2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ギャラリー檜の森岡純写真展が興味深い

東京京橋のギャラリー檜プラスで森岡純写真展が開かれている(5月3日まで)。森岡は1949年島根県隠岐島生まれ、もう20年以上ギャラリー檜で個展を続けている。 森岡はいつも日常的な風景を撮っている。人物が登場することはない。街の一角や道路、看板や建…

長谷川利行の大作「水泳場」の行方

東京日本橋の不忍画廊で「池田満寿夫と、斎藤真一と、長谷川利行」展が開かれている(5月2日まで)。いずれも不忍画廊取り扱いの作家たちだ。ある意味この画廊の看板作家たちだ。今回も見応えのある作品が並んでいる。 その中でもひときわ目を引くのが長谷…

岡田斗司夫『オタクの息子に悩んでます』を読む

岡田斗司夫『オタクの息子に悩んでます』(幻冬舎新書)を読む。これは朝日新聞に連載している人生相談「悩みのるつぼ」から岡田が担当した分をまとめたものだ。とは言ってもただまとめたのではなく、朝日新聞の編集部から渡された相談の手紙に対してどう答…

筒井康隆『創作の極意と掟』を読んで

筒井康隆『創作の極意と掟』(講談社)を読んだ。「序言」に執筆の意図が書かれている。 この文章は謂わば筆者の、作家としての遺言である。その対象とするのはプロの作家になろうとしている人、そしてプロの作家すべてだ。プロの作家に何かを教えようなどと…

森美術館のアンディ・ウォーホル展「永遠の15分」を見て

森美術館でアンディ・ウォーホル展「永遠の15分」が開かれている(5月6日まで)。パンフレットに「ミスター・ポップ・アート。国内史上最大の回顧展」と謳われている。さらに「アンディ・ウォーホルの初期から晩年までを総覧する約400点が出品!」とある。…

群ようこの猫のエッセイ2冊を読む

群ようこの猫に関するエッセイ、『トラちゃん』(集英社文庫)と『ネコの住所録』(文春文庫)を読む。前者は副題が「猫とネズミと金魚と小鳥と犬のお話」とあり、群が子どもの頃から成人するまでに飼った様々な動物に関するエピソードを綴っている。後者も…

『世紀の贋作画商』を読む

七尾和晃『世紀の贋作画商』(草思社文庫)を読む。副題が「"銀座の怪人"と三越事件、松本清張、そしてFBI」という大きな名前の列挙。それが誇大広告ではなかった。裏表紙の惹句から、 9.11テロの関連捜査をしていたFBIがニューヨークで捕らえたユダヤ人画商…

恒例なびす画廊の瀧田亜子展を見る

東京銀座のなびす画廊で瀧田亜子展が開かれている(4月26日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。なびす画廊での個展は昨年の11月に続いて今回で16回目になる。最近は春秋と年に2回も個展を行っている。その作品は紙に顔料で描いている。 瀧田は昔から書を学…

ギャラリーeitoeikoの「在日・現在・美術」を見る

神楽坂のギャラリーeitoeikoで「在日・現在・美術」が開かれている(5月17日まで)。本展は鄭裕憬(チョン・ユギョン、1991年兵庫県生まれ)を中心とした在日コリアン三世の作家5名による構成になっている。画廊主の書いたテキストを引用する。 日本で生ま…

再び、日本語のピジンイングリッシュ化を危惧する

白井恭弘『ことばの力学』(岩波新書)に、渋谷の街で英語の広告を見かけた話が紹介されている。 先日、渋谷の街を歩いていたら、目の前に巨大な広告塔があり、すべて英語でコンサートを宣伝していました。外国のアーティストかなと思って近づいて行ったら、…

中沢新一の見た夢の分析

中沢新一『ミクロコスモス I』(中公文庫)に中沢新一が見た夢のことが書かれている。その「芸術人類学研究所を開く」という多摩美術大学で行った芸術人類学研究所の開会式の挨拶を収録したところにそれが紹介されている。 ぼくは奇妙なことに、子供のころか…

佐高信『戦後を読む』を読む

佐高信『戦後を読む』(岩波新書)を読む。副題が「50冊のフィクション」というもの。すべて日本の小説で、小説を素材に戦後社会を論じている。ただ、これが出版されたのが1995年で、ほぼ20年前になる。発行直後に読み、今回久し振りに読み直した。 やはり20…

ギャラリイKの福井拓洋展「CLOUD 9」に驚かされる

東京京橋のギャラリイKで福井拓洋展「CLOUD 9」が開かれている(4月26日まで)。福井は1986年静岡県生まれ、2010年に多摩美術大学彫刻学科を卒業し、2012年に同大学大学院美術研究科博士前期課程を修了している。 2011年にギャラリイKで「多摩美術大学大学…

林典子『人間の尊厳』を読む

林典子『人間の尊厳』(岩波新書)を読む。標題の前にフォト・ドキュメンタリーと付されている。林は報道カメラマンだ。1983年生まれ、大学在学中の2006年、アフリカのガンビア共和国の新聞社で写真を撮り始める。その5年後早くも名取洋之助写真賞受賞、201…

84歳になる上田泰江展が見事だ

東京京橋のK'sギャラリーで上田泰江展が開かれている(4月19日まで)。上田は1930年、京都生まれ。今も京都に在住していて、今年84歳になった。この高齢でこの瑞々しさは何なんだろう。 上田は1990年代に新宿の杏美画廊で個展を続けてきた。杏美画廊が閉じ…

