2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

丸谷才一『猫だつて夢を見る』を読む

丸谷才一『猫だつて夢を見る』(文春文庫)を読む。丸谷才一の博識を楽しむ。 1975年の統計で韓国人一人あたりの平均1日の唐辛子消費量は5グラムから6グラム。ところが日本人の消費量は一人年間1グラム。これぢやあ、はつきりと文化が違ふ。韓国系日本人…

日本経済新聞社編『私の履歴書 経済人35』を読む

日本経済新聞社編『私の履歴書 経済人35』(日本経済新聞社)を読む。日経に長く連載されている「私の履歴書」から経済人5人を編集している。ロイヤルホストの創業者江頭匡一、ディズニーランドの実質的創立者高橋政知、ウシオ電機の牛尾治朗、近畿日本鉄道…

山本弘の作品解説(104)「日々酔如泥」

山本弘「日々酔如泥」、油彩、M10号 昭和46年(1971年)制作。山本弘41歳。文字通り酒におぼれている自分自身を戯画化して描いている。本作は飯田市美術博物館所蔵となっている。しかし所蔵されている作品と少し違うところがある。所蔵されているものには左…

坪内稔典『俳句いまむかし』を読む

坪内稔典『俳句いまむかし』(毎日新聞出版)を読む。毎日新聞に連載している「季語刻々」から編集したもの。季語刻々は一つの季語について、今と昔の句を挙げ、坪内の感想をなにか書くというスタイルで続いてきた。 佐保姫の春立ちながら尿(しと)をして …

読売新聞読書委員が選ぶ「2021年の3冊」から

読売新聞年末恒例の読書委員20人の「2021年の3冊」が発表された(12月26日)。そこから、気になったものを拾ってみた。 橋本倫史推薦 岸政彦編『東京の生活史』(筑摩書房、4620円) 150人の聞き手が、150人の生活史を静かに聞き取った1216頁の大著。年末年…

朝日新聞書評委員の「今年の3点」から

朝日新聞年末恒例の書評委員19人の「今年の3点」が発表された(12月25日)。そこから、気になったものを拾ってみた。 犬塚元推薦 『批評の教室 チョウのように読み、ハチのように書く』(北村紗衣著、ちくま新書・902円) 本書は、どんな種類であれテクスト…

オペラ『パリアッチ(道化師)』を見る

24日は日経ホールでオペラ『パリアッチ(道化師)』を見た。レオンカヴァッロ作曲の二幕オペラ、日経ホールで1回限りの舞台だった。ちらしには、「妻ネッダの不貞を知ったカニオ(パリアッチョ)は、怒りと悲しみを隠し、道化芝居の舞台に立つが、次第に芝居…

スタニスワフ・レム『地球の平和』新発売!

SF

スタニスワフ・レム『地球の平和』(国書刊行会)が発売された。スタニスワフ・レム・コレクション第2期第2回配本。出版社によるその内容紹介、 自動機械の自立性向上に特化された近未来の軍事的進歩は、効果的かつ高価になり、その状況を解決する方法とし…

滝川留未子『画家 滝川太郎』を読む

滝川留未子『画家 滝川太郎』(遊人工房)を読む。滝川留未子は滝川太郎の息子の嫁にあたる。その滝川太郎は最も有名な西洋絵画の贋作者。嫁である留未子が太郎の汚名をそそごうと本書を書いた。 留未子は太郎の手記など引用して、太郎は贋作に関わっていな…

ポーラ ミュージアム アネックスの横溝美由紀展を見る

東京銀座のポーラ ミュージアム アネックスで横溝美由紀展「Landscape」が開かれている(1月30日まで)。横溝は1968年東京都生まれ、多摩美術大学彫刻科卒業。文化庁派遣芸術家海外研修員。主な展示に、水戸芸術館、埼玉県立近代美術館、東京都現代美術館、…

銀座中央ギャラリーの善養寺歩由・みょうじなまえ2人展を見る

東京銀座の銀座中央ギャラリーで善養寺歩由・みょうじなまえ2人展が開かれている(12月26日まで)。善養寺は1999年東京都生まれ、2019年東京藝術大学デザイン科に入学し在学中。みょうじは2019年度東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業。2020年TAKU SOM…

毎日新聞の「今年の3冊」から

年末恒例の毎日新聞「今年の3冊」が発表された(12月11日と18日)。これは毎日新聞の書評執筆者36人が今年刊行された書籍から各3冊を挙げている。その中から気になったものを拾ってみた。 村上一郎推選 『ヒトラー 虚像の独裁者』芝健介著(岩波新書) 本書…

吉増剛造『詩とは何か』を読む

吉増剛造『詩とは何か』(講談社現代新書)を読む。現代詩人の吉増が「詩とは何か」と題して語っている。文字通り語っているらしい。自分の喋りを録音して原稿に起こしている。 様々な詩人や哲学者、音楽家たちに言及する。最初にディラン・トマス、李白、エ…

山本弘の作品解説(103)「雪景」

山本弘「雪景」、油彩、F4号(24.2cm×33.3cm) 制作年不詳。この作品を撮影したのは40年以上前になる。ポジフィルムで撮影したのであまり退色していない。30年ほど前当時勤めていた会社の応接に飾っていたら、落花生研究者の方が買ってくれた。絵を買うのは…

山下裕二『商業美術家の逆襲』を読む

山下裕二『商業美術家の逆襲』(NHK出版新書)を読む。山下はファインアートとは異なる「日本美術のメインストリームから外れた」「美術史上、正当な評価を受けて来なかった商業美術家たちを」「再評価」するだけではなく、「むしろ彼らを本流として明治以降…

