2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

高山登展をめぐる娘との会話

朝日新聞に高山登展の展評が載っていた(2010年2月25日夕刊)。宮城県立美術館で開かれているという。高山登の、線路の枕木をあまり加工しないで組み合わせて展示したギャラリーでの個展を何度も見ているが、よく分からない作家だと思っていた。でも田中三…

青柳いづみこ「翼のはえた指」−−弟子の書いた優れた評伝

青柳いづみこ「翼のはえた指」(白水社)は副題を「評伝 安川加壽子」という。著者青柳の師であるピアニストの評伝だ。1922年生まれの安川は、外交官だった父親について1歳少しで渡仏し、10歳でパリ音楽院に学び優秀な成績を収めたが、欧州大戦勃発直前に17…

平凡な顔に完璧な肉体美が強く魅惑する?

立花隆・佐藤優「ぼくらの脳の鍛え方」(文春新書)に「立花隆選・セックスの神秘を探る10冊」という章がある。そこに本橋信宏「何が彼女をそうさせたか」(バジリコ)が推薦されている。 本橋信宏「何が彼女をそうさせたか」(バジリコ)は、ある三業地で、…

ぎゃらりぃ朋の松本文香の初個展が良い

銀座1丁目のぎゃらりぃ朋で松本文香展が開かれている(27日まで)。松本は昨年多摩美術大学を卒業した若い作家で今回が初個展だ。 大きな作品は藤田嗣治を思わせる。繊細な線が印象的だ。 小品の少女像は2点とも石膏と岩絵の具を使って描いている。 この不…

クレオール語の例

クレオール語とはWikipediaによれば、 クレオール言語(クレオールげんご)とは、意思疎通ができない異なる言語の商人らなどの間で自然に作り上げられた言語(ピジン言語)が、その話者達の子供によって母語として話されるようになった言語を指す。公用語や…

一番難しい言語

私の好きな言語学者千野栄一の「ことばの樹海」(青土社)に「一番難しい言語」と題された章がある。そこにアメリカの外交官を対象とした語学の特訓施設に「外国語研修所」というアメリカ国務省付属機関があると紹介されている。そこではアメリカ人が学ぶ場…

鈴木敏夫が選ぶ加藤周一の3冊

毎日新聞の書評欄に「この人・この3冊」というコラムがある。2月21日はジブリの鈴木敏夫が加藤周一のベスト3冊を選んでいる。 1.日本文学史序説 上・下(ちくま学芸文庫) 2.日本その心とかたち(徳間書店) 3.日本文化における時間と空間(岩波書…

新宮さやかの陶の作品が興味深い

東京京橋のINAXガレリアセラミカで行われている新宮さやかの陶の作品の個展がとても興味深いものだ。新宮は1979年大阪生まれ。大阪芸大陶芸コースを卒業した後、滋賀県立陶芸の森創作研修館で学んでいる。関西では何度も個展を開いてきたようだが東京では初…

鷲田清一「ちぐはぐな身体」

鷲田清一「ちぐはぐな身体」(ちくま文庫)を読書中。鷲田の前著「モードの迷宮」(ちくま学芸文庫)は彼が初めて「マリ・クレール」という一般雑誌に連載した論文だったので、必要以上にハイブローで難しかったが、本書は最初「ちくまプリマブックス」とい…

青柳いづみこ「ピアニストが見たピアニスト」

青柳いづみこ「ピアニストが見たピアニスト」(中公文庫)がとても面白い。世界的なピアニストの評伝で、6人のピアニストが取り上げられている。リヒテル、ミケランジェリ、アルゲリッチ、フランソワ、バルビゼ、ハイドシェックだ。 青柳は時々リサイタルも…

山本弘の作品解説(33)「題不詳(土蔵)」

山本弘「題不詳(土蔵)」油彩、F4号(33cm×24cm) 池田憲寿コレクションの一つ。制作年不明。右下に「Hirossi」のサインがあり、画風からみて先に紹介した(雪景色)同様60年代後半の作品だろう。晩年には「弘」また時に「ヒロシ」と署名していたから。 近…

石黒浩「ロボットとは何か」

石黒浩「ロボットとは何か」(講談社現代新書)を読む。石黒は、著者紹介によれば「知能ロボットと知覚情報基盤の研究開発を行い、次世代の情報・ロボット基盤の実現をめざす。人間酷似型ロボット研究の第一人者。自身をモデルにした遠隔操作型アンドロイド…

内田春菊「あたしのこと憶えてる?」の解説から

内田春菊の短篇集「あたしのこと憶えてる?」(中公文庫)の解説を漫画家の瀧波ユカリが書いている。 本書の登場人物たちが行うセックスは、一部の例外を除けばべつだん過激でもアブノーマルでもない、愛撫と挿入のベーシックなものがほとんどです。なのに、…

長嶺ヤス子の飼う153匹の猫

舞踏家 長嶺ヤス子へのインタビューが朝日新聞で連載されていた。その最終回から。(2010年2月12日夕刊) 私が踊る意味は「命」にあります。公演は赤字なんです。4月に東京・新宿や調布などで公演をしますが、スペインから9人も踊り手や歌手、演奏者が来…

