴史上の人物や場面を描いた名作の数々で知られる日本画家…

府中市美術館の若林奮の彫刻作品《地下のデイジー》

府中市美術館の前庭に鉄の彫刻作品が設置されている。そばに金属のプレートが付随していて、そこに下記のように書かれている。 地下のデイジー 若林奮 DAISY UNDERGROUND WAKABAYASHI ISAMU 2002(平成14)年 鉄 120×120×312.5cm 「デイジーDaisy」とは「ひ…

伊東光晴『ガルブレイス』を読む

伊東光晴『ガルブレイス』(岩波新書)を読む。副題が「アメリカ資本主義との格闘」。普段ほとんど経済に関する本を読まないのに、読売新聞の書評(2016年4月24日)で政治学者の牧原出が推薦していたので手に取った。その書評から、 『ゆたかな社会』『新し…

ギャラリー砂翁の及川伸一展「consistency」を見る

東京日本橋三越前のギャラリー砂翁で及川伸一展「consistency」が開かれている(5月27日まで)。及川は1949年東京生まれ。1980年から1992年まで独立美術に出品していたが、1992年からは個展を主な発表の場所としている。これまでギャラリー汲美、ギャラリー…

山森菜々恵個展「しばらくすると動く」を見る

東京京橋のギャルリー東京ユマニテbisで山森菜々恵個展「しばらくすると動く」が開かれている(5月21日まで)。山森は1991年石川県生まれ、2013年に金沢美術工芸大学工芸科 漆・木工コースを卒業し、現在同大学大学院博士課程後期課程在籍中。今回が初個展…

『不屈に生きるための文学講義』を読んで

大岡玲『不屈に生きるための文学講義』(ベスト新書)を読む。カバー袖の惹句から、 ビョーキなほど本の「偏愛者」である作家、大岡玲が体当たりで描く「名作文学のトリセツ(取扱説明書)全25講。 最初に『少年ジャンプ』と『ONE PIECE(ワンピース)』から…

街で見かけた怪しいポスター

街で怪しいポスターを見かけた。1枚目はJR総武線浅草橋駅近くの駐車場の片隅、自販機の裏に貼られていた。 男性募集 超リッチ女性の日常サポート ドライブからお食事・旅行同伴・趣味のお付き合い・悩み事の相談から 引っ越し・日曜大工など、生活全般の雑…

川口晴美『Tiger is here.』を読んで

川口晴美『Tiger is here.』(思潮社)を読む。昨年7月に発行された川口の新しい詩集。巻末の著作一覧を見れば、1985年発行の『水姫』(書肆山)から数えて、本書が12冊めの詩集だ。「現代詩文庫」からも2012年に『川口晴美詩集』が発行されている。すると私…

『がん哲学外来へようこそ』を読む

樋野興夫『がん哲学外来へようこそ』(新潮新書)を読む。中村桂子が毎日新聞で紹介していた(2016年5月8日)。アスベストが原因で起きる中皮腫や肺癌などが問題になったとき、樋野は中皮腫の外来がないことに気づく。そこで「アスベスト・中皮腫外来」を順…

吉増剛造『我が詩的自伝』を読む

吉増剛造『我が詩的自伝』(講談社現代新書)を読む。詩人吉増剛造が編集者相手に語った自伝を書き起こしたもの。とは言っても話し言葉は重複があるから、起こした原稿を相当編集はされているのだろう。ただ基本は語った言葉を原稿にしているような体裁を採…

『プラットフォーム』を読む

ミシェル・ウエルベック『プラットフォーム』(河出文庫)を読む。奇妙な小説。表4(裏ページ)の惹句から、 「なぜ人生に熱くなれないのだろう?」――圧倒的な虚無を抱えた「僕」は、父の死をきっかけに参加したタイへのツアーで出会った女性と恋におちる。…

ギャルリ・プスの大坪美穂展−−沈黙の庭−−を見る

東京銀座のギャルリ・プスで大坪美穂展−−沈黙の庭−−が開かれている(5月14日まで)。大坪は1968年に武蔵野美術大学油絵科を卒業している。今まで銀座のシロタ画廊やギャルリ・プスなど各地で個展を開いていて、韓国やインドのグループ展にも参加している。…

朝日歌壇・朝日俳壇を読んで

朝日歌壇を読んでいると「おっさまと呼んで親しき…」という表現が目に入った(朝日新聞2016年5月9日)。もしやと思って投稿者を見ると飯田市・草田礼子となっている。やはり故郷の人だった。あの辺りでは和尚様のことをおっさまと呼ぶ。 おっさまと呼んで親…

『マーラーを語る』が面白かった

ヴォルフガング・シャウフラー 編『マーラーを語る』(音楽之友社)が期待以上に面白かった。副題が「名指揮者29人へのインタビュー」で、この副題が本書を十全に語っている。指揮者はアルファベット順に並んでいる。アバド、バレンボイム、ブーレーズ、ハイ…

東京都現代美術館の「キセイノセイキ」を見る

東京都現代美術館の「MOTアニュアル2016 キセイノセイキ」を見る。例年行われている若手作家を取り上げた企画展だ。今回が14回目だというが、いつもと少し違った感じがした。ちらしによると、芸術表現の環境の向上を目指して実験的な取り組みを展開するアー…

ヨシダ ナギ写真集『SURI COLLECTION』を見る

ヨシダ ナギ写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)を見る。1986年生まれのヨシダがアフリカのエチオピア南西部に暮らすスリ族を単身訪ねて撮った写真集。「撮影後記」から、 スリ族が住むエリアは交通インフラが整っていない辺境の地で、首都のアディスア…

シロアリのスウォームを撮りに行く

今日5月5日、東京銀座へヤマトシロアリのスウォーム(結婚飛行)を撮りに行く。ヤマトシロアリは東京都心では例年5月の連休前後にスウォームを行っている。時間は午前10時ころから1時間弱。1年間に1度だけ、正確な発生日時は分からない。ただ前日に雨…

合掌の法則

私が「合掌の法則」と名づけた考え方がある。ここに4点の写真を並べた。いずれも合掌の形をしている。 最初の写真は正しい合掌の形だ。両方の掌を合わせている。左手が右手に重なって見えづらいが、間違いなく重なっている。 2番目の写真は間違った合掌だ…

『世界の名前』を読んで

岩波書店辞典編集部 編『世界の名前』(岩波新書)を読む。これはちょっと変わった本だ。世界各国、各地域の人の名前の付け方をまとめたもの。小項目主義で編纂された事典のように、世界100の地域の命名法が100人の専門家によって執筆されている。これを読む…

『作家の履歴書』を読む

『作家の履歴書』(角川文庫)を読む。副題が「21人の人気作家が語るプロになるための方法」で、この副題は多少羊頭狗肉のきらいがある。阿川佐和子から夢枕獏まで50音順に21人の作家が並んでいる。最初のページに大きく名前だけが置かれており、次のページ…

『米原万里ベストエッセイII』を読む

先日の『米原万里ベストエッセイI』に続けて、『米原万里ベストエッセイII』(角川文庫)を読む。Iほどではないが、IIもやはり面白い。 米原は優れたロシア語の同時通訳者だった。では凡庸な同時通訳はどんなことを訳しているのか。旧ソ連のコーカサスあたり…