ギャラリーYORIの及川伸二展を見る

東京代々木上原のギャラリーYORIで及川伸二展「ちょっとしたこと」が開かれている(12月25日まで)。及川伸二は抽象画家の及川伸一の弟ということだ。兄と違って人物画を描いている。しかし兄弟なら影響を受けざるを得ないだろう。空間のつくり方とか画面の…

トキ・アートスペースの本多真理子展を見る

東京神宮前のトキ・アートスペースで本多真理子展「分解」が開かれている(12月26日まで)。画廊の奥の広いスペースの床にはたくさんの石が転がっている。そして6個の石が天井から吊り下げられている。吊り下げられた石は、よく見ると床に置かれた紙袋に糸で…

Cross View Arts Selectionの桑原理早を見る

東京京橋のクロスビューアーツ でSelection展が開かれている(12月21日まで)。クロスビューアーツはギャラリーなつかの小さなスペースで、Selection展として、岡田育美、桑原理早、永野のり子、山口健児の4人を取り上げている。小さなスペースに4人展だから…

TS4312で「TS4312恒例入札オークション」が始まった

東京四谷のTS4312で「TS4312恒例入札オークション」が始まった(12月26日まで)。ここの最低入札価格がとても安い。入札だから最低価格で落札できるわけではないが、画廊主の沢登さん曰く、うちはお客さんが少ないからあまり競ることがないので、最低価格で…

阿部知二『冬の宿』を読む

阿部知二『冬の宿』(小学館P+Dブックス)を読む。P+Dブックスというのは、ペーパーバックスとデジタルの略称で、「後世に受け継がれるべき名作でありながら、現在入手困難となっている作品を、B6判ペーパーバック書籍と電子書籍を、同時かつ同価格で発売・…

山極寿一・小川洋子『ゴリラの森、言葉の海』を読む

山極寿一・小川洋子『ゴリラの森、言葉の海』(新潮文庫)を読む。ゴリラ研究者の山極と、『博士の愛した数式』の作家小川の対談集。これがとても良かった。小川は河合隼雄との対談『生きるとは、自分の物語をつくうること』(新潮文庫)も良かった。優れた…

澤宮優『イップス』を読む

澤宮優『イップス』(角川新書)を読む。副題が「難病を乗り越えたアスリートたち」で、プロ野球選手やプロゴルファーなど「突如アスリートを襲い、選手生命を脅かす難病とされてきた“イップス”。長く原因はメンタルにあるとされてきたが、実は脳にあった! …

赤瀬川原平『増補 健康半分」を読む

赤瀬川原平『増補 健康半分」(デコ ライブラリー)を読む。赤瀬川が季刊誌『からころ』に連載したもの。1回分がわずか400字詰め原稿用紙2枚なので、あまり複雑なことは書けない。それでも亡くなる前年までの32回分が収録されている。 「あとがき」に赤瀬川…

ギャルリー東京ユマニテの木村太陽展を見る

東京京橋のギャルリー東京ユマニテで木村太陽展「cloud seeding」が開かれている(12月25日まで)。ギャラリーのホームページから、 木村は1995年創形美術学校研究科卒業後から作品を発表し、2000年以降はドイツ、ニューヨークを拠点にヨーロッパ、アメリカ…

ギャラリー川船の「歳末入札展示会」

東京京橋のギャラリー川船で「歳末入札展示会」が始まった(12月11日まで)。 入札の方式は「二枚札方式」、これは入札カードに上値(上限)と下値(下限)の二つの価格を書いて入札するもの。他に入札者のない場合は下値で落札する。上値が同額の場合には下…

奥本大三郎『パリの詐欺師たち』を読む

奥本大三郎『パリの詐欺師たち』(集英社)を読む。奥本の小説! 奥本はフランス文学者、『ファーブル昆虫記」の訳者、昆虫コレクターで虫に関するエッセイが多い。しかし小説も書いているとは知らなかった。 本書は「パリの詐欺師たち」と「蛙恐怖症(ラノ…

高田博厚『フランスから』を読む

高田博厚『フランスから』(講談社文芸文庫)を読む。戦後高田がフランスから日本の友人片山敏彦らに送った手紙を片山が編集して出版したもの。私信とはいえ、高田も公開を意図していたらしい。 戦後のフランスの文学者たちや画家たちの動向や発言などを紹介…

ギャラリー58の吉野辰海新作展を見る

東京銀座のギャラリー58で吉野辰海新作展が開かれている(12月11日まで)。吉野は1940年宮城県生まれ、1959年武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)油絵科入学。1960年ネオダダイズム・オルガナイザーズの一員として活躍する。1964年新宿内科画廊で個展、そ…

いりや画廊の姫野亜也石彫刻展「遠景」を見る

東京上野入谷のいりや画廊で姫野亜也石彫刻展「遠景」が開かれている(12月11日まで)。姫野は1990年大分県生まれ、2012年に武蔵野美術大学彫刻科を卒業し、2014年に同大学大学院美術専攻を修了している。2013年にいりや画廊で初個展、ついで2015年にもいり…

学徒の帽子ふかく埋もる

36年前の今日、朝日新聞の朝日歌壇欄に義母の短歌が掲載されているのを見つけた。 いっ片の骨(こつ)だに在らぬ兄の墓学徒の帽子ふかく埋もる (松本市) 曽根原嘉代子 カミさんの伯父宏さんは昭和19年海軍技術将校としてボルネオ・タラカン島に赴任し石油…