2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

大町文衛『日本昆虫記』を読む

大町文衛『日本昆虫記』(角川ソフィア文庫)を読む。大町文衛は大町桂月の次男の由。本書は元は大阪朝日新聞に昭和16年に連載されたもの。戦後角川文庫に収録されるにあたり少し手を加えているという。しかしながら昆虫学の進展は甚だしく、本書が古びてい…

東大出版会の雑誌『UP』について

私は新刊情報を知るために、土曜日の朝日新聞の書評欄、日曜日の毎日新聞と読売新聞の書評欄を毎週、もう40年近く愛読している。それよりもっと古くから定期購読している雑誌が各出版社が発行しているPR誌で、現在『図書』(岩波書店)、『波』(新潮社)、…

ガルリSOLの高木俊宏展を見る

東京銀座のガルリSOLで高木俊宏展が開かれている(7月6日まで)。高木は1955年岡山県生まれ。銀座や浦和など各地の画廊で個展を開いている。 今回は川に映った空、川の表面の波を描いているように見える。その波の表現がとても美しい。実家のある岡山の川を…

ガレリア・グラフィカbisの滝田朝江展を見る

東京銀座のガレリア・グラフィカbisで滝田朝江展が開かれている(6月29日まで)。滝田の経歴はよく分からない。現代美術で活躍している画家のお母さんだからそれなりの経歴なのだろう。 毎年ここガレリア・グラフィカbisで個展をしている。今回、入り口を入…

櫻木画廊の沓澤貴子展を見る

東京上野桜木の櫻木画廊で沓澤貴子展が開かれている(7月7日まで)。沓澤は1971年、静岡県生まれ、1996年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業し、1998年に同大学大学院油絵コースを修了している。2001年ガレリアラセンで初個展を開き、Oギャラリー、かわ…

ギャラリーせいほうの樋口恭一展を見る

東京銀座のギャラリーせいほうで樋口恭一展が開かれている。大きな石の立体作品だ。樋口は1959年東京都生まれ、1987年に東京造形大学造形学部彫刻専攻を卒業している。2010年には文化庁からイタリアへ研修生として派遣されている。ギャラリー・オカベや銀座…

東京都庭園美術館のキスリング展「エコール・ド・パリの夢」を見る

東京白金台の東京都庭園美術館でキスリング展「エコール・ド・パリの夢」が開かれている(7月7日まで)。ちらしに「エコール・ド・パリを代表する画家」とあるように、ポーランド出身のキスリングはパリに出てピカソ、ブラック、モディリアーニ、パスキンら…

ギャラリー惺(SATORU)の山神悦子展「絵画が生まれる時」を見る

東京吉祥寺のギャラリー惺(SATORU)で山神悦子展「絵画が生まれる時」が開かれている(7月7日まで)。山神は1950年香川県生まれ、1973年にお茶の水女子大学家政学部を卒業し、その後アメリカのシアトルとスイスのジュネーブに滞在した。1985年から大石洋次…

近藤譲『ものがたり西洋音楽史』を読む

近藤譲『ものがたり西洋音楽史』(岩波ジュニア新書)を読む。優れた西洋音楽通史であって、ジュニアだけに読ませるのはもったいない。近藤は現代音楽の作曲家であり、実にていねいに各時代の音楽を語ってくれる。 とても興味深く読んだと言いたいところだが…

ギャラリーαMの風間サチコ展「東京計画2019」を見る

東京東神田のギャラリーαMで風間サチコ展「東京計画2019」が開かれている(7月13日まで)。風間は1972年東京生まれ、1996年武蔵野美術学園版画研究科を修了している。1998年にギャラリー山口で初個展、その後、ギャラリー手、マキイマサルファインアーツなど…

ギャラリー愚怜の古茂田杏子展を見る

東京本郷のギャラリー愚怜で古茂田杏子展が開かれている(6月26日まで)。古茂田杏子は1946年生まれ、両親とも画家で、父が古茂田守介、母が美津子、2012年に目黒区立美術館で古茂田守介+古茂田美津子展が開かれた。 今回古茂田杏子がテーマに選んだのは歌…

片山杜秀+山崎浩太郎『平成音楽史』を読む

片山杜秀+山崎浩太郎『平成音楽史』(アルテスパブリッシング)を読む。聞き手が田中美登里となっていて、これは衛星デジタル音楽放送「ミュージックバード」の121チャンネル、「ザ・クラシック」で2018年8月19日に放送された4時間番組を本に起こしたものな…

ガレリア・グラフィカbisの山本圭子展を見る

東京銀座のガレリア・グラフィカbisで山本圭子展が開かれている。山本は1982年静岡県生まれ、2005年に東北芸術工科大学彫刻コースを卒業し、2007年に同大学大学院彫刻領域を修了している。初個展は2015年のガレリア・グラフィカbis、以来何度か個展を開いて…

