東京国立近代美術館の高松次郎展「ミステリーズ」を見る



 東京国立近代美術館高松次郎展「ミステリーズ」が開かれている(2015年3月1日まで)。高松は1936年生まれ、1998年に62歳で亡くなっている。東京芸大を卒業し、はじめ読売アンデパンダンに出品していた。その後、中西夏之赤瀬川原平と3人でハイレッドセンターを結成し、銀座の道路を清掃するなど当時のいわゆるハプニングを行っていた。
 高松は「影」シリーズが有名だ。人の影だけを描いたり、照明を使って影を作り出し、その影によるインスタレーションなどを発表している。また、キャンバスに「この七つの文字」と描いたコンセプチュアル・アートなども試みている。晩年は抽象絵画も描いている。
 今回の展示は高松の様々な側面を網羅したものとなっている。ちらしによると、「この展覧会は、約50点のオブジェや彫刻、絵画、および約150点のドローイングによって(……)高松の制作をご紹介するものです」と書かれている。
 高松の仕事を見渡して感じたことは福田繁雄と共通するものがあるということだった。福田はアイディアで制作している印象がある。そのため福田の仕事はファインアートに分類しづらいきらいがあるのではないか。福田と共通するものがあると言っても、高松はずっとファインアート寄りだ。ただ高松のコンセプチュアル・アートは福田と共通のアイディア的制作の延長線上にあるのではないか。
 今まで高松の仕事は画集や美術雑誌などで見てきたが、今回美術館で実際の作品に触れて、しかし特に感動するようなことはなかった。図版で見ることと決定的に大きな違いはなかった。それは昨年世田谷区美術館で見た「実験工房展」の印象と似ている。ある意味、図版で十分なのだ。そのことはセザンヌマティスゴッホピカソ、キーファーを見る体験と全く異なっている。セザンヌらを実際に見ることは喜びなのだ。
 高松の回顧展を見て、意外に作品の展開が少ないのではないかと感じたことは自分でも予想外だった。さまざまな仕事をしている印象だったから、全体に貧しい感じを持ったのだった。またタブローの仕事は全く評価できなかった。
 厳しいことばかり書いたが、この展覧会を見られたからこそ言い得たのだった。高松次郎展を企画してくれた東京国立近代美術館には本当に感謝している。
 千葉市美術館で赤瀬川原平展を見、今回高松次郎展を見た。ハイレッドセンターのもう一人、中西夏之展は東京都現代美術館松濤美術館東京芸大美術館など何回も見る機会があった。何回も個展が企画されるように、やはり造形的には中西が最も優れていることも分かった。

 常設では奈良原一高「王国」が開かれている。1958年に発表された歴史的な写真展で、北海道のトラピスト修道院和歌山県女子刑務所を撮影している。共通しているのは閉ざされた空間にいる人物たちだ。この写真展も興味深かった。
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高松次郎展「ミステリーズ」
2014年12月2日(火)−2015年3月1日(日)
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東京国立近代美術館
東京都千代田区北の丸公園3-1
ハローダイヤル03-5777-8600
http://www.momat.go.jp