4月の花・その2

4月の花々が咲きほこっている。小さくても植物園だから珍しい花々が多い。 シラユキゲシ(ケシ科、原産地中国)白雪芥子 ニリンソウ(キンポウゲ科)二輪草 ハナニラ(ユリ科、アルゼンチン原産)花韮 ミヤマオダマキ(キンポウゲ科)深山苧環 イカリソウ(…

『リヒテルは語る』を読む

ユーリー・ボリソフ/宮澤淳一 訳『リヒテルは語る』(ちくま学芸文庫)を読む。スヴャトスラフ・リヒテルはロシアのピアニスト。リヒテルとの対話をボリソフが記録したもの。ほとんどテープに録音したかのような自然な会話だが、すべて後日ボリソフが書き留…

山本弘の作品解説(42)「ほこら(仮題)」

山本弘「ほこら(仮題)」油彩、F6号(41.0cm×31.8cm) 1977年制作。画面中央に小さな家が描かれている。家というには小さくて、小屋みたいだ。いや、もっと小さいのかもしれない。寂れた街道脇に古くから置かれている忘れられた小祠のようだ。その周囲を緑…

半藤一利『隅田川の向う側』を読む

半藤一利『隅田川の向う側』(ちくま文庫)を読む。先に読んだ半藤一利との対談で宮崎駿が、半藤の著作の中で一番愛読していると語っていたので。半藤は『文藝春秋』編集長のころ、毎年年賀状代わりに豆本を作り送っていたという。その昭和57年『隅田川の向…

ギャラリー・ジーの染谷レイコ展「passed portraits」を見る

東京北青山のギャラリー ジーで染谷レイコ写真展「passed portraits」が開かれている(4月27日まで)。染谷は1980年、埼玉県生まれ、このギャラリー ジーで10回以上の個展をしている。 染谷はいつも渋谷や表参道などで若い女性に声をかけて彼女たちのポート…

Steps Galleryのミラン・トゥーツォヴィッチ展がとても良い

東京銀座のSteps Galleryでミラン・トゥーツォヴィッチ展が開かれている(4月19日まで)。ミラン・トゥーツォヴィッチ Milan Tucovicは1965年セルビアのゴロビリェ(ボジュガ市)生まれ、1991年にベオグラード芸術大学応用美術学部彫刻科を卒業している。 …

岡田斗司夫が教える男の見分け方

朝日新聞の連載コラム「悩みのるつぼ」で岡田斗司夫が大人の見分け方を教えている(4月5日)。これがとても説得力がある。 相談者は14歳の女子中学生で、塾の大学生の7歳年上の先生が好きになった、先生が塾を辞めてしまうので、その前に告白したほうがい…

山本弘の作品解説(41)「せまい家」

山本弘「せまい家」油彩、F10号(53.0cm×45.5cm) 1969年制作。当時、山本弘39歳、妻と二人で「せまい家」に住んでいた。長野県飯田市の郊外上郷村で、蜂谷さんという大家の離れを借りていたが、本当に6畳一間だけ、形ばかりの小さな台所とトイレがあるアパ…

カワセミの営巣と御衣黄開花、その他の花

朝日新聞に「再生の川〈飛ぶ宝石(カワセミ)〉戻る」という記事が載った(2014年4月5日 東京川の手版)。旧中川の人工の小島にカワセミが初めて巣作りをしているという。早速見に行ってきた。 河原に10人近くの人が集まっていた。みな望遠レンズのついた…

小山内龍『昆虫放談』を読む

小山内龍『昆虫放談』(築地書店)を読む。北杜夫が若い頃愛読していたと知って読んでみた。本書は初版が昭和16年6月に大和書房から発行され、ついで戦後の昭和23年に組合書店から発行された。そして書名を『昆虫日記』と変えてオリオン社から昭和38年に、…

塩田明彦『映画術』がすばらしい

塩田明彦『映画術』(イースト・プレス)を読む。副題が「その演出がなぜ心をつかむのか」といい、2012年の春から秋にかけて映画監督の塩田が映画美学校アクターズ・コース在校生に向けて行った連続講義を採録したもの。そうすると、俳優向けの講義と思われ…

後藤明生『小説−−いかに読み、いかに書くか』を読む

後藤明生『小説−−いかに読み、いかに書くか』(講談社現代新書)を読む。30年ほど前に発行されたやや古い本。後藤は当時早稲田大学文学部文芸科で非常勤講師を1年間つとめ、その後NHK文化センターの講座を長く担当した。そのNHK文化講座で話したことをカセ…

幸田文『北愁』を読む

幸田文『北愁』(講談社文芸文庫)を読む。群ようこの解説に、「お孫さんの青木奈緒さんによると、〈祖母が書いた女性の中で、もっとも幸田文本人に近い主人公〉とのことである」と書かれている。 文章を書く仕事をしている父親は、主人公である娘のあそぎの…

『半藤一利と宮崎駿の腰抜け愛国談義』を読む

『半藤一利と宮崎駿の腰抜け愛国談義』(文春ジブリ文庫)を読む。気持ちの良い読書だった。こんな嫌な世に少し元気をもらった気がする。 宮崎駿が誰かと対談をと言われて指名したのが半藤一利だった。半藤は『となりのトトロ』と『紅の豚』しか見ていないと…

山本弘のドローイング「風景」

山本弘のドローイング「風景」、制作年不詳。天地400mm、左右305mm。手前に1本の木が立っており、その後ろに1軒の家がある。家は右手に傾いているようにも見えるが、単に造形的に歪められているのかもしれない。木の枝は強風によって右手に吹き寄せられて…