姫岡とし子『ローザ・ルクセンブルク』(山川出版社:世界史リブレット)を読む。副題が「闘い抜いたドイツの革命家」。リブレット=小冊子だから100ページちょっとの簡単な伝記。私はローザについてはほとんど知らなかった。先に読んだ池上彰・佐藤優『激動 日本左翼史』(講談社現代新書)で、佐藤優が、ヨーロッパのマルクス主義はローザ・ルクセンブルクが主流でレーニンは傍流、日本のようなスターリン主義系のマルクス主義が強い国はめずらしいと言っていた。それで手に取ってみた。
佐藤 これもまた労農派的なのですが、社青同の思想でもうひとつ重要なのが、ローザ・ルクセンブルクの理論に依拠し「周辺からの収奪」を問題視した点です。
資本主義においては資本家が労働者から搾取するだけでなく、富裕層が貧困層から、というように常に社会の中枢に近い側が周縁からの収奪を行っています。(社青同)解放派はこのことを資本主義における最大の悪の一つと捉え、特にアジアに対する罪の意識を非常に強く持っていました。
池上 大阪市立大学の斎藤幸平さんが書いた2020年のベストセラー『人新生の「資本論」』(集英社新書)でも外部収奪論は特に強調されている点ですね。その意味で解放派の思想は現代に通じる部分はありそうですか。
佐藤 そのとおりでしょうね。ただ斎藤幸平さんがまさにそうなのですが、彼のようにヨーロッパでマルクス主義を学んでくると、基本的にレーニンは傍流でローザが主流なので自然とそこに注目するようにはなるんです。日本みたいに資本主義国でありながらスターリン主義系のマルクス主義が強い国は実はかなり珍しいのです。
本書のカバー袖の惹句を弾く。
ドイツの革命家ローザ・ルクセンブルクはポーランドで生まれてスイスに亡命し、偽装結婚によってドイツ国籍をえて、ヨーロッパ労働運動の中心地ドイツで最左派の理論家として活動した。ドイツ革命時の1919年1月に虐殺されるまで、彼女は国際プロレタリア革命の達成のために妥協を排し孤立を恐れず闘い抜いた。本書は、激動する国際情勢のなかで彼女が打ち立てた革命論とその実現に向けた行動、ドイツ社会民主党の右傾化との対決過程を描きだす。
手際よくローザの一生を描いている。ローザという人間が何者なのか少し分った気がする。ただ、本書はローザの行動を中心に描いていて、小著のせいもあってその思想までは十分に踏み込んではいない。ローザの革命論がどのようなものであったのかまでは、よくは分からない。ただ、革命運動の渦中にあったこと、同じ左翼同士の理論闘争に明け暮れたこと、48歳という若さで亡くなったこと等から、現代にも通じる革命思想を打ち立てたとは思えなかった。改めてローザの思想を学んでみようとまでは思わなかった。
本書は写真も多く、ローザの簡単な伝記を学ぶには適切な資料だと思う。