ジル・ボルト・テイラー『奇跡の脳』を読む

ジル・ボルト・テイラー『奇跡の脳』(新潮文庫)を読む。気鋭の神経解剖学者が37歳で脳卒中で倒れる。発病直後から科学者として自分の症状を見つめ病状の進展から手術、リハビリの経過を追い、脳卒中の影響を患者側から詳しく描いた稀有な書。 ある朝目覚め…

SCAI THE BATHHOUSEの横尾忠則展「B29と原郷-幼年期からウォーホルまで」を見る

東京谷中のSCAI THE BATHHOUSEで横尾忠則展「B29と原郷-幼年期からウォーホルまで」が開かれている(7月6日まで)。 奥の部屋の正面に「A.W.MANDARA」と題された6号を60点並べた作品が展示されている。アンディ・ウォーホルの様々な姿が描かれている。手前…

菅孝行『三島由紀夫と天皇』を読む

菅孝行『三島由紀夫と天皇』(平凡社新書)を読む。1970年11月25日、三島は市ヶ谷の自衛隊東部方面総監室で自刃した。管はその理由を探って三島の小説を読み込んでいく。そして菅は三島の多くの作品が、2.26事件の蹶起将校たちや特攻隊員たちを裏切った昭和…

ギャラリーOUT of PLACEのHogalee展「Masking/Fixing」を見る

東京外神田のギャラリーOUT of PLACEでHogalee展「Masking/Fixing」が開かれている(6月30日まで)。Hogalee(ホガリー)は1975年神奈川県生まれ、2001年に東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修士課程を修了している。2011年にここOUT of PLACEや西武…

渡辺正峰『脳の意識 機械の意識』を読む

渡辺正峰『脳の意識 機械の意識』(中公新書)を読む。1年半ほど前に出た本だが、毎日新聞(中村桂子)と朝日新聞(佐倉統)に書評が載り、昨年8月には、朝日新聞に大きく著者へのインタビューも掲載された。 渡辺はまず意識の神経メカニズムを研究する。ク…

Oギャラリーの田島直樹銅版画展を見る

東京銀座のOギャラリーで田島直樹銅版画展「Grand Prix」が開かれている(6月16日まで)。田島は1968年鹿児島県生まれ、1997年に筑波大学大学院芸術研究科美術専攻を修了し、2012年には同大学で博士号を取得している。1997年にOギャラリーで初個展、その後も…

高山なおみ『諸国空想料理店』を読む

高山なおみ『諸国空想料理店』(筑摩書房)を読む。吉祥寺にあったエスニック料理の店Kuu Kuu(クウクウ)のシェフだった高山が店で出す料理のレシピとそれにまつわるエピソードを書いている。文章が生き生きしていて、料理も半端なく美味しそう。 初めてペ…

s+artsの西山晴恵展「間の風景」を見る

東京六本木のs+artsで西山晴恵展「間の風景」が開かれている(6月16日まで)。西山は1967年東京生まれ、1991年多摩美術大学絵画科油画専攻を卒業し、1993年同大学大学院美術研究科を修了している。1992年銀座スルガ台画廊の「レスポワール展」で初個展、その…

日本橋高島屋6階美術画廊Xの重野克明展「私は版画」を見る

東京日本橋の日本橋高島屋6階美術画廊Xで重野克明展「私は版画」が開かれている(6月10日まで)。重野は1975年千葉市生まれ、2003年に東京藝術大学大学院修士課程美術研究版画専攻を修了している。主に77ギャラリーで個展を開いているが、ここ高島屋美術画廊…

ギャラリーHANA下北沢の新井コー児個展を見る

東京下北沢のギャラリーHANA下北沢で新井コー児個展が開かれている(6月9日まで)。新井は1973年群馬県高崎市生まれ。1996年多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業している。2000年に高崎シティギャラリーで初個展、2004年から銀座のなびす画廊で2014年…

ギャラリーなつかの「そこからの景色」を見る

東京京橋のギャラリーなつかで「そこからの景色」が開かれている(6月15日まで)。芦川瑞季と釘町一恵の2人展だ。ここでは芦川を紹介する。 芦川は1994年静岡県生まれ、2017年に武蔵野美術大学造形学部版画専攻を卒業し、現在武蔵野美術大学大学院博士後期課…

本多久夫『形の生物学』を読む

本多久夫『形の生物学』(NHKブックス)を読む。カバーの内側の惹句を引く。 単細胞のゾウリムシから多細胞のヒトまで、生物は、今あるこの多様な形に、どうやってたどり着いたのか。本書では、多細胞生物の「袋」に着目し、生物体の内と外の境目について考…

土井善晴『一汁一菜でよいという提案』を読む

土井善晴『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)を読む。土井は著名な料理研究家、その土井が家庭料理に対して一汁一菜でよいと大胆な提案をしている。その一汁一菜とは基本的にご飯に味噌汁に漬物だけのことだ。 毎日3食、ずっと食べ続けたとして…