政治

宇野重規 著、若林恵(聞き手)『実験の民主主義』を読む

宇野重規 著、若林恵(聞き手)『実験の民主主義』(中公新書9を読む。副題が「トクヴィルの思想からデジタル、ファンダムへ」とうもの。編集者の若林が政治学者の宇野に質問して宇野が語るという形式をとっている。全6回の対話を基に本書が正立した。 宇…

池上彰/パトリック・ハーラン『世界を動かした名演説』を読む

池上彰/パトリック・ハーラン『世界を動かした名演説』(ちくま新書)を読む。池上彰とパトリック・ハーラン(以下パックン)が対談で、名演説を紹介し、その名演説であるポイントを紹介する。特にパックンは英語原文のレトリックの面白さやリズムの良さ(…

『田中角栄名語録』を読む

小林吉弥『田中角栄名語録 普及版』(プレジデント社)を読む。本来手に取る種類の本ではないが、コロナで入院していた折り、友人が差し入れしてくれた。ほかに活字がなかったので読んでみた。それがとても面白かった。田中角栄の政治思想や功績を取り上げて…

白井聡『長期腐敗体制』を読む

白井聡『長期腐敗体制』(角川新書)を読む。これが実に面白かった。袖の惹句から、 なぜ、この国ではいつも頭(トップ)から腐っていくのか? そして、不正で、無能で、腐敗した政権が続いてしまっているのか? 実は、第二次安倍政権以降の状況は「体制」と…

姫岡とし子『ローザ・ルクセンブルク』を読む

姫岡とし子『ローザ・ルクセンブルク』(山川出版社:世界史リブレット)を読む。副題が「闘い抜いたドイツの革命家」。リブレット=小冊子だから100ページちょっとの簡単な伝記。私はローザについてはほとんど知らなかった。先に読んだ池上彰・佐藤優『激動…

池上彰・佐藤優『漂流 日本左翼史』を読む

池上彰・佐藤優『漂流 日本左翼史』(講談社現代新書)を読む。『日本左翼史』シリーズの3冊目で最終巻。副題が「理想なき左派の混迷 1972―2022」、最初の『真説 日本左翼史』の副題が「戦後左派の源流 1945-1960」と15年間を扱い、次の『激動 日本左翼史』…

池上彰・佐藤優『激動 日本左翼史』を読む

池上彰・佐藤優『激動 日本左翼史』(講談社現代新書)を読む。副題が「学生運動と過激派 1960-1972」、先に発行された『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960』の続編。池上と佐藤の対談で構成されている。 「はじめに」で佐藤優が書いている。「本書…

田原総一朗+藤井聡『こうすれば絶対よくなる! 日本経済』を読む

田原総一朗+藤井聡『こうすれば絶対よくなる! 日本経済』(アスコム)を読む。雑誌『ちくま』に斎藤美奈子が紹介していた(2021年12月号)。しかし、藤井は安倍政権の元内閣官房参与、MMT(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論)を信奉している。MMTでは…

斎藤幸平『人新生の「資本論」』を読む

斎藤幸平『人新生の「資本論」』(集英社新書)を読む。私が3月に購入した本は20万部突破と帯にうたっていたけれど、最近書店で見たものには39万部となっていた。こんな難しい本がベストセラーじゃん! 「人新生」とは、人類が地球を破壊しつくす時代と、こ…

池上彰・佐藤優『真説 日本左翼史』を読む

池上彰・佐藤優『真説 日本左翼史』(講談社現代新書)を読む。副題が「戦後左派の源流 1945-1960」というもの。池上と佐藤が対談して、戦後から60年安保までの日本の左翼の動きを概括している。これがとてもよく整理されていて、教えられることが多々ある…

加藤典洋『戦後入門』を読む

加藤典洋『戦後入門』(ちくま新書)を読む。カバーの袖の惹句から、 日本ばかりが、いまだ「戦後」を終わらせられないのはなぜか。この国を呪縛する「対米従属」や「ねじれ」の問題は、どこに起源があり、どうすれば解消できるのか――。世界大戦の意味を喝破…

高橋源一郎『たのしい知識』を読む

高橋源一郎『たのしい知識』(朝日新書)を読む。副題が「ぼくらの天皇(憲法)・汝の隣人・コロナの時代」となっている。本書はこの3つのテーマを独立に論じたもの。雑誌『小説トリッパー』に連載した。 地味なタイトルだがとても面白かった。高橋は教科書…

蔭山宏『カール・シュミット』を読む

蔭山宏『カール・シュミット』(中公新書)を読む。副題が「ナチスと例外状況の政治学」というもの。ナチスの独裁思想を擁護したワイマール期の最右翼の政治学者。ナチの御用学者。その独裁の政治思想ってどんなものなのだろう? シュミットは例外状態を重視…

