2014-01-01から1年間の記事一覧

塚本邦雄『秀吟百趣』に圧倒される

塚本邦雄『秀吟百趣』(講談社文芸文庫)を読む。ほぼ40年ほど前に『サンデー毎日』に連載したもの。秀歌と秀句を毎週交互に1首、1句ずつ選び、それに塚本が解説を加えたもの。50首と50句で100の予定だったが、結果的に3つ余分に選んでいる。 塚本の解釈…

アートディレクターの意図は?

新聞広告のコピー「家内も驚く、/男の活力、きた。」とある。若い女性がカップを持ってこちらを向いている。精力剤の広告だ。さて、女性の視線の先にあるものは何だろう? 広告はクライアント(依頼主)、アートディレクター、コピーライター、カメラマンな…

『わたしのノラネコ研究』を読む

山根明弘『わたしのノラネコ研究』(さ・え・ら書房)を読む。先日紹介した『ねこの秘密』(文春新書)の著者が書いたジュニア向けの本だ。「わたしの」となっているのは、先輩伊澤雅子の絵本『ノラネコ研究』に対して山根のという意味だろう。伊澤の本が小…

『手紙読本』を読む

江國滋・選『手紙読本』(講談社文芸文庫)を読む。江國が文士の手紙90余通を選んで、内容ごとにコメントを加えている。54歳の斎藤茂吉が人妻の愛人永井ふさ子(26歳くらい)へ送った手紙。 どうしていつもこんなになつかしくこいしいんでしょう。選歌をして…

アートプログラム青梅2014「まなざしを織る」を見る(その2)

青梅市でアートプログラム青梅2014「まなざしを織る」が開かれている(12月7日まで)。青梅市立美術館、青梅織物工業協同組合、吉川英治記念館などを会場としている。昨日の青梅市立美術館に続いて、青梅織物工業協同組合の展示を紹介する。 青梅織物工業協…

アートプログラム青梅2014「まなざしを織る」を見る(その1)

青梅市でアートプログラム青梅2014「まなざしを織る」が開かれている(12月8日)。青梅市立美術館、青梅織物工業協同組合、吉川英治記念館などを会場としている。これは4つの大学の学生たちの展示「想いを紡ぐ街」と同時開催の企画で、学生ではなくプロの…

新井コー児展「11年間ありがとう」を見る

東京銀座のなびす画廊で新井コー児展「11年間ありがとう」が開かれている(11月29日まで)。新井は1973年群馬県高崎市生まれ、1996年に多摩美術大学油画専攻を卒業している。新井は2004年から毎年なびす画廊で個展を開いてきた。今回が11回目になるが、銀座…

大学入試の国語問題に小説の出題を廃止してはという提案

私立高校教師の佐藤範子が大学入試センター試験の国語に小説の出題を廃止するのが適当と言っている(朝日新聞「私の視点」10月1日)。 今の(大学入試)センター試験は複数の選択肢から一つを選んで答えるマークシート方式を採用している。(中略)しかし、…

川合康三『杜甫』を読む

川合康三『杜甫』(岩波新書)を読む。しばらく前に吉川幸次郎・三好達治『新唐詩選』(岩波新書)を読んだけど、あまり印象に残らなかった。杜甫・李白と並び称されるが、李白が杜甫より11歳年上だったとか、杜甫が李白を敬していたのに対して、李白はさほ…

半藤一利とこんにゃく稲荷

朝日新聞に半藤一利が「人生の贈りもの」と題するエッセイを連載している。簡単な自伝みたいなもので、記者が聞き書きをしているが、その第2回に生まれ育ったところを語っている(11月18日)。 ――半藤さんは1930年5月、東京・向島の生まれです 正確には東京…

eitoeikoの岡本光博展「マックロポップ」がおもしろい

東京神楽坂のギャラリーeitoeikoで岡本光博展「マックロポップ」が開かれている(11月22日まで)。これがとてもおもしろい。岡本は1968年、京都市生まれ。1994年に滋賀大学大学院教育学科を卒業している。その後1994〜96年、ニューヨークのアート・スチュー…

恒例なびす画廊の瀧田亜子展を見る

東京銀座のなびす画廊で瀧田亜子展が開かれている(11月22日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。なびす画廊での個展は今年の4月に続いて今回で17回目になる。最近は春秋と年に2回も個展を行っている。その作品は紙に顔料で描いている。 瀧田は昔から書を学…

ギャラリー川船の鎌田紀子展に興奮した

東京京橋のギャラリー川船で鎌田紀子展が開かれている(11月22日まで)。鎌田は1971年、青森県生まれ。1993年に岩手大学教育学部特設美術科を卒業し、翌年同大学教育学部専攻科を修了している。今までほとんど東北を中心に活動してきて、都内では初個展とな…

永田和宏『現代秀歌』を読む

永田和宏『現代秀歌』(岩波新書)を読む。とても豊かな読書体験。永田は1年ほど前に同じ岩波新書で『近代秀歌』を出している。これはその続編。どちらも100首を選んで永田の秀逸な解説を加えている。近代秀歌が31名の歌人の100首だったのに対して、本書では…

梅野記念絵画館で堀内康司展を見て考えたこと

長野県東御市の梅野記念絵画館で堀内康司展が開かれている(2015年1月18日まで)。堀内は美術館のパンフレットによれば、 1932年(昭和7)東京生まれ。幼い頃に父がサイパン島で戦死、母も病死して孤児となる。両親の故郷・信州を愛し、絵を描きはじめる。松…

