渡辺正峰『脳の意識 機械の意識』を読む

 渡辺正峰『脳の意識 機械の意識』(中公新書)を読む。1年半ほど前に出た本だが、毎日新聞中村桂子)と朝日新聞佐倉統)に書評が載り、昨年8月には、朝日新聞に大きく著者へのインタビューも掲載された。
 渡辺はまず意識の神経メカニズムを研究する。クリックとコッホが意識の実験科学のタームとして「NCC」を提案した。NCCを彼らは次のように定義している。「固有の感覚意識体を生じさせるのに十分な最小限の神経活動と神経メカニズム」と。
 さまざまな実験を繰り返し、渡辺は、意識は脳が作りだした仮想現実だと結論する。それは機械に接続できるのだと。このあたりよく分からない。
 意識が生まれた経過を考えると、無生物から下等生物が生まれ、それが進化して人にまで至っている。その経過のなかで徐々に原始的な意識が芽生え、人間にまで至ったことを考えれば、意識そのものは何ら特別なものではないことが推測できる。ならば、機械にも意識を持たせることは可能なのだろう。スタニスワフ・レムや筒井俊隆(筒井康隆の弟)、『マトリックス』なども同じことを考えている。
 魅力的な論考ではあったが、本書で十分納得がいったとは思えない。また類書を探して読んでみよう。