杉原民子のドローイング

杉原民子のドローイングが好きだ。特にこのDMハガキの作品が気に入っている。猫を描いていると思っていた。杉原に聞くと狼だという。なるほど、猫にしては顔が長い。猫と狼と区別がつかないこの絵がいいのですか? そう聞かれたら、なぜか分からないけどとて…

東野圭吾「パラドックス13」を読んで

東野圭吾の「パラドックス13」(毎日新聞社)を読んだ。474ページの単行本を2日間で読み終えたのはその文体が軽いからだ。2日間終日読んでいたわけではなく、最初の日は東京都現代美術館を見たあと銀座の画廊20数軒を回ったし、2日目は勤めに行っていた。…

山本弘の作品解説(32)「風景」

山本弘「風景」油彩、SM(サムホール)(22.7cm×15.8cm) 池田憲寿コレクションの一つ。制作年1974年。山本44歳の晩年の作。大きさに注目してほしい。サムホール:23センチ×16センチという小ささだ。風景と題されているが、まぎれもなく飯田の風越山を描いて…

作曲家の二つのタイプ

現代音楽の作曲家として高い評価を得ている吉松隆は慶應義塾大学の工学部に学んだ経歴を持ち、作曲は独学で学んでいる。その吉松の『クラシック音楽は「ミステリー」である』(講談社+α新書)に作曲家を二つのタイプに分けた章がある。 まず生まれながらの…

山本弘の作品解説(31)題不詳(雪景色)

山本弘「題不詳(雪景色)」板に油彩、F4号(33cm×24cm) 池田憲寿コレクションの一つ。制作年不明。冬の雪景色、白が美しい。右手から雪の積もった坂道が左手へ下りてきているように見えるが、左手に橋が見えることからすると、道に見えるのは川なのだろう…

山本弘のデッサン「自画像」2点

山本弘の自画像の鉛筆デッサン2点。これも一昨日紹介した池田憲寿コレクションのもの。どちらも1960年6月に描かれた。当時山本弘30歳、まだ結婚前で、脳血栓を患う前、手足が自由だったころの作品だ。私は37歳以降の山本しか知らないが、これはまぎれもなく…

「孫の力」という本

島泰三の「孫の力」(中公新書)がなかなか面白い。机の上に置いておいた本書の題名を見て、娘がソフトバンクの社長の話かと思ったという。いや違うんだ。これは猿学者による自分の孫の成長の生態観察記なのだ。副題が「−誰もしたことのない観察の記録」とあ…

山本弘の作品解説(30)「山合い」

山本弘「山合い」油彩、F4号(33cm×24cm) 1976年、46歳の時の制作。小品だがとても美しい。「山合い」は「山間」の意味か。山本は時々当て字を書いた。 この作品は飯田市の公民館長をされていた池田憲寿さんのコレクションだったもの。池田さんはデッサン…

千野栄一の「外国語上達法」がすばらしい

千野栄一「外国語上達法」(岩波新書)がすばらしい。名著と言っていいのではないか。1986年に初版が出て昨年暮れまでの23年間に38刷りを発行している。著者は外国語にコンプレックスを持っていたと書きながら、語学が不得意だと言いながら、 考えてみると、…

アメリカの影

アメリカでトヨタ車のリコールが問題になっている。マットによるアクセルペダルが戻らない問題、プリウスのブレーキが効かないとされる問題。それに対して微かにアメリカの陰謀だという噂も聞こえてくる。普天間基地の問題で日本政府がアメリカの要望を無視…

みゆき画廊の酒匂譲展

銀座5丁目のみゆき画廊で酒匂譲展が開かれている(6日まで)。 2ヵ月前まで癌が再発して入院していたという。それでこれらの作品をたった2ヵ月で仕上げたらしい。抗癌剤の影響で立っているとまだふらふらすると言われながら、元気そうに話された。 ご覧…

山本弘の作品解説(29)デッサン2点「鳥」と「自画像」

山本弘のデッサン2点。「鳥」と「自画像」。鳥は1966年、自画像は1970年に描かれた模様。いずれも一時期所属し、後に除名された飯田市リアリズム美術家集団の機関誌「リア美」に掲載された。 この頃すでに山本は脳血栓を患ったあとで、手足も口も不自由だっ…

山本弘作品解説(28)「一軒家」

山本弘「一軒家」油彩、F6号(41cm×31.8cm) 1976年制作、おそらくこの年の飯田市勤労福祉センターでの個展で発表された。後に飯田市の友人たちが編集した遺作画集にも収められた。 小さな作品だが見ていて飽きない。小さな家に続く1本の道が描かれている…

「背中の記憶」の巧さに舌を巻く

長島有里枝「背中の記憶」(講談社)を読む。何か新聞の書評でほめていたので図書館にリクエストしたのだろう。借りられたのはそれから一月ほど経っていたので、どんな風にほめられていたのか忘れていた。長島有里枝は蜷川実花やhiromixと一緒に若手女性写真…