斎藤美奈子の「世の中ラボ」126回を紹介する

筑摩書房のPR誌『ちくま』10月号に斎藤美奈子の連載エッセイ「世の中ラボ」の126回目が掲載されている。タイトルが「「安倍辞任」でも気分が晴れない理由(わけ)」、その一部を紹介する。 まず安倍政権とは何だったのか思い出してみよう。 適菜収『国賊論』…

井上ひさし『二つの憲法』を読む

井上ひさし『二つの憲法』(岩波ブックレット)を読む。二つの憲法とは、明治22年に発布された大日本帝国憲法と、昭和21年に公布された日本国憲法だ。井上はこの二つの憲法を比べている。 大日本帝国憲法について、井上が解説する。天皇は帝国議会を開会した…

手嶋龍一『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師』を読む

手嶋龍一『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師』(マガジンカウス)を読む。著者の手嶋はもとNHKワシントン支局長、テレビニュースで何度も見かけていた。そんな経歴から国際政治の裏面に通じているようで、対テロ戦争を描いたノンフィクションやイン…

片山杜秀『国の死に方』を読む

片山杜秀『国の死に方』(新潮社新書)を読む。これがおもしろかった。片山は音楽評論の世界でも高い評価を受けていて、音楽に関する著書も多いが、もともとの専門は政治思想史の研究者なのだ。音楽評論では吉田秀和賞とサントリー学芸賞を受賞している。 本…

『北方領土・竹島・尖閣、これが解決策』を読む

岩下明裕『北方領土・竹島・尖閣、これが解決策』(朝日新書)を読む。2013年7月に発行されたが、その10月6日に朝日新聞の読書欄に萱野稔人が書評を寄せていた。その書評で萱野が高く評価しているのを読んですぐに購入した。しかしそのまま本棚に差して2年…

エズラ・F・ヴォーゲル『トウ小平』を読む

エズラ・F・ヴォーゲル/聞き手=橋爪大三郎『トウ小平』(講談社現代新書)を読む。3年ほど前、エズラ・F・ヴォーゲル『トウ小平』(日本経済新聞社)が刊行された。今回聞き手を勤めた橋爪は、それが極めて優れたトウ小平論でありながら、日本語版で上下2…

『丸山眞男と田中角栄』で印象に残った言葉

以前、佐高信と早野透の対談『丸山眞男と田中角栄』(集英社新書)を紹介したが、なかで特に印象に残った言葉があった。 佐高信 中曽根が国鉄民営化をやる。小泉が郵政民営化をやる。しかしそれは民営ではなく、会社にしたということに過ぎません。そう私は…

名越健郎『独裁者プーチン』を読んで

名越健郎『独裁者プーチン』(文春新書)を読む。ロシア大統領プーチンを論じている。袖の惹句を引く。 大統領に復帰し、さらなる絶対的権力者となったプーチン。貧しい労働者階級からKGB中佐を経て頂点の座に上り詰めた軌跡を追うとともに、バラマキ政治を…

播磨屋本店の宣伝カー

以前紹介した銀座の無料カフェを提供している播磨屋本店の宣伝カーが銀座の晴海通りを走っていた。 「真実身命を賭して天皇に献言します」 環境問題は、世俗の迷妄人間では対処不能の異次元的超難問題です。その克服は、超俗の「天皇」の「神通力」に頼る以…

アメリカの影

アメリカでトヨタ車のリコールが問題になっている。マットによるアクセルペダルが戻らない問題、プリウスのブレーキが効かないとされる問題。それに対して微かにアメリカの陰謀だという噂も聞こえてくる。普天間基地の問題で日本政府がアメリカの要望を無視…

幸福実現党のマニフェスト

幸福実現党は先の総選挙で一人の議員も当選しなかったが、マニフェストは面白かった。その憲法試案の第14条は「天皇制その他の文化的伝統は尊重する。(後略)」だった。天皇制って言葉はコミンテルンが発明した左翼用語で、天皇制についてどう思うかと聞か…

「日米同盟の正体」から教えられたこと

「日米同盟の正体」の著者は最近まで防衛大学の教授だった人。長く外務省に勤め、外交官や国際情報局長を歴任している。吉田茂や猪木正道を高く評価している。 孫崎は日本には戦略思考が皆無だと批判する。例えば、「多くの日本人は、(1,000カイリの)シー…

日本海の見慣れぬ大きな島

もう大分前のことだが、新聞の広告に衛星写真の日本列島が掲載されていた。それが電力会社の広告だったのか、夜の写真だった。海岸線を明るい光が象って日本地図が再現されている。東京や大阪、名古屋などはことに明るく輝いている。ところが見慣れないとこ…

佐野眞一による政治家たちの人物月旦

佐野眞一はノンフィクション作家として私が一番信頼する人だ。これらの本をいつも感嘆して読んできた。特に『カリスマ』と『阿片王』はすばらしかった。並の作家ではない。 『遠い「山びこ」 - 無着成恭と教え子たちの四十年 - 』(新潮文庫) 『カリスマ─中…