山本弘の作品解説(103)「雪景」

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 山本弘「雪景」、油彩、F4号(24.2cm×33.3cm)

 制作年不詳。この作品を撮影したのは40年以上前になる。ポジフィルムで撮影したのであまり退色していない。30年ほど前当時勤めていた会社の応接に飾っていたら、落花生研究者の方が買ってくれた。絵を買うのは初めてだが、見ているうちに欲しくなったと言って。

 手前の家の屋根に雪が積もっている。遠く飯田の風越山が黒々とそびえている。未亡人は売れたことを喜んでもくれたが、でも私あの絵が好きだったのにと残念がってもいた。落花生の研究者は落花生の栽培の本を書いて、それを私が勤めていた会社で出版した。打ち合わせで何度か来社しているうちに買いたくなったと言う。それは嬉しいことだった。

 抽象的に描かれているが、これは当時山本が住んでいたアパートで、アパートは道路より一段下にあった。そのアパートを取り巻くように道路が続いていて、あのあたりの地形を知っているものにとってかなりリアルな絵なのだった。また風越山の位置関係も正しく描かれている。山本30代後半だったと思う。風景を大胆に省略して描いてしかもリアルだという山本の驚くべき技術がこの頃すでに確立しているのが分かる。