日本経済新聞社編『私の履歴書 経済人35』を読む

 日本経済新聞社編『私の履歴書 経済人35』(日本経済新聞社)を読む。日経に長く連載されている「私の履歴書」から経済人5人を編集している。ロイヤルホストの創業者江頭匡一、ディズニーランドの実質的創立者高橋政知、ウシオ電機牛尾治朗近畿日本鉄道上山善紀ダイエー中内功の5名の経営者。総じて成功者の自画自賛という側面は免れがたい。中内はまだダイエーを手放していなかった。

 私は高橋政知を読みたくて、でも結局1冊全部読んでしまった。京成電鉄の川崎社長がアメリカのディズニーランドを見て、これを日本にも作りたいと考えた。1960年浦安沖の埋め立てを目的とする会社オリエンタルランドが、京成電鉄三井不動産、朝日土地興行の3社出資で設立された。のちに朝日土地興行が経営不振で三井不動産に吸収合併され、京成52%、三井48%の出資比率に変わった。

 漁民との漁業権を巡る交渉を成功させて埋め立て地の取得は成功した。そこまでで高橋は身を引くつもりでいたが、オリエンタルランドの社長を任されることになった。ディズニーとの交渉が難航する。三井不動産は逃げ腰になっている。高橋の足を引っ張る。ディズニーランドとの最終契約でも無理難題を突き付ける。高橋は独断で契約にこぎつける。

 高橋政知がいなかったらディズニーランドは出来なかったことがよく分かる。個人の熱意が事業を成功させたのだ。

 むかし、三井物産とメーカーが組んで新製品の開発をしたとき、その広告宣伝でそれに参加したことがあった。三井物産はとにかく早く製品化することを急いだが、メーカーの担当者は何度も検討して製品の完成度を高めることに注力した。商社と不動産会社の違いはあるが、メーカー(製造業)でない会社の姿勢を見た気がした。

 高橋政知の肖像写真が載っているが、良い顔をしている。

 本書に掲載されている5人の経営者の中で、やはり中内功の顔が一番よくない。大企業の創立者でありながら何か卑しい印象なのだ。年を取ったら顔に人間性が現れるのは事実のようだ。