長谷川利行の大作「水泳場」の行方


 東京日本橋の不忍画廊で「池田満寿夫と、斎藤真一と、長谷川利行」展が開かれている(5月2日まで)。いずれも不忍画廊取り扱いの作家たちだ。ある意味この画廊の看板作家たちだ。今回も見応えのある作品が並んでいる。

 その中でもひときわ目を引くのが長谷川利行の大作「水泳場」だ。1932年作でF50(天地90.9cm、左右116.7cm)という大きな作品だ。聞けば不忍画廊の所蔵品だという。壁面に新聞のコピーが貼られている。2006年7月13日付けの日本経済新聞だ。

 放浪の画家として知られる長谷川利行の油彩画「水泳場」が兵庫県内で見つかった。1932年(昭和7年)の二科展出品作として存在は知られていたものの、所在がわからなかった横幅1.2mの力作だ。数十年間ある家の壁にあったこの絵を見いだし、行方不明作と同定した不忍画廊(東京)の荒井一章社長は「所有者の父親が二科会の会員だった時期に、画家本人から譲り受けたのではないか」と推測する。
 描かれているのは、関東大震災後の復興事業の一環として31年に作られた隅田公園の水泳場と見られる。(中略)
 30年代後半以降、長谷川は風景画の画面から人物の存在感を消し、都会の孤独感が画面を占めるようになる。人が多く描かれ、明るくにぎやかな雰囲気を伝えるこの作品について、京都市美術館学芸課長の尾崎真人氏は「長谷川の画面から人の声が聞こえてくる最後の作品」と評している。

 長谷川の大作は多く美術館に収まっているという。そう言う意味では巷間に残された貴重な作品だ。これだけの作品こそ公立美術館に収蔵されるべきではないだろうか。東京国立近代美術館の常設で見られれば、それが一番好ましいだろう。または、現在建設中と聞く豊島区立美術館も候補になるのではないか。同美術館は収蔵の目玉が池袋モンパルナスの画家たちだという。しかし、それらの画家の代表作の多くがすでに板橋区立美術館練馬区美術館に収まってしまっている。豊島区は少々遅れてしまったようだ。だから長谷川の大作を入手するのは優れた選択であると思われる。
 長谷川利行の優れた代表作がそれに相応しい場所に収まることを期待したい。
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池田満寿夫と、斎藤真一と、長谷川利行」展
2014年4月14日(月)〜5月2日(金)
11:00−18:30(日曜・祝日休廊)
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不忍画廊
東京都中央区日本橋3-8-6 第二中央ビル4F
電話03-3271-3810
http://www.shinobazu.com
日本橋高島屋南出口前、1階にカフェ「げるぼあ」のあるビルの4階
以前の東京駅八重洲口前のビルから移転しているので注意