赤瀬川原平を読んで

先日千葉市美術館の「赤瀬川原平の芸術原論」を見たのをきっかけに尾辻克彦(=赤瀬川原平)の『東京路上探検記』(新潮文庫)を読んだ。そこに東京の中心として皇居を捉える考察があった。 東京の中心を環状の山手線が回っている。黄緑色の電車がぐるぐる回…

最相葉月『セラピスト』を読む

最相葉月『セラピスト』(新潮社)を読む。最相は以前『絶対音感』を読み、とても感心したが、本書はさらに優れた仕事だと言える。 最相が精神科医中井久夫によるカウンセリングを受けるところから始まる。中井は最相に絵画療法を行う。白い紙に中井が縁を枠…

ギャラリー21yo-jの前田哲明展がすばらしい

東京自由が丘のギャラリー21yo-jで前田哲明展が開かれている(11月16日まで)。前田は1961年東京都生まれ、1986年に東京芸術大学彫刻科を卒業し、同年安宅賞を受賞している。1991年同大学大学院博士課程満期修了、1997年に文化庁の在外研修員として1年間ロ…

『ヌードと愛国』を読む

池川玲子『ヌードと愛国』(講談社現代新書)を読む。標題から想像する内容とは違い、真面目な研究書だ。それもそのはずで、著者池川は若桑みどりに師事した日本近代女性史が専門の研究者なのだ。 本書は7つの章からなっている。章題とその副題を列挙すると…

三毛猫のオスの謎

毎日新聞に西原理恵子が「毎日かあさん」を連載している。11月9日のタイトルが「お引き取り」、生まれた仔猫5匹の健康診断で獣医さんに連れていく。結果は「はいみんな元気ですねー、問題ないー」というものだったが、突然獣医さんが「ああっ」と驚く。「こ…

『サミット学園』と『Mr.ボォ』の連載初回

本棚の読まない本の間から新聞マンガの切り抜きが出てきた。いずれも朝日新聞に連載された『サミット学園』と『Mr.ボォ』の第1回目だ。それぞれ1993年の6月1日と1996年4月1日だ。でも、ほとんど憶えていない。Wikipediaで調べてみた。まず『サミット学…

あこがれの草ボケの酒

画家の山口晃が東京大学出版会のPR誌『UP』に漫画「すゞしろ日記」を連載している。雑誌は月刊誌で連載はこの11月号で116回になる。てことはもう9年を超えているのだ! 雑誌がA5判と小さいのに、その1ページを24コマに割っている。まとめた単行本も羽鳥書…

蜷川幸雄の憂い、教養がない俳優たち

朝日新聞夕刊に連載の蜷川幸雄のエッセイ「演出家の独り言」の11月7日のタイトルは「イケメン俳優人気への憂い」というものだった。 かっこいい若者たちの、いわゆるイケメン俳優たちの演劇が、女の子たちに評判がよくて、大勢の観客を集めているというので…

『江戸の神社・お寺を歩く〔城西編〕』を読む

黒田涼『江戸の神社・お寺を歩く〔城西編〕』(祥伝社新書)を読む。同じ著者の『江戸の神社・お寺を歩く〔城東編〕』の続編。品川区から港区、目黒区、渋谷区、新宿区、文京区、豊島区、板橋区など東京の山の手地区を13の地域に分け、そこの630余りの寺社を…

村上春樹 編・訳『セロニアス・モンクのいた風景』を読む

村上春樹 編・訳『セロニアス・モンクのいた風景』(新潮社)を読む。ジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクに関するアメリカの雑誌や単行本からの抜粋12編を編集したもの。それに村上春樹のモンクに関するエッセイと「私的レコード案内」を載せている。12…

みゆき画廊の淀井由利子展が見応えがある

東京銀座のみゆき画廊で淀井由利子展が開かれている(11月8日まで)。淀井は1949年東京生まれ、武蔵野美術大学大学院を修了している。個展は今回で20回目となるが、その内みゆき画廊では初個展以来18回を数えている。 大きな作品が展示されているが、よく見…

銀座スルガ台画廊の川越ゆりえ個展を見る

銀座スルガ台画廊で川越ゆりえ個展が開かれている(11月8日まで)。川越は1987年富山県生まれ。2011年に富山大学芸術文化学部造形芸術コースを卒業し、2013年に同大学大学院芸術文化学研究科を修了している。2012年に同じ銀座スルガ台画廊で個展を開いてい…

野口悠紀雄『仮想通貨革命』が刺激的だった

野口悠紀雄『仮想通貨革命』(ダイヤモンド社)を読む。これが大変刺激的な本だった。仮想通貨に関する本を読むのはこれが3冊目だったが、もっとも説得力があり、まさに目の鱗が落ちた思いだ。 副題が「ビットコインは始まりにすぎない」というもの。ビット…

千葉市美術館の「赤瀬川原平の芸術原論展」がおもしろい

千葉市美術館で「赤瀬川原平の芸術原論展」が開かれている(12月23日まで)。赤瀬川は展覧会の始まる直前の10月26日に77歳で亡くなってしまった。 赤瀬川と言えば、偽千円札事件、ハイレッドセンター、トマソンと路上観察、それに芥川賞受賞などが思い出され…

マーク・トウェイン『ジム・スマイリーの跳び蛙』を読む

マーク・トウェイン『ジム・スマイリーの跳び蛙』(新潮文庫)を読む。今年9月の新刊で、副題が「マーク・トウェイン傑作選」と銘打たれている。マーク・トウェインはアメリカ文学の創始者として高く評価されている。裏表紙に、訳者の柴田元幸が厳選した13編…