2014-01-01から1年間の記事一覧

啄木の短歌

ドナルド・キーンの『日本文学史 近代・現代篇七』(中公文庫)を読んでいた。この「近代・現代篇七」は短歌と俳句が取り上げられている。その石川啄木の章を読んでいて驚いた。 頬(ほ)につたふ なみだのごはず 一握の砂を示しし人を忘れず この短歌を初め…

東京都庭園美術館で内藤礼展「信の感情」を見る

東京都庭園美術館がリニューアルオープンし、内藤礼展「信の感情」が開かれた(12月25日まで)。庭園美術館には新しくギャラリーが作られて、内藤のタブローが十数点展示され、そのほか旧浅香宮邸の雅な各部屋のあちこちに内藤の作った小さな木彫作品が置か…

藤森照信が語る諏訪の古代史

藤森照信が『タンポポの綿毛』(朝日新聞社)で諏訪の古代史について語っている。「敗戦の記憶」という章で。 藤森が生まれ育った長野県諏訪郡宮川村(現茅野市)高部に守矢家の屋敷があった。 村の立つ扇状地のやや上のほうに、集落を見晴らすようにしてジ…

HARMASギャラリーの高橋大輔展を見る

東京清澄のHARMASギャラリーで高橋大輔展が開かれている(2月7日まで)。高橋は1980年埼玉県生まれ。2005年に東京造形大学絵画専攻を卒業している。主な個展は、switch point、トキ・アートスペース、LOOP HOLE、T&Sギャラリー、リマスタ、HARMASギャラリ…

野口冨士男『わが荷風』を読む

野口冨士男『わが荷風』(岩波現代文庫)を読む。本書ははじめ集英社のPR誌『青春と読書』に1973年3月から2年間連載され、1975年集英社から単行本が発行された。その後、中公文庫に収められ、講談社文芸文庫の1冊となったが、2012年岩波現代文庫に収めら…

広告写真の意味するものは?

以前、精力剤の広告写真の意味するものが分からないと書いた。 精力剤の広告で、「家内も驚く」というコピーから、その服用結果に奥さんが驚いているという図なのはよく分かる。彼女の視線の先に何があって驚いているのだろう。 実はそれがよく分からない。…

岩切友里子『国芳』を読む

岩切友里子『国芳』(岩波新書)を読む。幕末の浮世絵師歌川国芳について生涯と作品を紹介している。新書にしては「カラー版」とうたっている通りカラー図版も豊富で国芳の画業も分かりやすい。とても良い本だった。 浮世絵といえば、初期〜中期の春信や師宣…

藤森照信『タンポポの綿毛』を読んで

藤森照信『タンポポの綿毛』(朝日新聞社)を読む。建築家・建築探偵・路上観察学会会員・東大教授の藤森は昭和21年、長野県諏訪郡宮川村(現在の茅野市)で生まれた。本書は藤森(テルボと呼ばれていた)の保育園から小学生〜中学生時代の村での暮らしを描…

御厨貴 編著『近現代日本を史料で読む』を読んで

御厨貴 編著『近現代日本を史料で読む』(中公新書)を読む。明治の元勲大久保利通や木戸孝允などから始まって、石橋湛山、鳩山一郎、佐藤榮作に至る、明治から昭和の戦後までの、歴史的に重要な人物たちの残した日記や記録を紹介している。 目次から拾うと…

東京国立近代美術館の高松次郎展「ミステリーズ」を見る

東京国立近代美術館で高松次郎展「ミステリーズ」が開かれている(2015年3月1日まで)。高松は1936年生まれ、1998年に62歳で亡くなっている。東京芸大を卒業し、はじめ読売アンデパンダンに出品していた。その後、中西夏之、赤瀬川原平と3人でハイレッド…

「K392アートマーケットVol.2」が開かれている

10月に引き続き、東京京橋のK392ギャラリーで「K392アートマーケット Vol.2」が開かれている(12月26日まで)。この企画はK'sギャラリーが主催して、作家やコレクターに呼びかけ、現代アートやあまり知られていない作家の作品、また人気作家の作品が手頃な価…

マキイマサルファインアーツの柳楽晃太郎がすばらしい

東京浅草橋のマキイマサルファインアーツで「織ー男三人展ー」が開かれている(12月21日まで)。「織」をテーマに制作している作家3名によるグループ展。参加しているのは、佐藤将輝、橋本圭也、柳楽晃太郎だが、とくに柳楽がすばらしかった。 柳楽晃太郎は…

子安宣邦『日本近代思想批判』を読んで

子安宣邦『日本近代思想批判』(岩波現代文庫)を読む。子安がさまざまな雑誌に書いた10編の論文をまとめたもの。タイトルから予想されるような難解な論文ではなく、なかなか楽しめた。とくに丸山真男の『日本政治思想史研究』と和辻哲郎の『風土』に対する…

「ポルトリブレ 歳末蚤の市 2014」が始まる

東京新宿のフリー アート スペース ポルトリブレで年末恒例の「ポルトリブレ 歳末蚤の市 2014」が始まる(12月19日〜12月28日)。主として美術品が出品されるが、少しばかり外れるものも出されることがある。今年も雑誌『ガロ』の出品が予定されている。昨年…

『服は何故音楽を必要とするのか?』という不思議な本を読む

菊地成孔『服は何故音楽を必要とするのか?』(河出文庫)を読む。とても不思議な本で、パリ、ミラノ、東京で行われるファッション・ショーで使われる音楽と、そのメゾンの服との関係を考察するというもの。菊地ははこの音楽のことを「ウォーキング・ミュー…

大岡昇平『証言その時々』を読む

大岡昇平『証言その時々』(講談社学術文庫)を読む。今年の8月に第1刷が発行された新しい本だが、原本は筑摩書房から1987年に発行されている。その間どの出版社も文庫化しなかったのは、ある意味地味な本なのだろう。大岡の「あとがき」に「戦争について、…

須藤靖がエッセイで『小林秀雄の哲学』に触れている

東大の宇宙論の教授須藤靖は東京大学出版会のPR誌『UP』に「注文(ちゅうぶん)の多い雑文」というエッセイを不定期に連載している。これがとても面白い。今回は「書評という仕事」と題して、読売新聞で2年間書評委員を担当したことを書いている(『UP』12…

どうして男たちは巨乳を好むのかーー巨乳論の試み(再録)

7年半前の2007年6月20日に「どうして男たちは巨乳を好むのかーー巨乳論の試み」を書いてこのブログにアップした。そこそこの反響ももらったが、あれからだいぶ経っているので、ここにそのままの形で再録した。巨乳好みについて正確に分析したのは私が初め…

『我が愛する詩人の伝記』を読む

室生犀星『我が愛する詩人の伝記』(中公文庫)を読む。犀星が親しんだ詩人たちで先に亡くなった彼らを悼んで小伝を書いたもの。北原白秋から島崎藤村まで11人を扱っている。以前高校生のころ、ほぼ50年前に読んでいる。たのしく読んだ記憶がある。 その印象…

原節子特集の『驟雨』を見る

ラピュタ阿佐ヶ谷で原節子特集をやっている。ここで成瀬巳喜男監督、原節子と佐野周二主演の映画『驟雨』を見る。岸田國士の戯曲が原作、脚本は水木洋子。1956年公開で、この時原は36歳、佐野は44歳だった。結婚4年後の夫婦の日常を描いている。 しかし、二…

『さらば、わが愛/覇王別姫』を見る喜び

TOHOシネマズをはじめ全国50余の映画館で「新・午前十時の映画祭」が開かれている。今年が第2回目で、年間25の映画を毎回2週間ずつ午前10時から1回だけ上映するという企画、料金は一律1,000円(学生500円)となっている。そのプログラムは往年の名画をデジ…

Oギャラリーの田島直樹銅版画展−版の記憶−がおもしろい

東京銀座のOギャラリーで田島直樹銅版画展−版の記憶−が開かれている(12月14日まで)。田島は1968年鹿児島県生まれ、1997年に筑波大学大学院芸術研究科美術専攻を修了し、2012年には同大学で博士号を取得している。1997年にOギャラリーで初個展、その後も同…

不思議な広告コピー「元カレが、サンタクロース。」

地下鉄の額面ポスターで、「元カレが、サンタクロース。」というのがあった。元彼がサンタクロースって、どういう意味だろうと考えた。よく見ると、元カレにもらったルイヴィトンのバッグ 87,000円、元カレにもらったエルメスの時計 70,000円、同じくプラダ…

ポルトリブレの山崎康譽展-Marks-を見る

東京新宿のフリーアートスペース・ポルトリブレで山崎康譽展-Marks-が開かれている(12月15日まで)。山崎は1952年東京生まれ、1978年に東京学芸大学大学院を修了している。その後バングラデシュ国立芸術大学へ留学してリトグラフを学んだ。1979年にバングラ…

昭和天皇とヘルムート・ニューマン

昭和天皇とヘルムート・ニューマンには本来何の関係もない。2年ほど前になるだろうか。日本橋の画廊に杉本博司が白黒で撮影した昭和天皇の大きな肖像写真が展示されていた。8×10(エイトバイテン=20cm×25cm)と呼ばれる大型カメラで撮られた写真らしく、…

赤い口紅の女性は・・・

まだ21、2歳だった頃、「おまえのセクスはまだ聴覚を持たぬか」という1行を含んだ詩を書いた。それを読んだ親しかった友人のKが、「××よ、早く女を抱け」と言った。そう言われていささか動揺した。Kはすでに彼女と同棲していたが、私はまだ女性経験がなかっ…

丸山真男と吉川幸次郎、丸谷才一と塚本邦雄

先日塚本邦雄『秀吟百趣』を読んで、塚本の短歌や俳句の理解、解釈の深さに圧倒された。 ・塚本邦雄『秀吟百趣』に圧倒される(2014年12月1日) そして以前読んだ丸谷才一『後鳥羽院 第二版』を思い出した。丸谷の王朝和歌に対する理解の深さにも圧倒された…

ガルリSOLの松尾玲央奈の立体作品がおもしろい

東京銀座のガルリSOLで松尾玲央奈展が開かれている(12月6日まで)。松尾は1984年福岡県生まれ、一昨年女子美術大学大学院博士後期課程を修了した。ガルリSOLでは女子美術大学を卒業した2007年の初個展から今回で7回目になる。 松尾はいつも金属を使って一…

アートプログラム青梅2014(その4)「想いを紡ぐ街」を見る(2)

アートプログラム青梅2014「まなざしを織る」が開かれている。(12月7日まで)。これと同時開催されている4大学学生展「想いを紡ぐ街」を見た。そこで気になった作品を2回にわたって紹介する。その2回目。参加している美大は明星大学、武蔵野美術大学、…

アートプログラム青梅2014(その3)「想いを紡ぐ街」を見る(1)

アートプログラム青梅2014「まなざしを織る」が開かれている。(12月7日まで)。これと同時開催されている4大学学生展「想いを紡ぐ街」を見た。そこで気になった作品を2回にわたって紹介する。参加している美大は明星大学、武蔵野美術大学、東京造形大学…